もう攻略組《ファミリー》だけでいいんじゃないかな。って自分で書いててなりました。
「……っ、はぁ、はぁ……」
「shit!……化けもんが……スイッチ!」
おにーさんがパリィしたことにより俺とおにーさんが後退する。
即座に結晶を使用し、レッドゾーンにまで到達していた体力を全回復させる。
正直舐めていた。
この現在戦っているパーティの平均レベルは80以上。俺は90、おにーさんもそれに近い。にも関わらず全力で苦戦する。
おそらくはこのモンスターは90層クラス。明らかに俺たちと釣り合っていないそれに苦戦していた。
二刀流を最初から全力で飛ばしていたが正直なところ厳しい。ノーチラスとサチ、アスナの3人の支援あってなんとか削れているような状態だ。
戦い始めてすでに30分が経過しているのにも関わらず、敵のHPはまだ半分は残っている。このままではジリ貧だ。そう思った時、救援が現れた。
突如空間に穴があき、そこから出て来たのは……。
「ヨ。元気してたカ?」
「キリトさん!みなさん!助けに来ました!」
「悪い、遅れた!」
アインクラッド最強の情報屋、ビーストテイマー、バーサーカーが現れた。
「アサシンなんだよなぁ」
サクッと人の心を読んだタナトスは3本の投げナイフを投擲する。
ボスの鎌によって弾かれたものの、ヘイトを向けることに成功したタナトスは片手剣を抜く。
「シッ!」
ボスモンスターの鎌の攻撃を片手剣を両手で持って弾くと懐に潜り込み、体術スキルを命中させる。
微々たるものではあるが確かなダメージを重ねるタナトス。
「みなさん!回復結晶です!」
シリカが個人ポーチから大量の結晶をギルド共有ボックスに入れる。
次にピナに命じてヒールブレスを体力の危ない連中にかけていく。
「アルゴ!どうやってここへ?あと何か情報は?」
「軍からここの回廊結晶を押収したんダ。あと情報はなんもなイ!」
アルゴからもたらされた情報がさらに絶望へ叩き込む。
「んなの関係ねえっ!どーせ頭おかしい強さってわかってりゃいいだろーっ、がっ⁉︎」
戦いながら叫んでいたおにーさんが金属が破壊される音とともに吹き飛ばされる。
見ると今までおにーさんが使っていた片手剣が見るも無残な姿に破壊され、ポリゴンへと還っていっていた。
「うそだろ」
ノーチラスが驚きに硬直する。
おにーさんの使っていた剣は決して安物では無い。リズが作った最高傑作の一つが、新品近い耐久値をこの戦いのみで削りきられたのだ。
「っ、兄貴ィ‼︎」
タナトスが叫ぶ。
「アルゴ、指揮!」
俺の言葉に我を取り戻したアルゴはその情報屋として磨かれたその観察眼を使って効果的な指示を出していく。
おにーさんほど的確なものではないがこの場では最も最善を尽くせているだろう。
「だが……」
最善では足りない。
現在何かの策を講じているのだろう。策はおにーさんに、俺は今やれる最善を、最高をやるしかないのだ。
「タナトス、頼めるか」
そして時間稼ぎは俺の得意とするところではない。
「よゆー」
アインクラッド最多の手数と最速を誇る男に全てが委ねられた。
タナトスは、大量の投げナイフを装備してボスの前へと飛び出した。
Thanatos Lv.100。
***
PoHは吹き飛ばされた際、安全エリアに転がり込んだ。その際にユイを弾き飛ばしてしまったが謝る余裕すらない。
即座に回復結晶を使用、HPを回復する。
「回復ガン積み耐久パってとこか」
「?今の状況ですか?」
ユイに目で謝罪してユリエールが慌ててユイに駆け寄る中。
自らの弟が時間を稼いでくれることを祈りつつ、現状を振り返ったその一言にシンカーが反応する。
「そう。決め手に圧倒的なまでに欠ける。何せ最大火力のキリトのレベルが90と心許ない。──90レベが心許ないとかどんな悩みだよクソ──まぁそのせいでいくら俺とタナトスが隙を作ってもキリト最高のスキル、《ジ・イクリプス》でも倒しきれないだろう」
「確かに残りHPは30%近いがそこから強化の可能性は高すぎる。故に一気に倒し切りたい。見ろ、タナトスも理解しているからそこまで強くないNPCの店で買える程度のナイフを大量に使っている。効き過ぎず、ってとこだ」
天井、床、壁を跳ね回るタナトスはヘイトを集めつつ上手く時間を稼ぎ、攻撃はアルゴの指示とキリトとノーチラスとアスナのフォローにより当たっていない。
「決め手が欲しい………………おい、変なこと考えるんじゃないぞ」
「…………‼︎」
「やはりか。君、プレイヤーではないんだろう?
