結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
今回は、リアルではとっくに終わっているハロウィン回となります。このイベントは、個人的にはゆゆゆいの中でも好きなストーリー上位に入ってきますが、皆さんはどうでしょうか?
「これで全員揃ったな!」
「諸君!よくぞ集まってくれた!」
10月も半ばに差し掛かった、とある休日。次の土地奪還作戦まで、今しばらく猶予があるらしく、それぞれの休日をのんびり過ごそうとする中、部室には晴人と銀(小)が腰に手を当てて、待ち構えていたのだ。
「ミノさんとイッチーに呼ばれたら、一も二もなくホイホイだよ〜」
「園子ちゃん、その言い方だと、何だかお手軽な女性みたいに捉えられそうだけど……」
「あ、あの……。一応確認なんだけど、私達も2人に呼ばれたんだよね?」
部室には、小学生6人のみならず、何故か樹、調、冬弥の姿が。見たところ、中学一年生組が招集されたように見えるが……。
「ザッツ・コレクトであります!」
「じゃあ勘違いじゃなかったんスね。……でも、何で兄貴達も呼んでないんスか?」
「……タマ、誘われてなかった」
「その辺りも説明してほしいものだな」
巧(小)が尋ねると、晴人はあっさりとその理由を語る。
「3人にきてもらった理由はただ一つ!俺達と歳が近いからだ!」
ドドンッ!と効果音が流れてきそうな雰囲気の中、3人の反応はというと……。
「えっ。あ、うん……」
「そ、そうだったんスか……」
「……」
気落ちしたような様子の3人。ここでようやく、同じ中学一年生であるはずの杏が呼ばれていない理由もはっきりしたらしく、より複雑そうな心中だと、周りは理解する。
「ぎ、銀、晴人君。よく分からないから、もうちょっと詳しく。何だか樹さん達を落ち込ませてしまっているわ」
「あり⁉︎いや、そういう意味?じゃないですけど、アレだよアレ!ほら、もう10月だろ?んでもって10月といえば、ハロウィン!」
「あ〜知ってる〜。トリック・オア・トリート〜」
「そっか。もう来週なんスよね」
ここでおおよその目的を理解した一同だが、ただ1人、キョトンとした表情の勇者が。
「はろいん?とりっく?な、何の事……?」
「外国にあった、秋の祭典です。カボチャでランタンを作ったり、仮装してお菓子を貰ったりするんですよ。日本でも、古くから取り入れられた風習で、神世紀になった今でも続いていますよ」
「ま、護国思想の強い須美には受け入れ難いところもあるかもだけどな……」
尤もな事を呟く巧(小)。
「そうです!特に注目すべきは、仮装してお菓子を貰う事!」
「トリック・オア・トリート〜」
「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ〜、ってやつかな?」
「イエス!これは、勇者達の中でも、我々年下組がやっても許される事だと思われるのです!」
「お菓子をあげないと悪戯されるなんて、なんて理不尽な脅迫なの⁉︎」
「須美、そこに触れちゃダメ」
顔を顰める須美に対し、調は静かに首を横に振る。祭りの形態は国によって様々だが、西暦時代から続くその風習は、今尚不変なのだから、ある種割り切るしかないのだ。須美も、仕方なく納得した様子だ。
「でも、そっか……。私達も年下組って事なんだよね。何となく、年上組な気でいたよ……」
「「……」」
「!お、おい」
「はわわ〜!ミノさん、イッチー……!」
同じ勇者の後輩が出来た事で、先輩風を吹かせていた3人だが、現実を指摘され、また落ち込んでしまっている。これを見た巧(小)と園子(小)は、慌てて呼び出し人達に説明を求める。
「あぁ違うんですよ!冬弥さん達も、俺達にとって先輩ですし!だから、協力してもらいたいんですよ!」
「協力……?」
「アタシ達のリーダーとして、年上の皆さんからお菓子をせしむる作戦の指揮を執っていただきたく!」
「リーダー……?先輩として……?」
「はい!名付けて『ハッピーハロウィン作戦』です!」
