結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

とうとうスマホ版のゆゆゆいも、サービス終了となりましたが、家庭用ゲーム版が出るとあっては、落ち込んでばかりもいられません!
勇者部は永遠に不滅なのですっ!

話は変わりますが、『仮面ライダーギーツ』の展開ぶりが予想以上にヤバい方向に振り切ってるように見えるのは私だけではないでしょう。この調子で1年保つのかさえ、逆に心配です……。


18:丸亀城を奪還せよ!

「……それで、ここが玉藻市に、五岳市。ここが大橋市で、こちらが大束町になります」

「ふぅむ。見事にがらりと変わっているんだな。今まではさほど気にしてはいなかったが……」

「でも、良かったですね。西暦時代の四国の地図も、倉庫の中から見つかって」

「あぁ。この300年間で、地名そのものが変わった土地も少なからずある。こういった観点から、大赦が歪んでいった理由も分かれば尚良しだけど」

 

とある休日の朝。

この日はミーティングも兼ねて、朝から部室に集合する事となっているが、一足先に、遊月、昴(中)、若葉、ひなたの姿がそこにあった。彼らがいち早く部室に姿を見せた理由は、机の上に広げられた、比較的真新しい地図と、茶色のシミが所々に目立つ、いかにも古そうな地図が物語っている。

 

「グッモーニング!……あら?会議の途中かしら?私にそっと囁いて」

「「おはようございます」」

「グッモーニング。ほら若葉ちゃんも英語で挨拶を。イングリッシュ若葉ちゃんで」

「ぐ、グッモーニングだ歌野!ら、ラヴリィデイイズントイット!」

「若葉ちゃん無理してませんか⁉︎」

「(東郷や須美もそうだけど、護国思想強い奴って、大体こうなるのか……?)」

「はふぅ。こんなハイカラな若葉ちゃんもいいですねぇ。肌がツヤツヤしてきました」

 

そう呟きながら、シャッターを切るのも忘れないひなた。その性質は、やはり若葉の子孫を色濃く受け継いでいるといっても過言ではないだろう。

 

「全く……、私で遊ぶなひなた。でも肌がツヤツヤしたのは良かったな」

「そこは良いんだ……」

「会話に入る隙がないとは、さすが若葉とひなたさんね。……で、話の内容は?」

 

脱線しかけたが、ようやく本題に切り込む歌野。

 

「神世紀になると、地名が変わった所が多くてな。それで、遊月に頼んで、西暦時代の地図を貸してもらって、今の地図と比較しながら学んでいるんだ」

「色々あって、大赦に保管されている資料の多くは検閲されて見れなくなってますけど、地図の方は特に問題なかったので、こうして持ち出せてるんですよ」

「丸亀城やゴールドタワーは、名前はそのまんまみたいですけどね」

 

成る程、と納得した様子の歌野は、2種類の地図に目を通しながら、ふと思った事を口にする。

 

「神世紀も300年となると、歴史を感じるわね。私がいた諏訪も、地名とか変わるのかしら?」

「あ、それ、は……」

「……」

 

これを聞いた若葉と遊月の表情に陰が。壁の外の惨状を知っている以上、最早諏訪そのものが存続しているかさえ、怪しい部分がある。

 

「何暗い顔をしてるのよ2人とも。大変な状況になってるのは想像ついてるんだから、気を遣わなくていいの」

 

それでも尚、若葉達を気遣う彼女を見て、改めて歌野の芯の強さを目の当たりにした4人であった。

 

「そういえば、歌野ちゃんはどんな用件でここに?」

「あぁ。実は新たな土地をゲットしたところで、おねだりがあるのよね」

「大体のおねだりは通ると思いますが、若葉ちゃんはあげませんよ」

「そうなの?欲しいのに、一家に1人」

「こればかりはあげられませんよ。実は体に名前書いてあるんですから、『ひなた』って」

「人を家電製品みたいに言わないでくれ!大体、私の体に名前なんて書かれてないぞ」

「え?」

「え?」

「……いやこれ何の話?」

 

段々と論点がズレているように感じた面々は、歌野とひなたのやりとりを遮る。

 

「っと。冗談はさておき。私は畑が欲しいの。目をつけた所があるから、耕していいかな?」

「畑……ですか」

 

