巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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スイマセン、リアルが忙しかったです。


今回、クロス先に寄せた話になります。
空白の夏の中を埋める話。

この話を書くに当たって、東方アレンジ【heaven・the・Alcohol!】から発想をいただきました。

序盤はセミの音を、後半は紹介した曲を思い浮かべつつどうぞ。


後者は心臓の悪い方にお勧めできませんが。


…季節逆行してやがる。


怪奇~都市伝説~

蝉が外で忙しなく鳴く昼下がり。

 

アキレスこと神津練は軒先でスイカに齧り付いていた。

なにしろ少し手に入りずらくなった天然ものだとのことで、食べないという答えは練になかった。

 

練はこういうことをするとき形から入る質であり、軒先で食べることを選んだのもそのためである。

そして、練はこういうことに敏感だ。

 

黙々と、だが美味しそうにスイカに齧り付くアキレスを時折眺めつつ、シャル.マメイヤーはテレビの特番を見ていた。

 

『さて、夏恒例の心霊特番ですが近年、類を見ないオカルトブームが起きています。』

『各地ではオカルトサークルが次々と設立され、社会問題になるのではとの懸念もあります。そこで…』

 

そこで紹介されるオカルトサークルとその活動の数々。

その様子をシャルは顔を何とも言えない顔で眺める。

 

「本物から見たら滑稽に見えますよね。あなた達を知らず、ネットその他の出鱈目からこういうことしてるのは。」

 

シャルが振り返るとスイカの皮を片手に、練が彼女を見つめていた。

どうやら食べ終わったようで、スイカの皮を捨てるところだったのだろう。

 

先日、練は彼女達が本物の怪奇だということを知った。

彼女達からすれば、目の前で出ているそれがちんけな偽物に過ぎないのだ。

 

「一部を除けばね。本物も混じっているからこうして見ておかなきゃいけない。」

 

練が台所に向かっていくのを見送りつつ、そう返した。

 

「このネット社会、この手のものはほとんどガセですよ。」

「ネット社会だからこそ、本当のことに気づいてしまった人に対処することは忘れちゃいけない。本物が拡散されたら収集がつかなくなる。」

 

シャルが険しい顔でテレビに視線を戻す。

 

「結構慎重なんですんね。ほとんどの人が自然への恐れを忘れてしまているのに。」

「元が自然でなくても、この手の噂が拡散したら力を持つようになるんだ。重要なのは人の意識が実体のないものに向かうことにある。」

 

そう言ってシャルはテレビをつけたまま、練を振り返る。

 

「だって、ネットに拡散した情報と文献をもとに私達の存在を探り当てた人がいるからね。実例があると油断ならないよ。」

「それは……。一体どんな人ですか。」

「GA最高取締役。」

「え、あの、宇佐見さんですか?」

「ええ。」

 

そう言う繋がりだったのか、と一人納得するアキレス。

 

「そういえば紫蘭が最近『サナエさん』という噂話を聞いたといってました。学校の怪談として噂になています。」

 

オカルトつながりで彼は先日、紫蘭から聞いた話を思い出した。

 

「それはどんな話なの?」

「いや、それが話す人によって内容が違うらしく、一言に表せないとか。」

 

それを聞いてシャルは目を細める。

 

「立上さんに連絡することがあったら、『出来るだけその話にかかわらないように』と言っといて。その手の怪談、当たり引くととんでもなく痛い目見るから。」

「わ、分かりました。出来るだけ早く伝えておきます。FGWってこういうのも気にしてるんですか。」

 

予想外の警告に驚いてしまった彼は、胸の中の問いをそのまま発した。

 

「今回は顔見知りだから。普段は私達関連以外はスルーしてる。だって顔の知らない誰かが、怖いもの見たさに突っ込んで痛い目見るのにいちいち手出ししてたら何も出来ない。そういうのは、手を出す本人の責任だもの。」

 

やっぱりこの手の話は無慈悲だな、と胸の中で漏らすアキレス。

 

 

 

 

この時、彼は知らなかった。

 

