ホーストを打ち倒しためぐみんは魔力切れとなり、その場に倒れこんだ。
俺はめぐみんをおんぶして美遊と一緒にゆんゆん達のところへと向かった。
「ゆんゆん無事か?それにしてもなんでこんなことを、あとキョウヤ、テメェは一発殴らせろ。」
「待ってくださいカズマさん。キョウヤさんは悪くありません。私が頼んだんです。殴るなら私を。」
「ごめんなさい。やっぱいいです。」
仲間を、しかも女の子を殴るというの人としてどうかと思う。
ゆんゆん達はまだ痺れて動けないらしい。それにキョウヤはほぼ瀕死状態に近いのになぜあんな状態で戦えたのかは不思議である。俺との戦いの時は手加減されたか?いやそんな訳もない。本当に何があったのか聞きたい。
美遊がキョウヤを手当てしているとこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。
「まさかホーストがやられるとはね。びっくりしたわ。」
「嘘でしょ!なんでこんな時に。」
「タイミングが悪すぎますよ。」
その声の主は豊満な胸に男性を誘惑するかのような肌を露出した服装をしていた。
しかし人間にはないはずの角とホーストの羽根を縮小した様な羽根が付いていた。
間違いない、悪魔だ。
二人の驚きようからしてホーストより前に二人を襲った悪魔アーネスだろう。
「それにしても魔法を使えないと思っていたガキがまさか爆裂魔法を使えるとは驚いたね。でもまあもう使えないだろ?それにもう一人の方は自滅、さらに魔剣の勇者のおまけ付きとまで来たもんだ。私は実についてるね。」
最悪だ。最悪過ぎる。
「さあ死にたくなかったらウォルバク様を渡しな。」
もういっそこいつにあの猫渡した方がいいのではないか。
「させる訳ないでしょ!」
「そうです。それにこの猫はちょむすけです。先生やちゃってください!」
ですよね。知ってた、知ってたとも。でもたかが猫ごときのためにここまでやってたのかと考えるとなんとも馬鹿馬鹿しく思えてくる。
だがその猫の為にホーストすらも倒してもうここまで来てしまったのだ。やるしかないだろう。
現状ゆんゆん、めぐみん、キョウヤ、その取り巻きは戦闘不能。美遊は瀕死のキョウヤを治癒しなくてはならない。つまり戦えるのは俺だけ。まじ帰りたい、美遊を連れて。
弓矢はあっても邪魔なだけだろう動きにくいし。俺は弓を置き剣を抜きアーネスへと駆ける。
「ふーん。戦うんだ。いかにもヒョロそうなあんたが私と。」
ああ、確かにヒョロいさ、だが俺は7人の英霊と戦ったそんじょそこらのヒョロ男とは違う。
十分アーネスへと近づきあと数歩で剣先がアーネスに触れる距離になる。だがアーネスは動かない。きっとこれが『お前が私に攻撃出来る最後のチャンスだ』とでも思っているのだろう。
俺は剣を強化魔術で強化し、剣を掲げ上段から下段への振り下ろしを体全身を駆使して行う。振り下ろされた剣は自らの重みにより加速していく。
しかし剣はアーネスに片手だけで掴まれ、その一撃は防がれてしまった。
「なんだい、これが全力かい?せっかくあんたにあげた最初で最後のチャンス…」
「だったのに、か?」
「⁉︎」
この結果は当然予想していたに決まっている。本命はここからである。
魔力を注ぎ込み詠唱を省略し、発動する。
「『ブレード・オブ・ウィンド』」
普段は手に纏わせている魔法は今回は手ではなく剣に纏わせ、風の刃は剣を包み込みアーネスの手を切り裂いた。
「どうやら思ったよりやる様だね。さっきのは驚いたわよ。」
しかし俺の攻撃は奴の表面の皮膚を裂いただけであった。
「でもこれで終わりね。『カースド・ライトニング』」
漆黒の稲妻は俺を目標に捉え飛翔する。
「『狙撃』」
俺は咄嗟に奴の攻撃にワンテンポ遅れて、剣を投擲した。
俺へと飛翔していた漆黒の稲妻は接近する金属に引き寄せられ俺は事なきを得た。しかし剣は跡形も無くなっていた。
