巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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何故か筆が進んで(単純に区切れなかっただけかも知れませんが)、八千とかすっ飛ばして、初めて一万字を超えました。

しばらくはこんな量書けない気がします。


だいたい物事は望んでない方向に進んでいく

「何ですかあれは!」

 

「分からん。裏で生産されている奴もあんな型はねぇ。新型か?」

 

角で様子を伺う俺とオヤジさん。

ばったり敵と遭遇してしまい身動きが取れなくなった。

 

「使えそうな物は?」

 

「弾が貫通するのがマグナムとかアンチマテリアルライフル。あとRPGとかじゃねぇとあいつらには効かねぇが…。」

 

「どれも手持ちには無いですね。アサルトライフルとサイドアーム、火力不足…待ってください、そのごついライフル、どこから取り出したんです。」

 

オヤジさんの手には黒光りするでかい銃(アンチマテリアルライフル)と見たことない大型リボルバー。

リボルバーはまだしもライフルはどこから持ってきたんですか。

 

「ほら、そこにガンロッカーがあるだろ。」

 

ガンロッカーからアンチマテリアルライフルが出てきてたまるか。

 

「おらよ。持ってけ。」

 

そういって出所に不安が残るライフルを手渡された。

 

「あと少しだけ待ってくれ。申請が通れば本気が出せる。」

 

「本気?いったい何が…」

 

オヤジさんはリボルバーを左右に揺らしつつ答える。

 

「こいつ、マズルフラッシュと音がひどくてそのままだと使えねぇんだ。失神、下手すると失明したり耳がやられたりする。」

 

「なんでそんな持ってるんです。使えないじゃないですか。」

 

「何もなければ、だがな…」

 

その時、オヤジさんの端末に連絡が入る。

 

『能力制限解除、能力制限解除。周囲を確認し慎重に使用せよ。』

 

「ほら来た、外すなよ。」

 

通信が来たと同時に角から飛び出すオヤジさん。俺もライフルを構えつつ敵前へと身をさらし、アンチマテリアルライフルを腰だめに構えて…。

 

トリガーを引く直前に気づく。

確かこいつも反動が強くて伏せて使う品物だったような気がする。

しかしすでに時遅く、トリガーを引ききってしまった。

 

強烈な反動が肩にかかり、大きくのけぞる。

幸いマズルブレーキの性能が良かったのと元から腰だめがぎりぎり可能な銃だったおかげで、尻餅をつかずに済んだ。

 

「やっべ!」

 

だが、敵は二機いた。

一機に命中、機能停止させることには成功するが、連射ができず二機目に狙われてしまう。

 

だが、その二機目は横合いから来た銃弾に装甲を抉られ、その動きを停めた。

 

「大丈夫か坊主!!」

 

「何とか。そんな銃なのに発砲音そんな大きくないんですね。」

 

危ないところを助けてもらったが、そのリボルバーの銃声の小ささに驚く。

マズルフラッシュと音がさっき言った通りなら今頃腰を抜かしていたはずだが…。

 

「反則技さ。さっき能力制限解除ってあったろう。あれ、俺たちが普段隠してる力を使っていいってことなんだ。むろん事情を知らない奴らがいるときには許可は下りないがな。」

 

「一体どんなからくりですかそれ。」

 

「俺は【水を操る程度の能力】…まあ河童じゃあ標準なんだがな。大して使えたもんじゃないが、こうやってサプレッサの代わりにはなる。」

 

そういうと銃口の周りに水の塊が現れ、銃の先端から先を覆う。ただ銃口を塞いでいない。

これなら光や音を多少は減らすことできるだろう。

反則とは…いやACの【カッパ】とかいう現象も恐ろしいけど、こっちは本物だもんなぁ。

 

「FGWの人員って大体そんな感じなんですか。」

 

「俺のはかなりショボいほうだな。これぐらいしか使い何処がない。こっちで使える力はもともとの力に比例する。シャルなんかはそのリソース全部を飛行に回して速度を保った感じだな。まあ、分配は本人の意思よりも素養でされるらしいが。」

