ACの画像は後日にさせてください…(撮影忘れてた)
本当はあとがきに挿絵で入れたかったのですが…。
追記6/2
挿絵を入れました
そこから四日間はとても短く感じられたし、長くもあった気がする。
だが、どちらにしろこの日が来たのだ。
エキシビションマッチの日が。
観客席は時間帯的に結構埋まっていた。
何しろエキシビションマッチの時間はトップランカーたちの試合の合間に割り込む形で入れられる。
つまり、つまらない試合は見せられない。
ひしめく沢山の観客、その中にはフィオナさんや紫蘭たちがいる。
『それがお前の新しいACか。』
「ええ、ユーリックさんも変えましたか?」
『いつものことだ。気にすることじゃない。』
お互い事も無げに答える。
会話していても、二人の目は相手のACを捉えて離さない。
外では観衆が声を上げ、実況がそれをヒートアップしていく。
だが、そんなことはどうだってよかった。
(目の前に超えるべき壁がある。突破するまで。)
練__アキレスはその心に静かに火を灯す。
『先手はくれてやる、存分に来い。』
「ブザーと同時で構いませんよ。そんな都合よく始まるんじゃつまりません。」
『言うようになったな。後悔するなよ。』
「するとしても、それは自分の弱さですよ。」
◇
期待の新星とトップランカーというカードに会場はヒートアップしていた。
目の前の大型ホログラムには
の表示があった。
「二人の相性とかってどうなんです。」
紫蘭は詳しいであろうシャルに意見を求めた。
「正直、アキレスは少し厳しいわね。お互い相手の行動に適切な対処を返していく戦闘スタイル。ゆえに経験が多いユーリックは明らかに上手になってくる。持ってるカードが違うのよ。」
「それに武装、アセンにも問題がある。練は装甲を削った中量二脚に、ショートレンジのマシンガンとミドルレンジのマイクロミサイル。U.N.オーエンはマイクロミサイルは同じだがダブルライフル、マシンガンよりも距離を取って一方的につぶす算段だ。」
ストレイドが補足をする。
「厄介なのはU.NオーエンはOBコアだってこと。レンジの差を押し返す機動性も腕次第で盛り返させる。」
「そんなに不利なんですか…練、負けないとはいかなくても、ちゃんと戦えるんでしょうか。」
すごい不利だという二人の意見に不安が倍増した紫蘭は尋ねた。
「…すまんな、思いっきりマイナスしか言ってなかったな。相性はよくはないがやりようはいくらでもある。」
「練のアセンは瞬間火力に特化してる。隙を見せたところに接近して畳みかけていければいいし、右手は弾に余裕があるから弾幕で牽制はできる。」
「つまり、お互いに距離の管理が勝敗を分けるはずだ。」
◇
「なあ、アキレス。」
「なんです。」
試合開始直前でまたユーリックさんが語りかけてきた。
『通信、繋いだままにしないか。』
「藪から棒になんです?あなたに限って下らないことはしないでしょうからいいですけど…」
「いや、思うところがあってな。語りながら戦うのはジャパニーズアニメではよくあるだろ。」
「余り話す余裕はないですから、期待に沿えるかわかりませんけど。」
なにか、ちょっといつもと違うユーリックさんに疑問符が浮かぶものの、すぐに試合に意識を向ける。
さっき言ったことから考えるに、その疑問はどうせ試合の中で晴れるだろう。
試合開始のカウントダウンが迫る。
今は限界まで戦いきるだけ。
いつも通り本気ぶつかって、壊しつくすだけ。
アキレスは大きく息を吸い込み。
ブザーが大きく試合会場に響く。
それと同時にお互いが左に旋回しだした。
チェインドは右手のマシンガンのトリガーを引いて牽制する。
ラプターもライフルで応射し火線が両者の間で飛び交った。
こちらの弾もライフル弾もお互いの機体の各所を掠めていく。
APの減りはほとんどなかった。
その時だった。
「お前はなんのために戦う。」
ユーリックはOBを起動、背中に光が集まり一気に左へと吹っ飛ぶように飛んで行った。
無論マシンガンはロックが外れ、弾丸が虚しく空を切る。
アキレスはチェインドの武装をミサイルに切り替えロックして撃ち放つが、ラプターはさらにOBで右に飛ぶ。当然ミサイルはラプターに追いつくことなく地面に激突した。
「それは…」
距離が縮まったことを受けて、アキレスは被弾を無視して一気に懐に潜り込む。