自身の身に何が降りかかるなど。

 

 

【ミッションを説明します。】

【依頼主はレイレナード、内容は京都にあるかつてテロリストが拠点に使っていた基地の調査です。】

【近隣の住民の噂ですが、そこから毎晩物音がするそうです。我々は残党、もしくは新手の組織に使用されているのではないかと考えています。】

【そこで今回、あらゆる事態に対処できるレイヴンに状態の確認をお願いしたいと思っています。】

【テロリストその他抵抗勢力があれば、撃破しても構いません。】

【ただ、肝試しに来た一般人への攻撃は控えてください。ちょっとした心霊スポットになりつつあるようで、近隣を地元住民の子供たちがうろついていることがあります。くれぐれもご注意を。】

【以上となります。このような情勢下、実質的な中立国を戦火にさらすわけにはいきません。これは各勢力の合意を受けたミッションです。】

【レイヴンとして立場を上げることも可能です。いい返事をお待ちしております。】

 

これまたきな臭い。

だが、この前自分が受諾した依頼の後始末なんだ。

受けとくか。

 

 

 

【一応都市伝説の方も添付しておきます。[そこは丑三つ時に亡き者が現れる。そして、地縛霊になった少女に寄り添っている。万が一、彼女を傷付ければその者たちの仲間入り。]だそうです。信じますか?】

 

余計なお世話だ!

何も教えなくていいだろ!

 

 

 

本物と暮らしてるから信じちゃうんですけど……。

くそう。

 

 

何故作戦時間を深夜にしたのかがわからない。

 

肝試しする人を考慮するともっと別の時間の方が良かったんじゃないか

 

幸い、周囲にそれらしき人間はおらず、作戦に支障は…かえって不気味になった、一悶着あった方がよかったかも。

 

そんな事を考えつつ、以前侵入した扉の前に立つ。

 

「やけに綺麗だな。やっぱり誰か使ってるのか?」

 

手をかけた扉はそれ程汚れてはいなかった。

つまり、手入れ、及び使用されているということ。

基地に足を踏み入れていく。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、曲がり角を曲がった瞬間。

 

 

 

 

 

閃光。

 

EMP込みの対機動兵器用のフラッシュバンだ。

 

 

『大丈夫ですか!相手は何者か分かりません。慎…行動…て下……。』

「オペレーター?オペレーター!…無線がやられたか。」

 

EMPで頭部パーツのセンサー類の一部がやられた。

無線アンテナもだ。

つまり、ここからは自分一人で状況把握しなければならない。

 

レーダー使用不能のアラートがずっと鳴り響いている。

これは簡単に治りそうもない。

 

音響センサーは無事なのでそれに頼るしかないようだ。

 

角を見やる。

罠のような形跡も、敵の姿も見えない。

投げるだけ投げて逃げたようだ。

 

不意に別のアラームが響き始めた。

 

「ラジエーター動作不良?」

 

普通なら極寒の地で発生するエラー。

さっきのEMPで電子系が諸々…いや、それほどのEMPではなかったはずだ。

ならこのアラートはなんだ。

不可解極まりない。

 

ミッション中止を考えた。

このまま続行して機体不良で停止する事も考えられる。

そう思うと、恐ろしい。

だが、それをオペレーターに伝える術が無い。

 

『後方に反応。』

「何!伏兵!?」

 

機体COMが淡々と告げる。

急いで機体を旋回させた。

四脚型のMTが6機、こちらを見ていた。

ライフルを連射、次々とMTに突き刺さり全てを粉砕した。

 

「…待て、レーダーが死んでるのに何でこいつは報告できたんだ。」

 

この手の報告はレーダーを利用する。

だが、この機体のレーダーは死んだままだ。

何を以て機体COMは後方に敵が居ると判断した?

