巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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最近題名に頭悩ませる日々が続いてます。


日和見だと印象悪いけど中立って言うとマシに聞こえるよね。

「さて、そろそろこの戦争の着地点を見出さなきゃいけない時期なんだけど。」

 

右手に杯を持ち切り出すUknownさん(女性)

 

有沢アリーナでの試合から数日たった。

俺達はシャル宅のリビングを使って行われた、FGW現地組の会議にお邪魔させてもらっている。

紫蘭は完全なおまけだが、一応俺はFGWの戦力としてすっかりなじんで、頭数として数えられ始めているので問題ないはず。

 

「ネクストは国家解体戦争時のものが揃いつつある。アナトリアが財源としてAMSを使い始めたのは流石にお咎めなしで。」

 

「経済の首絞めて崩壊っていうのは後味悪いもんね。」

 

ネクストの拡大は防げなかったらしい。

願わくばコジマ粒子拡散に対し何かしら条約が作られることを祈るばかりである。

 

「そういえば紫蘭に提案があるんだけど。」

 

unknownさんが紫蘭に切り出す。

 

「アナトリアから、今ならAMS売ってるコネでどこのネクストも手に入るって。戦い続けるかは別にして、自分に合ったネクストを今のうちに選んどいたほうがいいわ。」

 

既に紫蘭は自分の意思をFGW側に伝えてある。

 

その時のストレイドさん曰く

 

「居場所は作っといてやる。後は紫蘭が依頼受けるかだ。」

 

だそうで、強制も否定もしないらしい。

そのストレイドさんが口を開いた。

 

「ネクストはオーダーよりも機体の個性が強い。フレームとかは標準機のまま使われることなんてザラだからな。シミュレーターは開けとくからいろいろ触れるといい。」

 

「…分かりました。決まり次第お伝えします。」

 

一瞬間を置いたのち、先延ばしのような回答をした。

これからの事だから短くても時間が欲しいのだろう。

 

「さて次だが、情勢について裏もまとめて共有しておこう。」

 

そういうと、ホログラムが部屋の真ん中に現れる。

見やすくするために簡略化された地球がそこに浮いていた。

解説役はシャルさんだ。

 

「特筆すべきはレイレナード。ここは急に通常兵器の投入が少しだけど増えた。基本この前開発されたハイエンドとネクストを前面とした戦力構成だったはずなんだけど。」

 

カナダ付近に戦力量を表したグラフが表示される。

 

「あのAIRも製造自体はレイレナードがしていたもの。秘密裏に戦場に投入が確認され、すべてレイレナード側で運用されていることも確認済み。急に新型の通常兵器を作り出してきてる。」

 

「社の方向転換…タイミング的にリスクがでかいな。」

 

ストレイドさんが顎に手を置く。

今まで最新技術、先鋭少数をメインで数を他社に頼っていたレイレナードが通常兵器の増産に移るのは不自然だ。

 

「考察は少し後に。」

 

シャルさんによって先が促され、次へと思考が移る。

 

「オーメル、ローゼンタールは大きな動きはない。戦線上で小競り合いが起こっている程度。正直これ以上消耗したがらないだろうから、停戦になればあっさり手を引くわね。」

 

「オーメルは賢いところのはずだから。どうせ次に備え始めてるはず。」

 

unknownさんが不機嫌そうにつぶやく。

この人、あまりオーメルにいい印象を抱いてないのか、この会社の話になると機嫌を悪くする。

 

「ただ、AMSを除いてこの会社だけでネクストを開発し、成功させてる。注意して損はないはず。実際ここにオーメルのネクストのリンクスがいるから。」

 

何人かの目が無意識のうちに紫蘭に行くが、当の本人は大して気にしていない様子だ。

 

「レオーネメカニカは来るなら迎え撃つ構え。戦線に戦力を駐留させ抗戦の用意をしてるけど、戦争が終わりそうになったらすぐに手を引く。幾らかきな臭いうわさ話は上がってるけど、詳細は調査中。」

 

「GAだけど方針は知っての通り。問題はネクスト開発の遅れからリンクスの育成が遅れてる。ネクストも国連で使えるのはGA、BFFとイクバール。他は所属を疑われるから使用は控えて。」

 

シャルさんがストレイドさんと隣に座るunknownさんに向けて付け加える。

 

「特にそこの二人のネクストはORCA戦役時のオーパーツだから使用は禁止。昔のパーツを使って。」

 

「分かった。善処するぜ。」

 

「りょーかい、アナトリア時代のを引っ張り出すわ。」

 

返事は上からストレイドさん、unknownさんである。unknownさんはOFFの時は大体女性の姿である。

 

