あまり締まりませんが、これがド素人が始めた物語の最終回です。
「ねぇ…いつまで拗ねてるの?[アキレス]?」
意地悪そうな紫蘭の声がスピーカーを通して聞こえる。
その声に唸るように狼狽するのは、[アキレス]をいったんやめるつもりだった練であった。
「わざわざその名前呼ぶなよ…」
「そうすれば返事するかなーって」
彼はACのコックピット内で不貞腐れていた。
場所は南極、レイレナード所有のエーレンベルク付近。
月はすでに師走になり、年末には終戦を迎えるであろう、裏世界にとっては忙しさと祝福がやってくるこの時期に御役目御免になりそうな彼らに御役目が回ってきてしまった。
発射直前のエーレンベルク護衛任務。
流石にここまで来て全部台無しになるのも嫌なので受けることにはした。
文句は依頼をよこしたことである。
「引退直前の少年兵を引っ張り出すんじゃねーよ。企業のクズが…」
「そんなこと言ってないで。受けたんだったらちゃんとやろうよ。」
「ちゃんと護衛はしまーす。」
ひねくれた不真面目そうな声で返答する。
「あのミッション終わった後からなんか大人気ないって言うか…」
「今までが大人のふりし過ぎてたんだ。反動だ反動、わがままや愚痴の一つは言わせろ。」
いままで幼いながら戦争に加担した身。既に身の振り方が傭兵のそれになりつつあった彼は、ようやく解放されると思い子供に戻ろうとした矢先にこれである。
うまく調子が戻らず、この通り幼児退行してしまった。
「…まあ、これ終ったら晴れて休業なんだからさ」
「はぁ…まあそうだが…来るかねぇ。この警備の中、敵が。」
ネクスト5機、オーダー6機による警備体制。
ネクストの中には、ユーリックさんやベルリオーズなどがいる。
他にもノーマル、MT複数。
ネクストで蹴破ろうとするにも簡単にはできない。
「しかもこの前のアサルトセル公開で企業のイメージはかなりダウンしてる。国家側企業に流れる会社員がいるような状況でここを襲ったら企業は倒れるぞ…」
「さあ?戦争が終わって援助切られたテロリストがやけくそになって襲ってくるかもよ?」
「不謹慎極まりないだろうが、その程度で楽しめるか。つまらなそうなのも不満なポイント。」
どうせ引っ張り出すなら楽しい依頼がよかった…それが彼の心境である。
たしかに、きりのいいところから学校に再編入される予定であり、春までは暇だった。だからといって、戦場から帰ろうとする兵を引っ張るのはどうかと思う。
その時だ。
『高速でこちらに接近する機影あり…ノーマル陣突破されました!!』
オペレーターがかなり焦った様子で通信を入れてきた。
「速度はネクストか…どこのバカだ?」
ヘルメットのバイザーを下ろし練はつぶやく。
つまり、イメージダウンを無視した投入だ。
その後の企業運営がどうなるか、想像に難くない。
そんなリスクを冒してまでエーレンベルクを破壊する理由も思いつかない。
どうせ、欲をかいた中級幹部の暴走…
そこまで思考し、目の前の影を見て、それが間違いだと気づく。
「うわぁ…まじかよ…」
「アレサ…」
プロトタイプとされる、今あるネクストの祖。
その図面の大半はレイレナード社に渡されている。
「…これ…多分…」
「財団のいたずらね…悪質な部類の」
しかも3機である。
ガトリング砲を持っていた手はブレードらしきユニットに変わっている。
「はてさて…面白くなってきたな、アキレス」
「ユーリックさん…思いっきり行きましょう」
反対方面を任せ、こちら側にいたACが集まった。
正直、雑魚AIだったとはいえ一度勝ってる相手だ。
今までの努力が台無しになる。負けるつもりはない。
[メインシステム、サードフェイズ。オーバード。]
全機が戦闘態勢に入り、アレサもまたOBを起動してこちらへと向かってくる。
「ったく、楽しくなってきたなぁ!!!」
アレサのコジマブレードとチェインドのダークスレイヤーが激突し、火ぶたは斬られた。
◇
画面の向こう側で、眩い光が天を貫く
