結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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ゆゆゆいのサービス終了が今月末に迫る中、先日の生配信で明かされた、ゆゆゆいの家庭用ゲーム版発売決定!これは何げに偉業ではないかと、個人的に感嘆しております。
あまりそちらの界隈には詳しくない私ですが、今までスマホゲームから家庭用ゲームに移行した作品は他に知らないので、それだけ多くのファンに支えられてきたからこそ、この『奇跡』が成り立ったのではないでしょうか。
願わくばSwitch版で出ると嬉しいと思いながら、最新話を投稿してまいります。




17:開幕!勇者部部長総選挙!

「総部員数、39人……、顧問も含めると41人。勇者部も大きくなったわね」

 

事の発端は、次回の委員会に提出する書類をチェックしていた風の、何気ないこの一言から始まったと言えよう。

真っ先に反応を示したのは棗だった。

 

「感慨に耽っているところ悪いが、それは私達も入っているのか?」

「そらぁ39人っちゅうたら、入っとるわな」

「でも、この世界から出たら元に戻るんでしょ?結局、人数は変わらないんじゃないの?」

「あ、そういや思ったけど、勇者部って人数増やしてく予定ってあったか?」

 

ふと、銀(中)が元の世界に戻った後の事を考え始める。現状、この場には各時代から召還された勇者達が揃っており、そこらの運動系の部活と比べても、かなりの大所帯だ。それ故に部室のスペースの狭さも問題視されているが、役目が終わって元に戻った時の事を考えると、また別の問題が生じる。

 

「でも、人数増やさないと……、私達が卒業したら、樹ちゃんと冬弥君だけになっちゃうよ」

「だ、大丈夫ッスよ!……多分」

「……で、実際の所どうなんですか?先輩」

 

兎角に話を振られた風と藤四郎だが、その反応は芳しくない。

 

「それは……こう、アレよ。一周回って、特に何も考えてなかった……みたいな?藤四郎、あんたは何か考えてた?」

「それが、な……。そもそも勇者部は、大赦に命じられて、素質のある面子を2年以内に揃え、バーテックスが侵攻してきた際に、速やかに対応できるように創られた部活動だからな。新入部員勧誘のケアまでは、さすがにしてもらえなさそうだしな……」

「適当すぎだろ……」

 

呆れ口調で、好物のみたらし団子を口に含む照彦。

 

「こ、これまでは何とかなってたの!」

 

そう反論する風だが、このままでは信頼を失ってしまう。リーダーとしても焦りが伺える中、一際大きな声が部室内に響く。

 

「そうだ!部長を決めよう〜」

「っていきなり下克上宣言⁉︎」

 

唐突な園子(中)の決定に、それまで部室の隅っこで有意義に過ごしていた面々も、何事かと注目する。

 

「フーミン先輩、残念だけど、あの頃の勇者部はもうないんだよ!」

「な、なんだってぇぇぇぇぇ⁉︎」

「……いやいや、話は最後まで聞いとけって。園子、幾らお前でもはいそれと頷けるような事じゃない。説明してくれ」

「はいは〜い。説明のタ〜ン。ええっと、今って各グループにリーダーがいるでしょ?それって、部長が何人もいるみたいだよね〜」

 

園子(中)が語るように、西暦の四国であれば若葉が、神世紀298年であれば晴人と園子(小)が、そして神世紀300年であれば風がリーダーとして仲間を引っ張っている。しかしこれだけリーダー格が多くても、部活動はもとより、戦闘でも違う世代の勇者同士で連携が取れずに、危険な状態になるかもしれない。そこで今回、園子(中)はこの機会に、リーダーを1人に絞ろうと提案してきたのだ。

 

「成る程。誰が真の部長か決めようってわけね。乗ったわ!」

「私は風さんが部長でいいと思うが……、やるからには全力だ」

「ええと……うん。風先輩がやるなら、やろう〜」

「おっしゃあ!俺も一応武神のリーダーだしな!真のリーダーになって、みんなを守ってみせる!」

 

他の3人が同意を示し、本格的に話が纏まり出したところで、歌野が待ったをかけた。

 

「ストップ、ちょっと待って園子さん。その場合、私達はどういう扱いになるの?」

「参加は挙手制〜。各自の自由で良いんじゃないかな〜」

「なら、私は参加するわ!そして、立派な畑を開墾します!」

 

早くもマニフェストを掲げる歌野。自由参加という事もあり、園子(中)は念の為にと、他の4人にも声をかけてみる。

 