「……そっか〜!私達が一番、歳が近いもんね!うん!ハッピーハロウィン作戦、協力するよ!2人も頑張ろう!」
「いいッスよ!先輩の意地見せるッス!」
「……!」
調も、ブンブン腕を上下に振りながら意気込んでいる。
それを見た小学生組はホッと一息。単純な先輩で助かった、と本音を心中に留める巧(小)であった。
さて、年上組の賛同も得た所で、話し合いは本格的なものへと進んでいく。
「それではここに、ハッピーハロウィン作戦発動を宣言する!」
「わ〜、ぱちぱちぱち〜」
「相変わらず勢いだけはあるな。で、具体的にどう進めていくつもりだ?」
巧(小)に尋ねられた銀(小)は、最初にこんな議案を。
「それはもう、アレっすよアレ!コスプレ!」
「こ、こすぷ……」
「仮装の事ですよ」
「でもね2人とも。コスプレって言っても、何でも良いわけじゃないんだよ。やるなら魔女とか、お化けとか」
「あ〜良いですね〜、魔女っ子〜」
「む、そう、だったんすか。てっきり可愛ければ何でも良いかと思ってました」
「まぁ、それも間違いではないと思いますよ?現に、日本ではハロウィンの文化が入ってきた後に、独自の路線を築き上げてきて、それがいわゆる何でもありのコスプレに繋がったわけですから」
「おぉ、詳しいッスね昴!」
「でも、折角ならハロウィンらしい方がいいかなって」
「成る程、確かにそうですね。魔女と、お化けですか……」
どんな仮装にしようか、眉間に皺を寄せる須美。彼女にとっては初の試みという事もあって、その表情は険しい。一方で銀(小)はというと……。
「魔女は凝りたい所だけど、お化けは簡単だぞ?白い布を被って、毛を3本つけて、タラコ唇にすれ」
「はい自主規制しろ」
それ以上の発言はさせないと、巧(小)が彼女の口を塞ぐ。彼女がやろうとしている事は、下手を打てば著作権侵害に当てはまりかねない、という事なのだろう。(多分『オバケの●太郎』を指している)
「そうそう!お化けといえばさ、日本に出てくるような妖怪とかじゃなくて、外国のやつの方がいいんだよな?」
「西洋のお化け……。それはまた難しい……」
ますます難色を示す、護国思想の強い勇者。そこへいくと、彼女の場合はその辺りの知識が豊富と見て良いだろう。
「西洋っていうと〜、悪魔とか、ドラキュラとか、後は、フランケンシュタインとかですかね〜?」
「おぉ、詳しいッスね園子!」
「えへへ〜。創作には欠かせませんから〜」
「悪魔っ子とかドラキュラっ子とか良いじゃん!フランケンなんたらは、需要なさそうだけど」
「需要……?」
「さっきからついていけてないわ……」
理解に苦しんでいる様子の調と須美。すると今度は、樹から発言が。
「あ!大事なものを忘れてたよ!ランタン!ジャック・オー・ランタン!」
「Oh、ソウダッタデェス!ランタンアッター!」
「ジャック〜」
「……パンクジャック」
「?何か言ったッスか調?」
「……何でもない」
皆のやり取りを聞いて、呆然とする須美だが、すぐに我に返って気持ちを整理する。
「……一瞬逃げたくなりましたが、思い出しました。さっき言ってた、南瓜で作るっていう……」
「頼むから、現実逃避するな……。お前まで逃げられたら、今度こそ収拾がつかなくなる」
「大きなカボチャの中身をくり抜いて、ランタン……ええっと、提灯をつくるんです」
「あぁ、それなら本で見た事あるわ。南瓜の提灯ね」
「なら、巧がいれば楽勝じゃん!」
「簡単に言ってくれるが、表面が硬いカボチャをくり抜くのは、意外と大変なんだぞ。……そもそも、カボチャは何処から調達するつもりなんだ?まぁ、お前らの事だから、そこまで考えている様子はなさそうだけど」
巧(小)に指摘され、うっ、と唸る2人。そこへ助け舟を出すかのように、昴(小)から提案が。
「それでしたら、童山さん達の耕している畑に行ってみませんか?土地が解放されて、十分な敷地がありますし、時期的にも、そろそろ収穫しているかもしれませんよ?」
所変わって、舞台は市街地の一角に広がる、緑生い茂る畑。
「わぁ……、蕎麦の実が段々出来てきたね」
