ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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リズ編完結。やっぱり次の74層攻略編もまとめることにしました。
あの名シーンもキリト視点だとかなりあっさり。
体調を崩してしまって最後の方がややクオリティ低めかもしれません。前回の時点で穴に落ちるまで書いとけばよかったと後悔。



キリトとリズベット

 

 

材料があると言う第55層に着くとゲート広場の近くに俺は食べ物屋を発見し、いそいそと駆け寄ると大きなホットドッグを買う。

 

「りうへっとも食う?」

 

ホットドッグ咥えながらたずねるとリズベットは大いに脱力し、「食べる!」と大きく答えた。うん、元気でよろしい。

 

そしてそれを食べながら歩き、ホットドッグの後味が消えないうちに北の山にたどり着くことができた。

現在の最前線は63層であることを考えると、一応強敵に分類されるフィールドモンスターも軽く蹴散らし、ずんずん進めている。リズベットも結構高レベル帯にいるようでやりやすい。

 

「はっくしょん!」

 

と、気がつけばあたりは氷雪地帯であり、リズベットは盛大にくしゃみをした。

俺は思わず呆れ顔で予備の服を聞いたが「ない」と答えられ、何かなかったか頭の中を検索する。

とりあえず大きな黒革のマントを放るとリズベットは胡乱な目を向けてくる。

 

「……あんたは大丈夫なの?」

 

「精神力の問題だよ、ちみ」

 

腹パンされた。

 

 

***

 

 

その後時間はかかりはしたもののなんとか水晶に囲まれた美しい山頂にたどり着くと若干渋るリズベットに転移結晶を用意させ、戦闘には加わらないように言いつける。

 

今まで《ファミリー》の仲間たちを失ったことはないがそれでもこの攻略で今まで助けられなかった命はいくつもある。俺は自分の力不足が攻略組最強と言われるようになった今でも、怖いのだ。

 

……事実、知名度は俺より弱いはずのアスナやノーチラスの方がなぜか高いし。

 

それは持ち前の美貌や中層に顔を出していたりするかの違いだったりするのだが、そんなこと俺はつゆ知らず。

 

山頂にはドラゴンはいなく、代わりにぽっかりと水晶柱に囲まれた空間に大穴が開いていた。

直径は多分10メートルほど、壁は氷に覆われ、どこまでも伸びている。

 

試しに水晶のかけらを落とすも、音は帰って来ず、深さをはかることはできなかった。

 

「うわぁ……深いな。…………落ちるなよ」

 

「落ちないわよ!」

 

そんなやりとりの直後だった。猛禽を思わせる高い雄叫びが山頂に響き渡り、その巨軀があらわになった。

 

「その陰に入れ!」

 

リズベットを有無を言わさず水晶の陰に放り込む。

一瞬言い返しそうな顔をしたがすぐさまこちらに攻撃パターンを教えると最後に早口で、

 

「気をつけて!」

 

と言われたので背を向けたまま親指を立てる。意識してやってるのではないがタナトスからやたら評判の悪いこの類のカッコつけているように見える仕草。直らないのが悩ましい。

 

ドラゴンの咆哮を皮切りに戦闘が始まった。

ドラゴン自体はそこまで強くない。ブレスをソードスキルの応用で発生させた風圧で吹き飛ばすと言うアニメもびっくりなことをやってのけると次は空を飛ぶドラゴンの頭上まで飛び上がってソードスキルを繰り出す。

竜の鱗を次々と破壊し、ダメージを蓄積させる。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」

 

地面に着地すると同時に再び飛び上がるとこちらに向かってくるドラゴンの腕を叩っ斬る。

そこへ予想外の事態が起きた。

 

「ほら、早く片付けちゃいなさいよ!」

 

俺が思いの外余裕に戦えていたのがむしろ逆効果だったのか、リズベットが水晶の陰から出てきてしまった。

 

「っ、ばか!まだ出てくんな!」

 