 

「ラノベとかによくある能力ものみたいな感じですか。」

 

「正直あれよりも制限がきつい。まず使用に自衛隊の発砲許可のごとく申請が必要なんだ。んでもって、人によっちゃ戦闘どころか何にもアドバンテージを得られない奴もいる。」

 

それを聞いて気になったので、恐る恐る聞いてみる。

 

「ちなみに、逆に一番すごいのって誰なんです。」

 

「そうだな…」

 

それはあまり時間をかけずに帰ってきた。

 

「力がそのまま使える元人間組を除くとやっぱフラン嬢かなぁ。」

 

人間組はそのままなのか…。

 

その時、ガァァァン、と激しく金属同士がぶつかるような音が遠くから響いてきた。

確か紫蘭がいたガレージ方面から聞こえた。

 

「取り敢えず紫蘭を保護しに行くぞ。」

 

「はい。」

 

 

あ…ありのまま、今起こったことを話そうと思う。

 

【いかついロボットから必死に逃げていたら唐突にガトリングが爆発し、立て続けにフランさんが現れてロボットを蹴り飛ばして破壊した】

 

何を言ってるのかわからないと思うが私もわからない。

催眠術とかトリックとかワイヤーアクションなんてそんなチャチなものじゃない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。

 

そもそも何で蹴る時に交通事故(ブーストチャージ)みたいな激しい音が出るんですか。

 

「大丈夫?」

 

「あ、はい。なんともないです。」

 

目の前で起こったことに心の中で突っ込みしていたせいで反応が遅れる。

確かにこれは強いと思うが、子供一人の護衛にしてはいささか過剰戦力な気もしてきた。

 

「取り敢えず誰かと合流しないと。外も中も危険ってなったらここにいるやつらを排除したほうがよさそうね。」

 

「そんなこと言っても私明らかに火力不足ですね…。」

 

「あなたは最悪ついてくるだけでいいわ。私がここに来たのはあなたの護衛とイフェルネフェルト教授の保護だから。」

 

そういうと手にある私のものより一回り大きいリボルバー(44マグナム)を構えていた。

 

「制限解除って言ったってやりすぎは考え物よね。」

 

さっき思い切り人外機動してた人の言うことじゃないと思います。

すると、物音。

とっさに身構えるが、機械の駆動音ではなく足音だった。

 

「紫蘭、大丈夫か。」

 

練と練のACの整備員のおじさんだがこっちに駆け寄ってきてくれた。

 

「ええ、フランさんが助けてくれた。…ていうか何も言わずにどっかいかないでよ!」

 

「あぁ、すまん俺もイフェルネフェルト教授救出に行こうかと思って。」

 

「リハビリ中の人が言うことですか!」

 

そのとき、キュキュッ、とタイヤが擦れるような音がする。

音の正体は三機のAIR。それがこちらにやってきた。

大量の弾丸が下に備え付けられた機関砲から吐き出され、わたしたちは物陰に隠れざるを得なかった。

 

「そういうのは後にして。ここを制圧するわよ。」

 

「まずは自分の身からですね。」

 

物陰越しから練が大きなライフルで敵の真ん中を打ち抜いた。

 

 

 

「これってきりがないですよね。」

 

「機械だと躊躇なく全機突貫とかできるからね。多分今アナトリアを襲ってるのと別勢力じゃないかな。」

 

 

あれから幾ら潰しても出てくる敵に弾がなくなりつつあった。

“反則”しても数で押されるのはきつい。

何回か敵が勝手に爆発してるが、乱用してないあたりポンポン使うべきじゃないんだろうな。

 

だが、俺が一機潰したのを最後に敵がいなくなった。

 

「敵が止んだ…?」

 

「分からないわ、警戒して。状況確認するから。」

 

フランさんは通信機を取り出し通話しようとした。

 

だが、その顔がはじかれるように後ろを向く

 