「えぇ、四国の土も中々ホワーイ。これなら大豊穣が期待できるわ」
「諏訪の時みたいに?」
「そうよみーちゃん!焦げ茶色の実がこう、一面にパァーッとね!」
「うたのん……!」
「みーちゃん……!」
間も無く収穫の時を迎え、うどん派から蕎麦派への改造計画も順調に進み、上機嫌な2人の雰囲気が良くなる中、遠方から同じく畑作業をしていた童山が歩み寄ってきた。
「おーい!お客さんが来とるぞー!」
「こんにちはー!」
「ちわー!」
「あら、こんにちは。お揃いでお出かけかしら?」
てっきり大所帯でのお出かけかと思っていた歌野だが、晴人は首を横に振る。
「いえいえ、実は、ちょっとカボチャのお裾分けをしてもらえないかと思って」
「は、晴人君、単刀直入だよ……」
もう少し遠慮というものを、と言いたげな樹だったが、童山が畑の一角を指差す。
「それなら、丁度そこに生えてるやつがあるじゃろ?幾つかは持っていっても構わんぞい」
「あ、ありがとうございます」
「話が早い」
「先輩太っ腹〜」
「?畑作業するようになって、これでも少しは痩せ始めてる方じゃが……」
「童山君。多分そういう意味じゃないよ……」
などのやり取りがありながらも、カボチャが植えられているゾーンにやってきた一同。そこに実っているのは、依然として土の中に埋まってはいるが、頭の部分の表面積から察するに、かなりの大ぶりが予想されるものばかりだった。
「凄い……!立派なカボチャですね」
「料理のしがいがありそうですね」
「すばるんの作る煮物、食べた〜い!」
「それはそうだけど、先ずは目的を果たさなくちゃ!」
「?食用じゃないとしたら、どんなパーパスなの?」
「実は、ハロウィンのランタンに使いたいんスよ!」
「成る程のぉ。じゃがそうなると、このカボチャはいささか小さすぎるかもしれんのぉ」
「でも、これはこれで立派な形ですからね。中身は美味しく頂いて、これでランタンを作れば……」
昴(小)がそう呟いたその時、不意に何かの気配を察した一同。不意に辺りを見渡すと、そこは市街地とはかけ離れた空間だった。
「おぉ〜っと⁉︎いきなり樹海化⁉︎」
「あれ⁉︎アラーム鳴ってないッスよね⁉︎」
「それに、何だかいつもの樹海化と違いませんか……?」
「色が、おどろおどろしい色だよ〜?」
園子(小)が周りを見渡しながらそう呟くように、どちらかというとカラフルな空間であったはずの樹海が、今回はオレンジ色や紫色が目立つような雰囲気だ。
「それに、何かしら……?あの、樹海の根についてる、大きな……」
『カボチャ?』
皆がそう呟くように、所々に、カボチャが実っているのが確認できる。しかも、先ほど見たものとは比べ物にならないほど大きい。
「様子がおかしい……!」
巧(小)がそう呟いたのを皮切りに、一同は警戒体制に入り、勇者、武神に姿を変える。
「でも、何だってまたあんな所に、カボチャが出来てるんだ?」
「神樹様も、カボチャが好きなのかな〜?」
「そんなまさか……」
「でも、樹海にカボチャが出来てるのは、初めて見たよ?」
一同が困惑する中、巫女の水都が、今現在起きている現象を冷静に分析する。
「これは、神樹様が創り出した樹海じゃない」
「?どういう事じゃ?」
「多分、バーテックスが造り出した空間。この土地を奪うために来たんだと思う」
「な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」
「バーテックスの方から土地を奪いに来るなんて……」
だがそれならば、樹海化警報が作動しなかった理由も納得がいく。造反神側が造り出した結界に作用するシステムは、今現在組み込まれていないからだ。
「バーテックスも、カボチャ好きなのかな〜?」
「うたのん達の畑を取り込んだから、カボチャも変な事になったんだと思う」
「そ、そんな⁉︎じゃあ蕎麦は⁉︎大事な蕎麦畑は⁉︎」
「?見当たりませんね……」
辺りを見渡すが、それらしいものは発見できない。蕎麦の実自体は、カボチャと違って小さいだろうから、目視できていないだけかもしれないが。
