空気の張り詰めた会議室でそれは行われていた。
「さて、次の議題ですが、ここ一週間の間に[打ち合わせ]と違う戦闘が4回行われました。由々しき事態です。先ず、それぞれの原因究明の結果を報告してください。」
若々しい男が立ち上がる。
「我々ローゼンタールから。我々の場合、部下に内容を伝える際に社内ネットワークを使用してメッセージを送ったのですが、送信中にクラッキングを受け内容が改竄されていました。こちらが資料です。」
「…なるほど。」
「今後はセキュリティー強化や、情報伝達をアナログにするなどして確実性を高めます。今回の件、誠に申し訳ございませんでした。」
「分かりました。では国連では何が。」
国連議長がそこにいた。
「こちらも同様にクラッキングを受けていました。手口はローゼンタールが受けたものと全くと言っていいほど同じでした。」
「なるほど、ここはどうやら同一犯のようですね。ではGAは。」
初老の女性が答える。
「こちらの場合、ホットラインのメッセージが改竄されていました。国連のメッセージと比較的すると、こちらの戦力が指定より少なく書かれています。」
「国連議長。」
「確かに、我々が提出したものより少なく、勝敗は逆転しています。」
国連議長はしぶしぶ肯定した。
「セキュリティーチェックの間、情報伝達を口頭などネットワークに頼らない形式にして様子を見ましょう。さて、次の議題は…」
卒業式が終わって、二人は向き合っていた。
「予定合わないね…」
「まあ仕方ないか。気づくの遅かったし。」
少しの沈黙の後、紫蘭は後ろを向き距離を取る
紫蘭が口を開いた。
「ねえ、練。」
「なんだ。」
「どうして人殺しになっちゃったの?」
積み上がる瓦礫。
廃墟になった学校。
振り返る紫蘭は左半身が真っ赤に血に濡れて…
「‼……夢か。踏ん切り、つけたつもりだったんだけどな。」
自室の机から跳ね起きた。
どうやら、勉強中に寝てしまったらしい。
しかし、悪夢になるとは、重く考えてるのか。
あれから、何回もミッションに行った。
戦って壊して。
でも、何か違う。
そんな日々が続いた。
そうだ、あれから紫蘭に連絡して無い。
メールを送る。
すると通話で帰ってきた。
「おおっと⁉」
急いで出ようとして、手が滑る。
なんとかキャッチして、通話開始。
「まさか電話掛けて来るなんて思わなかったぞ。」
『ごめん、久しぶりでさ、声聞きたくて。』
「ああ、すまん。気が回らなかったな。」
確かに、1ヶ月放置してしまった。
既に外ではセミが鳴いている。
夏休みが近づいてきた。
『大丈夫?声暗いよ。』
「昨日まで外国行ってて、時差ボケにやられた。言うほど深刻じゃない。」
『そう、良かった。』
悪夢を見ていた、なんて言ったらさらに心配を掛ける。
汗の具合から、結構うなされていたようだ。
これ以上話していたらボロが出る。
「あんまり話すと怒られるからな。そろそろ切るぞ。」
『分かった。生きてるかの確認だから、ある程度連絡してよ。』
「了解、じゃあな。」
なんとか会話を終わらせる。
明日はアリーナで65位戦だ。
相手はあのラビエス・モンテさんだ。
気を引き締めないと。
アリーナでアセンブルを確認。
「軽量二脚でマシンガン、6連ミサ、ブレードにして、タンクの後ろをとる。っとこれでいいはず。」
そのままガレージで待ち受ける。
アリーナに入場した俺はラビエスさんを待った。
『ラビエスの登場です。』
アナウンスとともにシャッターが開いた。
暗くて中がよく見えない。
すると。
ズシン、ズシン、とタンクでは聞かない音が聞こえる。
『な、なんとラビエス。2年ぶりに重量二脚で登場だぁ!かつて[門番]と呼ばれた彼が帰ってきたぁ!』
(嘘だろ⁉あの人が足を変えた⁉)
一応、戦い方の変更はしなくてもいいかもしれないが、足を変えると挙動が変わる。
しかも、俺は最盛期のラビエスさんの動きを知らない。
『少年。』
「なんですか。」
彼はゆっくりと試合開始位置へと進む。
『俺は絶対曲げない一つの信念がある。』
「いきなりですね。アセンブル変更と関係が?」
『ああ。俺は味方を自分の目の前で死なせないと決めている。俺がタンクに変えたのは、味方が助けを求める時に戦えるタフさを欲したからだ。目の前で機体が動かず助けられないなんてのは、もうごめんだ』
俺の正面まで来た。
『お前にはあるか?自らを駆り立てる程の望みが。』
ブザーが鳴る。
同時に俺はラビエスの右をとるよう動く。
しかし、グレネードが足元で爆発し、衝撃で足が止まる。
そこにEOともう一方のグレネードが命中し、吹き飛ばされた。
「グウゥゥッ‼」
これが30位台、門前と呼ばれた所にいた人の力。
『そんなものか少年ッ。』
高火力の圧力が俺にのしかかる。
横を取ろうとしても距離を取られるし、後ろを取っても
逆旋回の応用で後ろを取り返される。
もし一度当たれば、反動で後続の攻撃が避けられない。
強い。
その一言に尽きた。
今までの重量二脚は簡単に死角に回れたのに、この人はさせてくれない。
気づけばAPは1000まで来ていた。
(正面でも接近すれば!)
