あれから彼とは、一緒にいる時間が増えてきた。
私にも理由は分からなかった、けどそれを私は好ましく思っていた。
彼と過ごす時間が、とても有意義に思えたから。
笑って、怒って、泣いて。
私が使命をそして人間じゃないことを
忘れるくらい。
私は彼と出会ったことをとても幸運だと思っていた。
「なあ、2日後に依頼なんだ。もしかしたら長く掛かるかもしれない。」
「……そう、気をつけてね。」
「お、おう。」
「何よ。」
「お前にしては珍しいからな。」
「失礼ね、ランク1。そんなのあなたがへましないとは限らないでしょ。」
「ハッハッハ。違いない。初心忘れるべからず、ってことだな。また今度な。」
「ええ、さようなら」
もう二度とセレ・クロワールとして会うことはないでしょうね。
終わりの日が近づいてきた
帰ってきた私は、全AIのコントロールコマンドを起動。
私の制御下に置く。
衛星もすでに私の手の中だ。
これで、後戻りは出来ない。
彼らに課すのは私達からの最後の試練。
私達の想いを、彼らに託す。
はずだった。
私の想像以上の結果だった。
衛星砲の攻略はミラージュ主導だったが、フリーも躊躇なく投入した。
各地の混乱に、企業は一時休戦し手を取った。
私に近づくために、彼らは結束した。
ミッションは利益を気にせず三社合同で出され、立場関係なく多くのレイヴンが参加した。
その中には、彼も居た。
そして。
私の
そして彼は来た。
[レイヴン……]
思わず呟く。
『お前!』
『これは、セレ・クロワールの声!?』
動きが止まったが、一瞬だった。
私は、全力を尽くした。
しかしレーザーも、ミサイルも、グレードも、ブレードも当たらない。ことごとく避けられる。
容赦無いミサイルが私の機体を砕いた。
「エマ・シアーズ」
『なんですか。』
「今の事はここだけの話にしてくれ。」
『ですが!』
「シアーズ」
『…分かりました。ですが調べさせて下さい』
「了解」
[待っていました。]
彼はついに私のもとに来た。
[シリアルを確認・・・]
[XA-26483]
[登録・・・確認]
その間にも彼は次々と障害を突破する。
[端末セキュリティ・・・解除]
彼は最後の障害を突破。
私の居る階層へのリフトに乗った
[接続を開始・・]
[レイヴン・・]
[モード変更]
私の最期の時。
[最終確認へ・・移行します・・・]
もうすぐ始まる。
[システム起動]
[22-4フェーズ・・]
彼は一斉にミサイルを放つ。
だけど、私にそんなものは意味をなさない。
すべて撃ち落とす。
彼は無意味とわかったのかミサイルをパージし、そのまま接近してきた。
私は上昇、レーザーライフルを撃ち下ろす。
それを横にずれて回避した彼に、私はオービットを放つが、彼はOBで私の下を抜けていった。
後ろにまわった彼は、マシンガンを連射。私の背中に弾丸が突き刺さる。
黙ってやられるつもりはない。
空中でバク転しレーザーを放つ。
地面に着弾し、爆風が彼を吹き飛ばす。
そのまま私は着地してオービットのレーザーを発射。
それを彼はかすらせながらOB。
恐ろしいことに、そのまま月光を振りかぶった。
思わず後退した私は、足下に彼がパージしたミサイルがあったことに気づく。
それを接近してきた彼に蹴り飛ばした。
正確に彼の目の前に飛んだミサイルポッド。それをオービットで撃ち抜く。
爆炎が彼を包んだ。
そのまま爆炎の中にいるであろう彼に向けてブレードを振った。
しかし、そこに彼はいない。
(後ろ‼)
気づくとバインダーが横一文字に斬られていた。
そこで私はバインダーに自爆シグナルを送る。
パージ、ブースト。
後ろで爆炎が再度彼の姿を隠した。
『本当にお前か?強えな!』
[否定、そちらが圧倒している。]
戦闘用のボイスで返す。
事実、私の方がダメージは大きい。
バインダー爆破攻撃は彼が離れたことで失敗した。
お互いにエネルギーを使い過ぎ、動きが止まる。
少しの間の後、先に私が動く。
レーザーライフルを撃ちつつアプローチ。
『っ!速い!』
バインダーをパージし身軽になった私は、一気に彼の懐に潜り込む。