大いなる犠牲を払う、取り返しのつかなくなる前に宇宙への道は切り拓かれた。
それを眺める少女の影。
その背中に声がかけられる。
「セレ・クロワール、ここにいたのね。」
紫のドレスに身を包んだ女性が、その部屋に入ってきた。
バーでミストレスをやっていた女性、名を八雲紫。
FGWの…いや幻想郷を管理する賢者の一人。
これから行われるのはセレ・クロワールの処遇の決定である。
「誤解してたとはいえ無益な損害を与えたこと、お詫び申し上げます。」
「いえ、こちらも警戒して手を無意味に出しましたから。」
そう言うと彼女は微笑みかける。
だが、油断はならない。
あのFGWの運営にかかわっている存在だ。
「私を…どうするご予定で?」
恐る恐る、単刀直入にセレ・クロワールは問いかけた。
それに紫は何事もないように返す。
「…協力は仰ぐことはあるかもしれないかしらね。…でも、これから私達に害を及ぼすことはないのでしょう?」
「ええ、こちらに害や不都合がない限りは。」
「なら、何の問題はありませんわ…幻想郷は、すべてを受け入れるのですから…」
そういって彼女は去っていく。
あまりにもその掴めなさに私はたじろぐしかない。
何かしらの賠償や埋め合わせもなく、ただ害さねばいい。
その答えに、私は困惑するしかなかった…。
彼女はその後、新たに得た肉体をもって神社まで足を運んだ。
そこにいたのはUnknownとストレイド、そしてレイナ。その三人は神社の軒下で談笑していた。
「いらっしゃい、セレ。」
「どうしたんだ?処遇は…まあ察しが付くが。」
二人が歓迎し、それに笑顔で返すセレ。
「お礼を…言いに来ました」
「…この子よ。」
Unknownに導かれ彼女はレイへと近寄り、その腕に何かが…いや誰かがいることに気づく。
赤子だ、生まれて1年といったところか。
「…最近、厄介な施設で見つけてな。保護したんだ。」
ストレイドが補足している間に彼女はレイナの腕に抱えられた赤子の顔を覗き、微笑みかける。
「ありがとね。」
赤子は、晴れ上がるような笑顔を再び彼女に見せた。
「霊華…って名前を付けたの」
「そう」
レイナの声を聞きながら、セレは優しくその頭をなでていく。
そして、彼女も軒下で話に加わった。
「…ところで、やっぱり外で活動するの大変よね。今回の戦争で何か進展があったの?」
「ああ、一番問題になってた戸籍問題がな。」
ストレイドの子気味いい返答。
「菫子がGAを通して国連とかに私たちの便宜を図ってくれたらしい。外の世界の活動に問題なしと判断された奴に仮の戸籍を作ってくれるようになった。」
「じゃあ、傭兵やレイヴンとかの戸籍問題軽減策を取らなくてよくなったのね。」
「ああ。」
先日まで敵同士だったが、彼女たちには関係ない。
傭兵である二人と、役目の終わった機械の人格。
それに、ここでは争いが終れば恨みっこなし。そんな文化が根付く土地だった。
◇
__少年は、戦場に立ち戦った
__多くを失い、傷つき。
__
__だが、完全ではないが、最後には望んだ結末にたどり着いた。
桜舞い散る中、二人は校門の前に立った。
「すっごく久しぶりだなぁ…みんなどうしてたんだろ」
「俺は今日初めてここに来た…いろいろおしえてくれよ?」
練と紫蘭の二人は、今日の始業式に合わせて中学校に復帰する。
義務教育だ、補習に問題がなければこのまま進学も出来るだろう。
__練は依頼を受けなくなり、完全にアリーナ専門に切り替えた。
流石に完全に離れることはできなかったが、レイヴンらしいレイヴンではなくなった。
紫蘭もリンクス登録は予備の予備だ。本人が望まない限り戦うことはないだろう。
「さて…時間だし、そろそろ行くか。」
「うん。」
二人は歩みだす。
戦場に戻るか、このまま別の彼らが望む道に行くかはまだ分からない。
だが、それは彼らが決めること。
彼らは、傭兵のような自由を手にして、再度歩み始める。
__アーマードコア・巻き込まれた少年は烏になった 完
拙作をご愛読していただいた皆様。
ありがとうございました。