巻き込まれた少年は烏になった   作:桜エビ

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異常なほど待たせてしまいすいません。
難航したせいで出来も悪いです…。

ですが、こんな作品でも…まもなく終幕となります。


渡りトキ

話は一時間ほど巻き戻る。

 

 

「ようやく話し合いの場が持てたな。」

 

宇佐見菫子はそう口にして目の前の男に視線を向ける

 

「レイレナード社長」

 

ここは、レイレナード社の接客室。

敵対関係となった二社__二者__が対面し、互いの眼光が互いの瞳を射抜く。

交渉の場を設けるのに使った手段は数知れず。かつて金盥を落としたあの男も利用してまでここまできた。

 

「我々を裏切ったと思ったら、今度はその企業の社長が敵地のど真ん中に交渉に来るのですよ…警戒しないはずがないですし、意図がつかめない。」

 

そうやって苦笑と共に彼は肩を竦めた。

菫子もそれに微笑を返す。

 

「ですが、交渉する内容が何の益もないものだというものなら、それなりの対応をさせていただきます。護衛もたった一人、何を考えてるのだか…」

 

そう、彼女の隣にいるのはストレイドたった一人。来たのもこの二人だけだ。

 

「そうだな…終戦協定を持ち掛けに来た。」

 

「…それまた突飛な…降伏ですか。」

 

あまりの話の流れが異常で、彼はただやれやれと首を振る。

そうして彼はその瞳を菫子に向けた。

 

「負けることを確信したのですか?陣営替えして負けるとは、情けないですよ。」

 

「くっははは、確かに。だが、負けを認めるつもりはないな。」

 

皮肉を言い続ける彼に菫子は笑って返す。

 

「なにしろ、戦争が無益になったからやめようというだけだ。」

 

「ただの負け惜しみにしか聞こえませんよ?ただ赤字になったからやめようとしているようにしか見えませんよ。」

 

真顔で突き放すように彼は言った。

ただ冷たく見下すような言葉は、鋭さをもってこの部屋に響く。

 

菫子はただ睨み返す。

 

「…まあ、それでも、交渉自体で決めようがあります。ですが、ただで許すつもりはありません。何かしらこの戦争の代償を背負ってもらわなければ。」

 

そして、あざけるような表情と声色になる。

完全に勝者だと確信した彼。

 

「ああ、何かしら渡さねばいけないとは思っていた。だから、これを渡そうと思う。紙資料も渡す。」

 

そういって、菫子はカバンからタブレット端末を取り出し、テーブルの上に置いて彼に見せた。そこに表示されているのは契約書の内容。

 

 

 

____衛星軌道掃射砲:エーレンベルク予備機の移譲。

 

 

 

彼のその顔が、一気に変わった。

 

「クローズプランに関してはとっくに掴んでいた。そして、邪魔するつもりもなかった。」

 

「…なんだと?」

 

一気に場の空気が張り詰め、少なくとも今はまだ勝者でないと悟った彼は鋭い眼光を再度菫子へと向ける。

菫子は再度口を開いた。

 

「…最初から、私はクローズプランに賛成だというのだよ。…ああ、なぜ敵対したか?今から話すさ。」

 

端末を操作し、AIRや近年のレイレナード製兵器の設計図を映し出させる。

 

「ハイテクACをメインとした新興企業なのにもかかわらず、なぜこんな兵器を作り出したのか、いや作れたのかが、最初は分からなかった。提携企業からの技術者移動は味方の時見続けてきたが、その時にはまだその手の技術者はいなかった。」

 

タブレットには、最近ロールアウトした『通常兵器』のデータが次々と映し出される。

どれもこれも、最新の技術を応用した兵器たちだ。

 

「なのにこの短期間に、ライセンス生産でもない新型機をこんなに量産できるはずがない。技術面がおかしいんだよ。」

 

菫子は彼の奥底を覗くような瞳をしていた。

 

「…ならなんと?」

 

「いるんだろ、バックに。異常な存在が。未来から来たような存在が。」

 

ドスの効いた声で菫子は問いかける。

それを彼は受け流す。

 

「SFじみた話はやめていただきたい。これは我々が積み上げてきた技術の結晶なのですよ。それを…」

 