元はこの世界で言うユーリックさんなので、別の世界のフィオナさんとどんな関係だったのか気になるところではある。

が、爆弾になりそうなので聞いてない。

フィオナさんに極力関わらないようにしてるので(現地には何回か行ってるが)やっぱそういうことなのであろう。

 

「まあ、狙いどころはレイレナード、次点でレオーネ。ローゼンタールは動きがない限り放置だな。無意味に触れるといいことはないからね。」

 

シャルさんの言葉に、そこにいた全員が頷く。

疲弊した国連と利益の少なさに気後れする企業。

厭戦ムードが流れつつある現状、企業タカ派であるレイレナードの頭さえ押さえれば八百長を崩したどうこう関係なく停戦、もしくは休戦に持っていける。

正直、GAをこっち側につけたことが響いてきているのだあろう。

 

「そうなると問題はレイレナード主力のネクスト戦力に対する対策と、【乱入者】の所在および目的の調査だな。」

 

「この様子だと、レイレナード突っついてれば何か出そうね。」

 

「根拠は?」

 

妙に確信めいた言い方に、思わずunknownさんに問いかけた。

 

「勘よ、アキレス。」

 

絶句。

 

周りは大して気にせず、とりあえずレイレナード相手に鎌をかける方針で話を進めている。

 

「unknownの勘はよく当たるんだ。気にするなアキレス。」

 

周りの人たち、意外とunknownさんの勘を頼りにしている様子。

大丈夫なのかこの組織。

 

「信用ならないなら…アキレス、あなたは6時間以内にリバースする。」

 

「なんて予言するするんです!!意地でも吐きませんからね!!」

 

 

猛烈な勢いでアキレスがトイレに駆け込んでいく。

予言通り決壊し始めたのだ。

即堕ち二コマとか言ってはならない。

 

本人には酷だが、おそらく需要がないだろう。

 

 

原因は紫蘭にシミュレーターによる演習を求められたからだ。それも機体をとっかえひっかえして行われた。前のと同じで、Gもついている。

 

結果、次世代規格機と何戦もする羽目になり限界を超えかけた戦闘に三半規管が悲鳴を上げた。

まあ素人同然だとは言え、高い適性を保持するリンクス相手に何回も増援到着時間として設定した5分を耐えきっているのだから、仕方ないところもある。

というか、アキレスは勝利条件を満たしていると考えると恐ろしいところがある。

 

「練ってやっぱり強いですね。いくら対ネクストチューンだからってあれは勝つためじゃなくて足止め用でしたよね。」

 

「ああ、にとりからそう聞いてる。それに、一回お前ブレイクオーバーしたよな。」

 

ストレイドさんも引き気味の笑顔で応じた。

そりゃ予言されたにもかかわらず、限界までやって決壊寸前で駆け込んでいくいい年の男の子を見送ればそうなる。

 

「見事にやられましたよ。不意打ち後張り付きでホバタンが溶けました。」

 

幾ら機動力も装甲も微妙なレオーネのホバタンでもオーダーでネクストを撃墜するのは異常としか言えない。

そのあとで有沢タンクでぼっこぼっこにさせてもらったが。

 

あれ、ランク上位の人たちにこの改造したらネクスト狩れるんじゃ、と思わずにいられなかった。

実際相性の問題はあるが、やり方次第でどうとでもなる気がする。

 

「にとり曰く、別段難しい事やってないってことだ。何しろアキレスの所有するパーツの※7割に手が入ってるらしい。もしかしたらこれがスタンダードになる事もあり得るってさ。っていうか特許取って儲けてやろうとも言ってたな。」

 

つまり、あれが世界中のレイヴンの手に渡る日が来るかもしれない。

ネクストだからってその性能に胡坐搔いて笑ってたら足下掬われるわけだ。

 

面白い、と出てくるあたりに染まりつつあるわけだが、悪いとは思わない。

 

「さて、ほどほどしたら私とも対戦をしてほしい。ネクスト同士いい戦いができると思うからな。」

 

初心者が強い人と戦えるって、恵まれてる。

 

AC3、ACSL、およびACLR時に復刻された過去ACパーツなど。

NX以降の物は後回しにされていた。

 

 

 

 

 

暗い部屋で、端末の画面だけが輝いてる。

 

【今回の任務は…】

 

二か月ぐらい前だっただろうか。

ある日うっかり左腕を折ってしまったとき、ついでに流行り病に罹ってると言われ集中医療室に運ばれた。

そして一週間後、無理矢理意識を刈り取られ気づいたら首筋に妙なものを植え付けられた。

 

白い同じような奴らが集められた。

そこで俺たちは選ばれたと白衣の男に言われ、戦闘機のコックピットじみた物に誘われる。

俺たちは退屈な日常から剥がされて、ヒーローのように戦うための力が与えられたと心の奥底で喜んだ。

 

