巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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サブタイで察した人。
手を上げろ。(大塚ボイス)


東の都に咲く緑の華

あれから一週間経った。

曇った昼下り。

俺はベランダで黄昏れていた。

今、宇佐見さんが企業の人脈で紫蘭を探してくれている。

無論諜報部を紫蘭一人に全て回す訳にはいかないので限界はあるし、オーバーテクノロジーを持つ[厄災]相手に何処まで行けるか分からない。

でも、俺が騒いでも何も産まない。

出来るのはGAやFGWの依頼を受けてその活動を援護することぐらいだ。

 

悔しいがこうやって待つしかないのだ。

俺一人でなんでも出来るなんて言うのは無理だから。

 

シャルさんが1階から声を掛けてきた。

 

「アキレス、緋芽見なかった?」

「いいえ。でもシャルさんが来るまで足音しなかったんで、まだ下に居るんじゃないですか。」

「うーむ。分かった、ありがとう。」

 

そう言うとシャルさんは階段を下って行った。

それを確認して、俺は声を掛ける。

 

「そこにいますよね、緋芽さん?」

「…………バレた?」

 

屋根の上からひょっこりと逆さまの顔が此方を見る。

理由は音。

屋根の上でカタンコトン、なんて音は普通聞かないからだ。

 

「着地を雑にする時はベランダを確認してくださいよ。」

「あー、下駄は不味かったか。」

 

下駄にはツッコまずにおいとく。

彼女達が何者か考えると仕方ない事であるからだ。

ゆっくりとベランダに入ってくる。

その動作には重さを感じられない。

 

前々から思っていたが、シャルさん達が[スカーレットナイト]で語った内容は全てが真実では無いと感じていた。

流石にACで戦っているところから見てACを身一つで撃破するのは無理なんだろう。

だけど、真人間程度と言うのも違うと思う。

 

「緋芽さん。」

「何?」

「やっぱり貴方も人外ですよね。」

「…まあ、そうだけどいきなりどうしたの?」

 

恐らく、空を飛ぶ事はまだ出来るのだろう。

今の彼女の動きを見て確信した。

 

「今の動きを見てそう思っただけです。」

「え!そんな不自然だった?」

「いや、少し無重力っぽかっただけです。」

「十分ダメだった!」

 

まあ、そうだと知らなければ【身のこなしが軽い】と思う程度なので大丈夫だと思うが。

 

「そういえば、シャルさんの声聞こえてましたよね。なんで出てこなかったんですか?」

 

それが疑問だ。

何か後ろめたい事があったんだろうか。

 

「いや、厄介事に巻き込まれる予感がした。」

「何ですか、それ。」

 

適当に誤魔化された気がしないでもない。

 

端末のバイブがなる。

ミッションの更新だ。

前の戦闘で企業との関係を切ったので、今は自由に依頼を選べる。

 

 

ズラリと並ぶミッション。

だが、その中で一つきな臭い物があった。

ミッション名も依頼主の名前もないミッションだった。

しかも俺だけを指名している。

 

シャルさんに念のため相談するか。

 

「緋芽さん。俺、シャルさんに話があるんで下行きます。」

「りょーかい。」

 

 

 

 

「あなたも?私と緋芽達にも来てるんだけど。」

 

シャルさんの所にも同じ様なミッションが来ていた。

さっき探してたのもこのためか。

 

「私のを開いてみる。あなたのはまだ開かないで。」

 

しばらくして、ファイルの再生が終わったのかこちらを向く。

 

「私達は受けようと思う。恐らく送り主は[厄災]、私達への挑戦状よ。」

 

予想外の事態に驚くしかない。

相手からの接触。

 

「あなたも受けるなら、ミッションをそのまま受け取ると痛い目を見る。必ず想定外に備えてからにしてね。」

 

ACのセットアップに行くのか、シャルさんはガレージに向かう。

 

俺もミッションファイルを開いた。

 

 

 

 

 

 

『やあ、はじめまして。』

『ミッションを説明するよ。』

『君にはこれから、こちらが東京に展開した兵器を撃破して貰いたい。』

『こちらの兵器の戦闘テストだ。』

『弾は実弾を使用。そちらが負けたら最悪死ぬけど、まあそのつもりで。』

『受けなかったらどうなるか?そのまま暴れて帰るよ。』

『いい返事を待ってるよ。』

 

おい、今東京で、って言ったよな。

まさかこいつ、避難もしてない都内で規格外兵器を使う気か?