その直後、轟音がとどろいた。

後ろで爆風の中から敵AIRが飛び出してくる。

壁を爆薬で破壊して後ろに回られたのだ。

フランさんが一拍早く振り向き一機を撃ち抜くが、敵は二機。

フランさんの44マグナムはその弾が最後だった。

俺たちは振り向くのが遅くて照準が間に合わない。

そんな俺たちを嘲笑うかのように、ガトリングが無慈悲に無防備な俺たちに火を噴く。

 

 

「ぉおおおぉ!!!」

 

 

その時、オヤジさんが雄叫びを上げつつ一歩前に出て銃を打ちはなった。

 

 

AIRに発砲はされたが、オヤジさんが放った弾が直撃して停止、響いた銃声は多めに見積もっても十数発といったところだ。

そしてその四脚のボディが崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

前に出て多数の銃弾を食らいつつ反撃したオヤジさんとともに。

 

 

「オヤジ…さん?」

 

その後ろ姿がゆっくりと傾く。

 

「オヤジさん!」

 

俺は駆け寄って、倒れる寸前でその体を抱きかかえた。

その手はオヤジさんから流れる血で真っ赤に染まっていった。

 

「ああ、しくじった、なぁ…。川城主任に、どやされる…。」

 

「しっかりしてくださいよ!!新しい機体、整備してくださいよ!」

 

必死になって叫んだ。

何でよりによって整備スタッフのオヤジさんが。

 

「はは、そう、だったか。」

 

「そうですよ。だから…」

 

「悪いな…せめて、こいつ、受け取ってくれ。」

 

そういって握っていたリボルバーを差し出してきた。

俺はそれに思わず左手を伸ばす。

 

()()の事、頼んだ。すまねぇ、あず…」

 

それを受け取ることもままならずリボルバーは落ちていく。

その銃はカチャリと音を立てて地面に落ち、床を滑っていく。

 

 

 

 

 

 

意識も、息も、脈も。

 

もうなかった。

 

「オヤジさん!…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

胸の中にこみ上げてくるこの感情を表せない。

悲しみ?くやしさ?怒り?

できたのはそれを涙にすることぐらいだった。

 

俺は嗚咽交じりに尋ねた。

 

「…あなたたちは人外ですよね。」

 

「ええ。」

 

フランさんは静かに答えた。

 

「なんでこんなので死んじゃうんです。あなたたちは俺たちなんかよりすっと強いんですよね…なんであんな人形の攻撃で…」

 

「買いかぶらないで。」

 

フランさんは顔を背けて言う。

悔しさがにじむ声だ。

 

「…ええ、そうよ。本当なら私達は手足をもがれようが腹に風穴があいても平気だったわ。」

 

「じゃあなんで!」

 

「でもここは現実で物語の世界じゃないの。私達は少し強いだけで、私もいつかああやって死ぬかもしれないのよ。」

 

そこまでいって、フランさんは俯いていた顔をキッと持ち上げる。

 

「ただ言えるのは、ここで立ち止まってることを彼は望んでないってことだけ。行きましょう、私達だけでも。」

 

凛とした声で告げる言葉。

切り替えというべきなのか。

 

この人はどれだけこういう別れをしてきたのだろうか。

俺もこの道を続けるというなら、避けては通れない

 

 

ゆっくりと差し出される紫蘭の手。

一度失って取り戻せたその手も、俺がしくじれば二度と帰ってこない。

ここで立ち止まってられない。

もう失うものか。

 

俺はゆっくりオヤジさんの遺体を横にすると、少しためらったが、紫蘭の手を掴んで立ち上がる。

未練がないわけじゃないし涙も枯れてない。だけど、ここでずっと悲しんでもオヤジさんが生き返ったり、教授が救えるわけがない。

泣くことなら幾らでも後でできる。

それに俺はたくさん奪ってきたんだ。

 

「敵はさっきので最後だったらしい。生き残りをまとめたのち。中央病院へ向かう。」

 

 

「紫蘭。お前まで来なくていいんだ。」

 

