ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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雪というものは関東南部に住むものとしてはやはりテンションの上がるものですね。ただ滑るのが怖いですが。

さて、今回から圏内事件です。
多少タナトス、主人公がうざい描写があります。
あとあまりこの章はタナトスがおそらくあまり出番がありません。




圏内事件編
キリトとアスナと作戦会議


 

まさかの展開だ。

 

いや確かに、俺はいい天気だし、最近こいつはピリピリしてるからゆっくり昼寝でもすればと言ったのは俺だ。

加えてその実例を示すために寝っ転がり、寝てしまったのも俺なのだが。

 

30分足らずでうたた寝から目を覚ましてみれば、本当にグースカ熟睡しているとは、予想外にもほどがある。

 

どんだけ疲れてたんだ、と俺ことキリトは呆れながら軽やかな寝息を立てるこのゲーム始まって以来のパートナー、《血盟騎士団》副団長、《閃光》だとか《攻略の鬼》だとかと呼ばれる細剣使いの女性プレイヤー、アスナの整った寝顔を眺め続けた。

 

そもそもの問題はタナトス(あのバカ)だ。そう、あいつが元凶だ。

あいつが『今日は気温も良く、そよ風は優しい。そして変な虫も発生してない。昼寝日和だ野郎どもー!』などと言ったから、ノーチラス達やサチのレベリングのお誘いを断って主街区転移門を囲む低い丘でゆっくり寝ようと決めたのだ。

22層で釣り糸を垂らすのも悪くはないがどうせならゆっくりゴロゴロしたい。たまにはホーム以外、外で。

 

そうして寝っ転がり、ダラーっとしていたのだが。

 

俺の頭のすぐ横を、白革のブーツが踏み、同時に最近妙にあたりのきつくなってきた聞き覚えのある声が降ってきたのだ。

 

『攻略組はみんな必死に迷宮区に挑んでいるのに、どうしてあなたはこうやって昼寝をしているの⁉︎』

 

クラインとタナトスは今日のんびり釣りするって言ってたんだがな。こっそり思いつつ、それを言ったらなんか嫌な予感がするので。

 

『今日の気候は年間通して最高。こんな日に寝っ転がってゴロゴロしないなんてもったいないぞ』

 

と、タナトスが言ったことを俺の主観を含めて答えてやる。

なおもキツイ声はとどまることを知らず。

 

『……天候なんて、いつも一緒でしょ?』

 

俺は隣をポンポン叩き、

 

『ならば試してみよ。話はそれからだ』

 

と言ってみると少しの間アスナは顔を赤くして軽く怒っていた?のだが、なにを思ったのか渋々横になるとすっかり寝入ってしまったのだ。

 

その以外と素直で可愛らしい寝顔を拝見しつつ、この前の攻略会議を思い出していた。

怒ってなくてよかったな、と思い返しながら。

 

***

 

第56層攻略会議にて、会議室としている洞窟内でアスナがなかなかに衝撃的な作戦を打ち立てた。

 

「フィールドボスを村におびき寄せ、NPCを囮として討伐します」

 

「異議あり」

 

アスナの作戦とは、ボスモンスターをおびき寄せ、NPCを囮としているうちに倒すというなんともおにーさんが思いつきそうな、合理的で倫理的に大問題のプレイヤーの安全を第一にした案だったのだが、ノータイムで反論したのは我らが副団長、タナトスだ。

 

「……理由を、聞いてもいいかしら?」

 

「いや、いくらデータの塊だろうと人を囮にするのは人道的にアウトだろ」

 

「効率優先でもさすがに、ね」

 

と、とりあえず俺も乗っかってみるとアスナの眉がどんどんつり上がる。

 

「NPCはただのオブジェクトに過ぎません。彼らは別に生きているわけではないのです」

 

「ハッ、NPCどもは86(エイティシックス)ってか?他者を手前勝手な理由で殺し、『あー、別に人じゃないし、殺してもいいよね。キャハ✴︎』みたいなことして罪悪感を消そうとしても無駄だぞ」

 

ご丁寧にアスナのセリフと思われる部分は無駄にレベルの高いアスナのモノマネをギャル風にすることでさらにアスナに青筋を立てさせていくタナトスに、思わず止めようと俺は肩に手を奥が振り払われてしまう。

 

「いいか、アスナ。昔お前がいないβテスト中にキャンペーンクエストで兄貴がダークエルフを囮にしてそのうちにクエストをクリアするって案があったんだよ」

 

「…………」

 

俺はそのことを思い出し、少し気恥ずかしい気持ちになった。あれは軽い黒歴史ものだ。

 

「その時キリトは言った。『NPCだって生きてる。ただのデータの塊だっていうけどここは仮想世界。俺たちだって一緒だろ?例え彼らの思考が俺たち人間に設定されたものだとしても彼らにとってはここが生きる世界なんだ』って」

 

クラインがニヤニヤしながらこちらを見てくる。ノーチラスを見るとニヤニヤしながら今の言葉を復唱している。ユナが止めているがあれは完全に暗記しやがったと思う。

 

「キリト……かっこいい……」

 