「なっちとアッキー、それと、せーくんとそーたんは?」

「しない。柄じゃないからな」

「そうだね。私も立候補はなしでいいかな。部長って大変そうだし」

「俺もパスだ。リーダーには向いてない」

「(誠也だったら、リーダーでも頑張れそうだけど……)」

「わいも性に合わへんからな」

 

という事で、他の西暦組は投票のみとなり、本格的に動き出そうとしたその時だった。

 

「ちょっと待ってそのっち。その選挙は、推薦方式でも構わないのかしら?」

「うん、全然オッケーよ〜。でも、わっしーが出たいわけじゃないって事は……」

 

東郷の意見を聞いて、園子(中)の目線は、彼女の隣にいる男子生徒に向けられる。

 

「⁉︎まさか、俺が部長候補に……?」

「えぇそうよ!あなたのリーダーとしての素質の高さは、私が保証するから!……というわけで!私は小川遊月君を、次期勇者部部長に推薦いたします!」

「ちょ……!幾ら何でも本人の同意なしに、そんな勝手に」

「ではでは、フーミン先輩、ゆづぽん、そのっち、イッチー、わかちゃん、農業王の次期部長選挙、開始だよ〜!」

「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

夏凜のシャウトを他所に、園子(中)は、意気揚々に話を進めていく。遊月も、東郷からの熱い視線を向けられては、無碍に断れないようで、やむを得ず立候補する気になったようだ。

 

「あ、因みに投票は10分後ね〜」

「短けぇよ⁉︎」

 

当然各々のアピールタイムは設けられていたわけだが、あまりの短さに騒めきが収まらない。そんなこんなで、一旦解散となり、園子(中)はそそくさと部室を後にしてしまう。

 

「ああもう!10分で何しろって言うのよ⁉︎取り敢えず行くわよ、みんな!」

『お、おー!』

 

困惑しつつも、なるようになれとばかりに声を張り上げた風に続き、何人かが部室を後にする。投票数を増やす為に片っ端からこの場にいない面子に声掛けをするようだ。

 

「うむ!中々の気迫に満ちている!」

「照くん!私達も頑張って、若葉ちゃんを勝たせてあげよう!」

「ったく。面倒な事に巻き込まれたな……」

 

そうボヤきながらも、照彦も高嶋に続く。他の立候補者達も、遅れをとるまいと、行動を開始する。

 

「……」

 

ただ1人、事の成り行きを黙って見守っていた者が、不気味な笑みを浮かべているとも知らずに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えぇっと、何で私達はまだここにいるの?他のみんなは解散しちゃったのに」

 

そう呟く水都は、立候補者の歌野についていく事なく、何故かひなたと美羽と共に、部室に残っていた。その理由は、3人を招集した園子(中)の口から語られた。

 

「それは、ミトりんもひなタンもみゅうミュウも、巫女だからだよ〜」

「もしかして、今回の選挙管理委員を、私達が?」

「ピンポ〜ン!」

「選挙委員……大役だ。頑張らないと」

 

水都が張り切る中、ひなたがおずおずと手を挙げてこんな発言を。

 

「あの……。水都さんは外した方が良いのでは……?」

「……、私、選挙委員ダメかな……」

「あぁいえ、違います!人数の問題です、人数の!」

「人数?」

「あ、そうだね。現状、ひなたちゃんの派閥は人数もいるから、ひなたちゃんが抜けてもさほど影響はないと思うし、今回は誠也も立候補してないから、私が投票するメリットもないから。でも……」

「ミトりんの所は、農業王だけだもんね〜。ドーさんが農業王に入れてもまだ足りないし」

 

それを聞いてハッとなる水都。言われてみれば、管理委員に任命された巫女3人に投票権がない以上、立候補者6人を除けば、投票の有権者は、園子(中)を含めて30人。その中でも優位に立つのは、間違いなく若葉と遊月だ。小学生組は2名立候補している以上、票が割れるのは間違いないだろうし、風は現部長という立場から、逆転の余地はある。しかし歌野に関しては、彼女の支援者ともなると、有権者では童山1人しかいないのだ。その為、水都を有権者側に回す事で、少しでも格差を埋めるべきなのでは、とひなたは語る。

 

「……ううん。うたのんなら、きっと大丈夫。私、選挙委員を頑張るよ」

 

が、水都は少し悩んだ後、選挙委員に専念する事を決意する。この世界に来てから、自分に自信を持ち、相手を信頼する気持ちが強く芽生えてきたからこその発言だったようで、成長が伺える。

 

