結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

ゆゆゆい、シンフォギアXDと、同時期にリリースされ、永らく遊んでいたマギアレコードも、遂に終焉の時が……!
まぁ、後続のアプリゲームのリリースは決定しているので、今後はそちらを楽しんでいきたいと思います。


EV13:血吸い紅葉殺人事件 〜謎の祠〜

「……タマっ!」

「うぉっ⁉︎気がついたか」

 

不意に球子の名を叫びながら、上半身を起こした調。球子の変わり果てた姿を目撃し、ショックで気を失っていた彼だが、ようやく目覚めたようだ。

 

「?ここ……部屋?」

「あぁ。あの後すげぇ勢いで倒れたの、覚えてないか?」

「!タマ……!タマは……!」

「落ち着いて調君。タマっち先輩も後の2人も、今は安静にしてるから大丈夫。……でも、何故か目を覚さないままなの」

「……」

「それだけじゃねぇ。今、崖崩れの影響で俺達も下りる事ができねぇ状況になっちまってな」

 

司達が現状を報告するが、球子の事ばかりに気が向いてしまい、涙目を浮かべる調。それだけ彼にとって、土居球子の存在は大きくなっていたのだ。

 

「何か……見えない力が働いてる感じだね〜。私達を返したくない、何者かの力が〜」

「ヒィィィィィィィィ⁉︎の、呪い⁉︎皆殺し⁉︎」

「ちょっと。冗談言ってる場合じゃないわ、そのっち」

「でも……、ここまでタイミングが良過ぎると、気味悪いのも事実なんだよなぁ」

「誠也……」

 

いつになく不安げな表情を見せる美羽を安心させようと、誠也はその右手を掴む。

 

「心配すんな。いざとなれば、勇者になって下山する事だって出来るだろうしな」

「確かに、巫女達には常に誰かが付き添えば、何とかなるし」

 

とはいえこの旅館には、他の宿泊客や従業員を合わせて数十人が取り残されている状態だ。力を保持している自分達だけでこの危機を脱する、という訳にもいくまい。

 

「それに、意識のない3人の方も気がかりだ。この状態で動かしても大丈夫なのだろうか……?」

「ううむ……。脳震盪を起こしていたら、シャレにならんしな」

 

依然として目を覚さない夏凜、冬弥、球子をこの場に置いて行くわけにもいかず、どうしようかと頭を悩ませる中、友奈がふと思い出したかのように、園子ズにこんな質問を。

 

「ねぇ園ちゃん。紅葉の呪い、どうやったら解けるのか、教えてくれる?」

「友奈?何だ急に」

「だって、もし試せる事があるなら、何だってやってみた方が!」

「「う〜ん……」」

 

確かに、このまま停滞するぐらいなら、行動を起こして流れを変える必要がある、という意味では、友奈の提案も一理ある。が、園子ズは唸るばかり。その隣にいる杏もまた然り。彼女達も、血吸い紅葉伝説の概要を知ってはいたものの、その呪いの解き方についてまでは流石にリサーチしていなかったからだ。

 

「紅葉はね〜。とにかく血をい〜っぱい欲しがってるんだよ〜」

「この山を染め上げるくらい、た〜っぷりの血をあげたら、満足してくれるかも〜」

「えぇ⁉︎それって俺達が献血すれば解決するかも、って事なのか?」

「貧血で死ぬわ!先に俺らが!」

 

奏太のツッコミは尤もだ。伝説では村人が全滅する、即ち血を吸われる事によって、山一面が紅葉に囲まれて、今の名所になったわけだが、それを勇者部員達だけで再現しようものなら、犠牲は大きい。

 

「困りましたね。最早、お医者様も警察も呼べませんし、八方塞がりです」

「そもそも、3人がこうなった原因さえ、掴めていないものね」

 

ひなたと東郷が頭を抱える中、不意に千景がボソリと呟く。

 

「……目撃者」

「へっ?」

「ゲームでは、目撃者の証言や証拠集めをして、事件の真相に迫っていくものよ」

「!それもそうだな!聞いたかみんな!ここで立ち往生するくらいなら、俺達から探しに行こうぜ!」

「そう、ですね。どんな手掛かりでも、それがタマっち先輩達の助けになるなら!」

「!やる……!タマ、助けたい……!」

 

球子の為に。それが原動力となったのか、調も体を起こして、決意の眼差しを若葉達に向ける。

 

