ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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もうすぐフェイタルバレットの発売日ですね。非常に楽しみです。



キリトとアスナとヨルコ

アスナから手渡された、男を吊っていたいわゆる証拠物件のロープを回収し、外に出る。

 

広場に出た俺たち四人は監視をお願いしていたプレイヤーに礼を言い、こちらを注視している野次馬たちに大きな声で呼びかけた。

 

「すまない、誰かさっきの一件を最初から見てた人がいたら話を聞かせて欲しい!」

 

俺たち《ファミリー》は中層の自治に一役買っているためにその信頼度は高い。その証拠に、人垣の中からおずおずと、一人の女性プレイヤーが出て来た。

おそらくは中層からの観光組なのだろう、武装もNPCメイドのもので、攻略組でも当然のことながら見たことがなかった。

 

心外にも、俺の黒づくめの格好を見てやや怯えたような顔をする女の子にユナが近づいて優しく話しかける。

 

「ごめんなさい、怖い思いをしたばかりなのに。お名前、聞いてもいいかしら?」

 

「あ……あの、私、《ヨルコ》って言います」

 

そのか細い声に聞き覚えがあった俺は思わず口を挟む。

 

「もしかして、さっきの……あー、最初の悲鳴も、君が?」

 

「は、はい……」

 

ゆるいウェーブのかかった濃紺色の髪を揺らし、ヨルコさんは頷いた。

アバターからして、おそらくは17、18歳くらいだろうか。

 

彼女が言うには、あの殺された人物とは友達だったらしい。そして逸れた隙に……。と言う顛末らしい。

一人で下層に帰るのは怖いだろう、そう判断した俺はノーチラスに目線を合わせる。

 

「ノーチラス。宿を取って来てくれるか?一番安全そうなとこ」

 

「んー……と、よし。わかった」

 

アルゴのこの階層の情報にさっと目を通した後にたたっ、と走っていったノーチラスを見届けてからヨルコさんを見る。

現在も彼女は軽いパニック状態だった。アスナが背中をさすっていると次第に涙も止まり、意外に気丈なのか、はたまた空元気か、ゆっくりと彼女の知る限りの情報を教えてもらえた。

 

「あの人の名前は、《カインズ》って言います。昔、おんなじギルドで……。今でも、たまに食事とか、パーティを組んだりしていたんですけど……それで、今日もこの街までご飯を食べに来て……」

 

ぎゅっと目を瞑り、震えをなんとか抑え、それでもやや震えの残る声で続ける。

 

「……でも、あんまりに人が多いから、逸れちゃって……。周りを見回してたらここの窓から急に、人が、カインズが落ちて来て……しかも宙吊りで、胸に、槍が……」

 

「その時、誰か見なかった?」

 

ユナの問いにヨルコさんは少し黙り込んだ後……自信なさげではあるが、しっかりと頷いた。

 

「はい……一瞬、でしたけど、誰かが、カインズの後ろに……いた、ような……」

 

やはり犯人はあの部屋にいた。そして俺たちがいたのにもかかわらず、悠々と脱出してのけたという事実に俺は無意識に両の拳を握った。

そうなるとやはりハインディング機能を持った装備を使ったはずだ。

しかしあの手のアイテムは移動中は効果が薄くなる。それを補正するレベルの隠蔽スキルを持っている人物など、アルゴかタナトスくらいしか俺は知らない。

 

「あの二人レベルの《隠蔽》スキル……ですって……?」

 

情報屋としてトップの実力者であり、隠密行動に関しては右に出るものはいないと称されるアルゴと片手剣の他に投げナイフや体術などの珍しい戦闘スタイルに高いスニーク能力で暗殺者(アサシン)の二つ名を持つタナトス。

あの二人に追随、あるいは超えるレベルの《隠蔽》スキル保持者がいるなど、まさに脅威以外なんでもない。

アスナもそれに思い至り、一瞬体を震わせたがすぐにヨルコさんにいくつか質問をしていく。

 

それにより得られたのはその人影にも、殺されたカインズ氏への動機にも心当たりがないそうだということのみだった。

ユナと帰ってきたノーチラスにその場にいたプレイヤーへの通達を頼むと俺とアスナはヨルコさんを宿に送り届け、ユナたち二人と合流するとまずは物証を調べるために《鑑定》スキルを持つエギルの元へ訪れることにした。

 

***

 

第50層アルゲード。

ここは店舗物件の代金が恐ろしく安いため、多くのプレイヤーが店を構えていた。

エギルもその一人で、狭く、外観も汚いが彼の店はそれなりに繁盛しているらしい。

 

目指す雑貨屋に到着するとその逞しい体格のエギルが出迎えた。

 

「うーっす、きたぞー」

 

「久しぶり、エーギルさーん」

 

手を振りながら店に入る俺とノーチラス。

 