「今は完全に同化しちゃってるのかも」
「マジか⁉︎」
「くっそ〜!バーテックスめ、ドウカしてるぜ!」
『……』
「ごめんなさい言ってみたかっただけですいやホントに」
妙に冷たい風が肌を撫でる。立ち尽くす一同だが、このままというわけにもいかない。
「と、とにかく、早く何とかしないとヤバいんじゃねぇか⁉︎」
「この異常に気づいて、他のみんなもこっちに向かってるみたい」
「それまでは、ここで防衛戦ですね」
「お、それ良いな!腕が鳴るってもんよ!」
「このままじゃカボチャ貰えなくなるしな……!ハロウィンを絶対成功させる為にも……!俺達が頑張らなきゃな!盛り上がってきたぜ!」
「おぉ、ミノさんもイッチーも、気合い十分〜」
「へへっ。ワシらがいる中で畑を奪おうとするとは、バーテックスもえぇ度胸じゃのぉ」
「アブソルートリーよ!自慢の畑をそう易々と奪われてなるもんですか!」
諏訪組も、躍起になっている様子だ。それを見かねた調が、2人に提案する。
「なら、臨時のリーダー。2人に、任せる」
「⁉︎何じゃ急に……⁉︎」
「頑張って2人とも。私は戦えないけど、ずっと側で見守ってるから」
「ソバだけに?」
「銀、お前もう喋るな」
またしても口を塞がれてしまう銀(小)。
「よぉし!それじゃあ畑の為に、勇者の皆さん、行きましょう!レッツゴー!」
そうして始まる戦闘。今回は水都も樹海内にいる為、畑から遠ざける形の戦闘では、彼女に被害が及びかねない。文字通り防衛ラインを引く事で、迫り来る敵を着実に撃破していく。今と違って命懸けの戦いに身を置いてきていた彼らは、さほど苦戦する様子もなく、着実に数を減らしている。
とはいえ敵の攻撃も激しさを増しており、ようやく第一陣を退けた後、勇者達は息を荒げているのが確認できた。
「と、とりあえず凌いだ形か……」
「まだ、援軍は来てないみたいだし、ここが踏ん張り所だ!休んでる場合じゃないかもな!」
「!いや、その心配は無用みたいだな」
巧(小)が見上げた先には、彼方へ吹き飛ばされていく星屑の姿が。
「待たせたわね!完成型勇者、三好夏凜、推・参!」
「あ、でも大方片付いてますね」
「出鼻挫かれたわねぇ夏凜」
「んなっ⁉︎」
「夏凜さん、お姉ちゃん!」
「お!来たきた!」
異常を察して、真っ先に敵地に飛び込んだ夏凜だが、真琴の言うように、既に第一波は退けた後だ。が、疲弊していた事を考えると、決してタイミングは悪くなかったと言っていいだろう。
「ひなたに言われて大急ぎで来たが、無事で良かった」
「おぉ、よく頑張ったなぁ調!筋肉ついたんじゃないか?ま、タマなら大丈夫だって信じてたからな!」
「何て言ってるけど、涼しい顔して、球子も若葉もめちゃくちゃ慌ててたよな」
「司さん、それは言わぬが花ですよ」
「取り越し苦労だったな」
「照くん、そういうのも言わないの!」
司や照彦を嗜める杏と高嶋。
「あぁ、若葉達も来てくれたのね!こんなに沢山の勇者達も、私の畑に!」
「うむ!ここは童山達にとって自慢の畑!バーテックスには指一本触れさせん!」
「けど、よ……。ここって樹海だよな?それにしては何か……」
一同は改めて、造反神が造り上げた結界の構造に着目する。
「何か色が変だし、何故かカボチャも実ってるし」
「バーテックスが好きらしいのです〜」
「そうなのか?」
「そ、それはまだ何とも……」
「カボチャは好きなくせに、豊穣をもたらす畑を汚すとは……許せん」
「ちょ、落ち着いて棗さん」
妙な所でスイッチが入ったらしく、どうにかして棗を抑え込む一同。
「でも気持ちは分かるわ!蕎麦畑がなくなったら、棗さんの大好きなソバも食べられなくなるものね!」
「いや、沖縄そばの麺は、小麦粉で作るんだが……」
「あら⁉︎」
同じ『ソバ』でも、行程が違う事を指摘する棗。後方のダブル昴もうんうんと頷く。
「アハハ!でも小麦も育てるんでしょ?」
「お、オフコースよ!だから棗さんもこの畑を守る価値はあると思うの!」