 

原因を考えつつ出入り口に向かう。

一旦出てACを見貰った方がいいはずだ。

 

少しして、更にアラートが増える。

 

「今度はなんだ!…ジェネレーターエラーだと?」

 

ジェネレーターの出力が低下し、ENゲージの回復がのろくなる。

 

仕方なく歩行に切り替える。

ステータス画面を確認して、視線を上げた時、気付いた。

 

「どこだ、ここ。」

 

覚えていた道順に従うなら、ここは十字路の筈だ。

だが、正面に道は無く、左右に別れていた。

 

マップを見るが、GPSの破損で現在位置を見失い【マップ】の名の通りに只の地図と成り果てていた。

 

完全に迷った。

 

幸い、ジェネレーターはリカバリが終わり、出力がもとに戻っていた。

 

勘を頼りに道を進むが、出入り口に辿り着けない。

 

「マズイ。孤立無援で迷子とかどうやって抜け出せば……」

 

その時、愛機以外の音をマイクが拾った。

角を右に曲がったところだ。

 

壁に背を預け、耳を澄ます。

ドスン、と足音が聞こえ、それがあまり遠くなく近づいては無い事も確認する。

角越しに様子を見ようと身を僅かに捩る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガシャァァァン! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は後ろから激しい衝撃を受け、そのまま愛機がうつ伏せに押し倒された事を理解する。

後ろからの音など殆どなかった。

故に一切気付かず攻撃を受けたのだ。

急いで後方カメラを確認する。

 

「!!?……な、何だこれは!?」

 

俺は、思わず顔を青くした。

完全に言動が小物である。

 

GAのノーマルが愛機の頭を地面に押さえつていた。

それはいい、だが、俺が青くなったのはそのノーマルの姿だ

 

 

 

 

 

 

胴体の左半分がごっそり抉られたように存在しない。

 

 

 

コックピットも動力もない機体が、ノーマルらしからぬ腕力で機体を押さえつけているのだ。

 

『頭部損傷。』

「チィ!」

 

このままでは頭部が押し潰される。

俺は、機体を右に寝返らせた。

 

ノーマルの手が滑り、頭部の右脇の地面に落ちる。

バランスの崩れたそいつは、支えのない左側から機体を地面に打ち付けた。

そこをすかさずダークスレイヤーで胸を突き刺し、縦に引き裂いた。

 

流石に動かなくなった。

 

なんとか立ち上がった俺は角のある後ろを振り返る。

 

 

 

ゆらり、ゆらりと緩やかな動きでこちらに迫るノーマル。

 

どれもまともな姿をしていないのが共通点だった。

頭が無かったり、腕や足が変な方向に曲がった機体、胸に風穴を開けた機体。

 

ゾンビじみたそれに思わず後ずさる。

 

後ずさった足にガチャン、と何か当たった音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程撃破したMT等が足元に這い寄って来ていたのだ。

 

 

 

 

思わず、小さく悲鳴を出してしまった。

正気を保てていたのが幸いだった。

 

「…落ち着け。本物の化物なら、怪奇なら騒いでもしょうがない。一旦逃げてみて駄目なら…そん時だ。」

 

怖くないといえば、嘘になる。

だが、パニックになっては助かるものも助からない。

ブースターでノーマルを弾き飛ばし、そのまま突き進む。

 

しかし、曲がり角を曲がったところに、またノーマルが立ちふさがる。

手に何かしら資材のような物を掴み、それを俺目掛けて振り下ろす。

ガイィン!と激しい衝突音とともに機体は思い切り吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

俺は悟った。

 

逃げるのは無理だ。

 

倒さねば。

 

ダークスレイヤーを握りしめ、立ち上がる。

前後を囲まれ、逃げ場が無くなる。

 

 

 

 

そこからは、しばらくの間の事は良く覚えていない。

我武者羅にダークスレイヤーを振り回し、来るゾンビをただ切り捨てた。

 

 

最初は恐怖を、途中からいつものように無心で。

 

 

途中で怨嗟のような声が聞こえようとも。

怨み声や、許しを請う声が耳に届こうとも。

 

 

無我夢中で()()を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーマルをまた切り捨て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャァン。

 

 

 

 

 

そんな、ガラスの割れるような音がした。

 

 

 

それにハッとして辺りを見回す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、フラッシュバンを食らった角だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこら中の壁に刀傷が刻まれ、敵の影はなかった。