IFVに乗り込む直前、練がそう声をかけてきた。

練の声どこか懇願するような響きをしている。

 

だけどこちらとしては同じ気持ちなんだよ。

 

「さっきのオヤジさんと同じ事になって欲しくないのは分かるよ。でもこっちだって練に死んでほしくないって思ってる。お互い様だよ。」

 

「でもお前、戦えるのか?」

 

「愚問だよ。練を殺そうとしたのに、今更他人を殺すのをためらうと思う?」

 

強がりなのは自分が一番わかっていた。だって、殺そうとした練が目の前で生きてる。

誰も殺したことのないど素人だ。

ただ、練がどっか行くのが怖いからついてきてしまっただけだ。

それでも

 

「足は引っ張らないから。」

 

私の言葉を聞いた練が顔を背けた。なんでだろう。

 

『到着した。裏門から順次制圧しろ。能力使用制限。』

 

「GO,GO,GO!」

 

車両後部のハッチが開き一斉に飛び出す。

だけど出遅れて大分みんなの後ろのほうにつけてしまった。

 

アナトリア軍が頑張ってくれたおかげか抵抗は少ない。

何人かの病院関係者を逃がしつつ上へと進んでいく。

だけど、階段の安全を確認してるときに練が話しかけて聞いた。

 

「抵抗が少ないって思ってるだろうけど、正直これからだと思うよ。」

 

「心読まないでよ…で、どうして?」

 

「敵はヘリで上から侵入してるから。正直教授のいる階でかち合うかもしれない。」

 

教授が戦闘に巻き込まれると思うとゾッとした。

そんな中で銃を撃つことにも。

 

「分かるな。誤射に気をつけろよ。」

 

今さっき手渡されて、使い方も習ったばっかりのアサルトライフルを持つ手が震えるのが分かった。

ただ、自分でも分かっていなかった。

殺すことではなく、ただ知り合いを失うのが怖かっただけだってことを。

 

 

 

 

私が見知らぬ人を助けたがる、本当の理由を。

 

 

 

 

 

ついに教授のいる階まで来た。

まず、教授の部屋を訪れるが、誰もいなかった。

争った形跡はない。

 

「避難したというのが有力ね。」

 

だけどその直後、部隊の一人が報告してきた内容に部隊が凍り付いた。

 

「隊長!研究員の誰かが教授が精密検査室にいると無線で流してます!」

 

「誰よ!そんなバカ。…罠かもしれないけど行くしかないわ。二手に分かれて!」

 

静かな、だけど熱のこもった怒声で話が行われる。

 

「私、連絡のあったほうに行っていいですか。」

 

「罠かもしれないんだぞ。素人が行く場所じゃない。まずここにいれるのは関係者だからってお情け、それと最低限動けるからってだけなんだからな。」

 

「でも!」

 

「言い合いは無し。要望通り紫蘭、練、α隊は精密検査室へ。もう一方は私と一緒に周囲を探索。」

 

冷静にフランさんが告げる。

一応私の要望は通ったようだ。練はおそらく私の護衛扱いだろうから、ついてくるのに文句はない。

 

フランさんたちの隊と別れて精密検査室に向かう。

静かに尚且つ迅速に動くみんなの足手まといにならないようにはついていけた。

 

敵はまだここまで来れてないのか、接敵もなく目的地にたどり着いた。

扉にセンサーを設置しトラップの類がないか確認する。

結果は罠の類はナシ。

 

いて待ち伏せ。

慎重に戸を開け様子をうかがう。

 

「き、君たちは?」

 

十数人の病院の職員といっしょに大きめのスーツケースを抱えた教授がいた。

 

「教授!」

 

「し、紫蘭さん?」

 

間に合った。

 

「イフェルネフェルト教授ですか?アナトリアの援軍として駆け付けたものです。急いで脱出しますよ。」

 

その時、扉の向こうからカン、カンと何かが飛んできた。

 

「…グレネードだっ!」

 

みんながその場に伏せる。

閃光が部屋を白く染め、何が何だか判別がつかなくなった。

 

