ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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先週投稿できず申し訳ありません。中間テストで時間が取れませんでした。

アルゴの口調が難しくてややおかしな点があるかもしれません。



幕間 アルゴの1日

 

《ファミリー》は、現在アインクラッド攻略組の中で最強と目されるギルドである。

 

そのギルドを支える中核は、最大火力を誇るキリトでなく、必殺を誇るタナトスでなく、圧倒的カリスマを持つPoHでもない。

 

闇夜に浮かぶ黒い影。

手にはクローを、頭にはフードを、頬にはヒゲのペイントを。

 

影はある場所へメッセージを送る。

それはこの最前線、第75層の攻略データである。

 

影は主街区にまでたどり着くとそのフードを取り払い、顔を露わにする。

その顔は整っていて、夜の街の街灯に照らされ、美しさがさらに際立っていた。

 

情報屋にして《鼠》の通り名を持つアルゴ。

 

《ファミリー》が今まで中層を守ってこれた理由は彼女の情報網にある。

 

 

***

 

 

アルゴの朝は早い。

情報は鮮度が命だ。今こうしている間にもその情報の価値がなくなるかもしれないと言うのに、おちおち寝てもいられないのだ。

 

本来なら寝る間も惜しんで動きたいのだが、第1層でのタナトスのぶっ壊れ具合を見て徹夜をやめた。何回かは徹夜はするがそれも単発。連続で徹夜をすることはしない。

 

「ふぁ……」

 

強制起床アラームを停止して宿屋のベッドで伸びを一つする。

寝ぼけ眼で洗面所に向かい、顔を洗い、いつもの3本ヒゲのメーキャップを施す。

 

「今日もやるカ」

 

完全に覚醒した意識でつぶやく。

ストレージを操作し、携帯糧食をかじりながら宿屋に出る。

 

「アレ、おにーさんじゃないカ」

 

宿屋の前に立っていたのはアルゴの所属するギルド《ファミリー》のリーダー、PoHだった。

 

「Good morning.アルゴ、いつも感謝してるぞ」

 

差し出されたのは弁当だった。

 

「おお、おにーさん、ありがとナ。そっちもサっちゃんたちの面倒よろしくナ」

 

「……………そだね」

 

どこかやつれて見えるその姿にアルゴは涙を禁じ得ない。

 

キリト結婚の知らせを聞いて、サチとシリカがリズを巻き込んで部屋に立てこもった件の収集を彼はやっているのだ。

 

仄暗い水底を思わせるような雰囲気を醸し出すサチ。

ジュースでやけ酒して泣き上戸のシリカ。

それに巻き込まれた(アスナとサチのせいで)恋心を抱いていないリズ。

 

それらが混じり合わさってカオスに見える。

正直辛いと言うのがPoHの弁だ。

 

「バカを載せるのなら得意なんだが、ああ言うのを立ち直らせるのには慣れてないんだよ……ああいうのはタナトスの手合いだろう」

 

「へぇ、意外だナ」

 

「そうでもないな。俺だってあいつの家に行かなければレッドプレイヤーになっていたかもしれないほどだ」

 

「おにーさんがレッドって、想像したくないな……」

 

ザザやジョニー・ブラック達だけでも50人を超える犠牲者を出した笑う棺桶(ラフィン・コフィン)。それに攻略組のブレインが加わるなど、とんでもない犠牲者が出かねない。

 

「俺はあいつに救われたからこんなに丸くなってる。貧民街にいた(あの)ままだったら、本当にどうなってたかわからない」

 

もしかしたらクレイジーサイコホモにでもなってるかもな、などと冗談めかしていうPoHに、アルゴはタナトスの評価を上方修正した。

 

 

***

 

 

「おわわッ」

 

慌てて頭を下げるアルゴの真上を剣が一閃した。

ここは最前線、第75層迷宮区。

アルゴは何体かのモンスターを1人で相手取って戦っている。

普段なら絶対逃げに徹するが、今回はレベリングとモンスターの行動を見極め、情報にすることを目的にしているから戦っている。

 

アルゴのレベルは83と攻略組でも高い。タナトスと同じようなAGI極振りである。

彼と違うのはDEXではなくSTRに振っていることだが。

 

レベルの比較対象を出すならば74層攻略時点のアスナのレベルが87である。

ちなみにキリトは90、タナトスは89、PoHは85である。

しかしそれにしても、攻略からしばらく離れていたというのに85のおにーさんは相変わらずとんでもないチートだ。

 

「シッ!」

 

クローを繰り出してモンスターを倒す。

だいぶ戦闘アルゴリズムは読めてきた。キリト達は複雑性が増したと言っていたが彼女からすればまだ読み切れる。

 