 

今までの話を聞くに、やりかねない。

 

急がないと。

もう展開して始めてるかもしれない。

なんせミッション開始時刻が着々と迫っているからだ。

俺はガレージに向かって飛び出した。

 

 

 

 

 

 

首都東京への直接攻撃。

それはあまりにも非道で常識外の行動だ。

 

ヘリに揺られながらシャルさんに連絡をとる。

 

「シャルさん。こっちは東京への直接攻撃の阻止です。」

『確か、unknownとストレイドも同じ依頼だった筈。何故わざわざ別の依頼として出したのかしら。」

 

つまり、味方がその二人はだと言うことだ。

通信を繋げる。

 

「恐らく協働します、よろしくお願いします。」

『こちらストレイド。今シャルに聞いた所だ。こちらからもよろしくな。』

『こちらunknown、同じくよろしく頼む。』

 

あのオーエンさんに似た姿でモニターに映るunknownさん。

一度あの姿を見た側とすれば、どちらが素の姿か分からない。

 

 

作戦開始時刻が迫るその時。

 

『そこのレイヴン。何故ここにいる!』

 

自衛隊のノーマルが来た。

よく考えれば、いきなり避難も済んでない街に現れたら、当然自衛隊が出動するか。

 

『こういうメッセージが届いたんだ。東京を襲撃すると。』

『馬鹿を言え、襲撃するのはお前達じゃないのか。』

『そのメッセージを今送る。確認してくれ。』

 

場が膠着する。

 

『…RLMMを介した依頼、確かだな。これで何も来なかったらあちらの契約違反だな。』

「良かった〜」

 

自衛隊も相手になるのかとヒヤヒヤした。

相手が正規ルートで依頼くれて助かった。

 

『だが、自衛隊として放置できん。依頼が終わるまで協働及び監視をさせてもらう。街や我々に故意の攻撃したらどうなるか、分かっているな。』

『ああ、了解した、識別信号を送る。』

 

その刹那、少し暗くなった気がした。

上を見上げる。

ACと思われる人型の影が少しづつ大きくなる。

 

「皆さん!上から!」

 

全員が一瞬で蜘蛛の子を散らすように散開する。

衝撃と土煙を上げてそいつは着地した。

 

自衛隊から共有した情報によると避難はまだ7割を超えてない。

嫌なタイミングで敵はきた。

 

『馬鹿な、なんでこいつが…』

 

unknownさんが掠れた声で呟いた。

ストレイドさんは怒りに塗れる。

 

『なんて物を持ち出すんだ…巫山戯ているのか。こいつで都心を廃都にする気なんだな。反吐が出るよ。』

 

二人はその一般的なACよりも二回り大きな人影に呼びかける。

 

『『00-ARETHA(アレサ)!!』』

 

その声に答えるように、巨大な砲身をこちらに向けてきた。

三人揃って散開し、元いたところを緑色の閃光が走る。

ビルに着弾し爆発。

ビルはそれに耐えられず崩壊し始める。

あんなのを食らったら保たない。

 

『散開の後各自応戦!早急に撃破しろ。」

 

そう言いって放たれた様々な弾丸はアレサに

 

 

 

 

当たらなかった。

 

目の前で実弾は見えない壁に当たったかのように弾かれ爆散した。

 

今、自衛隊が搭乗しているノーマルはGAの[GA03-SOLARWIND]

その自慢の火力は全て弾かれた。

 

そしてアレサは消えた。

そして、次に現れたのは自衛隊の後ろ。

その動きに見覚えがあった。

 

「セラフと同じ!?」

『全く同じ技術だ。』

 

あんな化け物機動とあの防御力相手にどう戦えばいいんだ。

俺とガトリング砲を向けられた自衛隊が同時に思った事だった。

 

しかし、ガトリング砲を構えたアレサは、急にまた姿を消した。

そこに突き刺さる蒼い光。

 

『よく聞け!奴にはレーザーは無効化出来ない!それにあの防御も撃ちまくれば消える!心折んな!』

『俺たちが引きつける。隙を見て撃て。』

 

二人が周囲を鼓舞しだした。

俺にも通信が入る。

 

『お前の散布型ミサイルは切り札だ。確実に当ててけ。』

「えっ!いきなりどうして?」

『散布型ミサイルはアレサのPA…さっきのバリアっぽいやつをを効率よく剥がせる武器なんだ。タイミングを合わせて、お前のミサイルの後に十字砲火だ。行くぞ。』

 

いきなりとんでもない事言われた。

 

「どうやって当てるんです!」

 

あの機動をする相手に当てる。

どれだけの難度か想像に難くない。

 

