ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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今回から朝露の少女編です。
アニメや原作でもこの回は好きなので頑張れたらな、と思っています。
バンドリ、六兆年と一夜物語実装で親指勢の自分が絶望に満ちています。29辛い。



朝露の少女編
キリトとアスナと謎の少女


 

俺とアスナがファミリーに到着すると空気が凍った。

俺たちが連れてきた少女の一言によって。

 

「パパ、ママ、この人たち誰?」

 

「キリト!アスナ!集合!アルゴと樹はその子あやしててくれ!」

 

思わずタナトスを本名で呼ぶほどに明らかに動揺した様子のおにーさんは俺とアスナを連れてホームの奥へ引きずっていった。

 

ドアが閉まる直前、虚ろな目をしたサチがリズの肩に手をかけていたが何をするのだろうか?

 

「おい、どういうことだ?このゲームでヤると子供が8歳くらいで生まれる仕様なのか?」

 

「ち、違う!あの子は森に倒れてたのを保護しただけなんだよ!」

 

俺は慌てて弁解したが今度は疑惑の目を向けられた。

 

「保護した小さな子供をパパママ呼びさせてんのも問題だが……」

 

「まず話を聞いてくれ!」

 

そして俺はこうなった顛末を話すことにした。

 

 

***

 

 

アスナと暮らし始めてまだ六日。ここまで毎日が充実していると実感したのはおそらく人生初めてだろう。

 

目玉焼きと黒パン、サラダにコーヒーの朝食を終え、2秒でテーブルを片付けるとアスナが両手を打ち合わせた。

 

「さて、今日はどこに遊びに行こっか」

 

「身もふたもない言い方するなよ」

 

「だって、毎日が楽しいんだもん」

 

苦笑する俺にアスナは笑顔で返してくる。

 

それには同意する。俺はいつも寝る間を惜しんでスキル・レベルを鍛え上げ、貪欲に強さを求め続けた。

アスナを好きだと自覚したのはつい先日であったが、それに気づいてからは世界が色彩と驚きにあふれたものに変わった。

 

もちろん、タナトスやアルゴの冷やかしはあれど、あの2人は今も寝る間を惜しんで俺たちの時間を作るために最前線で戦ってくれている。

 

いつ終わるかわからないこの時間だが、俺にとってこの時間は1秒1秒がどんなレアドロップのアイテムや名剣よりも大切で、大事にしたいのだ。

 

「じゃあキリトくんはどこか行きたいところある?」

 

アスナの言葉に俺はニヤリと笑った。

 

俺が提示したのは2人の家から2キロメートルほど離れた森の中だった。

 

「昨日、村で聞いたんだけど……ここら辺、出るんだってさ」

 

「え?」

 

アスナはキョトンとしているが、その顔もすぐに崩れるだろう。

 

「幽霊だよ、幽霊」

 

アスナはしばし絶句してから、アストラル系モンスターかと聞いてくる。

 

当然、違う。

 

アスナは幽霊が苦手で、かつて行われたキャンペーンクエストで初めてそれが露見し、ホラー系フロアである65、66層の攻略には参加できなかったほどだ。

 

が、この話によると本物の少女の幽霊が出る、という話だ。

 

アスナはなんとか持ち直すとつんと顎をそらせながら言った。

 

「いいわよ、行きましょう。幽霊なんていないって証明しに」

 

「よし決まった」

 

手早くアスナがフィッシュバーガーの弁当をランチボックスに詰めると外に出る。

家の庭に出ると同時にアスナがこちらに向かって振り向く。

 

「ねね、キリトくん。肩車して」

 

「か、かたぐるまぁ⁉︎」

 

思わず素っ頓狂な声をあげる。

彼女曰く、いつも同じ高さから見てたらつまらないとのこと。

いい歳こいて何を、とも思うが断る理由もないからぶつくさ言いながらもしゃがみ、アスナを肩車する。

 

「さ、出発進行!進路北北東!」

 

STR値的には一切問題ないがこうやって太ももが近いとドギマギするものがある。

なんとかそれを意識の外に追いやってからアスナの号令と共に俺はてくてく歩き出した。

 

十数分ほど小道を歩いていると湖に差し掛かった。

今日は一段と穏やかな陽気のためか、朝から数人の釣り師プレイヤーが糸を垂らしていた。

 