「杏、調……」

「うむ!後手に回るのは終いだ!こちらから打って出よう!」

「おっと。これ以上被害が大きくなっても困るからな。何らかの手掛かりを探すにしても、必ず2人以上で行動する事を忘れるなよ」

「そ、そうそうそれ大事!出来れば行きたくないけど……!でも部長としての立場もあるし……!とにかく絶対……、あたしを1人にしないでぇ!」

「……完全に戦力外だな」

 

と、既にへっぴり腰の風を宥めつつも、引き続き看病に専念する巫女組を除く一同は、二手に分かれる事に。二手に、とはいうが実際には、友奈、兎角、園子ズ、昴ズ、遊月、東郷、歌野、雪花が、旅館の近くにある民族資料館に出向いて伝説に関する情報を収集し、それ以外のメンバーで、3人が襲われたであろう現場から見落としているものがないかを分散して調べる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸いにも、民族資料館への道には被害は出ておらず、通常通り開館していた為、友奈達は、俗にいう『図書室』へと足を運んだ。

 

「で、どっから手をつければ良いんだ、園子?」

「えっとね〜、これとこれと、あとはこれだね」

「えっ?たったこれだけ?」

 

園子(中)が書棚から取り出したのは、僅か数冊の古めかしい書物。人員には困っておらず、伝説の全容を明らかにするのが目的の筈なのに、選ばれた書物の方が少ない事に疑問を抱く雪花。

その疑問に答えたのは、大赦に頻繁に出向いている遊月だった。

 

「なるほどな。あの伝説が西暦時代に出来上がったものだとすれば、現存する資料はほとんどが大赦に保管されているか、もしくは既に抹消されているか」

「なら、僕達が調べられる範囲の内容が記された書物も、少なくて当然ですね」

「でも、これならすぐに調べ終わるわね」

 

そうして早速文献を読み漁る一同だったが、書かれている内容は、旅館に訪れた際に、杏達から聞かされた内容とさして変わらぬものだった。

 

「でも、呪いの話とかは一切書かれてないのね。血がどうとかって、あれは?」

「こういう類の伝説は、段々と尾ひれがついて怪談めいた話になっていくからな。直後に流行り病とかで人が大勢に亡くなると、きまって呪いのせいにする」

「成る程……。ん?」

「兎角先輩、どうしました〜?」

「祠……?」

 

兎角が、開いたページを皆に見せる。そこには、心中した2人を祀った祠が今も現存しており、場所を指し示す地図も掲載されていた。資料館からもさほど離れていない為、ある程度情報をまとめた後、友奈達はその足で祠に向かう。

 

「お祈りすれば、呪うのをやめてくれるかもしれないね!」

「そんな簡単に事が運べば良いがな……」

「藁にも縋るって、こういうのよね」

 

そんなこんなで話しながら進んでいくと、不意に古めかしい木造物が目の前に現れた。これが書物にあった祠なのだろう。見たところ、特におかしな部分は無さそうだが……。

 

「!みんな伏せろ!」

 

不意に先頭を歩いていた遊月が、何故か声を潜めて腰を低くする。友奈達もそれにつられて腰を低くしたが、何が起きているのか見当もつかない。

 

「ど、どうしたの遊月君」

「あれを見てみろ」

 

細心の注意を払いながら、茂みの隙間から遊月が指さした方に目を向けると、皆が驚きに満ちた表情になるまでに、さほど時間はかからなかった。

彼らが着目したのは、祠の真後ろを徘徊する、白い物体だった。星屑だ。よく目を凝らして見渡せば、更に奥の方にも、星屑が点在している。結界を越えてこちらの世界に堂々と陣取っている事に驚きも感じるが、それ以前に何故祠を守るように徘徊しているのかが、目下のところ謎だ。

 

「何でバーテックスが⁉︎」

「遊月先輩、これは……」

「とにかくここは危険だ。寝てる園子を起こさないように運び出して、一旦宿に戻ってみんなに報告だ」

 

目に見える範囲では敵も少数だが、不測の事態に備えて、いつの間にか鼻提灯を膨らませている園子ズを起こさないように気をつけながら、彼らはその場を後にしようとする。

 

「ん?」

「どうした兎角。ここはまだ安全圏じゃ」

「見てみろよ、この木。……何か打ち込みをしたような痕が」

 