サチさん、顔こそ見えませんが気を使ってくれるのがわかります。ありがたいのですがその優しさが心に刺さります。

 

アスナは何やら複雑そうな顔をしている。

 

「わかるぜ、アスナ。俺も最初はなーに言ってやがんだこのクソ餓鬼、ドタマブチ抜くぞゴラァと思ったよ?」

 

口が悪いんだよこの不良が。

 

「けどな、純粋にそう思えるのはかっこいいと思った」

 

「っ‼︎」

 

アスナは図星を突かれたような顔になる。

 

俺には分かっていた。

 

アスナは優しい人だ。眩しいほどに正しく、美しい。

そんな彼女もこのデスゲームが始まってからはたくさんの悪意に触れ、正しいだけでは生き残れないことを知ってしまった。

 

彼女はおにーさんの戦術を教わり、きっと視野が狭まっていたのだと思う。

 

おにーさんの戦術が最良となる主な要因は彼が最も他者の顔色を伺うことに優れているからだ。

 

おにーさんは他者がどこに意識があるか、そこからどういう感情で、どういう心境かを当てるのが異常に得意だ。

タナトス曰く昔からの習性に近いものらしいがそんな彼だからこそうまく被害を最小限に抑えつつ、軋轢を生まないように気をつけて来ていた。

 

だからこそ言える。

 

「アスナ……」

 

「キリトく…………っ⁉︎」

 

俺はアスナの頭に手を乗せ、優しく喋りかける。

 

「君はおにーさんみたいにならなくていいんだよ。あの人は確かにすごい人だ。だけどあの人よりも君は優しく、明るく、そして(心が)綺麗だ」

 

「きれ……⁉︎」

 

背中にジト目が突き刺さった。気にしないことにしよう。この角度的にサチだけど気にしないことにしよう。

 

「そんな気負うなよ、アスナ。お前はお前らしい作戦を立ててくれ。ヒースクリフにも、おにーさんにも思いつかないようなさ」

 

「一応僕とアルゴも攻略組のブレインの一人なんですけどねぇ」

 

タナトスがなんか言ってる気がするが無視する。

 

「俺は、そんな君(の心のあり方)が好きだからさ」

 

あ、これは失言だったか。

 

気付いた時には遅かった。

 

「す、すすすすすすす好き⁉︎ななななななななななななにゃに言ってるのよ⁉︎……ここ、この、すけこまし!」

 

アスナは顔を真っ赤にして俺から怒って去ってしまった。

 

「あ、ご、ごめんアスナ!そんな起こるとは思わなくて……もういない」

 

その後、妙に生暖かい視線とサチの絶対零度の視線が身体中に突き刺さっていたことをよく覚えている。

 

***

 

「今考えるとあれ、本当に失言だったよな……よくアスナが口聞いてくれるよな……まぁ、無視されたらかなりきついけど」

 

芝生でぐっすり眠るアスナを見ながら、しっかり辺りにいるプレイヤーに威圧は忘れない。

寝顔を撮ろうなんて連中には背中の剣をちらりと見せる。

 

そんなこんなで約8時間。

 

《閃光》アスナは小さな可愛らしいくしゃみとともに目を覚ました。

 

昼寝どころか飯すら食えなかった俺はせめてあの雪のごとく冷徹なる副だんちょ様がこの状況を把握した後にどんな面白い反応をしてくれるか、それだけを楽しみにしていた。

 

「……うにゃう……?」

 

おそらくクラインあたりが聞いたら発狂するのだろう、謎言語で呟いた後、俺を見上げ寝ぼけ眼でニッコリと笑い一言。

 

「おはよ、キリト君……」

 

ずきゅううううん。

 

必中の刺し穿つ何かが俺の心の臓をとらえた。

 

そんなことはつゆ知らず、アスナはゆっくり立ち上がり、伸びをしたのち、そのまま固まり右、左、そして座る隣であぐらをかく俺を見る。

 

透明感のあるその白い肌を瞬時に赤く染め(おそらく羞恥)、やや青ざめさせ(おそらく苦慮)、最後にもう一度赤くした(おそらく激怒)。

 

「な、あん、どうし……えぇ⁉︎」

 

そして俺は最大級の笑顔とともに、言った。

 

「おはよう。よく眠れた?」

 

アスナの右手かぴくり、と震えた。なんとか自制心をかけられたらしい。腰のレイピアを抜くことも、その《閃光》たらしめた敏捷に物言わせ逃走することもなかった。

 

そして俺に対し未だに怒っているであろうと思っていた彼女は短く。

 

「………………ごはん1回」

 

「へ?」

 

「ごはん、何でもいいからいくらでも奢る。それでチャラ。どう?」

 

そうして俺とアスナの食事会が決まった。





なんか最近ツンデレと化しているアスナさん。

鈍感主人公と相まって上条さんと御坂さんみたいですね。

さて、途中で出てきたネタですが、86-エイティシックス-というラノベのものです。
このラノベがすごい!2018で総合2位を取った作品で、非常に面白いです。
作中のエイティシックスたちとゲームのNPCを一緒にするな、という意見もあると思いますがご容赦ください。

感想、評価等頂ければ幸いです。
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