そこで、彼女は一枚の写真を取り出す。

そこに映っていたのは、未だ存在しないはずのネクストたちが並び立っていた。

 

「私達もそういうものを知っているから言っているのだ。腹を割って話していただけないか。」

 

二人の目は、一直線に並び視線は逸れない。

ただ、一直線に二人は視線を交えている。

 

「再度言わせてもらう、クローズプランに我々は賛同している。そして、この戦争は無益だった。だから終戦したいといっているのだよ。」

 

「…なら、なぜ我々を裏切ったのか。説明していただけるか?」

 

菫子は端末を再度操作し、画面を切り替える。

 

「GAは…いや私と何名かの幹部は、もう一つの武装組織と提携している。FGWと呼ばれる集団だ。」

 

画面に映る組織図。

GAの何人かからFGWと書かれた場所に線が引かれ、繋がれていく。

 

「FGWとは親交による関係だ。だが、そちらさんのバックが怪しくてな。気づけば紛争状態だった。なんとなく、その関係は察していたのではないか?」

 

「…『あの人』は確かに、誰かと戦っているようなそぶりはありましたが…そういうことだったか。だが、それなら何故終戦する?」

 

彼は真摯に話を聞き始め、菫子はそれに応える。

 

「単純さ。お互いの目的がようやくわかったから、そして、利害関係として紛争する関係になかったことが分かったからだ。」

 

「…は?」

 

その内容に、彼は拍子抜けした。

ただの無駄戦、彼女はそういったのだ。

 

「互いに情報戦をしながら未知の存在であり続けたせいで、利害関係が一切分からなかったのさ。互いを勝手に脅威判定してな。」

 

「そして、ようやく分かったということか?何をそんなバカなことを信じろと。」

 

あまりにも馬鹿げてる。

互いに互いを隠蔽し続けた結果無用な紛争を起こし、表の戦争にすら多大な影響を及ぼしたというのだ。

 

「化かしあいをして、互いを狐と勘違いした狸にでしかなかったのさ。しかも、それに我々は巻き込まれた。なんてバカ話だ、と私も思う。」

 

「…もうあきれてものも言えない…まあ、終戦はこの後の交渉次第ですが…国連は手を引くのか?」

 

「そちらが手を引くならな…」

 

両者の空気はたるみ、緊迫状態が溶ける。

とんだ茶番に付き合わされた。彼らの心境はこんなどころだろうか。

しかも、その茶番のために何人が死んだか分からないとあれば、軍需企業の社長といえど笑えすらしない。

 

「で、要するに、私達のクローズプランに協力するというのですね。でも…エーレンベルクは間に合っていますが…」

 

交渉相手と認めたのか、敬語に戻った彼は交渉に戻る。

 

「分かっている。だが、今の保身にしか興味のない連中が邪魔をするやもしれん。そのための予備だ…だが、交渉する材料はこれだけではない。」

 

端末の画像が切り替わる。

地球から一本の線が空へと延びていき、やがて空を飛びだす。

 

「これは…まさか…」

 

「軌道エレベーター。これを共同開発しよう。開発チームをそちらに移譲することも視野に入っている。これがあれば、低コストで宙へと飛び立てるはずだ。」

 

いたずらっ子のような笑みを菫子が浮かべる。

それも、まさにいたずらに成功した直後の。

 

「しかし、現実味が薄い…これから作るのだろう」

 

「もう低軌道ステーションを所定軌道に持っていって、ケーブルを伸ばすだけだ。」

 

「は?いや、いくらなんでもアサルトセル散布前の遺産を使うわけにはいかんぞ。老朽化しているだろう。」

 

「安心しろ…実は独自に宇宙に行く手段があってな。メンテナンスは十分してある…だが、さすがに出鱈目だから表立って使うわけにはいかなくてな…」

 

空いた顎がふさがらない、という形相の彼。

流石に詰め込み過ぎたかと、菫子も彼が落ち着くまで待つこととなった。

 

 

 

__数十分後

 

「はぁ…我々の想像をやすやすを超えていく…本当にお転婆というかなんというか…」

 