「日常ってやつに帰りたいからですよ!!」
アキレスは両手のマシンガンをここぞとばかりに撃ち込み、今まで火力の差でできていたAP差を一気に削る
「ちぃ…なら、わざわざ戦うこともない!」
ラプターの肩の装甲が展開、そこからいくつもの球体が放たれ爆発した。
吸着地雷だ。
それは放物線を描き、チェインドの足を中心にダメージを与える。
「地雷をこう使うのか!」
「お前らの居場所はいくらでもある!わざわざレイヴンなんて続ける必要も無いだろう!」
「まず、レイヴンに戦う理由を聞くのもどうかと!」
爆風にあおられてなお、爆炎にマシンガンを撃ち続ける。
だが、突風が吹き荒れる。煙が晴れ、撃った先に誰もいなかったことが明らかになった。
「どこに…」
レーダーの光点は…左。
ラプターは右にOBか…。
その思考の直後、ラプターのいる方角からマイクロミサイルが迫っていた。
右手のマシンガンで堕としつつ、出方を伺う。
それが隙だといわんばかりに容赦なく撃ち込まれるライフル。それを間一髪でかわし、小ジャンプでラプターの周りを回りつつマシンガンを撃った。
レンジの関係から撃ち辛いことこの上ない状況に、アキレスはもどかしさを感じる。
『ああ、確かに野暮ったいだろうな。だが…』
ラプターはさらにOBで突っ込んできた。
対するチェインドは左マシンガンをトリガーして弾幕を濃くする。
「その強さ、何処から来るのか知りたいだけだ!」
その濃密な弾幕を身に受けつつも、彼は止まらない。
「なぁっ!!」
攻撃に回っていたアキレスは動けず、速度の乗った後ろ回し蹴りがチェインドの鳩尾にめり込んだ。
そのままチェインドは吹き飛ばされ、背中で一回バウンドした後に一回転して着地、地面に大きな傷を残しつつ止まった。
「…明らかにそっちが、強いでしょうに。」
アキレスが顔を上げるとすでにOBでライフルのレンジまでラプターが距離を詰めている。
アキレスはそこにマイクロミサイルを撃ちつつ小ジャンプでジグザグに進みさらに接近。両手のマシンガンが火を噴いた。
「なんだ、あの動き…。ユーリック、いったいどんな手品を使った?」
ストレイドは呟く。
その言葉に紫蘭は首を傾けた。
「いったいどういうことです?私にはさっぱりで…」
そこまで変わった動きはしてないように思える。
しいて言うならユーリックさんがOBを多用していることぐらいだが…
「あんなにOBを連発したり小ジャンプ中に使用するのがおかしいのよ。ふつうは発熱でオーバーヒートしてるはずなの。」
「反則してる…ていうわけじゃないですよね。あの人に限って。」
「機体が重く感じる。おそらくラジエーターを強化したんでしょう。この戦い方をするために。」
紫蘭はその戦い方に違和感を感じつつあった。
マシンガンがOBによってまた回避され、視界右にラプターが消えた。
視界に捉えなおすが、またOBで左へと跳ぶ。
「この動き…オーエンさんあなたは…」
「俺は、あいつに…紫蘭に対抗できる自信はない。」
放たれるライフルの弾丸を小ジャンプ機動で左右に躱す。
素の機動力はチェインドが上なので、二機の距離は徐々に縮まっていった。
「だが、お前は立ち向かった。そのお前に勝てないようでは」
そこでラプターがOBを起動し、一気に距離が離れる。
「フィオナを護れない!」
マイクロミサイルが放たれた。その間もライフルの弾幕は途切れない。
こちらを近づける気はさらさら無いらしい。
マイクロミサイルを左手のマシンガンで打ち落とすアキレス。
だが彼はその距離を詰めようとせず、ラプターに直接攻撃はしなかった。
なぜなら、待っているからだ。
有利になる瞬間を。
「あなた一人で背負い込むことはないでしょうに…っとっと」
片足で着地した際にバランスを崩しかけるが立て直す。右にステップを踏めば、元居たところをライフルの火線が穿った。
その隙をついたラプターがマイクロミサイルをさらに発射。
アキレスは再び迫りくるマイクロミサイルを、射線に乗せたマイクロミサイルで相殺する。
そうしてできた煙幕を、ラプターはOBで抜けてきた。
「不利な機体で接近戦なんて!!」
その直線的な動きに回し蹴りを叩き込む。それはラプターのコア上部強かに吹き飛ばすが、肉を切らせて骨を断つと言わんばかりにインサイドから地雷が放出された。