何度か切り結び、だいたい敵の強さは把握できたのでそこから離脱する。

 

「ふゥ……」

 

ストレージから水筒を取り出して一口飲む。

そこでPoHから貰った弁当の存在を思い出し、取り出して開けてみる。

 

「……本当にスキがないナ」

 

この世界において健康に気をつける必要性はない。だからキリトは肉ばかり食べてるし、タナトスは甘いものばかり食べている。

 

しかしこの弁当は素人目にも健康に気をつかったメニューだし、そして美味い。

 

ほのぼのしながら弁当を食べているとボス部屋の方から人が来た。

 

「アルゴか」

 

「……タナ坊、クウォーターポイントでソロなんだから気をつけて行動してくれヨ」

 

「わーってるよ」

 

怠そうにそう言ったのは猫耳フードを被った少年、タナトスである。

かつて頬につけていたθのペイントは塾の子供にダサいと言われたために数日間部屋に閉じこもったのち、とってある。

 

「アルゴ、それ誰に作って貰ったん?」

 

「おにーさんがくれたんだ。本当に美味しいぞ?」

 

「ほへー」

 

そして遠くから足音が聞こえて来た。

 

「……?」

 

「アルゴ、すまん」

 

聞き返す間も無く、姿を現したのは、ノーチラスとユナ。

 

「おいタナトス、今度こそ捕まえたぞぉ……!」

 

ゆらり、と怒りのオーラを漂わせるノーチラス。ユナも珍しく青筋を浮かべている。

 

「なにやったんダ」

 

「ユナとノーチラスが確率1%くらいの素材集めて依頼してたアシュレイの特注品ぶっ壊しちゃって」

 

「それはお前が悪イ」

 

麻痺毒を塗ったピックをタナトスにさっくり刺す。

タナトスは地面に倒れた。

 

「ちょまままちょままて⁉︎アルゴさん⁉︎助けてぇえええええええ」

 

ドップラー効果とともに、タナトスは消えていった。

 

合掌。

 

 

***

 

 

今度はオレンジプレイヤー目撃の噂を聞きつけて48層に訪れたアルゴ。

 

「なんだかタナ坊のせいで疲れたゾ……」

 

クローのメンテナンスをついでにお願いしようと思ったのだが、今のリズの状況を思い出して主街区から出る。

 

「まさかこの層に残ってるとはナァ……」

 

流石に噂だけでは彼らの素性を暴くのは大変だ。

よって、数多くいるアルゴのオレンジプレイヤーの見た目の情網をもとに、情報提供者を頼っていたのだが、そこで十数分前に西の外れの洞窟にそれらしきものが入っていったという情報が入ったのだ。

 

遠目に見かけただけなのでカーソルまでは確認しなかったらしいが、その情報はでかかった。

 

情報によるとオレンジプレイヤーのレベルは60。フルフェイスの鎧に包まれた男らしい。

 

隠密行動を心がけながら、洞窟の奥へ向かう。

 

すると奥に空洞があった。

 

少し首をのぞかせて中を見ると、4、5人ほどの男達が武器のメンテナンスをしていた。

カーソルは、オレンジ。

 

情報提供者に報酬の追加をメールで送り、アルゴは単身、オレンジ狩りに出た。

 

 

***

 

 

あっさりオレンジ狩りも終えたころ。

すっかり夜も更けて、アルゴは22層のホームへ帰って来ていた。

するとタナトスとPoHがアルゴを出迎える。

 

「タナ坊、生きてたのカ。……おにーさん、弁当ありがとウ。美味しかったゾ」

 

「うるせえよ」「ありがとう」

 

対照的な反応を見せる兄弟に吹き出しながらホームに入る。

 

「サッちゃん、シリカ。立ち直ったのカ」

 

「あはは、まだ少し辛いですけどね」

 

「でもまだ完全に潰えたわけじゃないので、頑張ります!」

 

略奪愛ぃ……と戦慄する《ファミリー》三巨頭を放って料理を作り始める2人。

するとリズがこちらに近づいて来た。

 

何か言いたげのリズに3人は優しい笑みを浮かべると、それぞれ無言で色々渡していった。

 

タナトスはレアインゴットを。

PoHはA級食材を。

アルゴは穴場スポットの宿屋の情報を。

 

リズは静かに泣いた。

 

やっと、解放されたのだと。

 

 

***

 

 

翌日、《ファミリー》に悪夢が舞い降りた。

 

「パパ、ママ。この人誰?」

 

長い髪を揺らし、キリトとアスナに問いかける少女いや、幼女。

サチからハイライトが消えた。

 

そしてリズは再び、地獄へ舞い戻る。

 

 





リズが苦労人すぎて泣ける。

感想、評価等いただければ幸いです。
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