「うんうん、そう言ってくれると思ったんよ〜」

「因みに、誰が勝つと思いますか?私は当然、若葉ちゃんです!」

「私はうたのんに頑張ってもらいたいかな。美羽さんは?」

「そうだね……。誠也じゃないんだったら、私は晴人君か遊月君にも頑張ってもらいたいかな……。所で、園子ちゃんはもう誰に入れるか決めてるの?」

「えへへ〜、秘密〜。でも、面白くなれば、誰でもいいかな〜」

「?遊月君じゃなくても、ですか?」

 

ひなたは意外そうな表情を見せる。てっきり、付き合いが立候補者の中でも長く、苦楽を共にしてきた遊月を応援するものだと思っていたが、そうでもないような口調だ。

 

「でも……やっぱり人数的には、乃木さんと遊月君が有力候補だし、次点では他の3人も負けてないし……。うたのんが勝つのは、無理なのかな……?」

「そうだね〜。いくつか勝つ方法はあると思うよ。ふふ、農業王がどう戦うか、楽しみだね〜」

 

その頃、件の農業王はというと……。

 

「お願い!私に力を貸して!あなた達の力が必要よ!」

「うへへ。何だか知らんが、歌野の頼みじゃ。協力するわい」

「即答⁉︎……って、まぁ私もなんだけど。てかさ、勝つ算段あるの?」

「残念ながらナッシング!でも、やるからには勝つつもりでやらないとダメでしょ?」

「気持ちだけかー。でもま、私も歌野を推しましょ」

「ありがとう!これで私達の戦力は4倍ね!」

「1人が4人になっただけだけどね」

 

やる気に満ちた表情の歌野は、童山に加え、早くも雪花と奏太の票を獲得する事に成功していた。

 

「せやけど、こっからどないするんや?さっきチラッと見えたんやけど、棗と誠也は同級生繋がりで風に買収されとったし、今んところ若葉と遊月が同率トップ。このままやと負け確やで?」

 

現状を確認し、皆が知恵を振り絞って唸る奏太達。そんな彼らを廊下越しに見ていた者が1人。

 

「それは……簡単よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少数派の悩みを抱えているのは、歌野だけではなかった。

 

「これは難問だわ……。どうしたら、そのっちを勝たせられるのかしら」

「お、須美はやる気だな」

「当然よ。やるからには勝たないと」

「だな!ほぼ成り行きだったけど、負けないぞ園子!」

 

小学生組でも、男女で票が割れるらしく、現時点で園子(小)と晴人で2票ずつ獲得している事となっているのだが、その後が続かず、時間だけが刻一刻と過ぎている。

 

「私は勝たなくてもいいかな〜。面白ければそれで」

「あの……、もう少しやる気を出してもいいんじゃないかな、園子ちゃん……」

「ま、やる気云々以前に、勝てる見込みがないのも事実だ。多数決じゃ、俺達はどう足掻いても不利だ。順当にいけば、若葉さんと遊月さんが9票ってとこだろ。後は他の浮いた票がどこに入るか次第だが」

 

何れにせよ、このままでは勝ち目がない。

 

「!そうだ!何とかして、誠也さん達にも協力してもらえないかな?そうすれば……!」

「うーん、確かにそれができればいいんだけど、難しいんじゃないかな〜?」

「何でですか?」

「何となくだけど、歌野先輩チームに入ってる気がするし、中3が多いから、風先輩のチームにも入ってたりするかも〜」

「だったら歌野さん達と協力すれば……!」

「忘れたか晴人。向こうが協力するメリットがないし、仮に同意したとしても、新しい畑を開墾するっていう野心を持ってる奴の事だ。逆に票をごっそり持っていかれる事になれば、先ず勝ち目はない」

 

巧(小)の、隙のない指摘に言葉を詰まらせる晴人。彼の言う通り、確実に3人のどちらに票を入れるかで揉める事は間違いなしだ。

 

「……はぁ、どうしたら勝てるのかしら?」

 

思わずため息をつく須美。

そんな彼女の後ろ姿を、偶然通りかかった兎角と友奈が見ていた。

 

「やっぱり、晴人も園子も苦戦してるな」

「私達も、そろそろ決めないとだね!でもどうしよっかな……」

 

そう呟く2人も、実の所、誰に投票するべきか、大いに悩んでいた。アピールタイムが始まった当初は、東郷の熱烈な勢いに任せて、同級生で信頼の厚い遊月に投じようと考えていた2人だが、いざとなると、これまで顧問がいない中でも癖の強い部員達を先導し、まとめてくれていた風の気持ちも裏切れず、自分達を慕ってくれる小学生達の気持ちを考えると、簡単には割り切れないのだ。

 

「どうしよう兎角!どっちを誰を選んだら良いの……⁉︎」

「どうするって言われてもなぁ……」

 

