ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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オリ主よりおにーさんのがチートになりつつある今日この頃。



棚坂兄弟と攻略会議

「なぁ、本当に平気か?」

 

俺同様なんらかのクエストをこなした報酬らしいポンチョを着た兄が心配そうに問いかけてくる。

 

「大丈夫だよ、兄貴。ちょっと過保護すぎないかね?」

 

そんなことはない、と断じる兄。

そんなにヤバイ状況だったのか、と話しかけると兄はただ一言、「お前にはこれから4徹以上はさせない」とのこと。

 

いやまずその4徹させる前提がおかしいことに気がつかないのかね、兄よ。

 

今ここにはいないアルゴ曰く、危うく大変なことになるとこだったと。

アルゴはそれを思い出したのか、真っ赤な顔で悶えていた。

 

……俺は何をしたんだろう。詩乃というものがありながら。

 

そんな俺を置いてキリトが俺の過保護発言に追随するようにおちょくろうとするが……。

 

「どうした?」

 

「……いや、綺麗な声してるな、と思って」

 

キリトの問いに返事をし、どこかから聞こえてくるその歌に足を止め、耳をすませる俺。心なしか顔も綻ぶ。キリトが怪訝な顔をするが兄が耳を澄まし、納得したかのように言う。

 

「……ああ、誰かが歌ってるのかな?

お前の趣味、ギターだったしこのゲームでも音楽スキル取ったら良いんじゃないか?」

 

「ああ、良いかもなそれ」

 

キリトもそれに反応を示し、和気藹々とした空気となった。

そこに水を差す声が。

 

「……こんなデスゲームで、のんきな人」

 

「…………なぁ、時にキリト君や。この反応が雪ノ下並みに冷たいこの少女は誰だい?」

 

俺が顎でしゃくる先にはキリトが連れて来たフードを被った少女がいた。

 

「ああ、その人はアスナ。たまたま会ったんだけど、なかなか腕が立つから連れて来たんだ」

 

「……誘拐とは感心しないな、キリト」

 

「失礼な‼︎」

 

***

 

ここは迷宮区程近い谷間の街、《トールバーナ》だ。

そこで今回の第一層攻略会議が行われる。

巨大な風車等が立ち並ぶ、のどかなこの街に最初にプレイヤーが到達できたのはサービス開始から実に二週間が経った後だった。

到達したのはもちろん、俺、兄、キリトの3人組だったわけだが。

 

現時点での死亡者の総数は1300人にものぼっていた。

うちベータテスターは300人と多い。

 

ただ、兄からすればこれでも抑えられた方であり、あの恐慌状態からうまくクラインさんが話を広められたおかげでなんとか多くの自殺者やフィールドに出ようとしたバカを止めることができたそうだ。

残念ながら、多くのベータテスターは高をくくってフィールドに出た結果、死んだケースがかなり多かったそうだ。キリトもアニールブレードを取得しに行く際、コペルというプレイヤーの死を目の当たりにしたそうだ。

 

ちなみに兄によると、死者の合計は軽く2000人は出てもおかしくなかったとのこと。

 

……兄貴が有能すぎて笑うしかない。

 

俺と兄、そしてキリトとアスナはトールバーナに入ると軽く事務的に俺がアスナに伝えた。

 

「会議は町の中央広場、午後四時かららしいね、遅れないようにしよう」

 

「……わかった」

 

噴水広場につき、腰を下ろすと同時に後ろから話しかけられた。

 

「よぉ4人とモ」

 

突然背後から声をかけられ、俺とキリトとアスナは–––兄貴は驚くことにそれに気がついていた–––飛び上がった。

 

「あ、アルゴか……びっくりした」

 

「俺はアーちゃんと一緒にいる方が驚いたがナ」

 

「アーちゃん……」

 

俺がアスナを見ると、一歩下がり。

 

「呼ばないで」

 

と、言われた。泣くぞ、俺。

そんなことを思っていた、そこに。

 

「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めようか!」

 

その堂々たる喋りの主は青髪のイケメンの片手剣使いだった。彼は広場中央の噴水の淵に助走なしでひらりと飛び乗る。

 

イケメンが爽やかに言った。

 

「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺はディアベル!職業は、気持ち的にナイトやってまーす!」

 

噴水近くの一団がどっと湧き、野次を飛ばした。おそらくは彼の仲間だろうが、仲間ではなさそうな他の人も少し笑ったりしている。

 

「hmm……うまいな、あいつ」

 

「そうなのカ?」

 

「ああ、ああやって緊張をほぐすのはこういう大事な会議程効果的なもんだ。そこら辺よくわかってるな」

 

「へぇ、そうなのカ。……じゃ、俺っちはそろそろ行くゾ。攻略ガンバ」

 

手をひらひらさせながらアルゴは去って行った。

 

なるほど、兄貴も認めるほどか。ディアベルさんって呼ぶことにしよう。

 

俺はこっそり思ったのであった。

 

因みにディアベルさんがいい演説をしていい感じに盛り上げている時、キバオウとかいう名前のサボテンヘッドの人が余計な茶々を入れようとしたが、おそらく黒人の方?のエギルさんというプレイヤーによってあっさり論破されていた。

