あまりにもぶっ飛んだ依頼が多くて最近感覚が麻痺している。
そう思ったのは端末に表示される依頼が平凡に見えたからである。
その中には
【インテリオル、高額報酬、前払い、敵詳細不明】
と、あからさまな【騙して悪いが】まで含んでいる。
ちなみにこの名称はナインさん考案らしい。
そう言い放ったレイヴンを返り討ちにしてから口癖になっていて、こっちで知り合いになったレイヴンに話したら広まったらしい。
閑話休題
そんな依頼まで普通に見えるあたり、だいぶあの人達に毒されたみたいだ。
そう言って例のミッションのファイルを開く。
【ミッションを説明します。】
【依頼主はインテリオル。目的は指定区域の探査です。】
【ここは境界線が不明瞭な上、国連軍の配置はいまだに掴めません。】
【そこでレイヴン、あなたの出番です。その武力をもって威力偵察をし、今後脅威になるものがあれば、その場で破壊してしまっても構いません。】
【私達は貴方を高く評価しています。良い返事を待っています。】
やっぱり信用ならん。
報酬が一人で要塞に破壊工作しに行くレベルだ。
いくら危険地域でもこんな報酬を提示するのはおかしいし、何より全額前払いだ。
絶対オーダー2機は覚悟しておいた方がいい。
大体、【騙して悪いが】は公開依頼に見せかけて個人に送られる。だが、そういう機能があるのではなくクラッキングして行われたものだ。
【騙して悪いが】はRLMMの規約に違反する行為なのだが、既に企業等にとって都合の悪いレイヴンを消すための常套手段なので対処が間に合わないのが実情である。
対処法は無視するか、あえて引き受け相手の想定を超える暴力で報酬を掻っ攫う。
更に、受けて虚偽の依頼だった場合は報復ミッションまで付く。
シャルさんをはじめとする上位レイヴンからは金蔓扱いされる辺り、強者には効き目が薄いらしい。
さて、受けたら何が来るんだろうとわくわくしているのは内緒だ。
一旦閉じて、また別の依頼を見始める。
嵐の前の静けさと言うべきか。
どれもつまらなそうで、結局騙されたフリをする事にした。
さて、敵さんは誰だろう。
◇
【ミッション開始。指定されたルートを巡回し情報を集めてください。】
ACは、通常の兵器に比べて平均的な隠密性は低い。
戦車より大きく、航空機以上の熱量を撒き散らす為発見は容易だ。
救いと言えば前後幅とアセン可能な事で、伏せていれば発見率は下がるし、放熱性能を捨てれば赤外線の放射を抑えられる機体にできる。
だが、ホームグランドで使うべき利点だ。
だから、攻略系の作戦は開始時点で既に発見されていると思って行動しなければならない。
今回は武力をちらつかせて様子を見ることだから寧ろ好都合。
歩兵のRPGに警戒しながら進む。
さて、変な兵器もネクストもまだ見えない。
流石にネクストは早すぎるか。
そんな事を考えつつ森の奥深くへ進んでいく。
監視らしき人影がちらほら見え始めた。
ここら辺があちらにとっての境界線らしい。
マップにマークしつつ境界線になりそうな地形をなぞって移動する。
(随分と奥あったな。何も無かった場合のUターン地点まであと少しだったぞ。)
いくらお互いに探り合い続けてるにしては控え目な位置だった。
その時、レーダーが反応。
【警告。3時の方角から正体不明機が接近。】
俺はバックステップで後ろに飛ぶと、そこに飛び込むように影が突っ込んできた。
地面が激しく抉られ、吹き飛んできた土砂が機体を打つ音が響く。
只の着地がここまでの破壊力を持ちはしない。
武器を使用されたと見て間違いは無さそうだ。
土煙が晴れた先、オーダーACが佇んでいる。
『へえ、面白い奴だな。だけど依頼だから消えろ。』
アマジーグさんに似たフレーム構成。
だが大きく異なるのは右手に射突型ブレードが輝いていることだ。
【ランカーAC、パークウェイです。レイヴンはK.K。右手の射突型ブレードは非常に強力で、接近戦は極めて危険です。機動力を活かした戦闘スタイルと予想されます。】
『補足です。GAの情報によると、彼は最新の技術を用いアップデートした強化人間です。どれほどの力を持っているかわかりません。気を付けてください』
来たかAC。
寧ろ待ってた。
OBで迫ってくる敵にマシンガンを放ちつつ、左に避ける。
『逃がさないよ。』
が、しかしそれでも尚追い縋ってくる。
右腕はもう引き絞られており、ショットガンを放ちつつ距離を詰めてくる。
機動力はあちらが上。
ならこちらは相手に都合のいい場所を取られないように立ち回る戦い方が望ましい。
それなら、後手に回ったこれにどう対処する?
