ソードアート・オンライン〜戦闘狂兄弟が行く〜   作:赤茶犬

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今回久しぶりにオリ主ベータテスタータグが生かせます。
今回のコミケに行ってきました。初めてだったんですけど、尋常じゃないレベルで人がいて大変でした。なんだか歴代でも3日目はトップレベルの混雑だったとか。アクエリアス4本空けました。



キリトとPoHとこんちきしょう

 

──初めて彼らと会ったのは、βテストが始まってすぐの頃だった。

 

効率の良いレベリングをするために迷宮区でモンスターを狩っている最中、何処からか悲鳴が聞こえた。

 

学生で時間の余裕のない俺に正直構っている暇はなかったのだが、なんだが真に迫るというか、ガチなトーンの悲鳴だったので思わずそちらに足を向けた。

 

 

そこで目にしたのは。

 

 

「ふははははははははは‼︎」

 

「あははははははははは‼︎」

 

某金ピカを彷彿とさせるような高笑いをあげながら喧嘩をする2人のプレイヤーだった。

2人とも当時はまだ体術スキルがないのにもかかわらず周りのモンスターやプレイヤー達に甚大な被害を与えながらじわじわとこちら側にやって来ていた。

 

その顔はもはや人がやって良いものではなく、鬼のような喧嘩をすることが楽しくて仕方ないような狂気に片足突っ込んだもので。

 

殴られ、宙に浮かぶ。

しかし直前にジャンプすることでそれを利用してわざと吹き飛ばされそのまま跳ね返り頭からタックルしに行き。

 

繰り出されたストレートを避け、その腕を掴んで投げられる。

しかし今度は受け身を取るのではなく足から着地して逆に投げ飛ばす。

 

喧嘩漫画というか少年誌のバトル漫画をリアルで見せながら、タックルに使った足場がプレイヤーの顔面だったり投げ飛ばしてモンスターに叩きつけたりとやりたい放題の不良たちに俺は本能でやばいと判断し、踵を返そうとした時、

 

「オマエ、ツヨソウダナ」

 

絵本のタイトルかよ、というツッコミもままならないまま俺は2人の喧嘩に強制参加させられた。

 

 

当時は──無論今もだが──やばい奴に絡まれたと思ったものだ。

それでもあの2人とアルゴに協力してもらい、俺はベータテスターの中で最も攻略を進めたプレイヤーの1人となった。

 

あの頃は本当に楽しかった。

見知らぬ初見殺しのボス相手に殺されて憤慨しながらも笑いが止まらなくて。

リアルのことはマナー違反とは言えど、少しだけ妹のことについて相談に乗ってもらったりして。

いじり、いじられみんなでワイワイやっていたあの日々はこの今まで生きて来た中で間違いなく最高の時間のひとつだった。

 

 

──なのに。

 

 

そんな時間を送らせてくれた恩人が、今、どうして吹き飛ばされている?

 

どうして、友人に向かってヒースクリフが剣を振り抜いている?

 

 

どうして、あのこんちきしょうのHPがゼロになりかけている?

 

 

「ヒィィィス、クリフゥウウウウウウ‼︎」

 

俺は背中の2本の剣を抜刀し、ヒースクリフに突貫する。

 

「キー坊⁉︎」

 

目の前が真っ赤に染まったかのようだ。

アルゴを巻き込まないように後ろに投げ飛ばしたのち、攻撃に入る。

 

コロス。

 

コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス‼︎

 

親友を殺した相手に思考が簡略化されていく。

ソードスキルは使わず、左右の剣を己の殺戮衝動に任せるままに振り続ける。

 

目的は、ただ、殺す。

 

フローチャートに書かれた作業はたった一つになった。

それに応えるかのように動きはどんどん精密に、緻密に相手を殺す動きに変わっていく。

 

目の前にいる男は大量の犠牲者を出しても何も思わぬサイコパスだ。殺したところでなんの不利益も生むまい。

 

相手の動きを読み解き(アルゴのように)相手の動きを制限し(タナトスのように)相手の動きの初動を潰し(PoHのように)封殺する。

 

限界を超えた速さで(アスナのように)穴のない攻めを繰り出し(ノーチラスのように)追い詰める。

 

誰の声も聞こえない。

 

誰からの制止も振り切る。

 

だからここで、

 

 

 

殺し尽くしてやる……‼︎

 

 

 

そしてヒースクリフが体勢を崩したように見せた瞬間、剣が淡い光を放ち、自分の体がオートで動き出す。

 

《二刀流》最上位スキル、27連撃《ジ・イクリプス》。

 

ヒースクリフの口元が歪む。

 

それは、己の運命が敗北に向かったことによるものでなく。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

──失敗した。

 

俺の冷静な部分が判断を下す。

 

それは大悪手だ。

一発ゲームオーバー、バッドエンド行き特急列車に駆け込み乗車してしまった。

 

ヒースクリフ、いや、茅場晶彦という男はこのゲームの開発者だ。

当然ながら、ソードスキルのことも熟知している。

 

本能に任せすぎた。

いつもの俺ならヒースクリフの行動が()()()だなんて、1コマも要らずに気づけただろうに。

 

しかしそれは後の祭り。俺の攻撃は全てその十字盾に防がれていく。

 