 

うん、ちゃんとその見るからに足りなさそうな頭で考えてから発言しようね、キバオウ君。

 

***

 

会議も佳境に入った頃、俺がふと挙手をした。

 

「あ、そうだ……。すみません、ディアベルさん。発言いいですか?」

 

ディアベルさんは少し驚いたようだったが発言を許してくれた。

 

「ありがとうございます。

俺の名前はタナトス。元ベータテスターっす」

 

何人かの視線が鋭くなった。やはり俺たちが尽くしても多少の警戒や苦手意識は取れないのだろう。

 

「私見なんですが、少し前に情報屋である鼠と話し合ってみて考えた事があります。

それは、全体的に、ベータテストと正式版とでは少々仕様に誤差が生じているという事っす。

そこから、ボスも最終的に使用する武器が変わる可能性があることをここに一応示唆しておきたいと思います」

 

俺の言葉にざわつくプレイヤーたち。まぁ、当然の反応だろう。

 

ここで落ち着いて話しすぎて「あいつは茅場のスパイだ!」とか変に誤解されてもあれなんだけどなぁ……いや、ありえないにしても一応キバオウみたいなやつもいる……よし。

 

「とりま……じゃない、とりあえず落ち着いてください。あくまで可能性の話です。例えばボスが持つ武器はHPが少なくなると曲刀タルワールに持ち替えますが、あの狂人茅場晶彦っす。

何かしら変わると考えるがベスト、というかゲームだったらベータテストから多少仕様が変わるのは当然でしょうね」

 

「だが、それは何かな?」

 

ディアベルさんが真剣な顔でこちらに問いかけてくる。そんな顔されてもなぁ。

それに対し、俺はいや知らんすけどとしか言えない。

 

「兄貴、何か可能性のあるものはない?」

 

兄に話を振ると一斉にプレイヤーたちはそちらに視線を送る。

ふむ、と一瞬考え込んでから兄は立ち上がり、前に来た。

 

「まずは自己紹介を。俺の名前はPoH。先ほどの会話の通り、タナトスの兄だ。

タナトス、お前後で敬語の復習しような、すごい下手くそ」

 

「ウィッス」

 

わざとか、と兄はジト目で俺を見たあと、話を続けた。

 

「さて、第一層ボス、Gill Fang The Cobalt Loadだが、弟の言った通り、変わる可能性はかなり高いだろう。

あくまでデスゲームではなく、普通のゲームとして捉えた場合、ベータテストと変わらないのは不自然。

デスゲームになった今でもおそらく、十中八九茅場はこの考えだろう。

考えうるのは曲刀スキルの派生として考えられている刀スキルなんだが……まぁ、それは後で鼠にまとめてもらってみんなに配ることとしよう。

取り敢えずは頭に隅っこに引っ掛けておくくらいでいいだろう。

取り敢えず、そこはleaderの指揮にかかってるってことでいいな。ディアベル、I expect you.」

 

「はは、あまりプレッシャーかけてくれるなよ?」

 

兄がニヤッと笑いながらディアベルさんの胸をとん、と叩く。それに笑って応じるディアベルさん。

 

ディアベルさんと兄のやりとりに見ているこちらにも思わず笑いが溢れる。

二人のカリスマ性には舌を巻くばかりだ。

 

ある程度の危機感はもたせつつ、緊張をほぐす。俺にはできない芸当だろうなぁ……。

 

と、昔クラスのまとめ役を買って出たらなぜか恐怖政治チックになってしまい担任に叱られたことを思い出しながら俺は思ったのであった。

 

***

 

「さて、会議も終わったし、お前ら、うちんとこ泊まるか?」

 

「お、いいネ」

 

「賛成」

 

「アーちゃんは?」

 

「呼ばないでって言ってるでしょ……どうしようかしら」

 

「……風呂あるぞ?」

 

「行くわ」

 

即答だった。そりゃもう食い気味に即答だった。

その反応に兄は若干目を見開く。

 

「なんで日本人はこんなに風呂が好きなんだ?タナトスいい、アスナといい」

 

兄の言葉に思わず目を向く俺を除いた一同。

 

「お、おにーさん日本人じゃなかったんですか?てっきりハーフかなんかかと」

 

「まぁ俺は養子で樹とは血の繋がりはないんだが、それは複雑な事情があると言うことで」

 

それを言うとあわてたキリトが取り繕おうとするが兄は笑って許す。

 

「さて、じゃあ帰りますかね」

 

「ええ」

 

「だな」

 

俺たちは拠点としている農家に帰るのだった。

 

拠点に帰った俺たち一行は、ある程度の確認作業を行った。

結果、アスナがパーティ戦闘において最も重要といっても過言ではない《スイッチ》と呼ばれる技術を知らなかったため泣く泣くキリトがフィールドで教えたり、アスナが風呂に入って年相応の可愛い姿が見れたりと、とても有意義な時間を過ごせた。

 

–––翌日。

 

第一層ボス攻略が開始された。

 

それは俺たちにとって、忘れられない一戦となったのは言うまでもないだろう。





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