「フラッシュグレネードか。気絶してる奴は下げろ!」

 

私は幸いまともに見ずに済んだため視界はすぐ回復した。

直後、けたたましい銃声が響く。

 

「撃ち返せ!教授を撃たせるな。」

 

何人かの仲間が教授たちを奥の部屋に連れて行った。

それを見ていた私の横を風切り音が過ぎ去っていく。

振り返れば敵が倒れた棚を盾に弾幕を張っていて、それのうちの一人が私を狙う。

 

だけど私はもう常人じゃない。

リンクスになって上がった筋力を使い、一気に近くの検査機器に身を寄せる。

左手にリボルバーを構え弾幕の切れ目をうかがう。

 

その合間に義手のプログラムを起動。

 

[combat mode standby]

 

壁にあった視力検査用の紙の円の一つに意識を向けると、狙ったところにサークル状のUIが現れる。

狙った点に銃を向けるとAMS経由で左手が勝手に補正してくれるのだ。

素人なのに練と銃撃戦が出来たのはこの照準システムのおかげ。

教授が渋々だが作ってくれたものだ。

 

そうしているうちに二、三人分の銃声が減る。

それを見計らい私に向かってアサルトライフルを向けていた敵に視線を向けると、サークルの中心と敵の額が重なった。

 

ほぼ反射的にトリガーを引いた。

 

 

 

練に脅された後のように、何も考えず。

 

 

 

一発の大きな銃声。それは間違いなく私のもの。

それと同時に敵の額に穴が開き、後ろ向きに倒れた。

 

「よし、まず一人。…あれ?」

 

いま、殺した?人を殺した?

まず、ひとり?

何?この胸に湧き上がる感情。

 

 

 

 

 

興奮、なの?

 

 

 

 

 

 

 

「紫蘭、ここは任せろ。お前は教授を頼む。」

 

「う、うん。私に銃をうたせない、でね。」

 

「紫蘭?」

 

練の呼びかけに答えず、そそくさと奥の部屋に入っていく。

 

「紫蘭さん。よかった、無事で。」

 

「こっちのセリフですよ、教授。」

 

とにかく教授と合流し、言葉を交わす。

 

「にしても、そのスーツケース何が入ってるんですか?」

 

「ああ、これかい。これはね。」

 

そういってスーツケースに手を触れる。

 

 

 

 

 

 

「失うわけにはいかない。教授秘蔵の最新技術ですよね。」

 

 

 

しかし、教授の後ろから若い男の声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

ズドン、と音が響いた。

私も教授も凍り付く。

 

ポタリ、ポタリと液体が地面に落ちる音。

 

教授の右脇腹が真っ赤に染まり、私の顔にまで血飛沫が飛んでいた。

その貫通弾は私の義手の外装も剥ぎ取っている。

 

何で気づかなかったんだろう。

 

教授の後ろに控えていたうちの一人が。

 

「それは僕がいただいていく。」

 

研究員A(アイザック)だってことに。

そいつの右手にはピストルが握られ、薄い煙が立ち込めていた

 

私の方に倒れ手て来る教授。

 

しかし、教授はぐっとこらえ私を抱きかかえると、研究機材に身を隠した。

教授の後ろにいた医師や看護婦が一斉に銃を向け、発砲。

機材に隠れたおかげで事なきを得た。

 

そのことでハッとした私は通信機に電源を入れる。

 

「こちら紫蘭!教授と一緒にいた人たちは敵対者!アイザックもいる!」

 

『何だって!今そこの扉の前にいる護衛を向かわせる。すぐ援護射が来るはずだ。』

 

教授は痛みで苦しむ体を機材に預けていた。

その目は私を捉える。

 

止まない銃声の中、教授はゆっくりと口を開いた。

 

「また、巻き込んでしまったね。」

 

「喋らないでください!今止血を…。」

 

慣れない手つきで渡されていた鎮痛剤を打ち、止血帯を脇腹に巻く。

 

「すまないね。本当、情けない大人だ。子供を、自分が支えるべき患者を戦争に送り出すなんて。」

 