アスナと結婚する前にはよくタナトスとノーチラスと共に釣りをしたものだが、最近では全くしていない。

いつかリアルでもしたいものだ、と思いを馳せていると何人かのプレイヤーが俺たちに気づいて手を振ってきた。

 

みんな顔見知りだからか、笑顔だ。

 

「おーい!」

 

満面の笑みで手を振るアスナにほっこりしているとやがて道は丘を右に下り深い森に入る。

大きな木を見つけ、アスナが登れるか聞いてきた。

 

「たまにレッドを追いかける時とかに使うよ。木の葉隠れの忍者になった気分になる」

 

「木の葉隠れ?」

 

……流石にNARUTOのことは知らないか。まぁ俺たちがまだ小さい頃に完結した漫画だし、仕方ないとは思うが。

 

「基本的にはなんでも登れるぞ。外周にあるアインクラッドの支柱的なやつも登ろうと思えばできる。というか、タナトスたちとやって見たらできた」

 

「ええ⁉︎なんで誘ってくれなかったのよ」

 

体を傾けて俺の顔を覗き込んでくるアスナに俺はしれっと返す。

 

「どこかの誰かが攻略の鬼とか呼ばれてたからねぇ……話しかけづらいのなんの」

 

「うっ」

 

アスナは攻略の鬼時代のことは黒歴史らしい。

 

「それで?どうだったの?」

 

「うん。タナトスたちとどこまで登れるか競争したんだけどさ、80メートルくらい登ったところでシステムのエラーメッセージが急に出て怒られた」

 

アスナはそれを聞いて吹き出した。

 

「笑い事じゃないぞ。それにびっくりして手を滑らせて見事に落っこちてな……あと3秒転移が遅かったら死んでた。あとついでに1人だけ落ちてなかったタナトスに後で散々煽られた」

 

「もう、危ないなぁ。二度としないでよね」

 

「肝に銘じとくよ」

 

そんな話をしているうちに目的地近くに着いた。

アスナを下ろすと辺りをキョロキョロ見回す。

 

と、そこでアスナが俺の服の裾を握った。

 

「き……キリト君、あそこ」

 

するとそこには白いワンピースをまとった幼い少女の姿が。

 

「嘘だろおい」

 

少女はしばらくこちらを見ていたが突然、糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

どさり、という音もかすかだったが聞き取れた。

 

「あれは、幽霊なんかじゃないぞ‼︎」

 

「キリト君⁉︎」

 

俺は叫ぶと走り出す。後ろではまだ幽霊だと思っていた時のショックが抜け切れていないアスナがいたが、すぐに立ち上がり、後を追ってきた。

 

駆け寄ってその少女の様子を見る。

 

長い睫毛に縁取られた瞼は閉じられ、両腕はだらんと垂れているが、少なくとも幽霊のように透けているという事態ではない。

しかし何かのバグか、カーソルを合わせても必ず出るはずのカラーカーソルが出てこないし、何と言っても幼すぎる。

 

まだ10歳にもなってない幼い少女だ。一応このゲームは13歳以下の子供の使用は禁止されているはずなのだが。

 

「アスナ。とりあえず目を覚ませば何かわかると思う。うちに連れて帰ろう」

 

「うん」

 

その後、家まで運べたことからNPCではないと断定し、消えていないということはナーヴギアとの間に信号のやりとりがあるためにそのうち目を覚ますと少し願望混じりであるものの、断定した。

 

自宅に入るとまず新聞の確認をしてこの少女を探しているプレイヤーがいないか探したものの、見つからなかった。

 

ノーチラスたちを頼ろうにももうだいぶ日も暮れているし、こういう時に頼りになるアルゴには今頼れず、おにーさんに相談するにも今日は塾で教鞭をとる日であったはずだし、少しアルゴに会いに行ってくると言っていた。

少なくとも少女が目を覚まし、落ち着いてからにしようと意見が一致し、俺たちはベッドに横になった。

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい、キリト君」

 

とりあえず、明日少女が目を覚ますことを願いつつ、俺は眠りについた。

 

 




前半の惚気部分も懇切丁寧にPoH(非リア)に話してると思うと笑えてきますね。

感想、評価等頂ければ幸いです。
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