体勢を低くとるが、そのうちの一つを避けきれず爆発、その爆発が連鎖的に広がりチェインドを焦がした。
「これが俺が探した答えだ!!」
「ネクストに対抗するための…なら、その距離じゃPAで!」
爆炎の中、一歩前に出て左マシンガンを至近距離で乱射した。
ラプターのAPは一気に削れるが、1秒と経たず弾丸の放出が止まる。
「弾数確認を怠るか!」
「それが仇だ。」
インサイドを放とうとしているラプターの眼前に、弾切れのマシンガンを放って全速で後退した。
そして、放出した地雷がマシンガンに吸着して落下、それがラプターに反応して爆発…。
「なぜ接近したの!」
会場は接近戦によって沸いていたが、フィオナがアセンに合わないユーリックの行動に思わず批判の声を上げる。
彼女も武器の得意レンジ程度は把握していた。
隣に護衛としていた緋芽は彼女に自らの考察を話す。
「アキレスの意図を察したからよ。」
「練君の?一体どういう?」
「ライフルの継戦能力はマシンガンより低い。だから、弾切れを誘ったの。」
つまり、先程のアキレスの攻撃頻度の低下は弾薬の温存ということになる。
そこまで至ったフィオナは口を開いた。
「じゃあ今の接近は…」
「ジリ貧になる前にラッシュを掛けたかったからね。差を作ってしばらく引きに徹したかっただろうけど。」
「まだ甘いぞ。」
OBで爆発寸前に離脱したラプターがマイクロミサイルを撃ちきりパージする。
その間もラプターは後退を続ける。
ミサイルの第1波のいくつかがチェインドの真横で近接信管が作動。高速の破片が装甲を削った。
「俺はただ戦いのない場所に戻る事を言ったんじゃありません。」
全速力でラプターに向かうチェインドの左手がコアに伸び、そこから格納していたブレードを引き抜く。
続く第二波のマイクロミサイルのうち数発をマシンガンで打ち落とすと速度を緩めず残りのミサイルに向かって行った。
「俺は紫蘭と一緒に『今あったはずの時間』が欲しいんです!」
そう言うと、チェインドがブレードを振りかぶる。
彼の感情を乗せたブレードは残っていたマイクロミサイルを叩き斬った。
彼らは周りに病気として扱われている。
万が一その状態で周りにいたであろう人と会ってしまえば大騒ぎだ。
すでに企業側ではないが、見逃してくれているのはたかが一レイヴンにしかすぎないからでしかない。企業の存在を揺るがす事態にもなれば黙ってはいないだろう。
この戦争とその暗黙の協定に片が付いて、自分が役目御免になるまでは大手を振って日常に回帰することはできない。
「本当はもう取り戻せないものかもしれない!けど!」
ラプターは接近して来るチェインドに相対し、OBで距離を詰める。
ぐっと縮まる二機の空間。
その中でアキレス、練が叫ぶ。
「それが、俺の戦う理由だ!」
チェインドのブレードが唐竹割の如く振るわれる。
「そうか…」
弾薬がまだ残っていたため、誘爆しチェインドを吹き飛ばした。
「ライフルだけ残して離脱か!」
その煙を晴らすように、一発の弾丸がチェインドの頭部に突き刺さる。
「そうか、もっと望んでいいのか。」
ゆっくりと歩み寄るラプター。
「自らの望みのために、いくらでも手を伸ばせばいいのか!」
右手にハンドガンが、左手にブレードが装備されている。
彼は思う。
自らに足りなかったのは、求める心だ。
自分の大切なものを護りたいという気持ちは確かに本物だった。
だが、ネクストを見た途端に、自分には無理だ、届かないと簡単に諦めていたのだ。
本当に護りたいなら、いくらでも強くなればいい。
それこそどんな手を使っても。
だから、彼はネクストに挑んだ。
「感謝するぞ!アキレス!」
彼はOBでチェインドに迫る。
恐ろしいことに、OBを使っている最中にもかかわらず、彼はハンドガンで的確に、地雷などでダメージを負っている脚部に射撃してきた。
「何当たり前のことを!」
アキレスは笑顔のままフットペダルを限界まで踏み込み、機体を最大推力で上昇させる。
脚部を狙った弾丸がチェインドの足首あたりを通り過ぎていった。
そのまま射程ぎりぎりの位置にいるラプターにマシンガンを向け乱射する。
狙いの大雑把な射撃かつトップアタックという対応の難しい攻撃に対し、ユーリックはOBを切ると再度起動。右に勢い良く跳ぶとハンドガンを応射。