歌野らしい案といえば、そうなのかもしれない。この世界に召還されてから、それまで日課だった畑作業も手付かずになっており、生活リズムに狂いが生じてしまえば、勇者としてのコンディションに関わってくるかもしれない。ならば新たな土地を奪還したこの機会に、新たな畑を耕すのも、悪い案ではなさそうだ。

 

「私はそこで色々と育てる。勿論蕎麦もね!美味しい蕎麦への第一歩は、土にこだわる所から!」

「何ィ⁉︎畑で一から蕎麦を作るのか⁉︎」

「確かに蕎麦粉を作る上で、畑は欠かせませんけど、本当に出来るんでしょうか……?」

 

若葉と昴(中)が驚く中、部室に新たな人影が。

 

「およよ。何やら熱量を感じると思ったら、畑が欲しいっておねだりしてるの?」

「あ、雪花さん」

「そうだわ!雪花さんもやりましょ、耕しましょ。えんやこらって、土と語らいましょ」

「まぁ手伝うって事になってるしねぇ、いいよ。どこまで力になれるか分からないけど」

「それなら、後で畑の場所を教えてもらえますか?よほどの事がなければ、問題なく耕せると思いますけど、一応役所とかにも相談しておく必要はあるので」

「……」

 

すると、何かを考え込んでいた様子の昴(中)が、顔を上げて歌野に話しかけた。

 

「あの、歌野ちゃん。その畑作業、僕も手伝ってもよろしいでしょうか?僕も、料理を振る舞う上で、畑で育つ野菜の事とか、この機会にもっと知りたい所があるので」

「!大歓迎よ!ワクワクしてきたわ。農業王伝説in四国の始まりね」

「良い笑顔をするな、歌野は。私もぜひ手伝わせてくれ。きっと楽しい」

 

こうして、若葉からの協力も確約され、計画はその日のうちに実行。部活動の後、遊月とひなたを筆頭に、役所で土地の管理人と話し合い、学校からそれほど離れていない、手付かずの土地の所有権を得た歌野は、早速水都や童山を誘い、畑作業に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

放課後に、巫女達から部室に集まってもらうように頼まれた面々は、そこで新たな神託を受けた事を聞かされる。

 

「新しい神託って事は、また土地の奪還か?」

「はい。次に私達が造反神から取り戻す土地が、丸亀城と、その周辺に決まりました」

 

これを聞いて俄然やる気が出てきた者達が現れたのは、言わずもがな。

 

「おぉーっと、聞き覚えのある所きたな!」

「燃えてきたぜぇ!」

「丸亀城を奪われているのなら、取り返さないと。良い気分しないよね」

「……えぇ、あそこを奪われているのは腹が立つわ」

「……速攻で取り返す」

「そうだな、千景、照彦。その通りだ」

「私達の色々な思い出があるもんね」

「これは何が何でも取り返さないとだね!結城友奈、張り切らせて頂きます!」

「おいらも頑張るッス!」

「こっちの街とも近いし、あたしも一層火の玉になるってもんですよ!」

「火のタマ……カッコ良さそうな響きだ!」

「そう、なの……?」

 

首を傾げる調。

 

「でもみんな。張り切りすぎて、怪我しないようにね。これからも戦いは続くから」

「美羽さん、ありがとう!ね、照くん」

「まぁ、な」

 

照彦も、面には出さないが、皆からのエールを受けて、満更でもなさそうだ。

 

「へへっ!んじゃ善は急げってやつだな!カチコミだぁ!」

「ダメよ晴人君!」

「少しは学びなさい!」

「勝手に突出するな」

「グハッ⁉︎ダブル須美+未来の俺にブロック⁉︎」

 

やる気全開とばかりに、部室を飛び出そうとする晴人を、3人がかりで肩や腕を掴んで抑え込む。

 

「今回は園子もいるんだぜ〜」

「取り返す気持ちが強いのは頼もしいけど、攻めるタイミングは神樹様が教えてくれるから」

 

園子(小)と水都に説得され、渋々引き下がる晴人。と、今度は雪花からこんな提案が。

 

