ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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タナトスを登場させたくなってきました。



ノーチラスとキリトと真相

 

 

からーん。

 

漆黒のダガーが路上に転がった。ヨルコさんを構成していたポリゴンは空へ消え去った。

 

そんな……。

 

僕はあらん限りに目を見開く。

 

有り得ない‼︎‼︎

 

僕の音の無い絶叫には、しっかり根拠があった。

宿屋の客室はシステム的に保護を受けている。

窓が開いていようと、中に何かを投げ込むなど不可能。たとえ未知の手によって可能になったとしても、あんな短刀が中層プレイヤーのHP全て吹き飛ばすなど、それこそヒースクリフさんとキリトのSTRを足しでもするかしないと不可能なはず。

 

絶対に有り得ない。

 

僕は戦慄しながらも、無理やりヨルコさんの消えた石畳から目をあげ、辺りを見回す。

 

……見つけた!

 

屋根に見えた、漆黒のフーデッドローブに包まれた、顔の見えない黒衣の人影。

 

「野郎っ……!」

 

窓枠に足をかけ、飛び上がると同時に一言。

 

「ユナ、あとは頼んだ!」

 

「え、ノーくん⁉︎」

 

奴のスローイングダガーを受ければ僕も即死するかもしれない。

それでも、ここは命なんて惜しめない。

しっかり宿屋のシステムにも穴があるかもしれないと予想していたのにもかかわらず、ヨルコさんを死なせてしまった。

 

僕の後悔をあざ笑うかのように黒いローブははためき、そして駆け出す。

 

腰の剣を引き抜き、もしダガーを投げられたら弾けるようにしながら走る。

 

……あの体格……恐らくは男か。

 

《ファミリー》の特性上、フーデッドローブを身につけた人間と関わることはたくさんある。その過程で身につけた技術をフル活用しながら多くない特徴を頭に叩き込む。

 

敏捷、演技の可能性を排除した上でおそらく中層プレイヤー並み。

体格、おそらく男性。

武装、見えない。恐らくは装備していない。投擲のみの武装しかしていなかったか。

 

そこまで見てソードスキルの構えを取る。突進系ソードスキルで一気に距離を稼ぐのだ。そこからはタナトスとの喧嘩で鍛えられた体術でどうにかなる。

しかし男は懐から転移結晶を取り出した。

 

「くっ!」

 

僕は毒づきながらソードスキルの構えを解き、相手の音声コマンドを読み取ろうと、耳を澄ませた。

 

しかし目論見はまたしても裏切られる。

 

偶然か必然か、ちょうどその時間は午後5時であった。

 

「ウッソでしょ……⁉︎」

 

5時を知らせる鐘の音である。

そのせいで僕はその言葉を聞き逃してしまった。口元は見えていたが、読唇術なんて使えるわけもなく、男はあっけなく消え去った。

 

僕はその青い光を、妙な既視感とともに見ていた。

 

***

 

屋根を経由せず、道をしっかり使って宿屋へ戻った僕は、ダガーを回収し、部屋に戻ると涙目で心配半分激怒半分のユナに初手正拳突きをくらい、そして思い切り怒られる。

 

「ノーくん!ほんっとうに心配したんだからね⁉︎」

 

「うん、心配させてごめんな、ユナ。こちらに特に異常はなかった?」

 

ユナはその仕事優先の僕の態度にふてくされたようにほおを可愛らしく膨らませながら大丈夫だったと言う。

今度何か埋め合わせの約束をしつつ、軽く状況を説明する。

 

刺さっていたダガーはこれまた逆棘がびっしり付いていた。

製作者は、鑑定するまでもない。グリムロックなのだろう。

おそらく中層プレイヤー並みの実力と、ありふれたフーデッドローブからあれがグリムロックなら、と言う自らの推察を口にしたところでシュミットさんが口を開いた。

 

「……あれはグリムロックじゃない。やつは……はは、グリセルダに違いない……!あれはグリセルダのものだ!」

 

完全にヨルコさんの言葉に正気を失いかけている。はははははははは、とタガが外れなように笑い声を漏らす。

 

「はぁ……。シュミットさん?あなたが何を信じるかは勝手ですが、僕らはあくまでシステム上で何か、誰かがやってると仮定しています。落ち着いて、僕らに協力をお願いします」

 

そんなことを数分説き続け、なんとか落ち着かせることに成功した僕たちはもはや唯一の手掛かりとなってしまったグリムロックの情報、彼の行きつけの店の場所を聞き出し、シュミットさんを聖龍連合の本部に送り届けると同時にキリトと合流する手筈を整える。

 

そこにおにーさんからメッセージが届いた。

 

『状況説明をしてくれ』

 

簡潔ながら言いたいことだけしっかり言う彼らしい文章。

 

