『クソっ。APが…済まねえ。』
俺は避けそこねてリニアを失っただけで済んだが、ナインさんはパルスが足元に当たり、体勢が崩れたところに垂直ミサイルが降り注いだ。
結果、彼のAPは削りきられてしまった。
煙の中から姿を現すその機体は、肩のバインダーパーツが脱落している。
あれで防いだのか。
APのないナインさんには興味を示さず、こちらを見ている。
『待たせてごめん。二人共。』
シャルさんが降下してきた。
セラフは反応しない。
俺狙いらしい。
「シャルさん。ナインさんを安全圏に連れて行って下さい。奴は俺しか見えてない。」
『何言ってるの!逆でしょ!』
死にに行く気かと怒鳴られた。
「俺が行っても追いかけてくると思います。時間稼ぎなんで回避優先ですから、お願いします。」
『あ~もう!…分かった。何か欲しい?』
「じゃあ、左手のマシンガン貸して下さい。」
『右手じゃ無くて?』
左手のダークスレイヤーが気になるんだろう。
だけど、こいつはちょっと変わってる。
「大丈夫です。持ち替え可能なんですよ、これ。」
そう言ってダークスレイヤーを右手に持って見せる。
すると、そう、とシャルさんは言ってマシンガンを投げ渡してくれた。
『死なないでね。』
そう言うとナインさんに近付いていく。
俺はセラフと真っ向から睨み合う。
ダメ元で通信を繋げた。
「お前は[厄災]なのか?それとも[乱入者]か?」
既にシャルさん達は離脱を始めているが、それでも動かない。
静寂。
だが、依然として敵としてレーダーに映っているので、油断も出来ない。
『…そのような呼称は聞いてませんでした。アキレス。』
「!…会話できたのか。さっきのは?」
いきなり返事が返ってきたことに驚きが隠せない。
まともな思考が出来てそうで、さっきの狂いっぷりが嘘のようだった。
『あれは…忘れて欲しいくらいですね。出鱈目に私の感情を詰め込んだ
「じゃあ、今はあなた自身と言う事でいいんですね。」
オートマタだって?
感情を詰め込んだ?
彼女にはあの狂気に近い感情が有るとでもいうのか?
それを飲み込む。
『ええ、遠隔ですけども。遅れました。私はセレ・クロワール。恐らく、[乱入者]と呼ばれる方かと。』
「セレ・クロワール。今、遠隔操作している理由は有るのですか。」
俺と話す為か。
流石にそれで名前を名乗るのは不用心じゃないか?
そこで、一つ思いつくのは定番パターン。
「『
あの機動が出来なくても直線速度は健在だった。
一瞬でブレードの間合いに踏み込まれ、俺はダークスレイヤーでガードに入るしかない。
最初と同様に吹き飛ばされるが、幸い後ろに建物がなく叩きつけられることは無かった。
セラフは変形し、猛スピードで迫ってくる。
チェーンガンとパルスを俺に向かって撃ちつつ接近してくる。
それを横にズレて回避。
元いたところをセラフが過ぎ去っていく。
そのまま向こうまで行って、旋回。
もう一度向かって来た。
一撃離脱戦法。
AC相手に航空機がよくやる戦法だ。
だが、あれは次元が違う。
あんな速度で、こんな低空を飛びはしない。
緻密な操作と大胆さが無いとやってられないはずだ。
真人間じゃないとか、そもそも人間じゃない、もしくは人間辞めてるかのどれかだ。
同時に、俺を試す動きだ。
高度を上げれば俺に攻撃されないのに、わざわざ低空を飛んでいるのだ。
攻撃のチャンスはある。
もう一度来た。
また横に回避して難を逃れる。
Aiだとしても、あのレベルのAiがいつまでも同じ事するとは思えない。
次で決める。
一つ方法を閃く。
迫るセラフに向けて、俺はOBした。
背中で爆発の光が輝く。
垂直ミサイルが俺の居たところを焼き尽くした。
立ち止まってたら危なかった。
詰まる距離。
俺はセラフにマシンガンを乱射した。
相対速度の関係から、破壊力の増した弾丸。
バラけるため、少しズラすだけでは避けきれない。
セレ・クロワールは流石に嫌がったか、僅かに、だが確かに高度を上げた。
そしてそのままパルスを連射してくる。
俺は滑り込むようにしてパルスと地面の間に機体をねじ込んだ。
つまり、このまま行けばセラフとも正面衝突はしない。
ダークスレイヤーを掲げ
上下にすれ違う。
その時にダークスレイヤーがバインダーに食い込んだ。
その勢いのままバインダーを斬り裂く。
浮力と推力の釣り合いが崩れたセラフは墜落した。
こっちも無傷じゃない。
背中が擦れ、APが減少している。
ダークスレイヤーにもヒビが入り、今にも折れそうだ。