兎角が足を止めたのは、祠から少し離れた所にある、大きな木の幹についている痕跡。よく見ると、足元には靴で踏んだような跡も残されている。つい最近、誰かが足を踏み入れたような痕跡だ。

 

「……あら?ここって夏凜ちゃんと冬弥君が倒れてた所じゃないかしら?」

 

見覚えのある風景に、東郷は思わず声を上げてしまい、すぐに口元を覆う。幸いにも敵に気づかれた様子はない。改めて情報を整理してみると、2人が倒れていたのは祠の近くであり、その祠は以前から星屑が占領していたらしい、といった所だ。直感的に、この2つの事案は無関係ではないと悟った遊月は、予定通り引き返そうと森を抜けると、前方から顔見知りの集団が近づいているのが見えた。

 

「!銀!」

「あれ、東郷?みんなも、資料館で調べてたんじゃないのか?」

「その調べ物も終えて、資料にあった祠に寄ってみたんだ」

 

不思議そうな顔で現れた銀(中)や、棗、巧(中)、犬吠埼姉妹、藤四郎、杏、調も、夏凜と冬弥が倒れていた現場で調査を始めようとしていたらしい。一方で現れたメンバーに対してこんな疑問が。

 

「あれ?杏も調も、何でこっちに?てっきりタマちゃんの方に行ったもんだと」

「あ、はい……。タマっち先輩の事だと、私達きっと冷静になれないから、足手まといになりたくなくて……」

「……」

 

調も無言ではあったが、表情からして、杏と同意見のようだ。

 

「なんて健気なの!杏さん、女子力高いわね」

「女子力と聞いたら黙っていられない!……けど、今日は黙っとく……」

「……で、何があった?遠くから見つけた時も、随分警戒していたみたいだが」

「はい。もしかしたら丁度良かったかもしれません。実はさっき言ってた祠……もとい現場付近で、バーテックスを目撃して、一旦引き返して来たんです」

「!」

 

これには後から来た面々も目を見開く。

一方で話を聞いた巧(中)が、素朴な疑問を浮かべる。

 

「妙だな。敵が俺達の近くに来たなら、樹海化してもおかしくないはず。なのに無反応なのか?」

「それ、私達もクエスチョンだったのよね。雑魚ばっかりだったから、かしら?」

「それだぁ!」

『?』

 

不意に大声をあげた風に、一同の注目が集まる。

 

「バーテックスよ!全てはバーテックスの仕業だったのよ!夏凜も冬弥もバーテックスに襲われた!決まり!一件落着!そうと決まれば、呪いじゃなければ、恐れるものなどなぁい!バーテックス、まとめて逮捕だぁ!」

「取り押さえろ」

 

不意に人が変わったかのように突撃思考(元々そうだった?)になった風を、藤四郎らがどうにかして押さえ込む。

 

「恐怖のせいで頭脳が子供になってるよぉ……」

「いやまぁ子供だけどね、中学生は」

「大体、夏凜も冬弥も、共に行動していた以上、むざむざ敵にやられるとは思えない」

「そうね。取り敢えず、銀達も一旦、一緒に戻りましょう。それで良いわよね、遊月君」

「……あぁ、そうだな。それに、確認したい事も出来たしな」

 

そう呟く遊月の顔は、何処となく険しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に確認したい事、ですか?」

 

旅館に戻り、一旦全員を召集した遊月は、早速ひなたに問いかけた。

 

「あぁ。今回の旅行を見繕う際に、ひなたにも解放地域である事を確認して計画した筈なんだ」

「んな?それってまさか、ホンマはここって未解放地域でした、ってオチやったっちゅう事か⁉︎」

「いいえ、解放地域ですよ。尤も、先程のような奇襲に対しては樹海化しますが」

「それもそうか……」

「だとしたら、祠の周りにバーテックスが陣取っていたのは、ますますミステリーね」

「祠、ですか?私は何も感知してませんよ?」

「祠って……」

「何の話?」

 

ひなただけでなく、水都や美羽も首を傾げるばかりだ。そこで東郷が先ほどまでの調査報告をすると、ますます怪訝な顔つきになった。

 

「それで、その祠は壊されてしまったのですか?」

「いや、しばらく手入れされている様子はなかったけど、壊れていたわけじゃない。だから変に思ったんだ」

「?どういう事?」

「俺達には害が無くとも、バーテックスにとって、結界の要石のような役割を持つ祠は邪魔な存在。壊しておいて損はない筈だ」

「でも実際には、奴らは祠を囲んでいただけ……。確かに腑に落ちないな。まるで守ってるみたいだ」

 