熱とエネルギーの限界が来て降下し始めたチェインドにハンドガンの弾丸が突き刺さる。
チェインドの着地点に陣取るラプターから延々と放たれる弾丸がチェインドを襲い続けた。
蓄積する熱でなったオーバーヒートに構わず、アキレスはマイクロミサイルをばら撒く。
それに対し、ユーリックは残り少ない吸着地雷を放出して相殺した。
「残り2セット…まだ使いどころはある!」
そのまま爆炎を突っ切ってきたチェインドをブレードで切り裂きにかかるが、チェインドは冷却に使われ残り少ないエネルギーを使い、無理やりバック宙をした。その際マシンガンを放り投げて。
結果、ユーリックはマシンガンを切り裂き、残っていた弾薬の爆発でラプターのAPを持っていった。
「弾薬が残っている間にパージすればこういう使い方ができる。それを教えてくれたのは…」
コアからリボルバーを引き抜き、一拍おいたのちに回復したエネルギーで一気に距離を詰めるチェインド。
「あなたですよ!」
そのまま煙の中に突っ込んだ。
その先にはラプター。
がいない。
「なっ!」
「わかりやすいぞ!アキレスは!」
その時、左から弾丸が飛んできた。レーダーを確認しなかった自分のミスだ、とアキレスは舌打ちする。
煙のふちで機体を隠しての奇襲。しかも後退して煙の中に隠れていくから質が悪い。
アキレスもレーダーを頼りにリボルバーを応射する。
ライフルにも匹敵する弾丸が銃身から吐き出され、それが煙の中にいるラプターの右側頭部を削っていった。
しかし、ラプターは射程ぎりぎりで引き撃ちに徹する。
お互いの射撃戦は長くは続かない。
「リロード…」
リボルバーは6発しか弾が入らないため、リロードが頻繫に発生する上、それは短くない。
その隙をついてユーリックはOBで引き撃ちから一気に接近へとシフトする。
そのままブレードを発振させ、勢いのままコアめがけて振り抜いたそのラプターの攻撃を、姿勢を深く沈めることでチェインドは回避する。
そこから放たれたチェインドは掬い上げるように斬撃は、右足を一歩引いたラプターを捉えず空を切った。
リロードが終わったことを確認したアキレスはブースターを全開にして後退。
逃がすまいとラプターから放たれた地雷を袈裟斬りにして無力化して距離を取るが、ユーリックはその空間はOBによって踏みつぶす。
「しつこい人は嫌われますよ!」
「これは張り付きっていう立派な戦法だ!アキレス!」
ブレードの冷却が終わらないチェインドに放たれた容赦ない唐竹割りは、チェインドのコアの先端を焦がした。
だが、ブレード攻撃によってできた隙にアキレスはリボルバーをコアに押し付けて三回発砲し、ラプターの装甲を穿つ。
仰け反ったラプターに続けて放たれたチェインドの左足による回し蹴りをユーリックは敢えてそのまま倒れることで回避。地面に背中を打ち付ける前にフットペダルをベタ踏みして不自然な角度で停止、足のブースタまで使用しサマーソルトキックまでもっていく。
後退しぎりぎりで躱すが、チェインドは体勢を崩して大きな隙ができてしまった。
「まずいッ!」
「そこだ!」
きれいな一回転を決めたのちに着地してハンドガンの引き金を引いたユーリック。
前傾姿勢になっていたチェインド、そのコア上面に一発が命中したが、そこでユーリックにトラブルが発生する。
「ジャムだと!こんな時に…」
無理な機動をしたせいで、彼のハンドガンが排莢できず動作不良を起こしてしまう。
この好機を逃すまいとアキレスは崩れた体勢のまま無理やりリボルバーを撃ち放った。
しかし、OBで一瞬のうちに加速したラプターを捉えることはなく、リボルバーの弾倉の弾を無駄にしてしまう。
お互い短い時間だが、武装がブレードのみになった。
起動したOBで接近するラプター。
リボルバーの弾倉をスライドしリロードに備えつつ、迎え討つチェインド。
両者ブレードが発振し、アキレスは一文字に、ユーリックは袈裟斬りに構え交錯するのを待つ。
直前でユーリックはOBを切り、タイミングを外そうとするがアキレスはそれに引っ掛からない。
そのまま、全くお互いにブレードが振るわれる。
「「なっ!!」」
その光の刃は、お互いの機体を捉えることは無かった。
チェインドはラプターの左腕をリボルバーのせり出していた弾倉に打ち当てた後、受け流した。
その結果、非常時に使われるエジェクターロット(※)をラプターの右手が叩き、強制排莢される。