僕は今までのことを出来るだけ詳しく、それでいて長々としないようにまとめて送った。

この文章をうまく簡潔に書くのはおにーさん塾の賜物である。

 

『よし、状況は大体把握した。カインズ氏のスペルはkains……合ってるな?』

 

少しして届いたメールの質問の意図が汲み取れず、首をかしげるがそうだ、と送っておいた。

 

『アルゴらとともに動く。()()()()()()()()()()()()()

 

それを流し読みして、おそらくキリトにもいっているのだろうな。ならアイツにも転送する必要はないか。とか思いつつユナに向き直る。

 

「ユナ。少しおにーさんに直接会って状況の説明をすることになった。先に言っててくれ」

 

「……?うん、わかった。じゃあアスナたちと待ってるわ」

 

よし、うまくごまかせたようだ。僕はおにーさんが自分とキリトのみ呼んだ理由をうっすら察しながら、たった数分でここまでやれるおにーさんの頭の回転の早さに関心を通り越して畏敬の念を心の中で表した。

そして僕は転移結晶を使って、第22層にあるホームに向かう。

 

***

 

第22層、《ファミリー》ホーム。

 

リビングで紅茶のような飲み物を啜りつつ、おにーさんが切り出す。

 

「キリト、ノーチラス。呼び出してすまないな」

 

「構わないです」

 

「おにーさん、それより何かわかったのか?」

 

タナトスが作ったクッキーをかじり、そして真面目な表情に引き締めたおにーさんは、静かに喋り始めた。

 

「そうだな。では結論から言おう。この事件は、綿密に計画された……」

 

 

 

 

「茶番だ」

 

 

 

 

「…………な、は…………?」

 

言い切ったおにーさんの言葉に二の句が告げない僕とキリト。

おにーさんはアルゴに頼んでとある資料を出してもらっていた。

 

「これは度々アルゴが記録していた黒鉄宮に記されていた死者の記録だ。……記録を取り始めたのがこのギルドを立ち上げてからだから、そこまで古くはないんだが、それでも一ヶ月以上前の記録だ。これを見てくれ」

 

kains サクラの月 11日 ()()

 

「「⁉︎」」

 

「おそらく、カインズなる人物はこのアインクラッドに二人いたのだろう。ちなみに、Cから始まるカインズ(Caynz)は生きているぞ。アルゴがすでに確かめている」

 

むふー。とアルゴさんが満足げに鼻を鳴らす。

 

「では次にトリックだ。……ここに、耐久値がもうゼロに近い剣がある。これを壊すと……」

 

ポリゴン片とともに、剣は砕け散った。

キリトはハッとした表情になり、数秒たってから、僕も思い当たった。

相変わらず頭の回転早いな、などと関係のないことを僕が思っている間にも話は進む。

 

「圏内ではHPは無くならないが、耐久値は減る。カインズ氏は着込んだフルアーマーの鎧にショートスピアを突き刺し、ヨルコさんは……おそらく、外套に事前に、あるいはシュミットを呼びにいった間に刺していたか。短刀くらいなら簡単に髪に隠れるだろうし。ともかく、これを使い、破壊すると同時に転移結晶でどこかに転移したのだろう」

 

「これがトリック……。と、なるとこんな事件が起こる原因となったのは……」

 

キリトが顎に手を当て、頬骨のあたりを指でトントン叩く。そして呟いた言葉を僕が引き継ぐ。

 

「シュミットさんがきな臭いね」

 

おにーさんもそれに首肯する。

 

「ギルド解散からわずか半年でシリカともどっこいどっこいのプレイヤーが攻略組最前線までのし上がるなんて、サチやノーチラスのように攻略組の力をフル活用するしかない。しかしそんな話はアルゴも聞いたことがないそうだ」

 

アルゴもそれに同意し、おにーさんの話を引き継ぐ。

 

「なら、グリセルダさん殺害の件で大金を手に入れ、それで装備を整えた可能性が高イ。その後、ヨルコさんとカインズ氏はシュミットに疑いをかけ、真相を暴くためにこんな大それた計画を立てたんだろうナ。今頃、グリセルダさんの墓標の前で許しを乞いているんじゃないカ?」

 

そこまでアルゴが話して、おにーさんの空気が一変する。この空気は、かつて会議が始まる際に毎回放っていた、殺気にも近いおにーさんが本気の時にまとうオーラのようなものだ。

 

 

 

「ここからが本題だ。おそらく、グリセルダさんを殺したのは──」

 

 

 

そして犯人の名を告げた後、毅然とした態度でおにーさんは言い切った。

 

 

 

 

「ここで、確実に潰す」

 

 





もらってすぐに事件の真相まで至るPoH。さすおにとしか言いようがない。
多分PoHならアルゴみたいなのが原作のラフコフにもいたら多分攻略組は勝てなかったろうなと思う今日この頃。

感想、評価等頂ければ幸いです。
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