切り替えしても間に合わない。
後ろに下がっても追いつかれる。
正直パイルだけは勘弁願いたい。
まだ空いてる空間があるじゃないか。
ACなら使える空間。
俺は彼を飛び越えた。
俺がいた空間に突きが放たれ、空気が衝撃を伝える。
お互いに背後を向けあってる状態からレーダーを頼りに右に移動しながら左旋回した。
敵は後退しながら左旋回。
結果、距離が離れショットガンの推奨射程から外れる。
すかさず散布型ミサイルを垂直連動も一緒に撃ち込み、左に切り返す。
K.Kはショットガンで正面に引き付けたミサイルをまとめて撃ち落としたが、そのため奴はミサイルをロックしたことと爆炎で俺が切り返したことに気でづくのが遅れた。
「そこぉ!」
隙を見せたK.Kの右側面にマシンガンの弾丸を叩き込む。
右腕に刻まれる弾痕。
だが、俺は舐めて考えていた。
一発逆転兵器の恐ろしさを。
『うざったいな。』
何を思ったかK.KはOBを起動した。
そして、マシンガンの弾丸の雨を突っ切ってまっすぐこっちに向う。
後ろで垂直ミサイルが地面に激突し、爆炎が彼の機体をシルエットだけにした。
多数の被弾をものともせずパイルを起動。
不味いと思った俺はバックステップする。
だが、パイルを普段から使っている彼には、意味のない行為でしかなかった。
それでできた空間を埋めようといわんばかりに、K.Kは大きく一歩を踏み出し間合いを詰める。
そして、杭は打ちだされた。
それは、右肩とコアの上部の装甲を食いちぎり内部を露出させる。
同時にAPがごっそり持ってかれた。
【右腕部損傷】
【コア損傷】
「くぅ…こぉのぉぉぉ!」
突かれた反動を利用して左足で回し蹴りをする。
が、上体そらされもう一発パイルを撃ち込んできた。
パイルバンカーの威力は一発で戦局をひっくり返してしまう。
だから多少の被弾を避けるよりは、当てることを優先する。
そんな一撃を咄嗟に左に機体を飛ばして避けることはできた。
『逃げるなよ。めんどくさいだろ。』
「そうかい、お前も言えるんかよ。」
吐き捨てた後、足止めに二種のミサイルを放つ、と同時にマシンガンをまき散らしつつ距離を潰そうと前進した。
だが、彼は足止めの拡散したミサイルの隙間を、すり抜けた。
俺は目を疑った。
正気か?
ショットガンで弾幕を張り、俺の動きを鈍らせる。
そこで垂直ミサイルが食らいついてK.Kの動きを止めた。
『忘れてた。まだ勝ってるから、仕切り直そ。』
当たっても全然喜べない。
動きが違う。
何だあれ、滅茶苦茶だろ。
だが、乗り越えなきゃ。
プロトタイプネクストも倒しただろ。
『逃げなかったよ。次はお前の番だ。』
「そうだな。」
他人の土俵にすぐ乗っても碌なことはない。
そこまでの経験が違うし、それの猿真似なんてもってのほかだ。
だから、俺なりに逃げない戦い方をさせてもらう。
『なら、死ね。』
そして物騒な言葉を放ってOBしてくる。
俺もマシンガンを撃ちつつ前に進む。
さっきの乱射で弾を切らしたのか動作不良か、ショットガンを撃ってこない。
詰まる距離。
そのまま交錯する。
と見せかけて、俺は相対距離が100m程ある状態で空を飛んだ。
まるで彼をハードルに見立てるような、低いジャンプ。
そのままいけば飛び越せただろう。
相手が直進していれば。
『同じ手をなんども喰らうかよ。』
正面下方に影が浮かぶ。
彼もまた跳んでいた。
既に拳が引かれ、アッパーカットの如く打ち出そうとしている。
だがそれが狙いだ。
「同じじゃ、ない!」
俺は空中に飛んだ時点で月光を振りかぶっていた。
そのまま、ブレードホーミングでK.Kに吸い寄せられるように、接近する。
『なっ!』
先に動いてた俺の月光が、K.Kの機体の左腕を斬り裂いた。
だが、この程度で奴が止まるわけがない。
『…っぶないなぁ!』
敵の射撃兵装がロケットだけになったのはでかい。
だが、まだパイルは残っている。
油断すれば一発でまたひっくり返る。
距離を離そうと後退しつつミサイルを撃ち込む。
