結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

『ゆゆゆい』もまもなく5周年を迎えるとの事ですが、それだけ多くのファンに愛されている作品なんだな、と改めて実感している今日この頃。


EV2:種類が多すぎるのも、難儀なものである

さて、時は遡り、舞台は野営込みの防衛戦が決定した日の放課後。

 

「おぉ、随分と揃っとるんじゃなぁ!」

「広い……」

「ここ全部、水着なんでしょ?」

「そうですよ。老若男女の水着が、ここなら全部買えるんです」

「うむ!実に良き品揃えだ!」

 

ひなたに案内されてやってきたのは、市内のスーパーマーケット。そのフロア内に店舗を構えている、水着専門店に足を踏み入れた雪花達は早速カラフルな光景に目を奪われていた。

本来なら多少遠くてもイネスへ直行する(主に銀が)所だが、生憎未解放地域に属している為、現状そちらに出向く事は叶わない。なので、ひなたが事前にリサーチした結果、遊泳用の水着が買える場所に、こうして希望者が揃って店にやってきたのだ。

 

「アッキーは、どんな水着がいーの〜?」

「そうねぇ……。私、ウェットスーツみたいなのしか着た事ないからなぁ」

「えっ。ウェットスーツって、ダイビングで潜る人が着てるアレですよね!結構カッコいいじゃん!」

「じゃあそれ、海水浴で着てくださいよ!」

 

早速晴人と銀(小)が目を輝かせるが、言われた本人は苦笑混じりに首を横に振る。

 

「いやー、流石にそれは浮いちゃうでしょ」

「浮いちゃう水着なの〜?それはとっても便利だねぇ〜」

「私が長い事眠ってる間に、世間はそんなに進歩したんだね〜」

「そうですね〜、おじいさんや〜」

「そうじゃの〜、おばあさんや〜」

「仮にも同一人物同士が何やってんだか……」

「そうよ!2人で老夫婦ごっこするのやめて!周りの人が笑ってるじゃないの」

 

阿吽の呼吸の如く始まった、ダブル園子の唐突なコントに的確なツッコミを入れる巧(小)と須美。事実、周りにいた買い物客も笑いを禁じ得ない。

因みに、雪花のウェットスーツ姿に期待を寄せている晴人だが、まさか未来の自分がそれを着用しているとは、夢にも思わないだろう。

 

「しかし、こんなに数が多くては、何をどうしたものかサッパリだな……」

 

女子といえど、ファッションには疎いと自覚している若葉は、早速困り果てた様子だ。そこへすかさずフォローに入るのが、幼馴染みであった。

 

「心配いりませんよ。若葉ちゃんのは、私がちゃんと選んであげますから」

「そ、そうか。よろしく頼む」

「お任せください!」

「私も頑張らなくちゃ!」

「(美羽の目がこんなに輝いてみえるの、久しぶりに見たかもな……。この世界に来てから、生き生きしてる風に見えるし)」

 

意気揚々と張り切るひなたと美羽。

 

「あ、でも私は元々買うつもりだったからいいけど、みんなは水着あるんでしょ?」

「チッチッチ。分かってないなぁ。水着はその年の流行がモロに出てくるんだぞ!」

「「「「「「……えっ⁉︎」」」」」」

 

何人かが驚くのも無理はない。まるで水着の何たるかを知り尽くしているかのような発言をしたのが、失礼ながら、そういった事とは無縁のような少女、土居球子だったからだ。

 

「だから、毎年1着は新しいのを買わないと女が廃るってもんだ!」

「……球子のやつ。熱でもあるのか?」

「タマっち先輩からそんな台詞を聞くとは……って、私の小説盗み読みしたでしょ!」

「うわ、バレたか……。『私をハワイに連れてって』ってやつだ」

「「「「「「あぁ〜……」」」」」」

 

真相を知って安堵する面々。

 

「あー、ビックリした。球子さんまで、風さんの女子力最強説に染まったかと思った」

「あー、アレな。タマに言わせれば、アレはまだ甘い。女子力が最強なんじゃなくて、最強に女子力がついてくるんだ」

「……???よく、分からない。けど、タマ、カッコいい」

 

首を傾げながらも、彼女に強い憧れを抱く調は、思わずうっとりしてしまう。

 

「あのー、盛り上がってるところ悪いんですが……。一応その、メインは作戦の方ですから」

「あ、ごめんなさい。私までつい、調子に乗って。やはり、学校指定の水着にしておいた方がよろしいでしょうか?」

「いえいえ。敵を倒した後なら、海水浴はOKって決まったので、それは。……それに、美羽さんはもう誠也さんと一緒に水着を選び始めてるみたいなので」

 