流石の兎角も、幼馴染みに問い詰められても言葉が上手く出てこない。

 

「……フフ。随分悩んでるようね。どっちにも負けて欲しくない気持ちで」

「⁉︎」

 

不意に声をかけられた2人が顔を上げると、長髪の少女の姿が。よく見ると、後方には5人。友奈がその者達の名を口に出そうとするよりも早く、少女はいつになく素早い動きで2人に接近し、その耳元で、恐ろしく低い声で呟く。

 

「……良い方法、教えてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分経過。外に出ていた者も含め、部室に戻ってきた一同は、選挙管理委員となった巫女達の指示で、部長に相応しいと思う人物の名を書いて、箱に入れ、最後に皆の前で開票する。無記名や複数の候補者の名前が書かれたものは無効票にするなど、本場の選挙さながらの流れで、1人また1人と、投票を行っていく。

そうして立案者の園子(中)が投票したのを最後に、巫女達が開票を始める。最初は淡々と作業を進めていた3人だが、次第に表情が険しくなり始め、終わりが見え始めた頃には、戸惑いに満ちた表情を浮かべていた。どうやら予想とは大外れな結果だったに違いない。ひなたの表情を見ていた若葉がそう察する。

 

「開票、終わりました。……まさか、こんな結果になるなんて」

「こんなって、どんなだ?」

「タマは気になるぞ!どんな結果になったんだ?」

「ドキドキするね、タマっち先輩」

「先ずはゆづぽんからだね〜。ゆづぽんは……5票だよ!」

「⁉︎」

 

この結果に驚きを隠せなかったのは、立候補者ではなく、その支持者だったのは言うまでもない。

 

「えっ。遊月が5票?でも確か、あたしら9人で……」

「……れなの」

「えっ」

「誰なのぉ⁉︎遊月君を裏切って、他の者に票を入れた4人の愚かな反逆者は!あなた達、そこに正座!こうなれば1人ずつ尋問を……!」

「お、落ち着け東郷!」

「取り敢えず銃を下ろせ。言っておくが俺は遊月に入れたからな」

 

どこから取り出したのか、軍帽を被り、猟銃(多分モデルガン)を構えながら、鬼の形相で同級生達に詰め寄る東郷を取り押さえる面々。

 

「あ、あのね東郷さん!」

「?友奈ちゃん?私は別に、友奈ちゃんの事を疑ってなんて」

「その、ね……。私、ね。遊月君に……入れて、ないんだ」

「⁉︎友奈、ちゃ」

「俺もだ、東郷、遊月。お前らには悪いと思ってる。後で煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」

「兎角も……?」

 

事もあろうに、裏切り者の正体が、誰よりも仲間想いの2人である事に、他の有権者達も少なからず動揺する。

 

「何で……、どう、して……。私達が過ごしてきた、あの2年間は、全部、嘘だったの……?……それとも、私が、煩わしかったから?全部、私のせい、なの……。私が、不純な動機で、2人に無理を押し通し過ぎたから……」

「東郷!」

 

膝から崩れ落ちる東郷を支える遊月。そんな彼女の両手を、2人が片方ずつ、優しく包み込む。

 

「違うよ東郷さん!私達が一緒に過ごした時間は、嘘なんかじゃないよ!」

「……嘘」

「ウソじゃない!」

「嘘よ」

「ウソじゃない!」

「嘘よ!」

「ウソじゃない!」

「……ホント、なの?」

「ホントだよ!でも、ごめんね……!私、遊月君の事も大切だけど、みんなの事も大切だから、だから……!」

「……っ!ずるいよ、友奈ちゃん。そんな事言われたら、私……!」

 

遂には両目から雫が滴り落ち、3人が介抱に入る。涙を拭いたり、落ち着かせるように抱きしめていたりと、様々なケアが行われる中、夏凜が気まずそうに口を開く。

 

「あ、あのさ……。まだ1人目なのに、感動的な何かになっちゃってるけど、そろそろ次に進んでもらえない?まだ開票の途中なんだけど」

「はいは〜い。次はそのっち〜。そのっちも5票だよ〜」

「園子が5票……って事は、友奈と兎角が入れたのは……」

「へっ⁉︎違うよ銀ちゃん!私は……」

「どんどんいっちゃうよ〜!続いてイッチーは……同じく5票!」

 

友奈を遮る形で開票が進んでいくが、いよいよもって騒めく室内。順当に考えれば、小学生組には、それぞれ2票ずつ入っているのは先ず間違いない。それ以外の票が入っているともなれば、本来遊月に入るはずの票が4つともどこかに分散している可能性がある。少なくとも、西暦組には最低でも2人の裏切り者がいるのは確実だ。

