巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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蛹は既にある。


emergence

あれから、量産のMTやノーマルだけを相手にするのに、物足りなさを感じるようになってきた。

そんな自分に嫌気が差す。

ノーマルはAPを0にすればそいつが停止するだけだ。

だが、安価なMTは違う。

オーバキル、破壊してしまっている。

殺しているのだ。

なのに、物足りないだなんて。

 

アリーナで60位を撃破し、練は控室で椅子に座り込む。

 

ああ、物足りない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りを自然に囲まれ、緑豊かな土地。

アナトリア中立コロニー。

 

U.Nオーエンはその南でACに乗り、佇んでいた。

依頼が来たのは昨日の夜。

ヘリに揺られながら寝て、2時間前についた。

 

依頼メールの内容を思い出す。

 

『マクリブ解放戦線から脅迫状が送られてきた。内容はアナトリアコロニーへの直接攻撃。取りやめて欲しければイフェルネフェルト教授の身柄を渡せだそうだ。』

『義肢技術で繁栄しているコロニーから、その権威を渡せる訳がない。』

『その為に、レイヴン。君にマクリブ解放戦線を撃退してほしい。』

『予想される敵侵攻ルートで待ち伏せし、これを撃破してくれ。』

『全滅させる必要はない。多少はこちらの戦力で対処できる。』

『伝説と呼ばれる君にならできると信じている。頼む、オーエン。』

 

 

 

アナトリアからの依頼は初めてではない。

ここは数少ない義肢技術、つまり兵器以外で発達した中立コロニーだ。

それを、国連とレイレナードに売りつけるものだから、周辺からちょっかいを受けている。

少し前は、GAの支援を受けたテロリストのハイエンドノーマル部隊に襲われていた。

だが、そういう、いつもと違う相手と戦えるから、というだけでここの依頼を受けている訳ではない。

 

俺はコロニーになる前のここで生まれた。

その頃は、企業に狙われそうにない小さな街だった。

故郷に何も感じないほど、俺は冷酷な人間ではないと思っている。

知り合いを簡単に失うほど力の無い人間でもないとも。

 

 

 

 

『来ました。迎撃を。』

「どのくらいか?」

『…第一波。ノーマル8、MT12。戦闘ヘリが4機です。第2波も考慮して戦闘してください。』

「任せろ。」

 

まず、めんどくさい戦闘ヘリから落とす。

高度を合わせ、リニアで落としていく。

敵部隊中央に着地し、ショットガンとリニアで片付けた。

 

『第2波、ハイエンド3機です。気をつけて。』

「随分と豪華だな。」

 

BFFのハイエンドがこっちに向かってくる。

左から順にα1、α2、α3、とオートでコードをつけていく。

リニアでα2を攻撃。

3機はリニアを回避、散開して包囲しようとしてくる。

 

「なら…」

 

α3に向けマイクロミサイルを放ち、自分は左側に後退、引きつける。

α3はいくらかミサイルが命中し足が止まる。

それを受けた敵は陣形を変更。

左からα1、α3、α2でデルタフォーメーションを組んでくる。

だが、OBのあるACでそれは考えものだ。

一気にデルタの真ん中を突っ切る。

そしてすれ違いざまに両手の銃を撃ち込んだ。

加速した機体から放たれた弾丸が装甲にめり込む。

α3は沈黙した。

一方その他の機体は得意距離になったとスナイパーキャノンを構える。

 

「そう簡単に当てられると思うなよ。」

 

弾丸は左右に機体を揺さぶりつつ(小ジャンプ移動で)迫るローレンスの横を通り過ぎていく。

お返しにとオーエンはマイクロミサイルをα1に放ちOBを起動。

α2に向かう。

ショットガンをパージし、ブレードを装備。

 

「チェストォッ!」

 

左手と左足を切り落とし、α2は転倒。

α1も膝をついていた。

 

「アナトリアのノーマル部隊には荷が重いな。」

『敵影ありません。ミッション完了、帰還して。』

「了解。」

 

 

 

 

 

 

ガレージで俺は休んでいた。

 

「お疲れ様。大丈夫?」

「ああ、フィオナか。問題無い。だが、マクリブにも狙われるなんてどうしたんだ?不祥事でもあったか?」

 

今まで、大規模武装勢力に狙われたことは無い。

ちいさなテロリストぐらいだ。

 

「これと言ってないの…。私達もびっくりして。」

「…マクリブといえば、英雄アマジークだな。そういえば、そいつを負かしたやつがいる。」

 

思い出すのはあの少年の姿だ。

 

「アマジークを?誰?興味ある。」

 

フィオナも興味津々だ。

 

「新人のアキレスさ。もっとも、バランサーが壊れて倒れたところでマウントとったらしい。」

 

あいつが本気で奴を撃墜してたら腰が抜けてだだろう。

負かしただけでも十分驚いたのだから。

 

「へぇ〜。でも凄いよ。バランサーが壊れたところを確実に降伏させる判断ができるんだから。」

「ま、そうともとれるな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナトリアから少し離れたところに、一機のオーダーがいた。

 

「それでいい。それで……。」

 

アナトリアに背を向ける。

 

『いいのか?あれで?』

「余所者が入るべきじゃない。外野は黙ってて、ストレイド(4人目の首輪付き)。」

『分かったよ。見つかる前にとっとと離脱しろ。別世界のリンクス戦争の英雄。』

 

その白いオーダーはOBで去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イフェルネフェルト教授、これは後に必要になる技術です。あなたの物のように扱えなければいけませんよ。」

「納得できるかッ!私の技術は多くの人達の為にある。戦争に使うなど言語道断だ!」

 

イフェルネフェルト教授の部屋で、何かを強く叩く音が響く。

彼が机に拳を叩きつけたのだ。

 

「戦争が早く終われば、犠牲者が減るんですよ。それとも、あなたはこの半端な管理戦争を続けて、あなたの技術でコロニーが繁栄する事を望んでいると?」

「貴様っ!」

 

怒りの形相で彼を睨む。

それを意に介さないと、もう一人の男は飄々としたまま続ける。

 

「事実を述べたまで。あなたがなんと言おうと、この技術は持っていてもらいます。」

「……お前は、何を望んでいる。」

 

部屋を影が出ていく。

その口元は、笑顔で歪んでいた。

 

「まだ、お伝えできません。では。」

 

部屋は教授一人になった。

 

「やはり、MTも、ACも、この世界も、奴が……。」

義肢研究者でしかない彼には呟くことしかできなかった。




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