 

「っ、クソがああああああああああ‼︎」

 

 

27撃目。左突き攻撃が十字盾の中心に命中し、火花を散らす。

 

そして直後、硬質な金属の悲鳴とともにリズが俺のために作ってくれた最高傑作、ダークリパルサーは無残に砕け散った。

 

「──ふん」

 

わずか10秒にも満たない攻防の末、俺に無感情なヒースクリフの剣が降り注いだ。

 

 

***

 

 

初めて会った時、弟は本当に不思議な奴だった。

普通スラム出身の薄汚いガキなんて、今まで不自由に過ごすことがないボンボンにとって下も下。みじんこのような存在だと思っていたのに。

 

あいつは朗らかな笑みを浮かべて、

 

『よろしく、兄さん』

 

だなんて言った。

 

俺のことを瞬時に見抜き、その上で真正面から接するつもりなのだ、俺は深層心理でそのことを理解していた。

 

しかしその考えが表層に出てくることはなく、初めは触るな、オマエのようなのは家族でもなんでもないなんて心ないことを言って、あいつを傷つけたものだ。

 

でもあいつは俺を守ってくれた。

 

日本語に不慣れな俺につきっきりで俺の日本語よりもはるかに拙い英語で通訳を買って出てくれたり、何処からかスラム生まれがバレていじめられそうになった時、一緒に相手をぶちのめすことに協力してくれたりして。

 

──まぁ、そのおかげでいわゆるお坊ちゃん校から転校する羽目になったんだが。

 

転校してからも俺が周りを引っ張っていけるようにさりげないフォローをしてくれて。

あいつは自分は主人公になんてなれないなんて卑屈に思っているらしいが、

 

あいつは俺にとってのヒーローだった。

 

兄としての自分を慕ってくれる弟に、素直に憧れ、尊敬していた。

 

お互い高校、大学に進学してそれで詩乃に会って、あいつは毎日が幸せそうだった。

 

誰よりも友人を大切にして、いじりはするけど本気で悲しませ、怒らせるようなことはしない、そんな男があいつだ。

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

 

 

まさか、()()()()()()()()()がこんなことを思いつくなんて、正直想像もしていなかった。

 

 

***

 

 

『俺が考えるに、おそらくヒースクリフは茅場晶彦だ』

 

『うへぇ、最強プレイヤーが最凶ボスに早変わりかよ』

 

『それデ?どうするつもりダ、オレっちたちが引導を渡すのカ?正直、キー坊とかにも頼んだ方がいいだロ?』

 

『いんや、あいつは嘘と演技がクソだから無理だ。アスナもそうだし、ノーチラスはいけるけどユナに隠し事できると思わないしユナの口の軽さは水素並みだ』

 

『いいから作戦を教えろよ。兄貴、ここで終わらせるんだろ?おそらくは結局キーマンはユニークスキル持ちのキリトになるだろうけど』

 

『まぁそうなるだろうな。おそらく茅場のことだ、あいつの人となりは開発室でなんとなく理解してる。どうせあの場でキリトあたりがあいつの正体暴けば報酬として目の前でデュエルして買ったらゲームクリアだくらい言う』

 

『意外とお茶目だナ、茅場』

 

『そうだなお茶目だ(イかれてる)

 

『で、そこで奴が俺たちにやるのはおそらく麻痺のようなもので動きを封じた上で見物させる気だと思う。魔王対勇者を見守る一般市民的な構図で』

 

『把握した。耐毒ポーション飲んどけって話だろ?』

 

『さすが我が愚弟』

 

『お褒めに預かり恐悦至極だね非リアニキ』

 

『あ?』

 

『お?』

 

『話を脱線させないでくレ……』

 

『ただ、回復結晶も使えるからそれでも構わないぞ』

 

『エ?でも、結晶禁止区域じゃないのカ?』

 

『お前が知らないとか珍しいなアルゴ。あれ、そこにいるモンスター全滅させると自動消滅するんだと。今まで誰も試してなかったらしいけど』

 

『That's right』

 

『あ、そだ兄貴。俺今の話聞いて俺がうまく止めさすいい方法思いついたかも知んない。これなら誰も死ぬことないわ』

 

 

 

『ちょっくら俺が死ぬ』

 

 

 

***

 

 

ザンっ!

 

斬撃音が聞こえた。

 

俺の体が、ヒースクリフに断たれたのだ。

 

ああ、すまないタナトス……。

 

不思議と痛みは感じない……?

 

あれ、なんで……繋がって……?

 

そして俺は、ヒースクリフの腕を斬り落とした、一匹の猫の姿を見た。

 

 

「やっぴーキー坊!お嫁さん残して死ぬとかユイちゃん悲しむぜ‼︎」

 

その笑みは、βテストから変わりなく。

 

 

「──はは、なんだよ、生きてんじゃねぇかよ……‼︎」

 

 

「 It's show time!!」

 

相も変わらずイかれてて。

 

 

そしてそのナイフは、ヒースクリフの胸を貫いた──。

 

 

 

 




さっくりキリトもチートの領域に踏み入りましたね。
なぜタナトスが生きているかは次回で。

結晶禁止エリア関係の話、これ原作じゃなかったと思うんですけど独自設定のタグ追加必要ですかね……?
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