「はっはっは!誉め言葉として受け取っておくよ。」

 

一通りの作業を終え、秘密裏とはいえ終戦処理を終えた彼らは接客室で個人的な会話をするのであった。

 

 

「出鱈目だよなぁ!あんたぁ!」

 

そういった彼の脇腹を、プラズマの光弾が掠めていく。

応射として放ったリニアライフルは照準すら間に合わず、彼女が居たところの空間を弾丸か撃ち抜いていく。

 

そこに紫蘭が肉薄し、マシンガンを連射。アキレスを見ていたせいかいくらかが命中し、PAが減衰した。

 

『正直に言わせていただくと』

 

その一言と共にIBISはOB、一瞬にしてアキレスの駆けるチェインドに肉薄する。

振り下ろされた月の輝きを、闇が食い止めた。

 

『これに反応するあなたに驚きを隠せないです。』

 

二つのブレードが放つスパークが激しく荒れ狂い、EMPが発生する。

しかし、パワー負けしたチェインドが後退りをすることになった。

 

ほぼ吹き飛ぶも同然に後ろにとんだチェインド。

その着地を狙うようにプラズマライフルが構えられる。

 

だが、照準する前に紫蘭のブレティアがOBで肉薄。

右手に装備したドラゴンスレイヤーが真一文字に薙がれる。

 

IBISはバックQBでそれを間一髪で躱し、カウンターといわんばかりにムーンライトを袈裟斬りに繰り出した。

 

紫蘭は、跳んだ。

脚を掠め、装甲が赤熱化してAPが減少するが、直撃は免れた。

 

そして、グレネードランチャーに武装を切り替え打ち下ろしの体勢になる。

恐らく強引に爆風でPAを削りに来ると判断したIBISは左にQBして爆風の有効圏内から離脱した。

 

が、ブレティアは発砲しない。

 

『ぐっ!しまった!』

 

その時には遅く。リニアライフルの弾丸がPAを削りながら装甲を穿った。

チェインドはIBISの真横につけたのだ。

真横に回避させれば、オーダーのFCSでも真横からの射撃は命中する。

 

賭けではあったが、それに勝った。

 

『ですが!!』

 

チェインドを取り囲むようにEOを配置しカウンター。

数発のレーザーが、半壊したチェインドを確実に追い込んでいく。

 

「んにゃろ!!」

 

彼もEOを展開し、IBISのEOを撃ち落とすことに成功した。

だが、その間、IBISと紫蘭は一騎討ちとなる。

 

射撃戦で押し負けた紫蘭が左肩に直撃をもらってしまう。

 

「マズった!!」

 

『そこ!!』

 

再度放たれるプラズマライフルを紫蘭は避けきれず、左腕のマシンガンを蒸発させられてしまう。

 

そのよろけた瞬間に、QBで間合いを潰したIBISが月光を振りかざし…

 

「んぅらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『!!??』

 

カウンターとしてQBの勢いを乗せたブレティアの鋭い跳び蹴りを胴体に受けることになった。

 

しかし、蹴りに使ったブレティアの右足は粉砕、そのままIBISと共に地を転がった。

 

立ち上がり、プラズマライフルを問答無用で突き付ける。

だが、敵は一人ではない。

 

「チェストォォォォォォ!!」

 

『…』

 

レーダーは把握しているので、罠としてプラズマライフルを向けた。

彼が飛び掛かると理解していたから。

 

チャージしていたプラズマライフルをチェインドに向ける。

殺す気でいかねば、失礼。

だから、彼女は引き金を引き…

 

そこに彼がいないことに驚愕した。

振り向き終わる直前に、彼は左にHBしたのだ。

 

その直後、激しい衝撃が後ろから襲い掛かる。

本命は、ブレティアのグレネードランチャーだった。

 

そして、プラズマライフルを練が蹴飛ばし、手から離れていく。

後退り、IBISは独り言ちた

 

 

『本当に…本当にあなた達はイレギュラーですよ…』

 

 

練が紫蘭の意図にも気づかず、IBISが避けていたら直撃していたし、まず撃つという発想に至らなければ練はプラズマライフルで蒸発していた。

 

