自分で気づいてない矛盾がないかハラハラ。
あったら、異議あり!と、勢いよく指摘しちゃってください。
…作者が泣かないくらいに。
『練!こっちは片付いた、もういいぞ!』
その声で、俺は作戦の成功を確信した。
後はこの機体からペイルアウトして囮にして領域離脱。
紫蘭を保護してもらうだけ。
その直後、空できらりと何か光る。
レーダーに新たな反応が上空に出現したが、LOOKの文字が浮かばない。
――照準は紫蘭。
「紫蘭危ない!」
その事実に思わずかばってしまい、レーザーをその背に受けた。
「…くそ、こうくるかよ。」
練はすでにAPなど0になった機体の中、朦朧とする意識でコマンドを入力する。
この世界のAPは元から余裕をもって設定されている、とシャルの話を思いだしていた。
それは、APの表示がたとえ0になろうとも理論上まだACは動かせることを示している。
落下しているのもかかわらず、紫蘭は困惑しているのか減速しようとしない。
元恋人、兼、命を狙った殺人鬼が急に抱き着いたと思ったら、急に背中が爆発。
まあ、そうなるだろう。
[システム起動]
強制的に再起動し、APのリミッターを解除する。
それとと同時に機体の自己診断が始まる。
結果は凄惨たる機体状況だが。
[OB、下部二基破損]
先程の攻撃でOBの半分が死んでいた。
着地するための出力はこれで足りるかどうか。
だがここまでやってきて諦めたくはない。
先程と立ち位置を入れ替え、自分が下になる形でOBを起動。
減速していく機体のコックピットで、練は正面から抑えられるようなGを受ける。
足のスラスタ―を制御し、どうにか進行方向を水平に向けた。
だがその先には10階ほどの建物が立ちはだかる。
「間に合ってくれぇ!」
速度は確実に落ちているが建物も着々と近づいてくる。
――この際、紫蘭が無事ならどうだっていい。
APリミッターに加えて、内装系のリミッターを解除する。
コックピットをさらなるアラートが流れるが、ENが減少しなくなった。
OB、通常ブースターを全開にし、さらに減速していく。
そして、ビルに激突。
幸いにも、速度は充分に落ちていたので2機の損傷はほとんど無かった。
「ぐガァァ!!」
だが、その衝撃はGでボロボロになった練の身体に止めを刺すが如く襲いかかるが。
◇
何が起こったのか理解できないまま、壁に衝突した。
思いっきりケイローンがを押し潰すような状況になっていたことに気づき、思わず通信回線を開く。
「練!?大丈夫!?」
少し間が空いて返事が来た。
『なんと、かな』
その声は呻くような苦しそうな声だった。
私が、多くの傷を負わせたのだ。
でも
「なんで私を庇ったの。私はあなたを憎んでるんだよ。」
私は私の意志で選択して戦いに臨んで、彼をここまでになるまで傷つけたのに。
あの、どす黒い彼は一体なんだったのだろう。
その答えはとても単純で、
『白々しいな、大嘘付きめ。いや、これは俺が自信過剰か。』
と、苦しいだろうにうれしそうな声で答えた。
初めから復讐なんて存在しなかった。
練にあの日の責任を押し付けるのは簡単だっただろう。
だけども、私はそんな私は許せなかった。
あの時、練だって心配して寄ってきたのに、それで彼を憎む私を。
不幸が重なって、ああなっただけなのに。
強がろうと必死に声を絞る。
「じゃあ、なんで私は戦っていたのかわかるの?それ以外理由なんてないでしょ。」
泣きそうな声で、問いかける。
彼の呼吸は次第に落ち着いてきていたが、それでもなお辛いだろうに優しく微笑みかけてきてくれた。
彼は口を開く。
彼の答えに息をのんでしまった。
彼はすべてに気づいていたのだ。
◇
――数日前
「紫蘭からかもしれないですよね。」
「【厄災】かもしれんぞ。どちらにしろ罠だろうな。」
ストレイドさん相談している時に届いたメール。
その内容を彼女に伝える。
「だが、もし紫蘭だったとしたら相手はネクストだぞ。勝ち目は薄い。」
事実、あの時の紫のACには勝てなかった。
行動パターンを読んで戦ってから一部攻撃を防げたが、次もそうはいかない。
それにしても、彼女の戦う理由が微妙だ。
殺すと脅されている?
だが、数の限られる才能の持ち主にそれをするのは、いつか限界が来る。
俺のように自力で首輪を食いちぎられ身を滅ぼすかもしれない。
…俺のように?
