巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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ちょっと新しい事してみました。
場面が変わるときが分かりづらかったので。


続、背負いもの〜楽園〜

俺を乗せた車は森の中をずっと走り続けている。

右も木、左も木。

それが既に数十分続いている。

少しづつ登っているのは何となく分かった。

 

だが、ただ退屈だった訳じゃなかった。

俺達を襲った機体とその発展機。

その話を聞けた。

 

 

 

ネクスト。

 

そしてアレサはそのプロトタイプだ。

莫大な出力と、それに裏打ちされた圧倒的な機動力。

それを制御するために脳と機械を直接繋ぐインターフェイス、AMS。

プライマルアーマーといわれる粒子装甲からくる高い防御力。

次世代に相応しい性能を持つそれは、その他の兵器とは次元が違うもの。

それを支えていたのはあのコジマ技術だ。

 

この世界ではそれを折ったせいでネクストは誕生せず終わるはずだった。

だが、結局それは[厄災]によってなされた。

アレサを使い、あたかもそこから技術を得たように見せてコジマ技術をこの世界に解き放った。

ストレイドさんとunknownさんはリンクス―――AMS手術を受けたネクストのパイロットを指す―――でネクストのある世界で戦った人たちだ。

だからこそ昔見たような荒廃した世界にしたくてコジマ技術を見せるのを躊躇ったんだ。

 

 

 

 

 

「あと少しで境界に着く。まあ、その後も十分くらい走るがな。」

 

境界と言うと、そちらとあちらを分ける境界か。

 

そう思った瞬間、左に人工物が見えた気がした。

石段?

しかし車がそれなりの速度で走っている為、すぐに見えなくなる。

 

 

道は続き、小高い丘の麓まで来た。

 

だがその丘はただの丘ではなかった。

トンネルが掘ってあり、そこに大きな扉がついている。

その扉が開いた。

そのままトンネルを進むと同様の扉。

 

(外と内で2つの扉。まるで宇宙用のハッチみたいだ。)

 

少しして、扉が開く。

 

目に飛び込むのはまた一面森。

だが先程の森よりも生気が感じられた。

 

そしてそこから山を登り始めた。

何箇所か見晴らしのいい所があり、そこからこの辺りを一望できた。

 

山に囲まれ、その中央部に都のようなものが見えた。

文明レベルを固定してるっていうのはここか。

確か人々がこのまま進歩することなく生かされている状況に喜びは感じない。

だが、進んだ結果争いしか生まない今の俺達は彼らにどう映るんだろう。

 

 

 

山の中腹の路肩に車は止まった。

 

「着いたぞ。中に案内役がいるからそいつについてけ。俺は車を置いて報告しに行く事があるからな。ほっつき歩いてると野良に喰われるからとっとと中入れよ。」

 

と言われても、森の道のど真ん中。

建物らしきものは見えない。

しかも、ここで一人で行動だなんて。

 

「何処からか何の中に行けばいいんですか?」

「おおっと、俺が居ちゃ見えねえな。ほれ、体乗り出して俺側を見てみろ。」

 

そこには斜面に取ってつけたかのように無機質な金属のドア。

関係者以外立入禁止とついてても違和感無いと思う。

 

 

「じゃあな。後で合流できる筈だから、しっかり診てもらえよ。」

 

そう言って俺を置いてオヤジさんは行ってしまった。

扉の方に足を運ぶ。

そして、扉の前で立ち止まって深呼吸をする。

 

確かにここは怪物たちが跋扈する世界だ。

だけど一応協力者の身、開けたら喰われるとかそういうミミック的なトラップは無い筈だ。

 

意を決して扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い通路の先にまた扉。

 

 

 

 

 

 

 

思わず膝をついた。

 

そうだよ、ここは軍事施設のようなものでもおかしくないって予測はつくだろう。

そんな軍事施設が扉一枚で中に繋がってる訳ないじゃないか。

 