グレネードを掻い潜り懐まで迫る。
そこでアマジークのマネをしてみた。
OBで視界外に出ようとした。
急な加速。
しかし、そこに右手のグレネードが突き刺さった。
そして、左のグレネードとEOが連続して命中。
『試合終了ぅ!勝者ラビエス・モンテ、65位を防衛‼かつての[門番]としての実力を見せつけた!』
久しぶりの敗北。
圧倒された。
『なぜ、俺が本気を出したのか。分かるか。』
俺は、なにも言えない。
分からなかった。
『お前には死んでほしくないからだ。俺は今まで、自分の機体を壊して、目の前で何度も仲間を失った。そうならないように俺はタンクにしたんだ。』
ラビエスさんは声を絞るように話す。
『仲間の危機に機体が言うことを聞かないなんてことはなくなった。だが、もしタンクだったせいで仲間を失ったら。俺は躊躇無く機体を変える。』
そして、彼の機体は背を向けて去って行く。
『目的と手段を履き違えるな。目的が愉しむ事なら構わないが、もし目的を忘れて戦いにのめり込むようなら、いつか死ぬぞ。そういう奴を俺は何度も見てきた。』
俺は呆然としていた。
アリーナの休憩室で俺はここ4ヵ月を思い返していた。
オニキス襲われて、右足を骨折した。
運ばれた先でいきなり脅された。
預けられた先が恩人だったり。
レイヴン試験も、依頼も、と想定外がちょくちょくあったな。
今思うと、助けてくれた時、挑発して無人かどうか確かめてたのかもしれないな、シャルさん。
「随分考え込んでるけど大丈夫?、アキレス」
「シャルさん。」
向かい側椅子にゆっくりと腰を掛ける。
「ラビエスに言われたこと、気にしてるんでしょう。」
「はい。」
その中で俺の目的は生きる事だった。
別に大したことじゃない。
それを難しく考えてたのかもしれない。
けど、俺が生きるためには、誰かを殺さなきゃいけない。
そんな俺を見透かしたようにシャルさんは言った。
「レイヴンは自分の意志の為ならその他なんてどうでもいいんだよ。自分の思うがまま、好きなように生き、好きなように死ぬ。自分の為、大切な人の為、己が意思のため。君もそうすればいい。」
でも。辛いものは辛い。
「まあ、飲み込めなかったのは仕方ないよ。ココ平和すぎだから。」
そんな世界なんだ。ここは。
それが飲み込めないのは、きっと日本という国に生まれたから。
日本はとても平和だった、といきなりだけど思う。
こんな世界だと、そう思わざるを得ない。
国家解体戦争。
その真っ只中、自衛隊を必要があるときに出すだけで戦火が本土に来なかったのだから。それも不謹慎だと思うが。
でも俺は、生きるためその枠から出た。
村に入れば村に従え、だ。
俺も、そうすればいい。
好きなように殺し、好きなように殺される。
俺はまだ生きたいんだ。
その過程で戦うのが嫌だの好きだのはどうだっていいんだろう。
レイヴンとして染まってしまうなら、思いっきり染まってしまえ。
強要されたとかそんな事関係ない。
俺は、レイヴンだ。
何のためになった?
愉しむ為?
生きるためだろ?
「シャルさん。俺は…」
「おっと、殺人鬼はNGだからね。」
「…はい。」
出鼻くじかれた。
「ごめん、何も無ければ先帰ってて。この後用が…」
「よう、シャル。そこにいるのはアキレスか。」
声を掛けてきたのは金髪の少女。
首輪が歩くたび揺れる。
「あの、どなたですか?」
「私はランク45、ストレイド。シャルの友人だと思ってくれ。」
「そうよ。待ち合わせしてたの。ってことでごめん。また家で。」
シャルさんはそのまま去って行く。
ストレイドさん、か。
今度あったらシャルさんの事聞いてみたいな。
夢の続きを見た。
「どうして人殺しになっちゃったの。」
血に濡れ、そう問いかける紫蘭に、俺は躊躇いなく歩み寄る。
俺は紫蘭を抱き寄せた。
「死にたくないし、お前を死なせたくないから。文句あるだろうが、俺は決めたんだ。」
俺もまた血に濡れる。
だが、そんなことどうでもいい。
そうやってでも生きると決めたんだ。
実力が拮抗している20人の下の30位台は上の奴と取って変わろうと牙を磨く人達の巣窟で普通に強いです。
ネットでは、強さ議論の記事が荒れに荒れてます。
今回は、明らかに実力と順位があってない相手との対戦となりました。(LRで言うクロウプレデター。)
活動報告にラビエスの欄が削除されていたので、まずかったら書き直します。