「ストレイドさん、紫蘭の両親はどうしてます?」
「一応周囲を見張ってるが怪しい影はないとのことだ。」
とすると―
アキレスはさらに思考する。
嘘を重ね続けて脅迫し続ける手もある。
合成映像なんかで騙せばいい。
だが、首輪を付けたのは【厄災】だ。
そんな簡単なオチではない気がするのだ。
だが彼女の性格上、動きを制限するには人質が一番なのは間違いない。
おそらく、【厄災】としてはその人質にも消えてもらって欲しいやつを選ぶはずだ。
多分、ことが終わったら紫蘭もろとも消すっていうこともできるから。
その上、管理しやすく自分の訪れやすい場所にいるはず。
「【厄災】の目撃情報ってどうなってますか。」
「え?まあ、最近多いのはレイレナード、BFF、それから…アナトリ『それだ!』アあぉっ!?」
そうだ、あのACはアナトリア所属だった。
きっと彼女もアナトリアにいて、そこで世話になった人を殺すと言われたんだ。
「いきなりでびっくりしたぞ。アナトリアに何が?」
「あ、すいません。でも、もしかしたら分かったかもしれません。」
ストレイドさんに今の仮説を話す。
それを真剣に聞いて、頷く。
「前提条件が怪しいから一方的に肯定はできないが、なくはないな。」
「…あくまでも机上の空論ですよね。」
全ては【アナトリア所属のACのリンクスが紫蘭であり、今送られてきたメールも彼女のものである】という確証の欠いた前提ありきだ。
大外れだってあり得る。
それより、とストレイドさんは口を開く。
「どうしてお前は彼女の戦う理由を[お前への恨み]にしないんだ?それが一番簡単だろ。」
人の憎しみは十分な殺害の動機になる。
【厄災】に教唆されたなら十分にあり得る理由。
だがそれを俺は切り捨てた。
「実はUnknownさんが先日、紫蘭の様子というかなんというか…それを見せてもらったんです。」
「あれをか!?結構あれ使うの嫌ってたはずなんだけどな。」
ストレイドさんは驚くものの「それで?」と後を促す。
「見たとき確信しました。あいつは俺を無理矢理憎もうとしています。」
「はあ!?無理矢理だと?どういうことだ!」
俺は、あいつのあの口調を知ってる。
「あいつは自己暗示じみたことをする癖があるんです。要素や理由を並べてから、だからこうなんだって。」
元々は、陸上選手として自分をコントロールするために使っていたテクニック。
それを使って、練は憎い、殺したいと自分に言い聞かせていたと俺は思っている。
無論、一切恨んでいないとは思っていない。
だが俺を殺さなければならなくなったからこそ、自分に言い聞かせて一線を越えられるようにしていたのだろう。
「それは確証あるのか…まあ、この際いい。」
とまで言って
「いや、待てよ。」
急にストレイドさんは表情を曇らせる。
「…もしかしたら状況はもっと悪いのかもしれない。」
「どういうことです?」
「アナトリアはとても微妙なバランスの上にいる。国家にも企業にも利益をだす存在。そして、いま一番の売りはAMSだ。」
話の流れを掴めない。
「どうしたんですか?」
「元の歴史とズレはあるが、他の世界の歴史からいうとアナトリアは来年の春に崩壊するんだ。」
「そうなんですか!?」
「つまり、アナトリアは崩壊しようが何だろうが【厄災】はどうだっていいんだ。しかもこの情勢でアナトリアがどこの勢力に潰されようと争いの元になる。」
最悪の流れ。
その示す意味に戦慄するしかない。
「崩壊する前に研究員AとやらにAMS技術を持ちださせれば後の流れは変わらない。そして、アナトリアは戦争激化の足しにする…」
ところどころ分からないところもあるが輪郭が見えてきた。
レイヴンになりかけな俺ならともかく、まだ一般人の枠のうちにいる彼女にとってこれは余りにもきついだろう。
顔も知らない人間も気にしてしまうような彼女ならなおさらだ。
「紫蘭はきっと…」
◇
「アナトリアの人命全部、背負っちまったんだろ。」
通信回線越しに彼女の嗚咽が聞こえる。
一時的に恐怖に飲まれ、戦いにのめり込んでいて解放されていただろうが、それでも彼女には重すぎる責任だっただろう。
恐怖で押しつぶしたのもこういう理由もあった。