「……客じゃないやつに『いらっしゃいませ』は言わんぞ、キリト、ノーチラス。……すまねぇ、今日はこれで閉店だ」

 

ペコペコしながら全員を追い出し、店を閉店操作する。

 

「ったく、店商売は信頼がメインだってのに……」

 

操作が終わった後、不満そうな顔をしつつ文句を述べていたが、俺たちの後ろに控える美少女たち、アスナとユナを見た瞬間、フェードアウトしていった。

 

「お久しぶりです、エギルさん。急なお願いをして申し訳ありません。どうしても、火急にお願いしたいことがありまして……」

 

「私からもお願いします、エギルさん」

 

そう頭を下げて言うアスナとユナを見てエギルはいかつい顔を一瞬で崩し、茶まで出した。

 

ノーチラスから『人の彼女に色目使うんじゃねぇぞ』という目線が送られていたのは言うまでもない。

 

***

 

二階の部屋で事件のあらましを聞いたエギルは事の重大さを察したようで、両目を鋭く細めつつ、唸った。

 

「圏内でHPがゼロに、だとぉ……?お前さん、それはアルゴたちには……」

 

「伝えた。デュエルじゃなく、どんな手口かは謎だからアルゴも現在裏付けに奔走してるらしい。おにーさんもその手口はわからないって」

 

「PoHが、か……⁉︎」

 

俺の言葉に今度は両目を目一杯に開き、驚きを隠せないエギル。

それもそのはず、おにーさんは今までに起きた全てのPK事件の手口を看破したことでアインクラッド内でも有名だ。

彼に並ぶ知能の持ち主など、ヒースクリフか、タナトスか。

 

「……なんかタナトス、条件に合いすぎて怖い」

 

今の所あげた二つの条件の他に攻略組随一のレベルという条件にも合致する親友の名前を思わず漏らした俺の言葉に思わず言葉に詰まる俺以外の四人。

……人殺し案件じゃなければまず疑ってるな、これ。と言わんばかりの沈黙。

 

「……いやまぁ、流石に疑いはしないけど、犯人はあいつレベルってことだろ?」

 

慌てて取り繕う俺。へんなこと言わないとアスナに叱られた。

 

さて、本題に戻し、エギルに証拠品であるロープとショートスピアを渡す。

 

ロープはプレイヤーメイドではなかったが、ショートスピアはプレイヤーメイドだった。

 

「作成者は《グリムロック》……綴りは《Grimlock》聞いたことねぇな。……お前らは?」

 

俺たちは首を振る。商人クラスのエギルが知らない鍛冶屋を俺たちが知ってるわけもない。

 

重苦しい空気が立ち込めたがノーチラスが硬い声で言った。

 

「けど探し出すことは不可能じゃないはずだ。この時期まで全くパーティを組まないアホなんて、キリトとタナトスくらいしかいないだろう?きっと見つかる」

 

エギル、サチ、アスナが深くうなずき、アホソロプレイヤーの一人、俺を見た。

 

「な、なんだよ……俺だってギルドに入ってるし、パーティくらい組むぞ」

 

「ボス戦と依頼の時だけでしょ?」

 

ぐぬぬ、反論できない。

 

そんなアスナと俺の様子を見つつ、深いため息をつくとエギルは忠告とともに武器の固有名も教えてくれた。

 

「全く、相手はもしかするとザザやジョニー・ブラックに比肩するかもしれん。気をつけろよ。……それと、一応教えておくが、固有名は《ギルティソーン》。罪のイバラってとこか」

 

改めて、俺たち四人はエギルから返されたショートスピアを見る。

モンスターにはダメージの低い、貫通ダメージを増やすために作られたであろう大量の逆棘がついた、あからさまな対人用の装備を眺めた。

 

「罪の、イバラ……」

 

アスナがつぶやいた声には、どこか寒々とした響きを帯びているように思えた。

 

……と、そこで俺はふと気になったことがあった。

 

アスナからギルティソーンを貰うと、それを自分に向けて突き立てる。

 

パシッ。と、アスナにギリギリのところで止められた。

 

「何してるの⁉︎」

 

「いや何って」

 

俺の行動は、本当に圏内でこの装備が刺さるかどうか見たかっただけなのだが、アスナは本気で怒っている。

 

「その装備で実際に死んだ人がいるのよ⁉︎」

 

アスナは俺からギルティソーンをひったくるとエギルに渡す。

 

「これは、エギルさんが持っててください‼︎」

 

「……なぁ、俺なんか悪いことした?」

 

「……キリト。地味にお前もおにーさんの合理主義に毒されてるぞ」

 

「そうだよキリト。心臓に悪いよ」

 

 

 

全く意識してなかったが故に地味にその言葉が最近言われた中で一番傷ついた気がする。

 

 




扱いのひどいオリ主。
念のためですが彼は別に嫌われてません。

感想、評価等頂ければ幸いです。
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