しかし、一回横に動いてからOBしてミサイルを躱したK.Kに距離を詰められる。
右手を斬りおとした事でAPはかなり削ったはずだ。
と、同時に警戒もされている。
決めるなら次だ。
『墜ちろ。』
「沈め。」
パイルを身構えたK.K。
普通ならここでブレードを振るものなら、タイミングを見切ったK.Kのパイルが当たる。
だがそれでも、俺は月光を起動した。
あくまでさっきの話は、タイミングが合えばの話だ。
なら、ズラせばいい。
きっと、K.Kから見たら、俺は急に大きくなったように見えただろう。
今の今まで使ってなかったOBを起動した。
月光がパークウェイに襲いかかる。
俺の左腕が奴の機体の右腕にぶつかり、明後日の方向に杭が放たれる。
『邪魔だなぁ!!』
そこで強化人間の特権を使われた。
「なぁ!!っがあああぁっ」
なんと右手で俺の機体の頭部を掴み、地面に叩きつけてきた。
揺さぶられる中、俺は思考を辞めなかった。
恐らくこの前俺がアマジークにやったようにマウント。
だがあいつは確実にとどめを刺してくる。
なら、やられる前にやる。
そして奴はその通りに俺を跨いぐ。
だがパイルが向けられる前に俺はマシンガンを構えた。
至近距離連射。
どんどん目の前から装甲の破片が降ってくるがやめはしない。
そして、一マガジン打ち切った。
そこには穴だらけのACがいた。
やりすぎたかも。
「自分でやっといて難ですが、生きてますか?」
ダメもとで聞いてみる。
まあ、これで死んでてもどうすることもできないし何かすることがあるわけでもないが。
『……それ、さんざんやっといて違うと思う。殺す気だったんなら殺りきれよ。』
ため息が出る。
その息に何が混じってたのかは考えない。
「とりあえず、俺の勝ちです。通してもらいますよ。」
そう言ってパークウェイの下から機体を引きずって出る。
『……もう帰った方がいい。俺はインテリオルから依頼を受けた。狙われてる。』
「心遣い有難うございます。偵察任務なのでもう帰っても問題ないはずなので。では。」
そう言ってきた道を引き返した。
幸い、二機目に遭遇することはなかった。
あの人、強かったからな。
◇
「強かったなあいつ。」
回収しに来たヘリにつられてそうひとり呟く。
確かにまだ自分の方が上だと言い張りたい気持ちは無くは無い。
だが、負けた事実は揺らぎようがない。
勝った方が上だ。
そしてあいつはまだ伸びしろがありそうだ。
「あいつはどこまで行くんだろう。」
不思議と期待していた。
◇
帰ってきてシャルさんにリビングに来るように告げられた。
何か大事な話があるのかと思い、気が引き締まる。
満を期して中に入るとテレビがついていた。
シャルさんは横に座るように促してくる。
「何が始まるんですか。」
「まあ、見てて。」
一緒にテレビを見るだけなのか?
そのテレビのチャンネルは情報統制ワンランク引き下がってる人が見れる特殊チャンネルだ。
ニュース番組で、今日の出来事が淡々と流れる中、緊急速報が入る。
『GA代表取締役、宇佐見菫子氏が緊急記者会見を開くそうです。どうぞ。」
スタジオから記者会見会場へと映像が切り替わる。
カメラの音が断続的に響く中、あの人は姿を現した。
凛とした姿で壇上に上がる姿は、俺に意見を求めてきたあの時を思い起こさせる。
『今日私がここで言うのは、世界を揺るがしかねないことです。その事を理解しておききください。』
そして、彼女は会場を見回す
『我々の社の方針を大きく転換します。そしてこれは、今現在の戦争の戦局を大きく左右することです。』
『我々GAグループは企業陣営を抜け国連軍を全面的に支援、国連軍に加担します。』
「………………………ええええええええぇぇぇ!!!」
カメラフラッシュも俺の叫びと同時に激しくなった。
その場にいたもの全員が一瞬、呆気にとられていたのだ。
そして、具体的な内容が宇佐見氏から告げられることになる。
言い回しに自信がありません。(主にニュースと記者会見もあたり)
間違いや不適切な表現がありましたらご指摘お願いします。