五万エリスが俺を守ってくれたのだ……五万エリス
「ふーん今のも防ぐんだ。でももうあんたにはなにも無いでしょ。弓もなく魔法も私に効かない。あんたに勝ち目は無い。」
アーネスは俺へとゆっくり歩み寄ってくる。
座標固定。
「じゃあね『ライトニ』⁉︎」
アーネスは目を見開く。それもそのはずなんたって今殺そうとした獲物が突然消えたのだから。
俺は瞬時にテレポート先をアーネスに登録し、魔力を大量に注ぎ込み詠唱をカットしアーネスの背後にテレポートする。目測であるため狙った場所とは多少誤差はあるが背後を取れたことには変わりない。
身体を強化しアーネスの首を絞めドレインタッチと不死王の手を発動する。
「ぐっ、こ、この……」
「『ティンダ』『フリーズ』」
抵抗するので一旦発動を止め、首を燃やし、冷やす。それを同時に行う。抵抗が弱まったのでドレインタッチと不死王の手を発動した。
「いい、加減に……しろ!」
アーネスの肘打ちが溝にヒットし、吹き飛ぶ。ちゃんとした姿勢からの攻撃では無かったため威力は低めと言っても肘打ちをしたのは上位悪魔アーネスだ。つまりめちゃくちゃ痛い。
「はぁ、はぁ、よくもやってくれたな。それよりなんで人間のあんたがアンデットのスキルを使えるんだい⁉︎」
「けほっ、けほっ、痛てぇな『ヒール』 美遊ちょっとばかし魔力持っていくからな。」
「うん、いいよ。」
美遊はまだキョウヤの治療が終わっていない。それにしてもキョウヤ生きてるのか?そんな疑問が浮かぶ。だがそんなことは後だ。美遊からよ了承も得たことだ。上級魔法を連発するか。
意識を集中させ詠唱を始める。アーネスはやばいと思ったのだろう俺へと接近し、口を動かしていた。恐らく接近してゼロ距離で魔法を放ち殺す気なのだろう。
だが好都合だ。アーネスがなにを詠唱しているのかは分からない。だが、
「『ライト・オブ・セイバー』」
高電圧の刃は手先から伸び短剣ほどの大きさでバチバチとはじけるような音を鳴らす。
「⁉︎」
短剣はアーネスを軌道に捉えたがあとほんの一寸というところでアーネスが消えた。
やられた。まさか詠唱していたのがテレポートだとは思わなかった。
俺はすぐ気を取り直し敵感知を発動する。4つの集まった点は美遊達。あともう1つの点は、上空にあった。と言っても1、2メートルほどだが。
アーネスは『さっきのお返しだ!』というような顔をし、俺を蹴り飛ばす。
「んぐッ!」
両腕を強化させ顔面へと迫り来る横払いを右腕を先にして受ける。しかし、足の踏ん張りが利かず、数メートル吹き飛ばされ地面へと落ちた時勢いを殺せず無様に転がる。
それにしても右腕が痛い左は直に受けなかったので何ともなかったのだが、右腕めちゃくちゃ痛い。折れたんじゃねえかと解析魔術で調べるが骨は何ともなかった。ただそれでも右腕は感覚が無く上手く力が入らない。
左はというと正座した後の足みたいにジンジンと痺れる。
骨折してないのに痛いのに、アニメキャラなら骨折しても戦ってるけどあれおかしいだろ。
これが終わったらカルシウム大量摂取しようと心に決めた。
アーネスの黄色の瞳は獲物を捕らえた肉食獣のように瞳を光らせ、舌で唇を舐め俺へとゆっくり歩み寄って
上手く立ち上がれない俺は氷の壁を生成し奴を妨害している間に起き上がり逃げる。
「『ファイヤーボール』」
氷は炎で溶かされ高密度の魔力が込められているのか衝撃波が発生する。それによって起き上がったばかりの俺はまた転がる。受け身を取ろうと左手を地面につけた時左手から鳴ってはいけない音がなった。そう、受け身を失敗して首をおかしくしたのである。
俺の手脆すぎだろ。
策を練るがこれといって決定打となるスキルも無い。おかしくした左手の痛みを誤魔化し後退を続ける。その時腰にかけていたものがぶつかった。それはどんな存在も拘束できるロープだった。