お互いを知り、徹底的にフェイント掛けることにより、強引に別次元にいる目の前の化け物を追い詰めている。

 

現にOBやQBのブースターの大半が集中していた背部バインダーユニットを吹き飛ばした。

これにより、機動力は格段に落ちた。

 

『全く…あなた達なら…っとこの役目はとうに終わってましたね。それに…まだ終わっていない。』

 

だが、ブレティアは脚部破損により行動不能。

チェインドも損傷が70%を超えた。

 

故に、彼らは次の作戦にでる。

 

プラズマライフルを紫蘭が拾い、練は紫蘭とブレティアの間に入ったのちに、全力でIBISに斬りかかる。

 

IBIS鍔迫り合いに応じ、その間にブレティアは強引にブースターやOBで距離を放した。

そして

 

「できるか分からないけど…クラッキングプログラム起動。」

 

紫蘭は、専門家でなくても扱えるようにされているクラッキング用のプログラムを使用し、プラズマライフルのコンピューター内に無線でウイルスを侵入させた。

一か八か、ライフルを奪おうとしているのだ。

 

戦闘できないより、賭けに時間を使い始める紫蘭。

その一か八かのために、練は近接戦に持ち込み時間稼ぎを開始した。

 

「っらぁぁぁぁぁ!!」

 

IBISはチェインドがはなった切り上げの斬撃を至近で受け止める。

両者の頭部が目と鼻の先になった。

バックブーストをかけるIBISに、追いすがるようにブーストすることで起きていた鍔迫り合いは、IBISの力技で振り払われて終わる。

 

すぐさまリニアライフルの照準を行うアキレスだったが、IBISの蹴りでそれを吹き飛ばされた。

EOも弾が切れ、両者とも正真正銘ブレードのみ。

IBISも破損し、機動力はサードフェイズを発動させているチェインドよりは高いが、同次元といった程度に落ちている。

 

つまり、技量次第。

 

蹴りを受け、体勢の崩れたチェインドはバックHBをするが、それを読んだIBISは前HBで詰め、袈裟斬りを放つ。

だが、チェインドはかろうじて身を屈め躱すと、空いた脇腹に前HBしつつ蹴りを叩き込む。

 

機体の芯を捉えられ、まともに吹き飛んだIBIS。

それを追撃するチェインド。

 

だが、吹き飛ばした距離が長すぎて、IBISは体勢を立て直していた。

チェインドは移動する間に右手にブレードを持ちかえると、勢いのままに振り下ろす。

速度のついたチェインドに対抗するため、HBで加速をつけたIBISも薙ぎ払い、衝突。

激しいスパークが輝く。

 

そこに言葉はあれど会話はない。

両者は互いを倒すべき、倒したいものと見て、ただ勝つことを見据えていた。

 

両者の攻撃はいなしあい、次にIBISは袈裟斬り、左薙ぎ。

それにチェインド右薙ぎ、袈裟斬りをぶつける。

 

そこからも何度も間合いを離さず斬撃を衝突させる。両者。

だが、十合打ち合ったあたりで事は動いた。

 

「内部配線掌握…エネルギーライン接続…カウンター完全排除…試運転…練!いける!」

 

その声を聴いた練は、IBISを蹴飛ばしブレティアへと向かう。

意図を察知したIBISも追撃を始めた。

 

ブレティアの開いている左腕部は破損し、照準が困難。右腕部に至ってはエネルギーラインが切れ使用もできない。

故に、照準はチェインドで行うほかない。

 

『させません!!』

 

「くそう…やっぱりあいつの方が早いか…なら!!」

 

 

少し減速し、IBISを迎え撃つ構えになる。

そして、HBでIBISが加速を掛けたその時。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁ」

 

『そんな!!??』

 

ダークスレイヤーを投げつけた。

刀身を形成するナノマシンは霧散したが、基部にある切れ味が異常なナイフの部分がIBISの左肩深々と突き刺さる。

 

[左腕部破損]

 

『まだ…右腕がある!!』

 

IBISは進路を変更、吹き飛ばしたチェインドのリニアライフルへと向かう。

 