「んーたださ、今回は攻め込むパターンなんだから、下準備とかやれるんじゃないかしら」

「と、いうと……?」

「敵地の偵察をするとか、ですか?」

「さすが真琴。話が早い」

「成る程、斥候……。やる価値は高いかと」

 

東郷も、概ねこの意見に賛同しているようだ。が、話を聞いていた安芸が待ったをかけた。

 

「反対ね。神樹様が攻め込む時期を指定してきた以上、それ以外の時期は危険を指し示しているといっても良いわ」

「つまり、偵察そのものが危険な行為、という事か」

「やる気を削ぐようで申し訳ございませんが、今回は……」

「全然!私達を心配して言ってくれてるんだし、ありがとう、ヒナちゃん」

「よし!今後も意見がある場合は、遠慮せずに出し合い、互いに吟味する事を忘れるな!期日までまだ猶予はあるからな。各自戦闘に備えて、万全を喫するように!」

「丸亀城……!待っていてくれ。必ず奪還する」

 

源道がそう締めくくると、一同は解散。若葉を初め、有明浜に鍛錬に出かける者や、歌野のように土地の耕しに精を出す者など、各々が有意義な時間を過ごす事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経った、ある日の昼下がり。

 

「それで東郷、話って?」

「この間、話に出た件だけど。攻め込む敵地に向けて斥候を出す案は、良いと思って、再び議題として出そうと思ったの」

「けど、こないだは神樹様が示した日以外は危険だから出るなって、言われたばかりだろ?」

 

兎角が繰り返し東郷に念を押すが、今回は彼女もすぐには引き下がらなかった。

 

「例えば、敵に見つかったら必ず逃げる。戦闘行為を禁止の上で……、十分用心しての偵察ならどうかしら。つまりは、普段真琴君や昴君達が戦闘前に行っている行動を、敵地の視察に応用できないかと」

「成る程……」

「情報があれば、次の戦いが有利になりますからね〜。私もわっしー先輩に賛成です〜」

「東郷さんの言う通り、情報は大切で、普通なら私も偵察に賛成なんですけど……」

 

真琴と園子(小)が、賛成派に傾きつつある中、同じく参謀役の杏は、難色を示していた。そしてそれは、昴(中)もまた然り。

 

「戦闘が始まる直前の、敵の把握なら問題ありませんけど、ここから先は、僕達も地理的に詳しくない土地の奪還に動くとなると、今までとは訳が違うと思うんです。幾ら用心してても、難しい所ではあります」

「昴君の言う通りですね。繰り返しますが、神樹様が指定したタイミング以外で敵地に行くのは勧められません」

 

一連の流れを聞いていたひなたが、再三注意を促すのには、ある理由があった。

 

「……忘れもしません。西暦2015年、7月30日。初めてバーテックスが観測され、人類がなす術なく蹂躙されたあの日。私や若葉ちゃん、そして後から合流を果たした流星君達は、神樹様の神託に導かれ、大災害の時に本土から四国へ帰ってこられたんです。もし、神樹様の言う事を聞いていなければ……、そもそも、こうして皆さんと出会う事もなかったかもしれません」

 

いつになく苦々しい表情のひなたを見て、息を呑む東郷。大赦に遺されていた記録は、ほとんどが黒く塗り潰されている為、当事者の意見は貴重かつ生々しいものだ。

 

「成る程。思ったいたより危険なのね。では、議題は取り下げるわ」

 

一歩引き下がった東郷を見て、背中越しに様子を伺っていた遊月は、ホッと胸を撫で下ろす。

これで話し合いは終了……かと思われたが、不意に挙手する人物が。

 

「ちょっと待ってくれ。今の話を聞いて、それでも尚、自分ならば斥候にいけると思うが」

「棗さん?」

「戦闘の危険度を下げる為の偵察なのに、その偵察班が危なければ本末転倒、行かなくていいワ」

「いや、助っ人としてこの地に来た以上、こういう所で頑張りたいのだが」

 

やる気に満ちている棗だが、風は唸るばかり。

 