だが、何日か経ったある日、俺の隣の部屋のレッカーがシミュレーターが終わっても出てこなかった。首筋のコードを外した瞬間目が見えなくなったのだという。

 

そして、その日からだんだんとヒーローに憧れる日々に影が差していく。

前の部屋にいた美香は耳と舌がおかしくなった。

はす向かいにいたサラは確か触れてるかどうかわからなくなったんだっけ。

隣のレッカーは立つことすらままならなくなった。

 

 

そして、レッカーは戦えなくなった。

残った三人はそれでもやり切った。

 

俺は何ともなく、それだけが俺たちの仲を気まずくした。

次の段階になって、俺たちは戦場に駆り出される。

 

世界が一転した。

 

そう思いたかった。

 

才能と与えられた力で戦い、奪う日々。

最初はなった当時のようにヒーローになれた気分で楽しかった。

周りの敵が少し攻撃しただけで砕けた。

軍艦が肩武器一発で真っ二つに折れた。

 

今迄の憂鬱と訓練の恐怖が一緒くたに吹っ飛んだ。

 

 

だが、同じような弱すぎる相手に次第につまらなくなっていった。

独房のような部屋での待機と張り合いのない戦闘で人生を搾取される日々。

俺はともかく三人は代償まで払ったのだ。

それがこんなオチでいいはずがない。

 

家族と会わせてほしい、ここから出してほしいと俺は三人の代弁をして上のやつらに伝えた。まだどこも悪くない俺が言えば奴らも考えると思った。

 

 

 

そして、家族が人質に取られた。

 

 

 

俺は従順な飼い犬になった。群がる罪のない虫を蹴散らして踏みつぶして殺すことで必死だった。

俺達三人とも必死に敵を殺した。

 

俺だけが無事だった事に妬みごとを言われ、罵声を浴びせられもしたが、仲間だった事実は消えない。

俺達はそれを背負った。

 

負けるわけにはいかなかった。

 

しぶとい奴は大体レイヴンだった。

今までとは違う敵の出現によって、簡単倒せた敵に退屈していた二人は少し喜んだようだが、俺は違った。

俺はそいつらに憧れ嫉妬した。俺より弱いくせに、自由を謳歌して平然と暴力を振り回す。

羨ましくて妬ましかった。

 

(あの三人はどれだけ代償を払ったんだ?!お前らは負けて自分が死ぬ程度だろ!あいつらは負けなくても傷つく。レッカーはもう一人じゃ立つことすらままならないんだぞ!)

 

手こずらされるたびに俺はそう心で罵った。

 

たった二ヶ月で四人の人生は地に落ちた

 

【よろしく頼むよ従順な首輪付き君】

 

今回もそういう羽虫とカラスを蹴散らすだけだ。

 

 

 

【よう、久しぶりだな。早速だがミッションを説明する。】

 

【今回はアメリカ中央の戦線での戦闘に増援として出てもらう。】

 

【相手はレイレナード。ここで押し込めればそれなりに牽制になるはずだ。】

 

【だが、お前に声がかかったのは戦線を押し上げる為だけじゃない。】

 

【ネクストが現れた場合、こちらのネクストが到着するまでの間、その場で足止めをしてもらいたい。一週間ほど前から戦線に何回かネクストが投入されていてな。戦線の何か所かに穴が開いてしまったくらいだ。】

 

【後方にリンクス、ジョジュア・O・ブライエンとK.Kが待機している。元々切り札として配置していたが、ネクストが出張るようならこちらも手札を切るというだけだ。】

 

【とは言っても、南北に幅広い戦線だ。遠いところに現れて多少被害が出ても気に病むことはない。】

 

【以上だ。ネクスト相手に粘った実績は信用している。だが、無理はしなくていい。返事を待ってるぜ。】

 

あの戦いが及ぼした影響、思ったよりでかいのか。

 

ユーリックさんとの戦いの前にランキングを覗いたが、何人かランキングから姿を消しているレイヴンがいた。

リンクスになったのか、それに狩られたかは調べていない。どちらにしろ、面と向かう事がなければ必要ない情報だ。

 

その時、端末からコール音が響く。

シャルさんから。

 

「もしもし、アキレスです。」

 

『アキレス、まあ気になる情報が入った。といっても、あまりあなたにとってはそこまで興味を持たないかも知れないけど。』

 

「どんな話ですか?」

 

『他社のリンクスの確保にあなたと同じ手法が使われてそうなの。入院した患者の適性を調べて、戦闘適性の高いものを自社の通常戦力に。AMS適性があればネクストに突っ込んでるらしい。』

 

「確証は?」

 

『いくつかあなたと同じ病名の患者を追跡したけど、退院しても無いのに病室から姿を消している。恐らく…』

 