「いやいや、小麦があってもなくても、全力で守るつもりだ!」
「取り敢えず、アタシらはカボチャの為に戦うっす!」
「?何でカボチャなのか分かんねぇけど、子孫の頼みとあれば、この三ノ輪紅希!全力でサポートしてやらぁ!」
「ここまでの小型は、粗方倒してきたからな。後はおそらく……」
「!前方に敵影!大型です!」
高台で観察していた真琴が降りてきて、大型の敵の接近を警告する。どうやらボスとの戦いが始まるようだ。
「言ってる側からおいでなすったわねぇ!バーテックス……が……」
どういうわけか途中で歯切れが悪くなる風。その理由は、一同の視線の先に見える巨影のシルエットが物語っていた。
「ねぇ、あれってバーテックスっていうか……」
「あ、あぁ、何というか……」
「わ〜!おっきなカボチャだぁ〜!」
園子(小)が感嘆するように、現れたのは、文字通りカボチャが巨大化したような姿をした、バーテックス。規格外の大きさもさることながら、どう影響したらそんな姿になってしまうのか、疑問が凌駕してしまう。
『……』
流石の一同も、空いた口が塞がらないといった表情だ。
「か、カボチャだ……!カボチャのお化けだ……!」
「コスプレ……?」
「えっ、これ何?倒したら食べなきゃいけない的なミッション?」
「『後で勇者が美味しくいただきました!』ってやつだね!」
「そんなお約束が罷り通るわけ……」
困惑する面々を他所に、昴(中)は腕を組んで考え込む。
「これがもし食べられるのであれば、煮物だけでは有り余りそうですし……。パイ生地で包んでデザートにしてみるのもアリかもですね」
「賛成です!」
「ひなたにダメだって言われてただろ⁉︎昴も悪ノリするなよ!」
早速脱線しかかっている状況を正すべく、ツッコミを入れる球子だが、こうなってしまっては歯止めが効かない。
「いやしかしだな。あぁもカボチャだと……」
「大丈夫なんよ〜。すばるんの作るカボチャ料理は美味しいから〜」
「そうすか〜?幾ら何でもバーテックスじゃお腹壊しそうだなぁ……」
「初陣でバーテックスの水を一気飲みしたやつから出るセリフとはとても思えないな」
「へっ⁉︎いやいやあれは仕方なくだっただろ巧⁉︎」
「ふふっ。そんな事もあったわね。銀は食いしん坊だもの。所で、第一陣で戦ってたみんなに、補給物資を持ってきたの。晴人君、牡丹餅食べる?」
小学生時代の頃を思い返しながら、東郷は何処からともなく牡丹餅の入ったお重を見せつける。
「どこから持ってきたんだ⁉︎い、今はまだ良いけど……」
「みんな、食い意地張りすぎでしょ」
「ホント、さっきから食べる事ばかりじゃない」
「風にだけは言われたくないな」
「(無視)ねぇ夏凜、あんたも何か言っ」
「カボチャってビタミンとカリウムが豊富だって、昴に教えてもらってたわね……。あれだけの量、フリーズドライにして保存すれば……」
「オイ」
「「(頼むから仕事してくれ……!)」」
あろうことか、夏凜まで腕を組んで考え込む始末。心の中で思わず嘆いてしまうダブル巧。
そんな中、ボスをジーッと見つめていた晴人が、突然素っ頓狂な声をあげる。
「あ!ピカーンと閃いたぞ!食べられるかどうかはさておいて、あの大きさなら……!」
「あ〜、何となく分かっちゃったかも〜」
「あ、良いかも!」
「ま、まさか……。でも、大きすぎないかな?主に巧君への負担が」
「?巧がどうかしたのか?」
会話を把握できていない兎角が、聞く耳を立てる。
「ご、ごめんなさい。まだ内緒なんです」
「っしゃあ!ハッピー・ハロウィン作戦第一段階、発動だぁ!隊員のみんな、いくぞぉ!」
「「全部言った……」」
もう隠す気なんてさらさら無いのか、前線で特攻する晴人。それを見た巧(小)と調は、声を揃えて肩を落としながら、彼の後に続く。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
最初は硬かった表面も、他の面々の追撃で脆くなった事で、晴人の薙刀が、一刀両断する。地面に音を立てて落下したと同時に、辺りが光に包まれる。目を開けると、そこは元の畑だった。