「せめてどう危ないか分かれば、対策も立てられるんだけどね。樹の占いでも無理でしょ?」

「確かに、そこまで具体的には……」

「神託も同じようなものね。あくまで頭の中に浮かんだ景色を、様々な解釈で紐解いていくものだから」

「そっか。せめてどう危険なのか、どれくらい敵がいるのか、神樹様も具体的に語って下さればなぁ……」

「お話できたらいいのに〜……。こちらから神樹様に質問できないんですか〜?」

「それは……残念ながら……」

 

申し訳なさげに口を開くひなた。進退が膠着する中、棗は頑なに自分の意見を曲げないでいた。

 

「こういう時こそ、私は役に立ちたい。信じて、偵察を任せて欲しい」

「棗の腕は信じてるわ。でも今はダメよ。体を張る時が来たら、しっかり頼るから」

「というか、棗さんはいつも役に立ってますよ!いてくれるだけで安心感が違いますから!」

「ありがとう樹。了解した」

 

棗がお礼を言ったその時、室内にアラームが鳴り響いた。神樹が示した、攻め込むタイミングがまさに今だったようだ。

 

「!警報……!丸亀城奪還戦か!」

「どうやら偵察の必要もなくなったようだな!」

「!ご先祖様!」

 

扉を豪快に開けて、タイミングよく現れた流星が、窓の外に鋭い視線を向ける。

 

「いかに敵を測ろうとも、戦場では刻一刻と数値は変わるもの。ならば!臆せず真正面から堂々と討ち倒す!今、その真価が問われる時だ!」

「取り返そう……!私達の街を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッシャア!行くぜみんな!」

 

全員が合流したのを確認した晴人が、先陣を切るようにスマホをタップし、武神服にその身を包む。それに続いて、他の5人もタップし、華麗に変身を決める。

そんな彼らの様子を見て、杏は呟く。

 

「しょ、小学生の変身は何回見ても可愛いなぁ……。何だろう、このドキドキ」

「須美は本当に小学生なのかと突っ込まずにはいられないが、まぁいい。それより敵だ!」

 

若干(というよりヤバめな)アウトに近いような発言がありつつも、敵を確認する一同。高台に陣取っていた真琴が、いち早くその位置を知らせる。

 

「今回も、敵に動きがありませんね」

「ジッとしてやがるな……」

「また攻撃したら増えるパターンか?」

「なら、破壊力増しましの、どでかいのをぶち込んでやる!この三ノ輪紅希様がなぁ!」

「ご先祖様!あたしも!」

「行くぞぉ!」

「俺もだぁ!」

 

一番槍とばかりに、三ノ輪家の3人に加え、晴人の一突きが敵に命中する。……が。

 

「全然ビクともしてねぇぞ?」

「「「「堅ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」」」」

 

陣取っている敵に、傷がついた様子はなく、逆に手を加えた方にダメージが入っているようだ。加えて、4人の攻撃で刺激が入ったからか、敵に動きが見られた。

 

「!銀、気をつけろ!」

「距離を取れ!」

 

すかさず、ダブル巧が火球を放ち、爆炎が視界を遮る中、4人は距離を取る事に成功する。

 

「スゴ……!さながらメテオのような降り注ぎだったわ」

「た、助かった……!」

「あんなに頑丈だなんて聞いてねぇぞ⁉︎まだ手が痛いし……」

「分かるよ!ジーンとするよね!痛いのいたいよ飛んでけ〜!」

 

以前、乙女型の御霊を破壊しようとして、そのあまりの堅さに腕がしばらく麻痺していた経験のある友奈は、その気持ちが誰よりも分かるようだ。

 

「⁉︎バーテックスの背後から、敵の姿が!」

「けど小っさ⁉︎飛んでるけど」

「小型だけど、飛行するタイプの敵……」

「全部撃ち落とすには、数が多いか」

「何か仕掛けてきそうだから、出方を見た方が良いよ」

 

遠距離型の東郷らも、苦々しい表情を浮かべる。だがそうこうしている内に、早くも敵の攻撃が勇者達に降り注ぐ。

 

「⁉︎何か落としてきやがった!」

「まさか、爆弾⁉︎」

「全員散開!」

 

言うなればその攻撃は、飛行型の戦闘機から投下される、絨毯爆撃。一度範囲内に巻き込まれては、回避は難しい。

 