水都がそう呟くように、既に誠也と美羽は自分達の世界に入り込んでいるのか、男性用の水着コーナーに目を奪われている様子だ。こうして皆もトークを一時中断して、本格的に水着選びを始める事に。

 

「それにしても、若葉の言う通りだわ……。見回すだけでもアイズがチカチカしてきた……」

「最近の流行りは、キツい色が多いですからね。夏場の海水浴用だと、特に」

「私が欲しいの、あるかなぁ……」

「よぉし、銀、晴人、巧、昴。ついでに水中メガネとシュノーケルも買っていこうではないか!」

「うっわー最高!球子先輩とオソロが良いなぁ!」

「よし!ついでに銛もあったら購入だ!お前達、タマについてこーい!」

「おぉ!銛だけに、ついていきまーす!」

「巧、昴!俺達も続くぞ!」

「お、おい……」

「あぁ⁉︎タマっち先輩待ってぇ!私のゴーグルも選んでよぉ!」

「タマ、先ずは水着を……!」

「あっ、ちょっと⁉︎銛って……?勝手に魚を突いたらいけないはずだけど……」

「流石に売ってはいないと思うので大丈夫かと……。って、みんな待ってくださいよぉ!」

 

慌てて昴(小)も、晴人に引っ張られている巧(小)の背中を追いかけていく。

 

「何か……スマン。うちの球子が……」

 

和気藹々とはしゃぐ戦友を見て、申し訳なさを感じるリーダー。

 

「ミノさんもイッチーも、タマ坊にすっごく懐いたね〜」

「犬扱いされとる……」

 

園子(中)お馴染みの、定着したあだ名を聞いて若干引き気味の司。

そんな中、水都が辺りをキョロキョロし始めた。

 

「あれ?うたのんはどこへ?童山君の姿もないし……」

「ん?あぁ、彼女ならさっきレジの方へ歩いてったけど」

「童山先輩も、流星先輩といっしょに水着を選びに行きましたよ〜」

「えっ、もうですか⁉︎しょうがないなぁ……。ちょっと行ってきます!」

 

何か嫌な予感がした水都は、歌野が並んでいるであろうレジまで駆けていった。

 

「わっしー。私達もすばるんのとこへ行こ〜よ〜」

「そうね。ここは大人用のしかないし。すみません。少し失礼します」

「あぁ、気をつけるんだぞ」

 

そう言って須美と園子(小)も、自分達の水着を選ぶ為、別行動をとる事に。

 

「若葉ちゃん。さぁ、気合いを入れて選びましょうか!」

「き、気合い?たった数日の事だし、そこまで力を入れる必要は……」

「何を言ってるんです⁉︎たった数日だからじゃないですか!1年は365日ですが、若葉ちゃんの水着姿が拝めるのは、たった数日なんですよ!それなのに、残念な水着を着られては、目も当てられないではありませんか!乃木家の威信にも関わってくるかもしれないんですよ!」

「お、おぉ……」

 

歴代最強の勇者といえど、巫女の力説を前にして、若干押され気味だ。ある意味、バーテックスを相手にするよりも厄介なのだろう。

そんなやりとりを見て、雪花は我慢の限界とばかりに口を開いた。

 

「や、あのさ……。声大きいし、言ってる事もアレだし……」

「聞くは一時の恥〜。聞かぬは一生の損〜。『水着姿が拝めるのは……たった数日』♪」

「あ、メモ取ってる。小説のネタ集めのやつだよね?」

「それもあるけど、何かの時の為にね〜」

「それってどんな時なのよ……」

 

因みに園子(中)は既に水着を購入(というよりもいつの間にか届けられていた)してはいるのだが、それでも何故か雪花達についてきたのは、メモを取る為だったようだ。園子(中)と雪花の会話の間にも、若葉は観念したかのように、偶然目についた水着を手に取る。

 

「わ、解った。じゃあ、そうだな……。ん、これなんてどうだろうか?」

 

その水着を見せるが早いか、ひなたはドスの効いた声で一言。

 

「生地が……多すぎます」

「な……⁉︎き、生地が多い、だと……⁉︎」

「大体、どこを見てるんですか?若葉ちゃんが手にしているそれ、シニア用のじゃないですか」

「そ、そうなのか……」

 

軽くショックを覚えた若葉が手にしているのは、確かに海水浴、と言うよりかは健康ランドのプールで老人達が着用しているものとよく似ている。これを育ち盛りの少女が着こなすには、無理があるだろう。