彼は背を向けて飛んで私のブレードを避けると、そのまま彼はマシンガンを構えた。
同じ手を食らうつもりはない。
脇抜きショット。
しかし、彼はさらに上昇。
私も追いかける。
そのまま両者はブレードを起動。
すれ違いざまに、同じタイミングでブレードは振るわれた。
私はライフルを、彼はマシンガンを失った。
その爆発で二人揃って地面に叩きつけられた。
[確認完了]
立ち上がる。
無機質な報告が空気を震わせた。
彼は合格だ。
役割は終わった。
でも。
でも
ソレでも。
彼との決着をつけたい私がいる。
終わるのなら、きっちり終わらせたい。
私は、人格データをすべて分身に移した。
機体のセンサーに同期。
ダメージが痛みに近い感覚で襲ってくるのを、振り切る様に立ち上がる。
[これで…最期よ。]
ノイズ混じりに放つ。
彼も立ち上がり、身構えていた。
『これで、か。いいのか?それで。』
[けじめは、つけたい。]
一歩踏み出す。
歩行を想定していない脚部が悲鳴を上げるが、構わない。
『そうか…』
ブースト。
勝てるとは思っていない。
でも、いい。
せめて彼の手で。
役割の終わった機械に存在意義はない。
だから、機械じゃない生き方を教えてくれた、彼に。
機械である私を。
二人の距離は小さくなっていく。
そして。
私の左手が彼の機体の右胸を貫いていた。
[え?]
なんで。
なんで。
どうして。
彼は避けるなり、反撃するなり何か出来たはずだ。
彼のACが膝を折った。
私はもう使わないはずだった義体で彼のACに近づいた。
分身を使ってハッチをこじ開ける。
彼は右半身が焼けていた。
「どうして!?今のは避けられたはずでしょ!」
涙を浮かべて叫ぶように言った。
「…ああ、ドジッた。お前にへましないとかどうこう言ったのにな。」
「どういう意味」
「あの攻撃、躱すつもりだったんだ。だがご覧のとおりだ。」
背負って機体から連れ出す。
「私よりもはやく攻撃すればよかったじゃない!」
「できなかった。どうしてもしたくなかった。」
何も言えなくなった。彼を横たわらせる。
「俺は昔、片思いの女性がいた。ガキだったもんだから、一途にな。だが、殺しっちまった。」
「そいつが俺を消そうとしてきたんだ。【この世界にあなたは不要】ってな。で、返り討ちにした。」
思いの丈を吐き出すように。彼は続けた。
「レイヴン同士だからと言い訳のように自分に言い聞かせて生きてきた。だが、無くしたことに変えようはなかった。」
彼の話を聞く間にスキャンしたが、すでに手遅れだった。
「そんな中、お前と会って話してくうちに、お前は大切に思える人になっていった。だからこそ、同じ結末にしたくなかった。結局、逆になっちまったが。」
彼は咳き込む。
「なあ、もし生きてく意味…お前の場合語弊があるが、それが無いとしても、消える必要はない。そうやって存在しているうちに見つかるかもしれない。」
「でも……」
「本当は、近くに居てやりたかったんだけどな。失敗しちまった。すまない。」
「そんなの…」
卑怯だよ。
「でも、また意味は見つけられるさ。俺がお前に会えたんだからな。」
瀕死にも関わらず、彼は優しく左手で私の頬を撫でる。
「お前は、お前の…信じることをしろ。こんなところで…閉じこもる必要はない。」
彼が消えていくのを感じる。
私達は機械なのに。
「それしか知らないの…」
弱音を吐いてしまう。
「一歩踏み出せばいい…俺に会った時みたいに。」
私は頷く。
「じゃあな…重ねて悪いが…一緒にいてやれなくてすまん…セレ。」
彼の手が頬から落ちていく。
機械の体から人工の涙はずっと出っぱなしだった。
少し視界が暗くなる。
少なくともここにいる必要はないんだな。
彼を抱える。
離すもんか。
せめて、彼の亡骸だけでも一緒いてほしい。
一人だけなんて嫌。
そして…………
その後、探索班が中枢に突入。
管理コンピューターが有ったと思われる部屋に到達した。
しかしそこには何もなかった。
未確認兵器の破片と、コンピューターの不在から、彼が管理コンピューターを撃破。行方不明になったと結論づけた。