「これでは、バリアを張っても保たない……!」

「ひゃあ⁉︎」

「足を止めるな!」

「ワシはそんなに早く動き回れる体型じゃないからのぉ!」

「敵さんも随分とやってくれるじゃねぇの……!」

「とんだアトラクションだわ!」

「おのれ……!制空権をとって爆撃とは……!」

「屈辱だわ……!鬼畜な敵め」

 

地団駄を踏む一同だが、手をこまねいているばかりではいられない。

 

「ほんなら先ずは、あの浮遊型をどうにかせぇへんと!」

「タイミングを見て、反撃に転じよう!」

「遠距離型はともかく、近接武器が届くぐらいに、敵の高度を下げてもらわねぇと……」

「それなら……!たっくん!敵の頭上にデッカい花火を打ち上げてぇ〜!」

 

園子(中)の指示を受けて、真意は解らずとも、仲間を信じ、火球を空高く放つ巧(中)。これに乗じて、小学生の方も打ち上げる。攻撃はかわされたが、浮遊型の上空で爆発した火球は、熱波を放ち、上空に旋回していた敵のバランスを崩し、陣形が乱れ、降下していくのが見えた。好機と見た若葉と流星は一気に攻め上がり、他の面々もそれに続く。

 

「これで、あらかた片付いたか……?」

「なら後は……。そこだ!」

 

誠也がカットラスを投擲した先には、太い幹に隠れ潜んでいた敵の姿が。貫かれた敵はその場で消滅する。

 

「お、よく気づいたな」

「元の世界じゃ、何度もそういうタイプの奴らに囲まれた。気配がダダ漏れだったしな」

「賢ぇ!」

 

突き刺さったカットラスを難なく引き抜く誠也を見ながら、紅希は感心する。

 

「友奈伏せろ!」

「わわっ!」

 

その傍らでは、高嶋の背後から迫ってきていた敵を感知し、飛びかかる勢いで鉤爪を立てて、引き裂いた。

 

「向こうも賢いのか知らねぇが、直線型の友奈の背後を取ってきてるな。ま、俺が見てるうちは無意味だけど」

「ありがとう照くん!ハグ!」

「っ⁉︎おま、こんな時に……!」

 

突然ハグされた戸惑いの表情の、照彦の顔は紅い。それを観察していたダブル園子は、当然ながら、ペンとメモ帳の用意を怠るはずもなかった。

 

「ほう。世の中は常に発見に満ち溢れているよね〜」

「人生とは、美しい旅なのだよ〜」

「お前ら急にどうした⁉︎」

 

司がたじろぐ中、戦況を把握する真琴。

 

「残りは、あの動かない敵だけのようです」

「全く攻撃してくる気配がないな」

「ならば、こちらから仕掛けるのみ。三ノ輪君に代わって、今度は私が……!」

 

今度は千景が、鎌『大葉刈』を振るって連撃を与える。凄まじい気迫で、敵を切り刻んでいるようだ。が、思ったほどダメージは入っていない様子だ。

 

「だったら続けざまに……!」

「行くわよぉ!」

 

続けて藤四郎と風が、力を込めて攻撃するも、やはりびくともしない。

 

「効きがイマイチですね……。歌野さん、敵に鞭の嵐を浴びせてくれませんか?」

「OK、いくわよ!そぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「次に童山さん、強めの一撃を!」

「任せぃ!ぶちかましじゃあ!」

 

歌野、童山と、諏訪組の連続攻撃が展開されるが、多少動いただけで、ダメージとしては入っていない様子だ。

 

「これは勇者としてプライドが傷つくな。っていうか、こいつが堅すぎるのか、あんず?」

「どんな攻撃でも、常にダメージが一定なんだよね」

「つまり、防御特化型……今回は手数で勝負した方が良さそうです!」

「指示を出すのが板についてきたな。輝いているぞ杏!よし、皆言われた通りに!」

「真琴もサマになってきた感じね。手数なら、私の剣舞に任せておきなさい。完成型勇者、三好夏凜のね!」

「それなら、私も行きます!」

 

若葉と夏凜に次いで、樹も前線での戦いを試みる事に。

 