『私、アナトリアをまだ救えて、ない。あなたを殺さ、ないといけな、いから。』
泣きつつも必死に訴えかけてくる紫蘭。
だけど、それはもう背負わなくっていいんだ。
「紫蘭、実はね。俺の
『え?』
「さっき、その知り合いから連絡がきたんだ。もう大丈夫、アナトリアはもう誰も襲わない。」
精一杯の笑顔で伝える。
『お疲れ様、紫蘭。辛かっただろ?』
ブレティアを抱き寄せる。
優しくできただろうか。
ネクストには触覚があるから不安になる。
が、その心配はいらなかった。
一層画面の紫蘭は涙に顔を濡らす。
だが、落ち着いてなどいられない。
速度で撒いていたのだがついに追いつかれたか。
近くの数か所にレーザーが直撃する。
空を見上げると目玉に羽をはやしたようなようなものがたくさん浮かんでいた。
AMMON S
その時は知らなかったが、こう呼称される兵器。
それを目の前に、俺は紫蘭の前に出る。
まあ、話す時間があっただけ良かった。
誤解を解くことさえできなかったら戦いに集中できなかっただろう。
【厄災】はきっと目的を
あいつらは、そのためにここに来たのだろう。
ここからは延長戦、加減も躊躇いもいらない。
OSの切り替えでAPは2080になっている。
このOSはかつてシャルさんのACが使用していたものを改造したもの。
つまり、ここに表示されているAPが0になれば良くて機体停止。
最悪は爆散する。
だが逆に考えれば、まだ戦えるところまでこいつが持ってくれいていたのだ。
――不幸中の幸いだな。
視界の中に映る敵は10機くらいか。
こいつらを片付ければ晴れて作戦成功だ。
『行かないで!もうそんな機体じゃもう…』
紫蘭に呼び止められる。
だけど、ここで戦わなきゃ二人仲良く殺されるのを待つだけだ。
もう紫蘭にも戦って欲しくもない。
「大丈夫だ、こいつらくらいこの機体でも倒せる。それと紫蘭」
この機に一応言っておこうか。
死亡フラグなんかもへし折っちゃえばいいし。
「アナトリアとこんな俺を一瞬だけでも天秤にかけてくれていたなら、それはとっても嬉しい。あんなことしてごめんな。」
右手に先程回収したものを握りこむ。
PB-DARKSLAYER
そこから発生する黒い霧が刀身を形成する。
さらに、リミットカットをしてEN出力を跳ね上げる。
月光もブースターもいくらでも使えるようになった。
60秒
それが
OBを起動。
翼のような光を背負って一気に接近、周囲がレーザーで囲まれるが気にしない。
直撃コースを躱しつつ月光で一閃。
その残骸を蹴り飛ばしつつもう一機にダークスレイヤーを突き刺す。
しかし、横腹にレーザーが突き刺ささり、その隙に包囲される。
練は後ろを振り返りつつ、ダークスレイヤーをいったん解除し突き刺さりっぱなしの敵を投げ飛ばす。
それは、その先にいた敵に衝突しもろとも爆散した。
閃光に目をくれず右にいた敵を月光で袈裟斬り。
かかと落としの如く蹴り飛ばし、その反動で上昇。
さらに上にいた敵をダークスレイヤーで突き刺した。
彼は焦燥に駆られる。
時間も、冷却も間に合わない。
APは削れ、敵が散開することによって次第に離れていく距離。
一機落とすたびに意識が飛びそうになり、自らの心音が彼を起こす。
意地だった。
残り13秒。
残る敵は4機、それが並んでこちらを見ている。
そんなことお構いなしといわんばかりにOBをかける。
目指すは真ん中の敵。
12秒
突然、一番右の敵が爆散する。
シャルさんのミサイルが敵を撃ち落としたのだ
11秒
オーエンさんが一番左の敵をリニアで粉砕する。
10秒
今度は残った左の敵が爆発。
紫蘭のライフルだった。
だいじょぶだったのに、と思わずにはいられなかったが嬉しくも思えた。
9秒
ダークスレイヤーが最後の敵を貫いた。
爆散。
「なッ!!いうこと、きき、やがれッ!」
そこで想定外が起こる。
完全に機体にガタが来てコントロールが効かない。
きりもみ回転をして空をOBで突き進んでいく。
発熱は収まらず、機体がどんどんダメージが蓄積し。
APが0になる。
機体は連鎖的に爆発しながら天高く昇っていく。
0秒
大きな閃光が都市上空で花開いた。
まだ終わらんよ!