セラフは人型に戻り立ち上がる。
まさか、まだ向かってくるのか。
パルスを必死に回避してマシンガンを撃ち続ける。
左バインダーが半壊しているにも関わらず、中量機並のスピードで動いているセラフに驚きを隠せない。
お互いにボロボロだ。
旋回戦で切り返した時、お互いの距離が縮まる。
はじめから展開しっぱなしのダークスレイヤーを振り下ろす。
対してセラフが紙一重で躱し、拳でその刀身の横を激しく打った。
既にヒビだらけの刀身に負荷がかかる。
そして、ダークスレイヤーは砕けた。
バラバラと破片が落ち、闇に溶けていく。
近接武器を奪ったセラフはレーザーブレードを展開し俺を激しく攻め立てる。
連続したブレードが少しづつ機体を掠める。
そうしているうちに、俺はセラフの真正面で足を止めてしまった。
操作ミスで。
セラフは両腕をクロスし挟み込むようにレーザーブレードを振りかぶる。。
左右への回避は出来ない。
ジャンプは間に合わない。
しゃがんでも、その場しのぎ。
奴はそう、思ったんだろう。
俺は姿勢を低くし、一歩踏み込んだ。
頭の上をレーザーが通り過ぎる。
次の瞬間。
闇が集まる。
セラフの首元から
ケイローンの腕は、セラフのがらんどうの腹部に入れられ、手は上に向いていた。
ナノマシンで形成されるダークスレイヤーは、折れても再展開で修復する事が可能だ。
斬ったり折れたりする度に僅かに短くなるため、何百回も折られる事は想定してないが。
それを悟られたくないので、普段は閉所でもない限り展開しっぱなしなのだ。
そして、セレ・クロワールも引っかかった。
その本人にから通信が来た。
『さすがね、やっぱりあなたは。』
『イレギュラー。彼らと同じ、計画に不要な、排除すべき敵。』
悪寒を感じ、咄嗟に機体を下げる。
ほぼ同時にセラフは爆発した。
自爆だろうな、と思った。
盛大な爆発が視界を覆う。
残骸は、原型を残さなかった。
シャルさんが近づいて来る。
「どうして怒られてるか分かる?」
場所は変わってガレージ。
俺はシャルさんの前で正座させられている。
所謂、お説教ですね。
「回避重視で時間稼ぐって言っといて思い切り攻めてた事ですね。」
完全にスッポ抜けてた。
時間稼ぐのにセラフの下をくぐり抜ける必要は無い。
ダークスレイヤーでフェイントをする必要も無い。
要するに、時間稼ぎのクセして体張りすぎた。
「すいません。火が着いちゃって、つい…」
「つい、で命張らないで!レイヴンだから多少は仕方ないけど、自分が何してるかを忘れないでよ…。」
「仰る通りで…………」
ラビエスさんから言われた事が直ってないと思えた。
自制を忘れないようにしないと。
「まあ、そこまでにしとけよ。アキレスも反省してるみたいだしな。」
「大丈夫、私も分かってる。次も同じ事が無いようにね。」
「分かりました。」
なんとか許してもらえた。
ナインさんに感謝。
「で、彼女について。アキレスが聞いた通り、彼女は恐らく[乱入者]みたいね。」
セレ・クロワールの話に移る。
「何でそう言い切れるんだ?証拠不十分だろ。」
彼女が言っただけに過ぎないそれを信用していないナインさん。
「理由は使用兵装よ。コジマ…ああアキレス、知りたければ後でお願いね。あいつはそれが使用可能なのに、使った?」
「そういやPA展開してなかったな。それにアサルトキャノンも。使ったのは俺たちの攻撃を吹き飛ばしたアサルトアーマー一回だけ。」
「思うに、それは咄嗟に使った筈。QBしか使用する予定しか無かった。しかも、最期は恐らく自爆。原型を留めない程に。技術班が回収の必要がないって言う程の壊れっぷりだったらしい。」
つまり、コジマとかいうオーバーテクノロジーを極力使ってなかったし漏らさなかったという事。
「奴は技術も汚染もバラ撒く気は無かったって事か!」
ナインさんが納得。
ガレージに響く声はご遠慮願いたい。
「[厄災]はそんな事気にしないもの。よって除外。かと言って他があれを手に入れる事なんて出来ない筈。」
「結果、彼女の言った通り[乱入者]の可能性が高いと言う訳ですね。」
なんとなく分かった。
消去法的に[乱入者]と絞り込めた。
「まあ、報告しておくから、二人はあがって。」
ようやく掴んだ敵の尻尾。
一歩前進、か。
長すぎて途中で分割しました。
ぶっちゃけ本気のセラフライザーはオーダーじゃ手に負えません。
ここでは、縛りプレイで戦ってもらいました。
[乱入者]はコジマをばら撒きたくはないそうです。
コメント待ってます。
…欲張りですか?