「うむ!よく言ったぞ樹!樹の武器は応用力がある!手数で攻めるには十分だ!」

「うっ……、つまり、樹が最前線って事?」

「こんな時に過保護な一面を出さないでよ⁉︎」

「おいらもサポートするから大丈夫ッスよ、風姐さん!」

「……分かったわ。樹、ファイト!」

「うん、お姉ちゃん」

 

その表情は、元の世界で大量の星屑から、風を守るために立ち向かっていった、あの時の決意を彷彿とさせるものだった。そんな妹の後ろ姿を見て、思わず笑みがこぼれる姉。

 

「こうして人は、大人になっていくのね。今夜はお祝いにうどんだわ……」

「(それって自分が食べたいだけでしょ……って、ツッコむのは面倒だわ)」

 

こうして樹が、ワイヤーで叩くように攻撃し、それに乗じて流星や冬弥が追撃とばかりに、童子切やハンマーで叩き切る。

 

「ハァッ、ハァッ……!だ、大分ダメージ与えたんじゃないかな……」

「お疲れ樹ちゃん!帰ったらいっぱいマッサージするよ!とうりゃーって!」

「あ、ありがとうございます……」

「今も軽くやろっか。立ったままでもできるよ。せいやーっ!」

「ひゃあぁぁぁぁぁ⁉︎い、今は大丈夫ですぅ!」

 

何故か友奈からの褒美を断る樹だが、その理由は後々明らかになるだろう。

 

「やいやいバーテックス!うちの妹に攻撃されるなんて、感謝しなさいよ!で、様子はどうよ真琴?」

「確実に効いています!このまま削り倒していきましょう!丸亀城奪還まで、もう少しです!」

「前の戦いじゃ、敵にある程度ダメージを与えた後に、形態変化する奴が現れたからな。十分注意を!」

 

遊月がそう忠告した直後、静止していた敵が、新たな飛行型を飛ばしてきた。今度は異様なオーラを放っている。

 

「いわゆる、パターンに入ったわけね」

「手負いの獣は危ないものよ。あれが獣かは放っておいて、気をつけていきましょ」

「よぉし!一息ついたら、一気にいくわよ!」

「これだけ勇者が多いと、周囲に注意してくれる人が多いから、あたしも安心して突っ込めるな!」

「銀の場合は、自分でも抑制してもらいたいものだがな」

「分かってるって、パパ」

「⁉︎パパって、お前なぁ……」

 

注意したはずの巧(中)が、恥ずかしげに目を逸らすと、銀(中)が便乗して会話に入ってくる。

 

「まぁまぁお前さんや。うちの銀さんも分かってるって言ってる事だし、わんぱくでいいじゃないか」

「お前がそう言って甘やかすから……。子供ができたら、一応は厳しく育てるつもりだからな」

「夫婦……コント?」

 

突然始まったやりとりに、困惑気味の調。それを見ていた先祖が、ニヤニヤしながら千景に声をかける。

 

「へへっ。何か面白そうだな。んじゃ俺も……ンンッ。千景ー、帰ったぞー」

「えっ、えっ⁉︎……あ、えっと……お帰りなさい、あなた」

「いやー、今日も疲れたー、会社で会議ばっかりでさー」

「お、お疲れ様。ええっと……」

「(千景が困惑しているようだな……。一つ助言しよう)……千景。そういう時は、お風呂が沸いています、とかでいいんじゃないか?」

「あ、そっか。普通はそうなのね」

 

いざとなると、どうしていいのか分からない様子の千景を見ていた雪花が、口元をニヤリと歪ませながら、紅希に耳打ちする。

 

「!紅希、さっき高嶋がしたみたいに、千景をギュッとしなさい」

「?よく分からんけど、これでいいのか?」

 

言われるがままに千景の背中に手を回す紅希。その後の千景の反応は言わずもがな。

 

「⁉︎あ、あぅ……!み、みの、三ノ輪、君……!らめぇ……今は、その……!」

「ふしゅ〜……。いいものを、見せてもらったぜ。園子頑張る」

「お前達が居座っている、我々の土地、今こそ返してもらう!いざ尋常に!」

 

そう叫んだ流星の足元に、光が集約する。自分の内側に意識を集中させ、神樹とアクセスし、その身に、地上のあらゆる記録の中から一つを抽出し、顕現させる、勇者の切り札。

 