「いいからゆっくりしていてください!」

 

後ろからも発砲音がした。

援護が来てくれたのだろう。

 

その様子を見た教授はゆっくりと壊れてしまった私の義手へ手を伸ばす。

 

「スーツケースの中身はね。君の新しい義肢なんだ。」

 

「え?そう、なんですか?」

 

二つ分かったことがある。

 

一つ、研究員Aは小娘の義手を教授の秘蔵技術だ、と勘違いをしている。

 

二つ、身の危険が迫っていたのに、ただの患者である私の義手を持ち出してくれたこと。

 

「それ持ってきたから逃げ遅れた、とかだったら私、へこみますよ。」

 

「持ってこなくても大差なかったと思うよ。」

 

そういってゆっくり笑う教授。鎮痛剤が効いてきたのだろうか。

 

「これはね、君のところの医師からの依頼を受けて作ったものなんだ。一週間前くらいかな。時間なかったから本気で作ったよ、全く。」

 

「どんな依頼だったんです?」

 

「リンクスの身体能力についていける、戦える手足を、だそうだ。」

 

その言葉に目を見開いた。

戦うための、義肢?

 

「私だって最初は反対したよ。だけど、『彼女はきっと練君のトラブルに巻き込まれるだろうから、護身できないと。』って言いくるめられてしまってね。この状況を見るに、正しかったと思うよ。」

 

「でも、私…。」

 

戦う。

そのことに今までと別の恐怖が沸き上がっていた。

 

私はワタシでいられるのか。

 

「君の意思を、僕が変えようとは思わない。ただ、今の君の義手は壊れてしまっている。だから…」

 

そういってスーツケース…近くで見るとキャリーケースといってもいいサイズのそれが開かれる。

以前使っていた義手は樹脂製の人工皮膚で覆われていたが、この義手は機械らしい外見を残していた。

 

「サイズは合わせてある。…本当は前の義手みたくしてあげたかったんだけどね。樹脂で覆う時間がなかったんだ。」

 

そういって義手を取り出す。

その下の段からは似たような義足が出てきた。

取り出した後、その下にひかれていた本を私に差し出してきて、口を開く。

 

「設計図はここにある。フィオナなら調整と整備をしてくれるだろう。もちろん前の義手も。フィオナはもう私が教えることが無いくらい立派に育ってくれたからね。」

 

「教授?そんな言い方しないでくださいよ。」

 

鎮痛剤は…間違えてない。用法も守ってる。

まるで死んでしまうような物言いにどこか間違えてしまったのかと慌てる私を他所に、彼は立ち上がる。

 

はらりと腰から滑り落ちるそれを見て私は愕然とした。

 

 

止血帯はしっかり結べてなかった。

壊れてしまった左手が、結び目を弱くした。

 

脇腹から血が流れていた。

それを無視するかのように彼は私のアサルトライフルを拾い上げ、笑う。

 

「君のせいじゃない。私がいたら君にもフィオナにも迷惑をかけるからね。…フィオナには出来の悪い親で済まないって言っておいてくれ。」

 

「ちょっと待ってください!動かないで!」

 

左手を咄嗟に伸ばす。

壊れてしまった左手は、限界が来たのか私の言うことを聞かず空を切る。

 

教授は叫ぶ。

 

「援護隊、私が隙を作る。突入しろ!」

 

物陰から飛び出し、教授はアサルトライフルを連射。

そのすきに練が部屋に飛び込んできた。

 

 

だがそれきりだった。

 

 

 

 

 

 

体に多数の弾丸を受け、アサルトライフルの発砲音が止む。

 

ゆっくりと崩れ落ちる教授。

練と違って、私は見ていることしかできない。

 

「教授!!」

「いやあぁぁぁぁあ!!!」

 

私もまた崩れ落ちた。

 

一番恐れていたことが、目の前で起こってしまった。

それも私のせいで。

その事実が私の心を挫いた。

 

 

私のもとへ、練が駆け込んできた。

 