リズベットは余裕そうな顔をしているが、このドラゴンは、と伝えようとしたところで時すでに遅し。

ドラゴンの目が光り、その翼をはためかせる。

突風攻撃だ。

自分で言ってたろ、とツッコミを入れたいのを我慢して水晶に着地するとすぐさま跳躍する。

リズベットが投げ出されたのはあの大穴。悲鳴をあげながら落ちる彼女を俺は掴むとそのまま包み込み、叫ぶ。

 

「掴まれ‼︎」

 

そして俺たちは穴の中へ落下していった。

 

 

***

 

 

空が遠い。

 

地面に大の字になって寝っ転がる俺は、リズベットと目があったのでかすかに笑って話しかけた。

 

「……生きてたな」

 

「うん……生きてた」

 

暫くそうしていたがやがて俺は起き上がるとポーションを二つ取り出し、うち一つをリズベットに渡す。

 

「飲んどけよ、一応」

 

「ん……その、ありがと。助けてくれて」

 

リズベットは頷くと俺に向き合って礼を述べてきたが俺は笑ってちらりと空を見上げる。

 

「礼を言われるのはちょっと早いぜ。……さて、どうやって抜け出したもんか」

 

「え?テレポートすればいいじゃない?」

 

「無理だろうな。これはおそらくトラップの一つ。何かしらの特定の方法でないと脱出は不可能だろうな」

 

ほら、実際にやってみ。と実際に試させてみる。案の定、転移結晶はうんともすんとも言わない。

 

「一つだけ、方法を思いついたな……いやでもなぁ、これはあの2人でも無理か……?」

 

「なによ、もったいぶっちゃって」

 

壁を走って登る。それだけ言うと明らかに呆れた表情のリズベットを放って、駆け出し、登る。半分にギリギリ届かないくらいだろうか、俺はつるんとコケた。

 

……アルゴかタナトスならいけるんだろうなぁ……。

 

そして落下。2本目のポーションのお世話となった。

 

そうこうしているうちに夜になった。

こうも遅くなるとそろそろサチやらアスナあたりがこちらにメッセージを送ってくる頃合いだろう。『今日もレベリング?』と。

 

最近特にやることもないのでレベリングばかりしていたからおそらく返信がこなくともサチもまさかこのような事態になっているとは思いもしないだろう。基本的に俺は昼寝とおにーさん塾に通う以外はダンジョンにこもりきりなのだから。

 

その過程で必要となったキャンプ道具を次々とオブジェクト化させていくとリズベットが本日何度目かわからない呆れ顔で問いかけてくる。

 

「……あんたいつもこんなの持ち歩いてるの?」

 

「……この世界に来てからベッドで寝る方が珍しい」

 

 

***

 

 

料理スキル皆無だが高ランク素材の味ゴリ押しの美味な料理を食べ、シュラフもどきに2人して入る。これは俺のお気に入りで、たまにタナトスやらと野営するときとかに重宝するものだ。

 

「なんか変な感じ……初めて会った人と、初めての場所で並んで寝るなんて……」

 

「ああ、そうか。リズは職人クラスだもんな……俺はこう言うこと、よくあるよ」

 

そんな談笑を続けていたがリズはその笑みを収め、こちらに顔を向けてきた。

 

「ねぇ、キリト……。聞いてもいい……?」

 

「なんだよ、改まって」

 

「どうして、私を助けたの……?」

 

その質問の意図を、俺は正しく理解していた。おそらく、リズは俺が攻略組であることは気づいていたのだろう。それもトップレベルの。その上で、自虐的なことを述べている。

 

『自分のために、命を投げ出す真似なんてしてよかったのか』、と。

 

俺は微笑むと穏やかな声で言った。

 

「俺は誰かを見殺しになんてするくらいなら、一緒に死んだ方がマシさ。リズみたいな女の子なら尚更、な」

 

「バカだね、ほんと。そんなやつ、他にいないわよ……」

 

そう言ったリズは、無意識か、短い言葉が俺に向かって紡がれていた。

 

「ね……手、握って」

 

一瞬ぼっち系男子学生になにを求めるのかと目をわずかに見張ったが、きっと彼女は今までずっと寂しかったのだろう。俺はそれに応えると彼女の手を握った。

 

そしてそのまま、俺たち二人は心地よい暗闇へと、ゆっくり落ちていった。

 

 

眠る瞬間、栗色の髪が頭をよぎった。どうしてだろう?