守ってる。

照彦の呟きが耳に届いた瞬間、遊月の中である仮説が生まれた。

 

「もしかして、逆パターン……?」

「逆?」

「なんやそれ?」

「以前、ホタルの名所を一時的に解放する為に、未解放地域の中で解放地域を作った事があった。それはつまり……」

「ピッカ〜ン!つまりあの祠は、解放地域の中の、小さな未解放地域って事だ〜」

「成る程……!あの祠の辺りを拠点としているバーテックスが僅かにいる、というわけね」

「おっ。ようやく見えてきたんじゃねぇか?」

「ならば!俺達がやるべき事は一つ!祠を制圧すれば良いという事だな!」

「そうか!それなら話は早い!」

「え?いや、それはあくまでバーテックスの話で……」

「手掛かりになるって話じゃないですよ〜?」

「てか流星はともかく、若葉まで短絡的になり過ぎてないか?」

「多分、その手掛かりが見つからなくてイライラしてきた、ってとこじゃないか、ひなた?」

「はい。間違いなく」

「……コホン!とにかくだ、安全な調査続行の為に、まずは祠を解放しに行くぞ!」

 

そうして支度を整えた一同は、今一度森の中……夏凜と冬弥が倒れていた現場の近くに祀られている祠へと足を運んだ。尚、今回はひなたもその目で確かめておきたい、との申し出もあり、看病は後の2人に任せて、若葉の隣について来ていた。

敵に悟られないよう、身を潜めながらギリギリまで近づいた所で、友奈が祠を指さした。

 

「これが、その祠です」

「あんまり大きな声出さないでね。敵さんが寄ってきちゃうから」

「「それってもしや〜」」

「フリじゃないからね。出せって事じゃないからね。やめてよ、ホントにやめてよマジに」

「「やっぱりこれは〜」」

「あぁ、念を押せば押すほどフリに!」

「そっちが声荒げてどないすんねん……!」

「「すみませんウチの園子ちゃんが勝手に……!」」

 

などと危ういやり取りが続くものの、不幸中の幸いか、敵は無反応のようだ。

 

「本当にここだけ未解放のようです。それに、何匹も外へ、はみ出して来ています」

「そ、そんな……。小さいとはいえ、未解放地域の存在に気づかなかったなんて……。私のせいです。折角の休暇に、勇者の皆さんを危険に晒してしまうとは……」

「んな大袈裟な。誰も怪我なんてしてな」

「!紅希!」

「夏凜さんに冬弥君、それに球子さんも、バーテックスにやられたかもしれないのに、ですか?」

「あ……」

 

バツの悪そうな表情を浮かべる紅希。見兼ねた面々も慰めに入る。

 

「気を悪くしないでください、ひなたさん。結界をすり抜ける敵とは何度も交戦してきましたし、ひなたさんの責任では」

「そうだぜ。それにまだ、3人がバーテックスにやられたとは決まってないだろ?」

「それに、旅館を見繕ったのは自分ですし、そういう意味では自分にも責任が」

「……巫女失格です。休暇に浮き足立っていたのは事実ですから」

 

が、今のひなたに、精神的に大人な彼女に、如何なる投げかけも通じない様子だ。

 

「……言う事はそれだけか、ひなた」

 

ただ1人、彼女だけは、明らかに他とは違う雰囲気を醸していた。

 

「今回ばかりは、明らかにお前のミスだ」

「……はい」

「若葉てめぇ!」

「酷いよ若葉ちゃん!ヒナちゃんだってわざとじゃないのに!」

「黙っていてくれ。巫女の判断ミスがあれば、勇者は命を落とす事もある。その責任は、実際に戦っている我々よりずっと重い物だ。元の時代……あの日を経験している者達なら、その意味が分かる筈だ」

「だからって、今ひなたを責める必要があるのか⁉︎いくらイライラしてるからって、それはねぇだろ!大体なぁ……!」

 

若葉の言動に、我慢の限界が来たのか、紅希は詰め寄って彼女の胸倉を掴もうと手を伸ばすが、その右手首を横から流星が無言で掴んだ。

 

「なっ⁉︎流星何してんだ!離せよ!」

「……」

 