「ふひ、ふひひひぃ。あっははは。おいアーネス今降伏するなら命だけは助けてやるぞ。」
「はぁ?なにいってんのあんた?とうとう頭までダメになった?」
「これなーんだ?」
俺は腰にあったロープを見せびらかす。
「正解はどんな存在も拘束できるロープでした。なあ知ってるか?世の中にはな、悪魔の女が好きな奴がいるんだよ。捕らえたサキュバスとかは確か高値で取引されてるらしいな。上級悪魔のお前を捕らえて売り払ったらいくらするかな?」
今俺はどんな顔をしているのだろう。俺の予想ではきっととでも正義感溢れた勇者のような顔をしているのだろう。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。は、話し合いましょう。そうよ話せばわかるは……」
「『バインド』」
俺がバインドと言ったと同時にアーネスは空高くか飛んで行った。
「いややあ!助けて、こないで!『ライトニング』『ファイヤーボール』『フリーズガスト』『ライトニング』」
かれこれ3分間はバインドが掛けられたロープから逃げている。
こんな状況にした張本人が言うのも何だがな悪魔が空を飛びそれをロープが追いかけるというのはなかなかシュールな光景だと思う。もしこの異世界にツイッターがあったら投稿したい。
「いい加減消えろ『インフェルノ』」
これまでアーネスの攻撃をことごとく耐えてきたロープは耐久の限界に達し壊れてしまった。
「はぁ、ぜぇ、はぁ、決めたお前だけは絶対に何が何でも殺す。」
アーネスさんはそれはそれはお怒りだった。
どすればいい決定打と成り得るのは上級魔法だけ。それでも相性は間に合わない。例え魔力をカサ増しして詠唱をカットしようものなら逆に威力が足りない。中級魔法は決定打と成り得ない。他のスキルはそこまで役には立たないし、自分ですら全てのスキルを把握しきれていない。
何かないかと考えているとあるものが目に入った。それは神が創り、キョウヤが特典として貰ったもの。それが訳あってか地面に突き刺さっていた。
「何? まだ私に勝つつもり? そりゃ上級魔法が使えるなんて驚いたけど所詮は使えるだけ」
「だろうな、俺なんてそんなもんだ。でも『スティール』」
俺は後方へと手を伸ばし窃盗スキルでキョウヤの魔剣を手に入れる。
「重過ぎだろ。」
予想はしていた。していたとも。今冷静に考えてみれば俺が大剣を、しかも両手負傷の状態でろくに扱えるはずもない。
だがそんなのキョウヤよりはマシだ。
そう自分に言い聞かせ強化魔術で大剣を扱うのに必要な筋力を補強し駆け出す。
「ハアアアッ!」
「死ね『カースド・ライトニング』」
やはりそう来るか。
俺は地面に魔剣を突き刺し、盾とし前進。
「食らいやがれ。」
大剣を横にスウィング。しかし大振りのためアーネスは難なく躱してしまう。
「『ライトニング』」
今度ばかりは避けることができない。大剣を再び盾にするには大剣と自分の距離が離れ過ぎ、態勢も十分ではない。自分の所へと戻す前に電撃を食らい俺は死ぬ。
死ぬ?
美遊を残してまたあの世へ?嫌だ。美遊と離れたくない。しかし自分には何も出来ない。
思い返してみれば、この世界に来てから美遊との思い出を全く作れていない。それなのに死ぬなんて嫌だ。
だがそんなのは無理だと言うかのように電撃は刻一刻と俺に接近する。だが遅い。これならと動こうと思うが体が動かない。眼球すらもだ。きっとこれが走馬灯というやつなのだろう。
最後にみるのが電気なんてな。せめて最後は美遊を見たかったな。
「『リフレクト』」
「ぐっ、やってくれるね。」
突如前方に光の壁が現れ、アーネスへと電撃を跳ね返した。
これはプリースト、アークプリースト、冒険者職だけがつかえるスキル。つまりこれを使ったのは美遊しか居ない。
「お兄ちゃんから離れろ!」
「チッ、こんなガキがプリーストなんて、しかもかなり手強い。」
あれ?俺より危険視されてる?