 

 

***

 

 

朝起きて、明るくなったら俺たち二人はとんでもないものを発見した。

 

クリスタライト・インゴット。俺たちが探していた金属だ。

 

その瞬間、俺の脳内で超高速の方程式が組み立てられる。

ドラゴンは水晶をかじり、そしてこれを精製する。……なるほど。

 

俺が出した結論は、

 

「こりゃここはドラゴンの巣だな。トラップじゃない。そしてそれはドラゴンの排泄物。ンコだな」

 

リズの手に持つそれを指差す。そしてしばらくの無言の押し付け合いののち、本格的な脱出方法を模索し始めるが。あることに思い至ったリズが顔を引きつらせながら話しかけてくる。

 

「ここ、ドラゴンの巣なのよね……?ドラゴンって夜行性だったから……」

 

二人してゆっくり見上げる。

 

ばさっ。ばさっ。

 

降りてくるドラゴンを見て、俺はリズの悲鳴をBGMにある一つのぶっ飛んだ打開策を思いつく。

タナトスが好きそうな、そんな作戦を。

 

俺は俺たちのことを視認してアクティブモードに切り替わるドラゴンに巣に積もった雪をまき散らし、簡易的な煙幕を作る。

すぐさまリズを抱え跳躍すると、ドラゴンに剣を突き立て……!

 

飛び上がったドラゴンとともに俺たちは宙に発射された。

 

そして宙を飛んでいる際、リズに何か言われた気もしなくもなかったが、その後すぐさま抱きつかれて目を白黒させていたのでそんなことはすっかり忘却の彼方へすっ飛んでしまった。

 

 

***

 

 

そして帰ってきたリズの工房。リズが200回ほど金属をリズミカルに叩いた頃だろうか、まばゆい光とともにインゴットは美しい、白銀の剣へと姿を変えた。

 

名をダークリパルサー(闇を祓うもの)

 

リズに勧められ、試しに振ってみる。

間違い無く、最高の剣だった。

 

さて、とリズに向き直り、代金を聞くが、リズは驚くべきことを口にした。

 

「私を専属スミスにしてほしい」

 

「えっと……それって……」

 

「あんたソロでしょ?装備のメンテナンス、やりたいの」

 

その言葉に俺は黙って名前のところを指差す。そこにはプレイヤーネームと、HP、そして……。

 

「黒猫……え、あんた⁉︎」

 

「《ファミリー》所属、キリト。一応《黒の剣士》って、呼ばれてます……」

 

聞き覚えのある名前だったのか、唖然としたリズだったが頭を振り、一歩こちらに踏み出してくる。

 

「でも構わない!私を、あんただけの専属に……⁉︎」

 

ぞわっと。

 

部屋の室温が、ざっと10度は下がったろうか。

あれれ、おかしいなー。この世界に魔法はないはずだぞー?

 

恐る恐る、ゼロ距離の位置にいるリズと二人で入り口を見やる。

 

「まっ、待て!誤解だ!」

 

「え、えぇそうよ誤解よ!」

 

しかし今しがた入って来て『あんただけの専属』しか聞こえなかったのであろう入り口にいた人はゆっくり、こちらに近づいてくる。

 

ゆらり。

 

「へぇぇ。なるほどね、キリト。姿が見えないと思ったら……女の子を誑かしてたのかな?」

 

黒髪の、ショートヘアの少女が。

 

ゆらり。

 

「いやいや、この状況から察するにぃ、私の親友が、キリトくんを手篭めにしようとしてたんでしょう……?」

 

栗色のロングの少女が。

 

ゆらり。

 

「「さぁ」」

 

ゆらり。

 

「「どう説明してくれるのかしら…………‼︎」」

 

 

その日、リンダースに男女の断末魔が響き渡ったことは言うまでもない。

 

 

 





少し駆け足になってしまった……‼︎
次回からは気をつけたいと思います。皆さんも、春休みだからと言って油断するとすぐ体調を崩してしまうのでお気をつけてください。

感想、評価、アドバイス等いただければ幸いです。
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