「紫蘭、大丈夫か!!」

 

「私のせいだ…しっかり止血できれば、教授もあんな無茶しなかったのに…!」

 

「言えた義理じゃないが、落ち着け。オヤジさんの件で学んだだろ。ここで悲しんでも仕方ない。それに、こんな奇襲を見抜けなかった俺たちが悪いし、仕掛けたあいつらも悪い。」

 

私の肩を持って慰めてくれる練。

 

 

それが悪魔のささやきを引き出した。

今までの私なら切って捨てたような下らない発想。

 

(そうよ、あいつらが悪いのよ)

 

責任の転嫁だ。

私が今まで嫌ってきたことが、今の私にはとても甘い復讐心というものを持ち込んでくる。

その時、私の手があの義肢に触れた。

 

これがあれば、私は戦える。

 

正しくなんてない、教授も望んでないっていうのは分かってるのに。

 

「練、この義肢を私につけて。教授が残してくれたものだから。教授がいない今、私は練につけてほしいの。」

 

「…分かった。」

 

もともとあった義手をゆっくり外し、丁寧に付け替えてくれる練。

練は私をを失ったときどんな気持ちだったんだろう。

同じであってほしいな。

 

ゆっくりと差し込まれた義足と神経が繋がり、情報が流れ込んでくる。

義手には武器まで仕込まれていた。

 

「ありがとう、これで…」

 

新しい左手にレディ・スミスを握り、立ち上がる。

 

「戦える。」

 

「おい待て!どこに行く!」

 

機材から背の低い機材へ教授の持っていたアサルトライフルを拾い上げつつ駆け抜け、しゃがんで物陰に身を隠す。

リンクスの体力を万全に使えるようになった、その走りは今までの何倍も速く感じられた。

銃弾が少なくなってきたのか、銃声がまばらになっている。

 

躊躇なく物陰から上半身を出してアサルトライフルのトリガーを引く。

シングルで一発一発正確に狙いを定めて、物陰から出てきた敵をもぐらたたきのように。

前の義手はハンドガンだけだったアシストも、今はアサルトライフルにまで転用できる。

 

「二つ、三つ、四つ。」

 

敵は確か十人ちょっと。

全員倒す、いや殺す。

 

「五つ、六つ七つ、八つ!」

 

そこで、視界の左側の壁が崩れた。

そこから逃げる気か。

 

「…逃がさない!」

 

物陰から飛び出して、全力疾走で敵の懐へ飛び込む。

牽制で放たれた拳銃の一発が左手を掠めたが、傷一つ残らない。

 

勢いそのまま、左腕に格納されていたナイフを右手で抜き、首筋を切り裂いた。

返り血は、別に何とも思わなかった。

 

看護婦のふりをした白々しい女性にレディ・スミスを撃ち込んむ。

その隙を好機と見たのか、後ろにいた敵が駆け寄ってきた。

振り向くとそいつの右手にはナイフが握られ、突きの構え。

 

そのナイフを義手の左手で弾き落とし、胸に突きを返す。

 

周りに見えるやつはこれが最後。

 

「アイザックは…」

 

無論、あそこにあけた穴から逃げたのだろう。

どう逃げたのかはわからないが行き先は分かっている。

私は廊下を走った。

 

 

 

 

「あと少しだ、この最低限の資料があれば僕は!」

 

アイザックは屋上にたどり着く。

そこで彼を受け入れてくれるヘリが待っていた。

 

「オーメルめ、僕を見限るのがいけないんだ。レイレナードは分かってくれたからね。」

 

もともと彼はアスピナ、もといオーメルに情報を売るつもりだったのだが、作戦失敗でオーメルは彼を見限っていた。

そんな彼をレイレナードは拾ったのだ。

 

ヘリが見えた彼はその狂気じみた笑顔をさらに深める。

 

が、そこまでだった。

 

「待ってた。」

 

ヘリの中から現れたのは、さっき彼の部下たちをなぎ倒していた紫蘭だ。

 