やはり年寄りに似た思考回路がある若葉に選ばせるのは不安がある、と踏んだひなたは、リサーチした時から目星をつけていた水着を次々と手にとって見せつけた。

 

「若葉ちゃんには、これとかこれとか!こういうのが良いんですよ!」

「なっ⁉︎ひなっ、おまっ、ちょっ、これっ!ビ、び、ビキニというやつではないか!」

 

呂律が回らない若葉が顔を赤らめて指差したその水着は、生地を極限までカットした、ザ・美少女向けのものであった。これには少し離れた位置で様子を伺っていたこの2人も興味津々だ。

 

「おぉ〜!アダルティ〜♪」

「ノギーってばウブねー。今時、それ位は普通じゃない?」

「古い人間で悪かったな!とにかく私は、破廉恥な水着はゴメン被る!どうせ、私に恥ずかしい格好をさせて、それを写真に収めるという魂胆なのだろう!」

「え、そ、そんな……。私は純粋に水着を……。なのに、そんな風に思われていたなんて……」

「ひなタ〜ン?……あ、ご先祖様〜、ひなタン泣いてるよ〜?」

「む……。少し強く言い過ぎたか……。ひなた、私が悪かった。許してくれ」

「じゃあ、試着ぐらいはしてくれますよね?」

「なぁ⁉︎泣いてない⁉︎園子ぉ!」

 

突然顔を上げて笑みを浮かべるひなたの目は、一切腫れていない。罠にハメられたと思い、園子(中)を咎める若葉。

仮に園子(中)でなくとも、問われた側は目を逸らしながら、全員こう答えるだろう。

 

「そう言え、っていう電波がピピピ〜ってきたんだよ〜?」

 

と。

すると、周りが騒がしくなり始めた事に気づく雪花。

 

「ほんとにもう、うたのんはー!」

「そんなに怒る事じゃないでしょ?私が自分の物を買うだけなのにー」

「あれ、そっちも揉め事?」

「見て下さい!うたのんたら、こんなの買おうとしてたんですよ⁉︎」

「う……、こ、これは流石に私でも……、流行りではないと解る……」

「クラシカル〜♪」

 

若葉が絶句するように、歌野が選んだそれは、水着、というよりは戦闘訓練時の下着とも見て取れる、迷彩柄のものであり、いかに流行に疎い若葉といえど、直感的に的外れなセンスであると判断できたようだ。農業に長く携わっている、歌野らしい柄のチョイスではあるが……。

 

「カッコいいと思うんだけどなぁ……。ねぇ雪花さん?」

「私に質問しないで」

「勇者がそんなの着てたら、笑いものになっちゃう!もう、私が選ぶのを黙って着てて!」

「うぅ……解りました」

 

渋々諏訪の巫女に従う、諏訪の勇者。しかしながら、水都自身も流行りのファッションに詳しい訳でもなく、何故か制服にカエルの刺繍が縫ってある所を見るに、本当に彼女に選んでもらって大丈夫なのか、という一抹の不安を覚える雪花。

 

「逃がさないよ、タマっち先輩!」

「嫌だぁぁぁぁぁぁ!そんなの着るくらいなら、裸で泳ぐー!」

「待てまて〜!」

「やめろ園子!いくら球子さんとオソロになるからって、その水着はダメだぁ!」

「はぁ……、あっちもか……」

 

突然フロアの一角で悲鳴が上がり、球子と銀(小)が追いかけられているのを見て、やれやれ、と項垂れる雪花。

流石にこれ以上は周りの客に迷惑がかかる、という事で、若葉らは球子達を止めに入る事に。

 

「一体何があったんだ?」

「すみません……。球子さんが、杏さんと調さんに可愛い水着を勧められるのを嫌がって……」

「だって、タマっち先輩が選ぶのって、セパレートでも短パンのとかなんですよ。いっつも男の子みたいだから、こういう時ぐらいは、可愛い格好もしてほしくて」

「いっ、やっ、だぁ!」

 

息を荒げながら、断固拒否の意を示す球子。銀も同じ理由で追いかけられていたらしく、無言で首を横に振る。

それを見ていたひなたは呆れ顔に。

 

「本当に私達の勇者様は、揃いも揃って……。これは、実力行使が必要ですね」

「私もそう思います。ひなたさん、ここは何がなんでもお着替えをしてもらいましょう」

 

最初は水着を買う事に抵抗のあった水都も、歌野のセンスのなさを見て怒っているのか、ひなたに賛同の意を示す。しかし力のない巫女達だけでは、頑固な面々を試着室に運び込む事自体難しい。そこで数の暴力を利用するべく、ひなたは早速その場にいた男性陣に耳打ちし、行動を開始する。