「『エクソシズム』」
美遊は破魔魔法を放つも避けられてしまう。やはり俊敏なアーネスの行動を塞がない限り俺達に勝機は訪れない。なら俺は足止めをするしかない。
「『クリエイトウォーター』、『フリーズ』」
俺はキョウヤの魔剣を捨て、氷の剣を一本生成する。
「『フリーズ・バインド』」
「『ファイヤーボール』」
アーネスの足元に氷を生成するが火球によりドロドロに溶ける。だがそんなのは関係ない。
脚を強化し、アーネスへと接近する。
氷の剣を片手で添え突きの攻撃をする。
「グッ、調子に乗るなよ。」
心臓目掛けて突いた剣をアーネスは手で防がれてしまい、アーネスは掴んだ氷の剣を怒りに任せて折ってしまった。
氷の剣を手から離しすぐ距離を離す。
「逃がすか!『ライトニング』」
「『クリエイトウォーター』」
二度同じ手は食らうかよ。
俺は水を生成し電撃を防ぐ。
某ボールに入れるモンスターのゲームでは水属性は電気属性に弱いが現実は違う。
純粋な水(H2O)は電気を通しにくい。逆に不純物の入っている水。例えば海水などは電気を通しやすい。
これは中学一年もしくは二年で習う内容である。
つまり何が言いたいかと言うとクリエイトウォーターで生成した水は不純物を含まない。だからあいつの電撃は通さない。
「『クリエイトウォーター』、『フリーズ』」
今度は突きに適した槍を氷で生成し、瞬時に強化し、今度こそ腹部へと突きの攻撃をする。アーネスは瞬時に手を出す。
「グッ、このッ!」
しかし、手で防せごうとするが長物の槍は手を貫通し腹部を突き刺す。
やはり物理だけの攻撃より魔術を使用した方が効きやすい。
「まだだ、『ライトニング』」
腹部、手の甲を突き刺した氷の槍が電気を通し、アーネスの体内へと直接ダメージを与える。純粋な水は電気を通しにくいが、氷は別だ。即席のため氷の中には外の気体。
つまり不純物がかなり入っているはず。
その後詠唱を無視し、ライトニングを連発しアーネスの意識を刈り取る。とまではいかなくとも怯ませることはできた。
「今だ。美遊!」
「『エクソシズム!』」
俺とアーネスが戦っている間魔力を凝縮させ、1つ1つの工程をしっかりと踏んだ破魔魔法はアーネスを消し炭にした。
「終わったんだよな?」
ゆんゆん達の痺れが無くなった後皆が見て居ない間にキョウヤを蹴飛ばしてからギルドに向かった。
俺達はギルドへとたどり着きドアを開け
「ホーストを倒して来たぞ‼︎ついでにアーネスも!」
「「「「「おおおおっ!……ん?」」」」」
ギルド内が歓喜に溢れた。
一人は『やっとこれでクエストが出来る。』や『アーネスってなんだ?』という声。他にも『こいつらマジでやりやがった。』など疑問や俺達を褒め称える声が轟いた。
「まさか他の上位悪魔まで現れて倒すとは思いませんでした。」
おい、つまり死ぬとでも思ってたのか。
「ではエミヤカズマさんのパーティーとミ……キョウヤさんのパーティーに上位悪魔ホーストの討伐報酬1000万エリス、上位悪魔アーネスの討伐報酬700万エリス。計1700万エリスを2つのパーティーにその功績を称え、贈呈します!」
「「「「「「「1700万⁉︎」」」」」」」
まじ?もう当分働かなくていいじゃん。あれ?でもホーストに関しては俺と美遊は何もしてないが、逆にアーネスに関しては俺と美遊以外は何もして居ない。どうなんのこれ?
「集合」
俺はその件について話すとめんどくさいから普通にみんなで山分けという形になった。割り切れない分はギルドのみんなとの宴会に使うことにした。
「カズマ君も飲むかい?」
「いや、それ酒だろ。俺未成年だし、というかお前も未成年なのに酒飲むとか…不良なのは知ってたがとうとうそこまで堕ちたとはな。」
「なっ、失礼な!この世界では何歳からでも飲んでいいんだ!」
法律しっかりしろよ。
「俺はオレンジジュースでいいや。」
「そうかい?」
(だめだ今ここで笑ったら殺される。それにしてもオレンジジュースって)
「おら、カズマ。今日はお前らがメインなんだからもっとたのしめ。」
馬鹿でかい声がギルド内を響き渡る。
ゆんゆんはというと、隅っこで一人寂しく座っていた。
俺も敵感知使わなかったら気がつかなかったぞ。
「おい、ゆんゆん一人で何やってんだよ。」
「えっ、いやでも、私なんかが行ったら「えっ?この人誰?」みたいな感じになってせっかくの宴会が台無しになって…」
本当に誰だここまで放置したやつ。いつかヤンデレになるぞこいつ。
「私なんか、じゃないだろ。お前はもう俺達の仲間なんだ。それにゆんゆん。お前は俺と美遊が危ない目に遭わないようにしてくれたんだろ?ありがとな。もし人だかりが苦手なら、俺…とは嫌か。美遊とめぐみんと話してろ。ほらいつまでもしけた顔してないでいくぞ。」
俺はゆんゆんへと手を差し出し、ゆんゆんは俺の手をゆっくりながらも俺の手を掴んだ。
その感触は今はもう思い出せない■と似ていた。
「さあ、いくぞ。」
「はい。」
ゆんゆんは美遊達の所へと向かい楽しく話しをしていた。
「ゆんゆん、何か楽しいことでもあったんですか?
「顔がにやけてる」
「べーつに、なんでも無い」
ゆんゆんは今まで生きていた中で恐らく最も笑顔だった。
ゆんゆん可愛いですね。(小並感)