 

「ですけど、順当にいけば若葉さんの方が優位に立っていると思いますよ。2人が別の方に入れたとしても、7票入ってますから」

「……いいえ伊予島さん。そう簡単にはいかないと思うわ」

「?どういう、事……?」

 

調が首を傾げると同時に、次は若葉の投票結果に移る。

 

「次は若葉ちゃん。……若葉ちゃんも、5票です」

「んな⁉︎俺じゃねぇぞ!」

「どーいう事だ⁉︎タマはちゃんと若葉に入れたぞ!ウソじゃないからな!タマの大好物のみかんに誓ってもいい!」

 

裏切り者は、2人どころか4人いた。その事実を前に、司と球子が必死に弁明する中、全く違う反応を示している4人の姿を捉える杏。

 

「!まさか、あなた方が……!」

「フフ。ごめんなさい、乃木さん。違うリーダーにも興味があったの」

「ごめんね!私も、結城ちゃんと同じ!みんなにも負けて欲しくなかったから!」

「いやぁ、結構悩んじまったけど、舎弟の晴人が頑張ってるのを見てると、応援しちまいたくなってきてさ!」

「……俺は、俺の直感を信じただけだ。お前がリーダーなのも良いが、お前の子孫のセンスも悪くないと思ってな」

「この裏切り者ぉ!……って、タマが怒るところじゃないか、これ」

 

千景、高嶋、紅希、照彦の言葉を聞き、そこそこショックを受けている様子の若葉。

 

「……そうか、お前達が。そうか……5票……そうか」

「めっさ落ち込んどるやんけ⁉︎しっかりせぇや大赦のトップはん!」

「ちょっぴり傷ついてる若葉ちゃん、いただきました♪」

 

すかさずシャッターチャンスとばかりに躍り出るひなた。……後で力ずくで消されるのは間違いないだろうが。

 

「次は風先輩だね。風先輩は……5票だよ!」

「ちょ、4人とも5票なんて事あるの⁉︎」

 

風に入ったのは5票。こちらは順当な結果と言えるだろう。ただ、現部長としては、これだけの大所帯の中でこの人数には、納得していないというか、どことなく落ち込んでいるように見受けられる。

 

「ん?って事は残ってる歌野の獲得票は……」

「うたのんも、5票だよ」

「あの……、こんな形でカミングアウトするのも口惜しいのですが、僕、遊月君には入れずに、歌野ちゃんに入れてまして……。何度か、新鮮な野菜を届けてくれて、その恩義と言いますか……」

「昴⁉︎お前もか」

「という事は、最後の裏切り者ってまさか……」

 

ふと、何人かが昴の後方にいる、この選挙を事実上仕切っていた少女に目線を向けると、本人はサッと視線を逸らす。最早問い詰める間もなかった。

 

「引き分けね。勝てなかったのは残念だけど、負けなかったわ!」

「ポジティブじゃなぁ」

「うん。やっぱりうたのんは凄いね」

「……ん?ちょい待ち。候補者全員5票って事は……」

「現状維持……?」

「それが一番ですね」

「うんうん〜」

「そうね。引き分けの場合、ベルトは移らないのが普通だわ」

「……ありがとう、ありがとうみんな!改めて、勇者部部長、犬吠埼風を宜しくね!」

「良かったな、風」

 

満場一致で、現状維持が決まった事で心底ホッとした様子の風。勇者部の平穏は、しばらく続きそうだ。

 

「……所でそのっち。今回の選挙の事で、色々と聞きたい事があるのよ〜……。一連の裏切りの事も含めて、場合によっては、吊るさなきゃならないかもしれないけど、正直に答えてもらいましょうか〜……」

「あ、アハハ。お手柔らかに〜……」

 

……ただ1人を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜……ウフフ。園子ちゃんには悪いけど、良い思いをさせてもらったわ〜

 

〜それに……、乃木さんの狼狽する姿、とても滑稽だったわよ〜

 

〜その気になれば、私はあなたよりも優れている事を、強い事を証明できる〜

 

〜強ければ、私はみんなに必要とされる〜

 

〜そうなれば……、三ノ輪君も、高嶋さんも、私だけを見てくれるから〜

 

 

 

 




ややダークサイドに踏み入りかけている、策士『C.shadow』回(?)でした。


〜次回予告〜


「畑……ですか」

「何だろう、このドキドキ」

「手負いの獣は危ないものよ」

「カチコミだぁ!」

「取り返そう……!私達の街を!」


〜丸亀城を奪還せよ〜


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