「なぜ…ここにいる!」

 

「あなたより足が速かっただけ。最もその理由はその手にある資料にあると思うけど。」

 

実際は違う。

紫蘭は義手のもう一つの装備であるワイヤーガンを使って外から先回り。ヘリパイロットを排除していたのだ。

 

「ちぃ!」

 

引き返そうとするが、そこに息を上げた練がチーフスペシャル片手に立ちふさがっている。

 

「もう逃げ場はないよ。だからさ…」

 

アイザックが振り返ると、憎悪に顔をゆがめた紫蘭が睨みつけていて。

 

「死んで。」

 

銃声が開けた屋上で響いた。

 

 

 

 

だが、アイザックは撃たれた様子がない。

撃たれたのは紫蘭のレディ・スミスだった。

 

「またこんな曲芸をする羽目になるなんてな。」

 

練の射撃が、紫蘭の邪魔をしたのだ。

 

「練、なんで邪魔するの?こいつが生きてていいわけないじゃん。」

 

さも当然のように吐き出されるセリフに、アイザックは小さく悲鳴を上げる。

 

「悪いが、今すぐ殺すわけにはいかないんだ。」

 

そういって練はアイザックに近寄っていく。

アイザックは必死の形相でハンドガンを構えるが、練の射撃ではじかれた。

 

すこしつつ狭まる距離に、アイザックは後ずさる。

 

「ぼ、僕が悪かった!何でもするさ、だから助けてくれ!」

 

アイザックはついに命乞いまで始めた。

 

「ああ、殺さんさ。」

 

練はそういうと、アイザックの目の前に立つ。

そして。

 

首元にリボルバーを持った手を打ち込んだ。

失神するアイザックを冷たく見下ろし、静かに告げる。

 

「洗いざらい全部はいてもらうまでな。」

 

眺めていた紫蘭は、拗ねたかのような表情を浮かべゆっくりと近寄ってくる。

 

「ひどいよ、私にやらせてくれな…」

 

不満を漏らす紫蘭だったが、最後まで言い切ることが出来無かった。

練が紫蘭を抱きしめていたのだ。

 

「なんでこんなことに…。わかっていただろ…」

 

「練、どうしたの急に。」

 

よく見ると練は泣いていた。

その光景に紫蘭はただ困惑していた。

 

「俺がいなければ…お前を無理やり車から降ろしていれば…」

 

「ねえ、練ってば、話してくれないと伝わらないよ。」

 

「お前に、人を殺させたくなかった。」

 

その一言で私は血の気が引いていった。

何人殺したっけ、私。

罪悪感ってこんなに感じないものなの?

 

「練、私っておかしいの?後悔してるけど教授が死んだこと以外辛くない。…教授…?」

 

ぽろぽろと紫蘭の目から涙がこぼれ落ちてくる。

 

「ああ、そうだろうさ。中に眠ってたものはおなじなんだ。」

 

練は知っていた。

自分も彼女も、ドミナント候補だというのはあの医者から聞いていた。

 

戦うために生まれてきた人間が、殺すことにためらいを持つはずがない。

 

練も紫蘭も【人を殺してはいけない】ということを文字の上でしか分かっていないのだ。周りがこうであるべきと定めていた価値観を借りて[普通の人]で居られただけだ。

 

本人の気持ち次第でそんな枷は外れてしまう。

そのことを知ってしまったから、練は『みんなの中に帰れない』と紫蘭を遠ざけた。

 

(紫蘭はこのことに気づくことなく、日常に戻って欲しかったのに)

 

その試みは、失敗した。

彼女も自分の本性に気づき始めている。

 

ここに連れてこなければ。

だが、もう遅い。

 

 

屋上に服を返り血で赤く染めた少女と、それを気に留めることなく抱きしめている少年は、二人を追いかけてきた味方が来るまでそのままだった。




ACの4系が無いので誰か情報下さい。
ネクストのアセンを決める方法がネットにあるアセンシミュレータしかないんです。

ps3が無いんです。(涙
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