ここははじまりの街。あの日、ソードアートオンライン製作者茅場晶彦が吐き出した絶望。突きつけられた地獄。
逃げ出すもの
走り出すもの
立ち止まるもの。
みんなこの世界で生きている。仮想と現実の境界線をすり潰された、ここがはじまりの街。
そんなはじまりの街にはあの日から三ヶ月が経った。ゲームの攻略は順調に進んでいて先日10階層を突破した時にはプレイヤー全員が喜んだ。還れる訳が無いと塞ぎ込んでいたプレイヤー達にとってひとしずくの希望といえる吉報だった。
このソードアートオンラインはゲームだ。しかし遊びではない。このゲーム内でHPが0になった時、その通りプレイヤーは死を迎える。頭部に設置しているナーヴギアから信号が送られ脳を焼き切るのだ。コンティニュー無しのデス・ゲーム、それがソードアートオンラインだ。そしてログアウトも出来ない。
ここから抜け出すには死ぬか、戦うしかない。
戦いを選んだものがいた。剣を取りこの世界と茅場晶彦に戦いを挑んだものたちだ。死を選んだものもいた。本当に死ぬかどうかは解らない。確かめる手段などない。しかし国鉄宮にある生命の碑には全てのプレイヤーの名前が書かれていて、死んだもの達の名前は黒くなり斜線が引かれていた。彼らは今も戻ってこない。
救いを祈るものもいた。誰か助けてと、誰かこの地獄を終わらせてくれと。彼らははじまりの街で今も誰かが100層へたどり着くのを待っている。
そんな彼らはこのはじまりの街で生活をしている。いくらゲームといえどもソードアートオンラインでは睡眠も食事も必要だ。祈りながらここで生きていくしかない。
この掃き溜めの街で生きていくしかなかった。
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そんなはじまりの街に最近噂になっているものがいる。
『臆病者』
口を揃えてみんなが彼を罵った。その臆病者は毎日朝からフィールドへと出る。モンスターが徘徊する死の世界へ。
「またあいつやってるよ」
「フレンジーボア1体倒せないくせに攻略組のつもりかね」
「むかつくんだよ、弱くてビビりのくせに」
臆病者はアインクラッドでいう初級モンスターである《フレンジーボア》と戦っていた。ずっと戦っていた。1体を倒すのに30分以上をかけて。
普通のプレイヤーなら5分とかからず倒せるだろう。コツを掴めば一撃で倒せる敵だ。それを長い時だと1時間をかけて、倒せずに逃げられたりもしている。
そんな彼をはじまりの街のプレイヤーは侮蔑の意を込めて臆病者と呼んでいた。
「くっ……危なかった。もっと回避行動へ早くできるようにしなくちゃ。」
この物語はそんな臆病者と呼ばれた、主人公ウィンプと、その仲間たちの物語である。