時期は忘れられた者たちと市街地侵攻阻止の間くらいです。
紫蘭から電話が来た。
どうやら合宿に行く前に顔を合わせたいたしい。
シャルさんに[スカーレットナイト]で大丈夫かと言ったら、あっさり許可が取れた。
「でも、もったいないな。会うだけで済ませちゃうなんて。」
「仕方無いでしょう。こっちは病院のベットの上に居るはずの人なんですから。」
顔を知ってる人に会ったら不味い。
確かに親は既に保護する準備ができているが、企業になんて言われるか分からない。
わざわざリスクを冒す必要は…。
だからニヤニヤした顔でこっち見ないでください。
「でも年頃の男女が、バーで会うだけってね…。」
「だから仕方ないって。」
「その話、聞かせてもらった!」
いきなりバルコニーから声がする。
見るとストレイドさんが屋根から片手でぶら下がっていた。
片手でぶら下がっていた。
何故…?
上がり込んできたストレイドさん。
「確かに付き合ってる二人が会うだけって言うのは味気ないな。よ~し、私がプロデュースしてやろう。」
「だ~か〜ら〜不味いんですって。」
「ならそれを大丈夫なようにしてしまえばいい。」
彼女は端末を取り出し、連絡を始めた。
4つ目の答えに辿り着いた行動力が発揮される。
何を始めたんだ。
見えたのはグループ電話の文字。
しばらくいたずらっぽくにやついいながらの会話が続く。
見ればシャルさんも端末取り出して参加してる。
そして。
「U⚪Jのチケット取れたぜ。後、日程合わせりゃ泊まれる。」
大阪まで行きゃ大丈夫、ということか…。
今、U⚪Jのスポンサーの一つがGAなので、そこ経由なんだろう。
俺は、がっくりと項垂れ手と膝をついた。
いわゆる
orz
の格好だった。
ええい、見た目年齢詐欺軍団め。
こういう話題に目がないんだろうな。
しかしそこでストレイドさんの目がすっ、と細くなるのに俺は気づけなかった。
「そう言えば、お前が知ってる知識で不可解な点があるんだが。聞いていいか。」
「なんです。もぉー。」
打ちひしがれていた俺に追い打ちをかける積もりなのか。
しかし、帰ってきたのは予想外な言葉だった。
「どうしてお前は日本人でありながら国家解体戦争を知ってるんだ?」
「えっ?」
いや、どうして知ってるって、みんな知ってるんじゃないのか?
[日本人なのに、どうして]?
何を言ってるんだ?
「それは私から。彼の父親は有澤重工ノーマルAC開発部門所属。情報統制のランクが引き下がってたの。」
「なるほど、テレビもあのチャンネルが見れるわけか。」
「待ってください!話に追いつけません!」
情報統制?チャンネル?訳がわからない。
「ああ、すまんな。お前は日本が呑気過ぎだと思ったことはあるか?」
「レイヴンになってから、幾らか。」
明らかに平和ボケしている。
ピリピリしてるのは自衛隊ぐらいだ。
「これは日本社会の闇とも言えるんだが、実は日本は情報統制されてて、一般人は国家解体戦争すら知らずに生きてる。知ってるのは関わってる企業の社員だ。」
「そんなものが…知らなかった。」
いや、本当に初めて知った。
そっか、父さんがつけてたニュースの一つがその規制が緩い企業運営の専用チャンネルだったんだな。
「子供くらいには気づかれないよう上手くやってるからな。その内暗黙の了解として知ることになってただろう。」
「それにしてもどうして情報統制を?」
俺の純粋な疑問が口に出た。
その途端、二人が渋い顔に。
あ、こういうのって聞くの不味い部類だわ。
「んまあ、こっち側だから良しとしよう。」
「いいんですか?」
「但し、口外禁止な。」
最近こんなのばっかだ。
「50年ほど前に日本各地で不可解な事件が多発した時期があってな。あまりにも解決できなくて警察や政府の面子が保たなくなった。その結果、国が隠蔽工作をするようになっていったんだ。」
怪事件?
聞いたことが…統制されてるから当然か。
「それが日本全国でシステム化して、今は怪奇現象や都合の悪い物は握りつぶされる。自滅行為だからやらないが、例えば私が素手でレーザー撃ってここら辺一体焼き尽くしても、テロリストのMTが暴走した事になるだろうな。」
怪奇現象の類は消されるのか。
…素手レーザーは置いといて。
「だからそん時、お前は彼女とデートする戦争を知らない一般人なの忘れるな。国家解体戦争に関しては絶対に言うなよ。干された後に消されるからな。たまにはそういうのを忘れて思いっ切り楽しめ。」
清々しい笑顔で親指を立てるストレイドさんがそこにいた。
心の中で叫ぶ。
それが言いたかったのかよぉッ!
あの時とは違い、日程が合った。
そして彼女は普通にOKしやがった。
2日間大阪に旅。
やったぜ。
良くない。
あの、ホテル取ってくれて有り難いですが…。
同じ部屋って問題ありませんか?
幼いとは言え男女を同じ部屋で寝かせちゃイケナイと思うんだが。
そこまでいって、隣の紫蘭を見て俺は気づく。
少なくとも俺は鈍感ではないと思っている。
だがあいつは真っ直ぐ過ぎる。
ある意味鈍感だ。
年齢詐欺軍団め。お前達の想像通りにいくと思うなよ!
と、心の中で宣戦布告した。
そんな俺を見る紫蘭の視線に気づかずに。
続きます。