 

「お、おい何してるんだお前達!タマをどうする気だ⁉︎」

「タマ、逃がさない……!」

「悪いな。ひなたの命令は絶対なんだよ」

「た、巧……!まさか……」

「す、すいません。僕達も逆らえない状況でして……」

「面白そうだし、とりあえず放り込むぞ!」

「……ま、諦めろ」

「「「「「せーのっ!」」」」」

 

調、司、昴(小)、晴人、そして巧(小)に捕まった球子と銀(小)は、そのまま試着室まで連れてこられたかと思うと、思い切り投げ飛ばされて、口を開けたように待ち構えていた試着室に放り込まれ、予めスタンバっていたひなた、水都、そして杏の手で、彼女らが断固拒否していた水着を着せられていくハメに。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ何をするぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ⁉︎そんなとこ触るなぁ!あっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ヤメ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……」

「ピギャァァァァァァァァァァァァァァァァ⁉︎何であたしまでぇ⁉︎ヒラヒラ嫌だぁ、ハートも嫌ダァァァァァァァァァ……」

「あぁっ♪可愛い、かわいいよっ。タマっち先輩も銀ちゃんも、幼女って感じ♪」

「「屈辱だぁっっっっっ!」」

 

若干アウトに近いような発言もあったが、着実にお目当ての水着を着せられた事に悦を感じている様子の杏。

カーテンに遮られて、中の様子までは確認できないが、店内に轟く悲鳴を前に、若葉は自然と足が震えた。元の世界で、人々がバーテックスによって蹂躙されていく光景を目の当たりにした時でさえ、震える事がなかった筈なのに、だ。

 

「あ、あんな目に遭わされるぐらいなら、自分で着替えた方がマシだな……」

「ハァッ、ハァッ……。やっと、終わった……」

「お疲れ様、みーちゃん。人の事は良いけど、自分のはもう選んだの?」

「え?私は泳ぐ気ないから、買わないよ。今日だって付き添いで来ただ」

 

不意に、足首が強く掴まれた気がした水都は、恐るおそる下に目をやる。

卒倒しかけた彼女が見たのは、地べたを這いつくばるように、試着室からヒラヒラがついたハート柄の水着を着た(正確には着させられた)球子が、怒りのオーラ丸出しで水都の足首を力強く掴んで、こちらを睨み付ける光景だった。その姿は、さながら積年の恨みが積もった地縛霊の如く、意地でも彼女を離さないと言わんばかりの、ホラー映画顔負けの光景だった。

 

「……ぁ〜んだとぉ〜……!そんな言い訳ガァ……!通用するかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 

いうが早いか、球子は足首を掴んだまま、水都を引っ張り倒し、そのまま試着室へと引きずっていった。幸い、頭を打つ事はなかったが、まさかの武力行使に反応できず、水都はホラー映画のワンシーンの如く、カーテンの奥に姿を消してしまった。

 

「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!何でなんでぇ⁉︎離してぇ、脱がしちゃダメェェェェェェェェェェェ……!」

「お前も恥ずかしい水着を着て、タマ達の屈辱を心の底から味わえェェェェェェェェェェェェェェェ!」

「あ〜れ〜!嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇうたのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

「……ど、どうしよう」

「何の騒ぎじゃ⁉︎」

 

歌野らが、悲惨な現場に萎縮する中、騒ぎを聞きつけた童山が歌野達と合流した。側には流星の姿も。

 

「ミトりんの危ない水着、見た〜い♪」

「あ、危ない水着……⁉︎そ、それは……!……ちょっと見てみたいかも」

「歌野先輩、エッチな人だ〜」

「え、エッチな人じゃないわよ!」

「何を呆けとるんじゃ!この中に水都がおるんじゃろ⁉︎早く助けに……!」

「わわっ⁉︎ちょっと待ってください童山さん⁉︎」

「あんたがこの状況で中に入ったら、余計にややこしくなる……!」

 

まだ着替え途中の可能性があり、そんな状況下で男が助ける為とは言え中を覗いたら、最悪の場合、警察沙汰にも発展しかねない。小学生組がどうにかして童山を抑え込む中、歌野は我慢ならないと、意を決して救出に向かう。

 

「みーちゃん、今助けるから!」

「嫌ぁ……、うたのん、見ないでぇ……!」

 