「『火之迦具土』!」

 

全身から溢れ出た炎が、流星の装束を変化させるだけでなく、刀身に宿り、素人から見ても凄まじいチャクラを纏わせる。これが、最強クラスの勇者が織りなす、精霊降ろし。行使した事のある面々も、思わず息を呑むほどだった。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

たった一振り。その一撃は、不気味なオーラを放っていた敵を一切寄せ付けず、その身は焼け焦げるだけ。警戒した敵が、援軍とばかりに飛行型を召喚するが、他の勇者達が、その行く手を遮る。

 

「フンッ!」

 

目にも留まらぬ一閃で、大元を切り裂いた流星。その凛々しい姿に、若葉を始め、多くの勇者達を惹きつけていたのは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光に包まれ、樹海化が解けた際に、目の前に広がっていたのは、高々とそびえ立つ石垣。斜め先の、険しい坂道の先に見える、城壁。

真っ先に歓声を上げたのは、高嶋だった。

 

「やったやったー!倒したよ!お役目達成だ!」

「丸亀城と周辺地域、奪還だな。皆、よくやってくれた!」

「大変だったけど、取り戻せたからオッケーだ!ナイスファイトだぞ調!」

「疲れた……。でも、タマも、頑張った」

「やったな千景!」

「えぇ。その……あな、た」

 

戦闘時のやり取りの事を思い返しているのか、依然として顔を真っ赤にしている千景。

 

「やったね夏凜ちゃん!」

「そうね。今回は真琴もだし、樹と杏が頑張ってくれてたし、3人とも完成型勇者に一歩近づいてきたわね!」

 

夏凜が3人を褒め称える中、彼女1人は、嗚咽を隠しきれていない様子だ。

 

「うぅ……!グスッ……!」

「ほらほら、泣いてたら示しがつかないだろ」

「最近、妹の活躍がめざましくてね……!凄く嬉しいけど、ちょっと寂しいのよぉ……!」

「やれやれ……。お前の妹離れの方が苦労しそうだな」

「気持ちは分かる。樹は可愛い」

 

肩を竦める藤四郎に対し、棗は風に同情するかのように寄り添う。

そんな中、昴(小)が、幼馴染みに声をかけてきた。

 

「園子ちゃんお疲れ様。……所で、さっき転んでたように見えたけど、大丈夫だった?」

「良いものを見たせいで、張り切り過ぎたものでして〜。照れ照れ〜」

「そ、それなら、まぁ……。本当に大丈夫なの?」

「うん、大丈夫だよ〜。すばるんを見てると、痛いのも飛んでいくしね」

「何か成分が出てる、とか?」

「昴君に鎮痛作用があるなんて、驚きだわ……」

「園子限定だろうけどな」

 

などと仲睦まじいやりとりを、遠目で観察している少女の姿が。

 

「良いですなぁ、仲良し小学生。何かとつけてすぐ集まって、カワユイ」

「?どうした雪花」

「勝ったのにリトル暗くない?なんかダメージ受けてたって事はないよね」

「ん、全然平気。痛がり屋なもので」

「でも、優しいよね。さっきの紅希君とぐんちゃんのやりとりで、ほら……」

「あぁ、あれ?別にそんな優しいわけじゃないって」

「今日は帰ったらパーティーよ!楽しみね!」

「うん!もっといっぱいお話しよう!」

「……そうね」

 

そう呟く雪花は兎角や友奈、歌野が気にかけていたように、何処となく沈んでいるようにも見受けられる。

 

「よーし凱旋じゃあ!ひなた達を喜ばせてあげましょ!」

 

そんな雰囲気を払拭するかのように、風の号令が響き渡り、雪花達は風に続いて、丸亀城周りの散策に参加するべく、少し長い下り坂を歩き始めた。

 

 

 

 




次回は再びイベント回となります。(最初はマウンテン回もやろうかと思いましたが、難しそうなのでパスで)


〜次回予告〜


「ハッピーハロウィン作戦発動を宣言する!」

「様子がおかしい……!」

「ホワット・オン・アース⁉︎」

「現実逃避するな……」

「コスプレ……か?」

「盛り上がっていくぜ!」


〜カボチャ料理といえば、やっぱり『煮付け』〜

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