 

「幻覚…俺は狂ってたのか?」

 

余りの静寂に自分が先程まで見ていた光景を疑う。

しかし、足元で何か金属音がした。

 

 

MTの残骸を踏みつけていたのだ。

 

恐る恐る足を退け、周りを確認する。

無線は通じないが、その他のエラーは綺麗になくなっていた。

 

「やはり、夢だったのか。」

 

その時、奥の方から少女のすすり泣く声がする。

 

 

 

 

 

何故か、行かねばならない気がした。

己に起きた事を確かめたかったからかもしれない。

 

 

歩みを止めたのは扉の前。

【第4機動兵器倉庫】

とマップに書かれたところだ。

 

躊躇なく扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

殆んど何も無い部屋の中、一機のACが中央に佇んでいる。

 

声もそこからだ。

 

『…で…みんな居なくならないで…側にいて…どうして行っちゃうの…?』

『戻ってきてくれたのに、また…消えちゃうの?』

 

その間、俺はそいつに歩み寄る。

なんとなくわかった。

 

こいつは生き残りだ。

 

どうするかはまだ考えている。

一歩一歩歩を進める。

 

『皆、大丈夫って言ってたよね。…けど、どうして、すぐ帰ってこなかったの?どうして、消えちゃうの。』

 

その間、少女の声は止まない。

ついに目の前まで来た。

その時、消え入りそうな声が漏らされる。

 

『そっちに……行きたい』

 

その声を聞いて、俺はダメ元で通信回線を開いた。

 

「…聞こえるか。」

『誰?戻ってきてくれたの?』

 

喜びに震える声が響く。

ここで、嘘をつくか迷ったが正直に言った。

 

「ごめん、通りすがりだ。」

『そう…なんだ。』

 

どうするかは決めていた。

ダークスレイヤーを展開する。

 

「だけど伝言でね、君を送りに来た。皆のところに連れて行こうと思う。」

『え?本当に。』

 

きっと、拾われて面倒を見てもらっていた子なのだろう。

 

「本当だ。」

 

だけど

 

 

 

 

 

 

 

 

いやだからこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し、じっとしててね。」

 

自分の手で。

 

 

黒い刀身がコックピットを貫く。

刃先から、赤黒い血が滴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レイヴン!聞こえますか!レイヴン!』

「こちらアキレス。無線がやられてた。なんとか残党も撃破、ミッションクリアだ。」

 

地上に出た俺は基地を振り返る。

扉は時間相応に朽ちていた。

 

忘れない内に連絡を入れる。

FGWにここの調査を依頼するメールだ。

 

念には念を入れるに越したことはないだろう。

 

 

 

自分の手を見やる。

既に殺し慣れ、血がこびりついた手だ。

 

怨みを持たれることに抵抗はない。

当然のことだから。

 

 

 

 

 

誰を殺すことになっても…

 

 

 

「躊躇わないよ、これからも。」

 

 

俺を見下ろしていた満月に呟いた。

 

 

 

「どう?何かあったか?」

 

unknownはコックピットで作業している担当者に聞いた。

遺体は、腹部に穴がある以外は綺麗だった。

すこやかな表情で眠るように、椅子に身を預けている。

 

「正直、あれ(ダークスレイヤー)を作った身としては、ここまで綺麗にやられると何とも言えない気分だよ。」

「検死に来たんじゃない!しっかり今回の原因を探れよ!」

 

的はずれな回答にツッコミを入れる。

 

「いや、そっちはすぐ分かった。謎は更に増えたけど。」

 

そうして、複雑な表情で取り出したのは、深い紫色の水晶のような物だった。

 

「これって、黄泉比良坂の……」

「ああ、こいつが死者を招き寄せたんだ。タネは簡単だったよ。」

 

しかし、二人の顔は晴れない。

 

「問題は入手経路、何故こちらにあるかだ。」

 

目の前にある、存在すべきでない物に頭を捻るしかなかった。




手に入れろ!オカルトボール!




なんかすいません。
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