気を取り直しまた扉まで歩む。

 

そして、扉をまた開ける。

 

 

 

 

目の前に、視界を埋め尽くすぐらいのでっかいリュックがゆさゆさと揺れていた。

一瞬ビビった。

 

 

「お、来たか。」

 

リュックの持ち主は振り向き、その姿を見せる。

そのおかげで、周りの風景とリュックサックの持ち主の姿が見えた。

どうやらここ機動兵器のハンガー、そのキャットウォークらしい。

ACと見たことない兵器がずらりと並ぶのは壮観だった。

 

そして、リュックを背負っていたのはまた少女。

FGWって女性率高く…ないか。周りに見える整備士っぽいのは男女半々ぐらい。

単純にめぐり合わせか。

 

「君がアキレスでいいな。」

「はい、今日はお願いします。」

「こちらからも。今日案内役を務めさせていただく、[河城にとり]だ。ここの開発設計の主任をさせてもらっている。」

「…川城主任が自ら案内を?」

 

立場的におかしくないかな?

流石に部下なんかでいいと思うんだが。

 

「いやー、今日は周りは忙しいのに私には大した仕事が無くてね。いつもは変態達が変な設計図を持って認可を求めに来るんだ。パイルならまだしも実用性皆無の品に予算出せないからね。あと、呼ぶ時はにとりでいいよ。」

 

パイルならいいんだ。

多分変なのばっかりで基準を下げなきゃやってられないのかな。

 

「昨日は酷かった。流石に60㌢コジマ砲台を山の頂に設置するのはね。」

「却下して正解だと思います。」

 

にとりさんがゲッソリなって言った言葉を、俺は肯定した。

そりゃあパイルがマシになる。

せっかくの住処を自分たちで滅ぼす気なのか?

っていうか、コジマ研究所潰したのあなた達ですよね。

 

「話が逸れたね。今から検査室に行くからついてきてね。…ああ服もあっちで着替えてもらうから。」

 

 

 

 

そうしてにとりさんに案内されキャットウォークを進む途中、機体の方から視線を感じ、思わずそちらを見た。

 

そこには、大きさの違う二機の機体があった。

共通点としては、純白で頭に一本の角のような部品がある事だが。

 

「どうしたんだ?」

「いや大丈夫です!今行きます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きい機体のバイザーの奥が鈍く光ったのに気付いた者は、この場にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し浴びてるけど、あくまで皮膚の表面。遺伝子系や内蔵までは汚染なし。若いから汚染されて死んだ皮膚細胞も代謝で落ちるし大丈夫そうね。」

 

結果、大事には至らなかったらしい。

思わず安堵する。

 

「よかった〜」

 

しかしそうは問屋が卸さなかった。

医者の方が声を荒らげる。

 

「良くない!知らなかったからって、いくらなんでもあの戦闘は無茶し過ぎです!もう少し自分を大切にしてください。」

「…すいません。」

 

実際そうなので謝ることしかできない。

捨て身グセどうにかならないかな、と自分でも悩んでいる。

 

「とりあえず、皮膚組織は汚染されてるのでシャワーを浴びてください。そこで皮膚表面をよく流すこと。コジマは触れる事で害を及ぼしますから、放置しないでくださいね。」

「じゃあ、案内しますね。失礼します。」

「待った。」

 

にとりさんが立ち上がり俺を連れて行こうとした時、医師の方に止められた。

 

「川城開発主任、貴女が水場に人間と一緒に行くのは考えものなんだけど。」

「おっと。最近おとなしくしてたからね。無意識に客人の尻子玉抜いてたら大惨事だ。」

 

なんか不穏ですが…。

尻子玉って何ですか?