黒髪の少女は、首肯した。
「カーディナル……話に聞いたことはあったがマジとはねぇ。AIには見えんよ」
「どうしてそれを……」
「俺のリアルネームは棚坂だからな」
それだけいえば十分だろ、そう言い残してPoHは戦場へ自らの案を伝えるべく、飛び出していった。
***
タナトスの動きは人を大きく超えていた。
タナトスの黒猫パーカー、その黒い筋しかもはや見えない。
そして彼は恐ろしいことに投擲スキルと体術スキルによるナイフ投擲スキルコネクトをこの頭おかしいスピードで移動しながら行なっているのだ。
「頭おかしい」
「キィリィトォォオ、聞こえてんぞォオオオオ」
怖いんだが。
「キリト、唐突だが
おにーさんが帰ってくると同時に俺に問いかけてきた。
「え?……いや、無理だ。初動のモーションが違いすぎる。二刀流のモーションは特殊すぎる。エンドリボルバーからダブルサーキュラーくらいならいけるかもしれない」
正直考えたくもない。片手剣だけでも脳が震えるのにいよいよ頭が爆発する。
「わかった。アルゴ、ノーチラス!ヘイト任せた!タナトス、こっち来い!ユナ!歌を俊敏アップから対象をキリトとアスナ限定の攻撃爆上昇に!黒猫団はデバフ効果のある攻撃を続け、防御を下げろ!」
アスナが駆け寄ってくる。疲れが滲んでいるがその目は戦意に満ちている。
「おにーさん!案は⁉︎」
「んなもんねぇよ。
もはや作戦ともいえないそれだが泥臭く、無理やり押し込むのもまた一興だ。
それに、無理やりならば俺にもやり方はある。
「……。よし、樹。行くぞ!」
「タナトスだボケ!」
ナイフを全て消し、モンスタードロップの魔剣クラスのロングソードを携えたタナトスと同じく魔剣クラスの大斧を構えた2人が突っ込んだ。
「新鮮ね」
思わずアスナが次に決めるということすら忘れるほど意外な光景ではある。というかあの2人があんなでっかい得物を使えることに驚きなのだろう。
「タナトスはともかくおにーさんは全部の武器熟練度800超えてるからな」
「えぇ⁉︎」
「あとで話す。構えろアスナ」
「……もー、なんでこんな時にそんな気になる情報残すかなぁ……?」
「「「「スイッチ!」」」」
***
結果から言おう。
スイッチで仰け反ったボスはアスナの刺突スキルで完全に体勢を崩した。
そして俺がやったことは、自分でももう二度とやれることはないだろう。
「もうむり……おれしぬ……」
言語能力が死んでいる。
目も死んでる。
頭がいたい気がする。VRなのでわからないが。
「キリト……お前これリアルの方に影響出てるぞまじで」
「じかくしてるぅ…………」
そもそもスキルコネクトはタナトスあたりがバーゲンセールのごとく使っているがあれは何も考えなくても初動のポーズさえ覚えておけばあとはどんな体制でも無理やり持っていけるという生来の猫ばりの柔軟性あってのものだ。
本来は計算に次ぐ計算で右脳と左脳を別々の挙動をさせるくらいのことをやっているようなものだ。
それで俺は二刀流で片手直剣スキル3回から無理やりSBSにつなげたのだ。
正直もう戦いたくないレベルで疲弊していた。
「だがな、こっからが本題だキリト。起きろ」
死体蹴りを真顔でしてくるおにーさん。殺したい。
むくりと起き上がるとそこにはやれやれと言わんばかりのおにーさんと、大きな漆黒の瞳にいっぱいの涙をためたユイがいた。
「ユイ……?」
「ユイちゃん……?」
「パパ、ママ。全部……思い出したよ……」
「ま、説明してやれカーディナル。お前はどうやら“人間”らしい」
おにーさんの言葉に、今度こそ完全に思考が停止した。
というわけでむりだと思われてたあの死神を倒した《ファミリー》。
理由は化け物がいたからのほかにもピナのヒールブレスや金に物を言わせた大量の回復結晶あってのものです。
ちなみに目立たないけどサチは神聖剣なしの場合のヒースクリフ並かそれ以上の強さだしノーチラスはユニークスキルなしの剣士だと最強です。
PoHはバーサークルーラー、タナトスはバーサークアサシンですから純粋な剣技のみだとやや劣ります。