カーテンから覗いた先に見えたのは、球子と、そして中でスタンバっていた銀(小)によって着替えさせられていた水都が縮こまっている姿だった。その水着は、ひなたが若葉の為にと持ち込んでいたものを拝借したようだが、歌野のハートに突き刺さったその容姿を見て、思わずカーテンを開けて、皆にお披露目させた。

 

「み、みーちゃん可愛い……、凄く良いわ!可愛いじゃない!童山もそう思わない⁉︎」

「お、おう。中々にえぇもんじゃな!そいつを買ったらどうじゃ?」

「ほ、ほんとに……?2人がそういうなら、じゃあ、そうしよっかな……」

 

2人に褒められて満更でもない様子の水都は、早速購入を決意する。

 

「良かったですね。……さぁ若葉ちゃん!時間もないので、選んだ水着は全部買って、お部屋で撮影会ですよ!」

「なぁっ……⁉︎」

 

終息したかと思われた水着の試着が、思わぬ展開に向かってしまい、足元から崩れ落ちる若葉。そんな中、ふと視界に入った流星に助け舟を求める事に。

 

「そ、そうだ流星!水着の方はどうなった?童山と一緒に選んでたようだが」

「む?あぁ、俺の分なら、もう選んである。童山とお揃いでな!」

 

そう言って流星が手に持っていたものを堂々と見せつけたのだが、持っていたのは、お世辞にも水着とは程遠い、一枚の赤くて長い布。流石の若葉も思考を停止してしまう。

 

「えっと、流星。それは……」

「見ての通り、褌だ!いつかは身につけてみたいと思ったが、中々お目にかかれない代物だったからな!店員に聞いてみつけてもらったものだ!童山も同じものを探していたからな!」

「うへへっ!付け方は、廻しとほとんど一緒じゃから、手慣れたもんじゃわい!色違いでカッコええじゃろ!」

「流石は水着専門店!これだけ品揃えが良いとは思いもよらなかった!では早速購入しに……」

 

不意に、周りが静かになっている事に違和感を抱いた流星。

若葉を初め、既に制服に着替え終えていた球子や銀、水都を含む勇者部員達が、なんとも言えない表情を見せてくる。

様子がおかしい、と童山が声をかける前に、若葉達が並び立ち、その腕をガッチリと掴んだ。

 

「……流星。今日は私が選んでやろう。ひなたにご教授してもらったばかりだからな」

「私もお供します。その褌も、元あった場所を探さないと」

「お、お前達、何故そんなに力強く……」

「海水浴用の水着は選んだんじゃから、後はレジまで」

「シャラップよ童山君。みーちゃん、一緒に行きましょう」

「うん。童山君が笑いものになっちゃう前に」

「「???」」

 

若葉、ひなた、歌野、水都に掴まられながら、男性用の水着コーナーに強制連行される流星と童山。球子、調、杏、司も、その後を追う。

 

「……もうさー。お願いだから次にグループ行動する時は、ツッコミ担当の人を増員してもらえないかにゃー。私と巧君だけじゃ、もう限界」

「……俺、ツッコミ担当にされてたのか」

 

そうボヤきながら、雪花と巧(小)も小学生組と共に、その後に続く。

一癖も二癖もある勇者部は、水着選び一つとっても、このようにハプニングが絶えない事を、改めて認識する必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、別の試着室では……。

 

「まさか、男女でお揃いの柄の水着が見つかるなんてね……」

「お互いに似合うやつを選んでたら、見つかるとは思わなかったな」

「へ、変じゃないかな……?誠也のは私が選んだから、凄く似合ってるけど」

「んなわけあるかよ。お前のもよく似合ってるぜ。とりあえず、これを買うか」

「う、うん……!」

 

試着室の鏡の前で、同じ柄の海パンとビキニを試着して、狭い個室で体を密着させながら互いの水着姿を評価する、愛知県出身の勇者と巫女の姿が。

カーテンは開けられており、仲睦まじく試着を堪能している2人を見て、通りかかった買い物客は思わず顔を赤くして、目を逸らしてしまう程だった。

 

「「海水浴、楽しみだね〜♪」」

 

イチャついている2人の様子を観察しながら、メモを一心不乱に取り続けている、この2人を除いて。

 

 

 

 

 




私事ですが、6月に開催される『満開祭り4』の抽選が当たって、昼、夜共に参加する予定です!
コロナ情勢もあって、まだ不安はありますが、是非とも堪能したいですね!


〜次回予告〜


「海だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「青春しおって」

「棗さん落ち着いてください!」

「今度は、きっと……!」

「荒ぶってやがる……!」

「海を穢すものは許さない……!」


〜海は綺麗なのが一番〜

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