「も、元に戻ったわ!作物は⁉︎私達の大事な作物達は⁉︎」
歌野が畑の被害状況を確認するべく、童山、水都と共に辺りを駆け巡る。一方、晴人達は先ほど倒したカボチャバーテックスの捜索に乗り出すが……。
「倒したら、消えちゃったッスね」
「マジかよぉ……。あれぐらいのビッグサイズなら、世界一のジャック・オー・ランタンの完成も夢じゃなかったのにぃ……」
割と本気で凹んだ様子の晴人。すると、若葉が一言。
「食べられなくてホッとしたような、何だか残念そうな、複雑な気持ちだな」
「こらこら」
「……あーなるほど。そういう事やったんやな」
「もう直ぐハロウィンだったから、こんなにも張り切ってたのか」
他の面々も、ようやく晴人が肩を落としている理由を悟った。
「晴人君が思い切りバラしてるので説明しますと、樹さんや冬弥さん、調さんにも準備を手伝ってもらってたんです」
「えへへ〜。お三方は、ハッピー・ハロウィン作戦の指揮官なのです〜」
「「……ブワッッッッッッッッッ!」」
それを聞いた途端、目尻に涙を浮かべる風と球子。よほど妹や、護りたい存在の成長が嬉しかったのだろうか。
「皆までどころか、一言も発せず泣いたわね。しかも球子まで……」
「樹ちゃん達が、晴人君達に頼られてるのが嬉しいのね」
「うんうん!凄いよ樹ちゃん、冬弥君、調君!」
「み、皆さん、お姉ちゃん達も大げさだよ〜!」
と、その時だった。畑の一角で、奇妙な悲鳴が聞こえてきたのは。
「ほぁ……、ホワット・オン・アース⁉︎」
「⁉︎何やどないしたんや!」
「そ、それがのぉ……」
「か、カボチャがぁ……、カボチャが大きくなって……!」
「デカっ⁉︎」
藤四郎が思わずそう叫んだように、戦闘前までは小ぶりだったカボチャが、今は神樹が奉られている祠と同じくらいの大きさに変異してしまっているのだ。
「これは……食べられるのか⁉︎」
「いきなりそこかよ⁉︎」
「いえ、流星の疑問は尤もだわ。どう思う、みーちゃん?」
生産者としても気になる点を、水都に委ねる歌野。そんな彼女をもってしても、首を傾げるばかり。
「食べられるかは分からないけど、多分樹海化のせいで、カボチャに突然変異が起きたんだと思う……」
「突然変異……、食う気無くすわ」
「品種改良みたいなものでしょうか……。でも、どんな成分が含まれているかも分からないものを食すのは、リスクが高いですよね……」
「やはり食べられないのか……」
「無念!」
「もう何も言わないからな……」
若葉と流星の相手をしない事に決めた巧(中)。
「なんて事……。大事に育てたカボチャが……、よよよ……」
がっくりと膝から崩れ落ちる歌野。一生懸命育てた身としては、これ以上の屈辱はないだろう。事実、若葉達もかける言葉が思いつかない。
が、そこで助け舟を出したのが、この作戦の発案者だった。
「あ、食べられないんだったら、アタシ達に貰えないっすか?」
「もしかして、これでランタンを作るんスか?」
「そう!これなら立派なものが作れそうだから!巧もそれで良いよな⁉︎」
「手伝ってくれるなら、構わないけどな」
「よ、よく分からないけれど、このコ達が役に立てる事があるなら、喜んで譲るわ!」
「やったぁ!これでハッピー・ハロウィン作戦成功に、一歩近づいたぞ!」
喜びのあまり、ハイタッチする銀(小)と晴人。
一体どのようなハロウィンを満喫するのか、期待に胸を膨らませる中学生一同であった。
余談ですが、3年ぶりに開催されたシンフォギアライブ、最高に盛り上がったようですね。新プロジェクトも始動するとの事で、新規のアニメ化、とまでは行かないにしても、『XD』のドラマCD化、総集編の映画化、などでも期待できそうですね。10年目を迎えた『戦姫絶唱シンフォギア』、まだまだ楽しませてくれそうです!
〜次回予告〜
「みんなで手伝おう!」
「しょ、しょういち……?」
「メルヘンですな〜」
「随分大きいな……」
「『その日』は近いかもしれないわね……」
〜ぎっくり腰になりやすいのは、まだまだ若い証拠〜