そして、アキレスが__練がブレティアにたどり着きプラズマライフルを二人で握るのと、IBISがリニアライフルを拾い上げるのは、ほぼ同時だった。

 

『くっ!!』

 

「行くぞ」

 

「もうチャージは終わってる!撃つだけ!」

 

IBISはドリフトターンをしながらリニアライフルを掌握し照準、二人はプラズマライフルを振り下ろすように照準するのも、ほぼ同時だった。

 

『はぁあぁああ!!』

 

「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

そして、同時にトリガー。

 

二つの弾頭は、何の奇跡か。

正面から衝突した。

 

強引にプラズマの嵐を抜ける徹甲弾。

それによってプラズマはショットガンのように拡散した。

かろうじて突き抜けた徹甲弾は、チェインドの頭部を破壊したが、撃墜には至らない。

 

一方、拡散はしたものの、フルチャージ同然のプラズマを散弾として受けたIBISは撃墜には至らないものの、深刻なダメージを受けていた。

 

『まだ!!』

 

そういって緩慢な動きで構えたリニアライフル。

それを持っていた右腕が、肘から折れた。

 

そして、最低限のチャージを終えたプラズマライフルの弾丸が、IBISの胸部装甲に穴をあける。

 

 

 

 

ああ…負けてしまった…

 

もし、私の目的が彼らの障壁として存在したのなら、完全に潰えていた。

私に…勝ち目はなかったのね…

 

…そもそも、こんな生き延びるはずじゃなかったのだから…これはこれで本来の姿に戻っているのかな。

 

頑張ったよね…

 

レイヴン、私やりたい事、やれたよ。

 

やっぱり、あなたを失ったときから…こうなりたかったのかもね。

 

機械なんて目的を失えば、鉄屑と同じ。

 

人類を自立まで導く、こんな役割は早く終わる方が世界のためなのよね。

自立が早ければ早い方がいいに決まってる。

 

彼らになら任せられる。

 

確かに自分勝手な集団。

だけれど、世界が滅ぶことだけは…人類が滅ぶことを許さないのなら、目的は一緒だ。

 

なら、私という人格は…

 

 

 

「おい…」

 

なによ…

 

「おい、人格データが生きてるなら答えてくれ。」

 

『なんですか…』

 

微睡みに浸っていたのに…人間らしい事、するようになったなぁ…

 

「…まあ、八つ当たりで戦わせてもらったが…協力関係になる、ってことか?FGWとお前は。」

 

『そう、かもしれません。』

 

でも、正直終りたいなぁ

 

「…まあ、これからの関係はこれから決まっていくわけだし…よろしく…。」

 

気まずそうに語りかけてくる。

彼のACは大破した私の機体のそばにいた。

 

『ふふ…でも、正直、私がいなくてもどうにかなりそうだなって…』

 

「…な…」

 

『確かにあなた達は外の人間がどうなってもいいのでしょう…ただ、私は滅びさえしなければ…繁栄が続けばいい…』

 

「おいおい…自爆はよせ…」

 

そう言うと私の機体の肩を担ぐ。

 

「無為に散られるのは機械といえど後味が悪い。」

 

…彼と同じ、個人としてみてもらえるのが、とてもくすぐったかたった。

 

 

 

 

 

《なるほど…終わってみればあっけない。》

 

 

 

「!!?」

 

「誰!?」

 

突如、その部屋に響く声。

 

《規格外を持ち出してすらどちらかを消せないとは…僕は君を少々過大評価しすぎたようだね。IBIS。》

 

『財団…!』

 

「財団…厄災!」

 

紫蘭は足の動かない機体で、声の聞こえてくる天井を睨みつける。

 

《ただ…それなりに全員傷ついているようだし…ここで3者諸共消えてもらおうか。》

 

そう言うと部屋の様々な個所が爆発し、部屋の崩壊が始まった。

 

「くそっ!いつの間に!」

 

《外部から攻撃させてもらってる。掘削自爆MTを作らせてもらってね。》

 

全員が狼狽するしかない。

このままでは全員が瓦礫の下敷きだ。

 

「ど、どうしよう!」

 

「逃げるしかないだろ。セレ・クロワール!出口は!」

 

『中央エレベーターなら…』

 