よって後は弾倉に弾薬を装填するだけになった。
※エジェクターロット
リボルバーのうち弾倉が横にスライドするタイプで、撃ち切ったときに薬莢を取り出すのに使う棒状のパーツ。ここを押し込めば薬莢が勝手に手前に抜け落ちる。
ACの装備なのでいつもは自動で排莢されるが、万が一にと装備されていた。
対してラプターはチェインドの左肘をハンドガンを持つ右肘で押さえつけている。
その衝突の衝撃で、薬莢が内部が弾き飛ばされた。
カチャンと小気味良い音とともに次弾が装填…。
両者、狙った動きではなかった。
だが、結果的にお互いが射撃戦に移行する時間が短くなるという予想外が起こったのだ。
先程の動きを逆再生するようにお互いの距離が離れた。
二人の頭の中にあったのは同じ事だ。
__先に当てたほうが勝つ。
(残り六発。いい数字だ。)
装填してある弾数を確認し終わり、装填が終わっていたユーリックが先に一射。
それを左足を軸にターンして躱すと同時に装填を終えたチェインドがお返しに、と発砲した。
コアめがけたそれを左に身をそらし回避し、鋭い小ジャンプで接近しつつ二発撃つラプター。
弾道を読み、素早いステップという最小限の動きで躱して二発撃つチェインド。
その二発は小ジャンプをしていたラプターを捉えることはなかった。
すぐそばまで迫るラプター。さらにOBを瞬間的に発動、フェイントじみた動きを交えつつ、左腕のブレードを起動する。
リボルバーの発射間隔ぎりぎりで真一文字に振るわれるであろうそれを、ブレードを縦に振ることで何とか受け止めた。
「何とかこれで!」
後は早撃ち勝負。
アキレスはそう意気込んで、右手がラプターの頭部に向けロックをする。
アキレスは最後のトリガーを押し込む
はずだった。
だが、その直前にラプターが一歩引いた。
体勢が崩れてリボルバーがあらぬ方向に向き、地面を穿つ。
「そんな!グワッ!?」
その直後、激しい衝撃が彼を襲う。
気づけば彼も彼の機体も仰向けになっていた。
「敵の装備を常に頭の中に入れておくことだな。アキレス。」
静寂に会場が包まれる。
「あーやっちまったな。」
「ちょっと待ってください何が起こったんです!?」
紫蘭の目にはラプターが一歩引いた直後、チェインドが唐突に爆発したように見えた。
隣のストレイドはやれやれと首を振り、シャルは額に手を当て空を仰いでいる。
「吸着地雷をゼロ距離で使用したのさ。丁寧にも巻き込まれることのないように一歩引いてからな。」
「ハンドガンでの早撃ちを想定してたから、完全に裏をかかれたのよ。全く機体制御できずにまともに食らっちゃったのね。」
煙が晴れた先には煤だらけになったチェインドが大の字になっていた。
ちなみにどうでもいい話だが、すべての弾丸が模擬弾のアリーナ戦では爆発兵装の火薬とその爆発時の温度も抑えられている。その影響で、逆に不完全燃焼を起こしやすく、ACがよく煤まみれになる。
どれほどかというと、アリーナの運営費用の明細書で修理費と洗浄費が別に書かれるほど。
そんなわけで、新品同然だった機体が黒焦げになってしまったのを見て、彼の敗北を余計残念に思う紫蘭だった。
「くっそぉぉぉぉぉぉ!まけたぁ。」
コックピットで脱力しつつ声を上げるアキレス。
悔しかったが、また楽しくもあったため心地よい疲労感があった。
『正直ここまで俺を追い詰めるのは、シャル辺りの上位ランカー達だからな。胸張っていいと思うぞ。』
「負けは負けです。…最後、たるんだなぁ…。」
ユーリックはその様子を見て、ラプターの右腕をチェインドに差し出した。
『おかげでこっちも新しい発見があったんだ。ありがとうな。』
「こちらも、貴重な経験をさせていただき、ありがとうございます。」
二機のACの手はがっしりと握られた。
それを境に会場は今までにないほどの歓声に包まれる。
「どうやら無残に敗北しないって最低目標は達成できました…」
「そんなこと言うなよ。」
そういうとわざわざウィンドウを開き、アキレスに顔を見せてまでユーリックは言う。
「俺が保証する。お前は十分トップランカーといえる力がある。」
「『伝説』の言葉、信じますよ?」
拮抗するも、あと一歩届かない。
アキレスの中で憧れである『伝説』は、少なくともまだ憧れのままであった。