 

 

不意に扉が開いた。

 

「アキレス。あんたも来てたのね。」

「unknownさん。いらしてたんですか。」

 

何とunknownさん、いきなり入室。

しかも女性の姿で。

ノックしてくださいよ。

 

「ちょうどいい。unknown、シャワーまでこの子を連れて行ってくれる?」

「む~。しょうがないわね。こっちよ。」

 

むくれつつ案内してくれる彼女についていった。

 

 

 

 

「そういえば、unknownさんってどっちが本当の姿なんですか?気になって仕方ないんですよ。」

 

前からの疑問をぶつけてみる。

果たして、男性のフリした女性なのか。

女性のフリした男性なのか。

 

考えといてなんだが、ややこしいな。

 

「一応、こっちが本来の姿よ。でも、〈どっちが〉って聞くのは違うわね。」

 

unknownさんがこの前のように姿を変える。

しかし、その姿はいつものオーエンさんのような好青年ではなかった。

 

「ふーん。それなりに鍛えてるのね、あんた。」

 

その姿と声は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が…いる!?」

 

目の前に鏡に映したような姿が現れる。

どうやら変幻自在らしい。

 

「俺は実在する、もしくはした人物なら何でもなれる。潜入では重宝してるんだ。」

「口調や声まで寄せるんですか。下手を打たなきゃばれませんね。」

 

驚くべき能力だ。

だがunknownさんは急に考え込んだように黙った。

そして顔を上げた、真剣な顔でこちらを見てくる。

俺も気が自然と引き締まる。

何か大事なことなんだろう。

 

「……俺はこれからお前の癪に障ることをするだろう。後で埋め合わせはする、だから止めないでくれ。」

「一体……あ、何となく予想できました。構いません。それにちゃんとした理由があるのなら。覚悟します。」

 

今の光景の後なら分かる。

さっきの言葉、それは体そのものが変質しているということ。

つまり彼女が今、どんな姿をしているかも分かる。

そしてそれがどれだけ苦痛であるかも。

だが、ただ苦痛を与えるためにするとは考えづらい。

 

「恐らくお前にとって残酷で認めたくない事実が突きつけられる。それでもか。」

「言いました、覚悟はすると。」

 

そして、目の前で俺だった姿がみるみる変わっていく。

 

そして少女が姿を現す。

それはしっかりとした人型を保っていた。

俺は安堵する。

まだ、手遅れじゃない。

しかし、彼女は小さく呟いた。

 

「憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い。」

「unknownさん?」

 

どうしたんだ?

鬼気迫った声に俺は困惑する。

彼女は続ける。

 

「私の夢の舞台を奪った。私を守ってくれなかった。私を置いていった。」

「……!」

「なんで?あなたは私の夢を笑わなかったじゃない。どうして……。」

 

そこで、unknownさんが元の姿に戻った。

目を背けている。

 

「……今のは紫蘭の言葉でいいんですか。」

 

何も言わず目を伏せる。

肯定と取っていいんだろう。

今の言葉は紫蘭が考えてることをunknownさんが代弁した形だ。

なら。

なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ…ハハッ、アハハハハハハハハっハハハハ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ…ハハッ、アハハハハハハハハっハハハハ」

「アキレス、気をしっかり保って!」

 

やはり、やるべきではなかった。

心を壊してしまったら、取り返しがつかない。

私は心から後悔した。

 

「ハァ……。大丈夫ですよ。まだ希望はあります。本当に紫蘭をそのままトレースしたのなら。」

 

狂っていたような笑いが収まり、そこには落ち着いた姿を見せるアキレスがいた。

今ので希望はある?理解が出来なかった。

しかし、彼の言葉には確信めいた何かを感じた。

 

「大丈夫なのね?」

「ええ、っとシャワーを忘れそうです。そろそろ行きましょう。」

 

そう言って案内を促す彼。

 

「…そう。何かあったら誰かに言うのよ。」

 

そして歩みを始め少したころ。

彼はつぶやいた

 

あいつまだ癖抜けてねえな。」

 

 

聞き取ることは叶わなかった。




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