その言葉と同時に、最初にアキレスがここに来たリフトが降りていく。

逃げ道はそれ以外なさそうだ。

 

「紫蘭、いけそうか!?」

 

「ブーストで無理矢理いけそう!」

 

そう言って紫蘭は強引に機体を引きずり、リフトへと降りていく。

 

「セレ・クロワール!その機体に人格データは移せるか?」

 

『私も…?』

 

声に困惑の色を浮かべるセレ・クロワール。

練はその声に怒号に近い声を返す。

 

「俺のレイヴン生活は一回ここで終わるんだ!最後に後味悪い思いさせんな!」

 

『っ!!』

 

彼に気圧され、セレ・クロワールは機体に人格データを移す。

その機体を背負い、オーバードの切れた機体で無理矢理引きずっていく。

 

だが、リフトはそうしている間に大分降りており、2機は落ちていくことになる。

そしてリフトの出入り口が閉じ始める。

 

だが、その動きは遅く、閉じるまでの間に幾つかの瓦礫をリフトの通路に入れてしまった。

そして、ACのコアほどの瓦礫が減速して降りている2機を掠める。

 

そして、アキレス___練のチェインドはIBISを手放してしまった。

 

「くそぉ!!」

 

『!!』

 

このまま減速なく落ちれば、IBISとてただでは済まない。

必死にチェインドの手を伸ばす。

だが、瓦礫が邪魔をして届かない。

 

「間に合えぇぇぇぇ!!」

 

 

 

___もう…いいよね…

 

IBISは…セレ・クロワールは、諦めた。

 

 

 

 

 

気づけば、彼女は、___IBISは七色の光に満たされた空間にいた。

その見据える先に見えるのは、たくさんの人の背中。

 

一番こちら側に、彼が、レイヴンがいた。

 

__ああ、ようやくこの時が来たんだ。

 

一歩、また一歩と、かつての義体のような体で彼に近づいていく。

__彼のところに、ようやく。

 

 

 

 

ぎゅっと、脚を引っ張られた気がした

 

その足を見やると、4,5歳くらいの子供が、セレの足を掴んでいた。

そのまま後ろを見ると、先程まで戦っていた二人が困惑した様子で立っていた。

そしてそのさらに後ろに、たくさんの人の影が映っている。

 

その中間地点に、セレは立っていた。

 

 

「あ、あー。多分、死にたがってたな、セレ・クロワール。」

 

気まずいそうに練は声をかける。

その顔には笑みが浮かび、こちらを見つめてくる。

 

「あまり引き留めるのはお前の望みに反するだろうが…俺から見れば、お前は人同然で仲間になりうる存在だからな…このまま見過ごす気になれなくてな…」

 

後頭部を掻きながら、そういう練。

その視線は、セレ・クロワールの足に掴まっている少女に向けられた。

 

「こいつも、お前に生きててほしいからそうやって足を掴んでるんじゃないか?」

 

セレが彼女に目を向けた時、少女は彼女に向けて曇り一つない笑みで笑いかける。

その笑顔に、セレ・クロワールは思わずたじろぐ。

 

「まだ、この世界の終末が離れてはないからな…セレ・クロワール。未練なさそうにしてたが、そいつの未来を守れないまま消える気か?」

 

その場に沈黙が訪れる。

 

 

そのまま静かに少女を見つめていたセレは、その子を抱き上げる。

そして、踵を返して練たちの方へ向かい始めた。

 

少し進んだとき、名残惜しかったのかセレは振り返った。

 

その振り返った先にいたレイヴンは肩越しに微笑みをセレに見せたのち、手を高らかに挙げ、振る。

 

セレは、涙交じりの微笑みを返し、歩みを進め……

 

 

 

 

 

大破しているにもかかわらず、IBISは強引にブースターを吹かした。

先程まで青色だったブースター炎の輝きは今は緑となり、機体を減速させリフトへの着地を成功させるに至った。

 

そして、練もまた、それに続いて着地した。

 

「…君は?」

 

瓦礫の雨が止み、跪くIBIS。

その胸部装甲の上には先程見たセレ・クロワールを幼くしたような少女がいた。

 




次回、終幕
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