『あいつは空を飛び辛い上、旋回性に難がある、直線的な場所を取ってすれ違いざまに放てば当たる筈だ。』

『あいつにとって、此処は相性が悪い筈だ。上手く翻弄してやてばいい。俺達が誘導する。』

 

弱点はあった。

恐らくさっきの反応からして、二人はこいつと戦った事があるんだろう。

なら信じるしかない。

 

二人は自衛隊と連携し、場所取りを始めた。

囮をしながら。

 

俺も時折前に出つつ準備をしたが、二人の実力には恐ろしい物があった。

 

動きを読み、二人の呼吸を合わせる。

アレサが入れなさそうな道に入り、そこを右手の火器で撃ち抜こうとすれば、もう一方から邪魔される。

そして、そちらを向くころにはさっき狙っていた方によって死角からミサイルを撃ちこまれる

連携し、翻弄する。

 

更に恐ろしいのが。

後ろが見えているのかと思わせる動き。

後ろに回ったアレサの攻撃を避け、小道に逃げ込む。

そんな真似、自分には出来るとは思えない。

 

そう考えつつ、リニアで足元を砕く。

さっき分かったが、リニアも威力が削がれるが貫通はする。

恐らく弾速と弾の強度が重要なのだろう。

ミサイルなど爆発物を一気に仕掛けられるとPAの損耗が激しいとも思える。

連続しての被弾を避ける動きをする。

そして、EN管理が杜撰だ。

足が定期的に止まるから、そこを狙って撃てば当たる。

 

足元を砕かれ体勢を崩されたアレサの敵意はこちらに向く。

 

『不味い!逃げろ!』

 

俺は気付いた。

例のポイントまであと少し。

この先のビルに囲まれた直線路。

俺について来るなら。

 

そのまま俺は後退した。

アレサは食らいついてくる。

 

『馬鹿!功を焦るな。』

 

それでも俺は真っ直ぐ進んだ。

ガトリングと光学兵器の嵐を掻い潜る。

 

(一か八か!)

 

苦し紛れにリニアを放つ。

それは吸い込まれるように。

 

 

 

ガトリング砲に当たった。

砲身ではなく基部に。

使い物にならなくなったガトリング砲を投げ捨て接近してくる。

 

あと少し。

ミサイルを撃ち込む。

早いが、ここで大きくダメージを与えられれば後が楽だ。

そして、やつにミサイル命中した。

 

俺は背を向けてOBを使い引き離す。

筈だった。

 

気づけば奴の背中が見えている

追い抜かれた。

後で聞いた話に依ると敵もOBで俺を飛び越したらしい。

このままでは逃げられる。

 

「コンのォォォォ!」

 

俺はリニアを投げ捨て奴の背中を掴んだ。

捨て身覚悟で左足の膝関節を月光で焼く。

レーザーブレードなら触れるだけで敵を焼ける。

 

左側の足を失い、機体が傾いて転倒。

俺も地面に機体を打ち付けた。

 

なんとか立ち上がる。

アレサは倒れたままだ。

 

俺は近づいてミサイルを撃ち込む。

これで十字砲火で終わるはずだ。

 

だが、アレサが急に光りだす。

 

『アキレス離れ…!』

 

激しい衝撃が俺を襲う。

 

ブラックアウトしかけた視界に入る高度計は70m。

まだ上がる。

俺を吹き飛ばしたんだ。

 

アサルトアーマー。

後で知ったこの兵装の名前だ

 

全てがスローになる中目に入った。

アレサがこちらに緑色の光を向けている。

例のキャノンだ。

 

『避けろアキレス!!」

 

そこからは無意識だった。

月光が光りだす。

奴がそれを放つか放たないかの境に、俺は無我夢中で振った。

 

 

 

 

磁力で制御される粒子(コジマ粒子砲弾)最大出力の磁気反発器を持つブレード(ムーンライト)で斬り裂く。

視界が緑色に染まるが、ロックは外れていない。

視界が晴れた瞬間にトリガーを引く。

 

 

そして、俺のミサイルとノーマルのグレネードの雨がアレサに降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初のネクストに拘りすぎたか。」

 

戦いを見て関心したかのようにつぶやく。

 

「まあいい、これで敵意の大地に種を蒔けた。後は…。」

 

 

 

 

「例外を否定するだけ。」

 

男はそこを去った。




「アレサはこんな弱くねぇ!」
と思う方もいらっしゃると思います。
ですが、あの機動と巨体、旋回性能は都市戦には不向きと考えた結果です。
思いっきりビルに突っ込みそうで…。
異論は認める。

市街地戦は普通のネクストの方が寧ろ強いかと。
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