病名も架空のものなのかも知れない。

そのうち治療法がみつかったとかぬかして解放しても問題ないようにしてるんだろう。無論口封じもして。

 

「呆れますね。まあ、同情しておきます。」

 

『あなたの事を聞かされた奴は逆恨みしてるかもしれない。一応警戒しといて。そろそろ切るね』

 

「了解、また今度。」

 

そう言って電話を切った。

 

そういう奴らには悪いが、そいつの事情など知ったことか。

紫蘭の件で思い知ったが、かわいそうな奴だから助けてたい、何て言うのは理想論の品物だ。

紫蘭一人のために、たくさんの人の力を借りた。悪い言い方をすればたった一人の為に大勢が迷惑被るわけだ。友人故の助け合いだったから成り立つ。

それを赤の他人に?

冗談じゃない。あれと同じような事を赤の他人にするつもりは一切無い。

俺は紫蘭だったからやったのであって、彼女が左半身を奪われ、無理矢理にリンクスにされた悲劇のヒロインだったからじゃない。

同じ状態の別の女子だろうと、紫蘭でなければ頭掴んだ時点で問答無用でコックピットにダークスレイヤーを突き立てている。

女だろうが男だろうが、幸福だろうが不幸だろうが俺に関係ないくせに立ちはだかるなら退いて貰うだけだ。

 

正義のヒーローとやらは国連のエースがやればいい。軍規に従う軍にはお似合いだ。

俺はやりたいことをやる。殺すも生かすも、依頼で指定されてなければ俺の自由だ。

それに誰も文句を言わせるものか。

 

ま、次の戦場で出会うリンクスがそういう奴だったら楽だな。元レイヴンとかめんどくさい事この上ないだろうから。…そいつ相手に増援が来るまで持たせろ?

 

単独ネクスト戦なんて依頼が来ようものなら断ろう。

そう心に決めたアキレスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

決して、リバースして戦うのが億劫になったからではない。

 

 

断じて、そんな事実は存在しないのである。

 

 

 

 

「紫蘭の素の戦い方は軽から中量二脚って感じだな。接近してショットガンやブレードで一発かます。もしくは張り付いて継続的に削り続ける。おすすめはイクバールのSALAF、レイレナードの03-AALIYAHってとこか。」

 

一通り標準機を乗り回し、機体の選定を始める。

 

「私もそのあたりが戦ってて楽でした。でも接近戦って難しくありません?」

 

「ああ、操作難度は最大だ。」

 

ストレイドさん、まさかの真顔である。

 

「さらっと言わないでください…。どうすんですか、訓練してる時間ないですよね。」

 

実戦が間際だというのに、習熟が必要な近接機に適性があるという状況と機体のミスマッチに頭を抱える。

即応性がなければ、この現場では無意味なんだ。

 

「まあ、少し難度の低いミッションで慣れてくしかないな。うまく斡旋するから頑張ってくれ。」

 

「そんな無責任な…。」

 

この人は重要なところでそういうの他人任せというか…。いや、これは個人でどうにかするべきところか。

 

「あ、アキレスが戻ってきた。具合はどうだー?」

 

「ええ、問題ないです。」

 

遠くへ呼びかかるように声をかけるストレイドさんに、同じように声を返す練。

取り繕うためにストレイドさんのような大きな声を出したのだろうが、練はどこかげっそりしている。

足取りもお酒を飲んだみたいにふらついて、見てておっかない。

 

「ごめんやりすぎた。練が強いから…」

 

「性能差考えてくれ。それに振り回される俺はどう考えても無事じゃない。」

 

「夢中になっちゃって…」

 

ほんと申し訳ない。

だがオーダーだとしても接戦になれば燃えてしまう。

結果、オーダー相手に容赦なく猛攻を仕掛け、普通の人間の限界を超えた機動を要求する地獄を作ってしまっても仕方ないと思うの。

 

「で、機体は決まったのか?」

 

「がっつり仮想敵だけどアリーヤタイプにしようかなって。エネルギー管理と回避を気を付ければ私に合いそうなネクストだから。」

 

それにかっこいいし。

やっぱり見た目って大きいと思う。

 

「データ見たけど、かなり玄人向けみたいだな。無茶すんなよ。…まあ、あんだけ振り回されて機体決まりませんでした、よりかはマシか。」

 

私はやる気だ。

 

 

 

さて、依頼が来てるか確認しよう。

そう思って端末を取り出した。

 

 




魔改造は、今後遭遇数の増えるであろうネクスト相手に【生き残るために】オヤジさんが生み出したものです。
時代背景的にOWのようなオーパーツですが、この世界の住人にも理解できる概念と技術レベルです。

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