だが流星は、多くを語る事なく、目力だけで紅希を黙らせようとする。しかしそれで黙りこむほど、紅希も一筋縄ではいかない事を、千景は知っている。次第に自身もイラつきはじめている事を自覚しながら、再び若葉に詰め寄ろうと

 

「だが、ひなたの罪は私の罪も同然。お前に罰が下るなら、私が代わって受ける」

「……は?」

 

……するが、若葉のこの発言に、ひなたはもとより、紅希も、周りのメンバー達も、思わぬ返しに面食らってしまう。否、流星だけは分かりきっていたような表情を浮かべているようだが。

 

「若葉ちゃん……!私、私……!」

「泣くのは後にしろ。……みんな、改めてお願いしたい。祠を取り戻す為、この一戦に、ついてきてほしい!」

 

そう言って深々と頭を下げる、西暦のリーダー。最初は戸惑う面々だったが、もとよりそのつもりだった事もあり、ただ頷くだけで、全員の意思を確認した。

その一方で……。

 

「ビュオォォォォォォォォォォォォォォォ!ご先祖様カッコいい〜!」

「メモメモ〜♪『お前の為なら死ねる、ひなた』って、今言ったよね〜?」

「一言も口にしていない事を捏造するなぁ!……あ」

 

若葉の唐突なツッコミは森じゅうに響き渡り、そうなれば当然、敵意を剥き出しにしてくる存在が……。

 

「若葉……」

「……ゴホン。では改めて。行くぞみんな!」

『お!オォー!』

「(千景が若葉を忌み嫌う理由、俺にも分かった気がする)」

 

照彦が肩をすくませ、千景が彼に同情の意を示す。

やや気まずい雰囲気が漂う中、一同は端末を起動し、勇者、武神となって敵を迎え打つ。その後方では、未だ罪悪感を抱えながらも、友を、仲間を信じる心を忘れる事なく、彼女は祈りを捧げる。

 

「若葉ちゃん……!お帰りを、待ってます……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁァァァァァァァァ!バーテックスめぇ、よくもあたしを辱めてくれたわねぇ!呪いじゃなきゃ怖くもなんともないのよぉ!あたしの全開MAX女子力の前に、大人しくお縄につかなさァァァァァァァァい!」

 

敵がバーテックスと分かったからか、俄然前のめりになった風が、ここまでの鬱憤をはらすべく、大剣を振り回している。その後ろ姿を眺めていた妹は、この時ばかりはバーテックス相手に哀れみを抱いていたのは、ここだけの話。

 

「樹……!」

 

そんな彼女に横手から向かってくる星屑を、刃のついたヨーヨー『紅刃』で弾き飛ばす調。

 

「調君!ありがとう!」

「!大きいの、来る……!」

 

いつも以上に警戒心を強める調。星屑の数は徐々に減ってきている。その後方から、巨大なバーテックスの陰が、その姿を現す。この地域を防衛していたであろう、『マエストーソ』と端末で表記されている、造反神が創造したバーテックスが触手を突き出すと小型の爆弾が勇者達に降り注ぐ。

どうにかして回避する一同だが、更に電撃波を繰り出し、何人かの勇者が宙を舞う。

 

「あの触手を、どうにかしないと……!」

 

昴(中)が盾を構えてガードに専念しながら、対策を練っている。樹がワイヤーで、真琴が散弾銃で触手を弾いているが、決定打には程遠い。他の面々も星屑を相手にしている以上、援護は期待できない。

そんな中、中距離で戦う彼は、今まで以上に奮闘していた。

 

「……戦う!」

 

決して多くを語らずとも、その意志の強さは、若葉や流星に劣らず。ただひたすら、信じるばかりだ。この強敵を倒す事で、球子達は目を覚ます、と。球子の自信に満ちた笑顔を、もう一度原動力にする為に。

 

「……胡蘭(こらん)!」

 

刹那、彼の全身が光に包まれ、ひび割れて、その身に精霊を宿したそれは、さながら蛹からかえった蝶を彷彿とさせる。両耳に蝶形のピアスをつけ、背中から羽根を生やした調は、飛び上がってマエストーソよりも高い位置に着く。

 

「ハァッ!」

 

警戒したマエストーソは触手を繰り出すが、素早さが増した機動力についていけてない様子だ。更に両手から繰り出したヨーヨーは、2体の間で肥大化し、マエストーソの胴体がヨーヨーの一撃でひしゃげた。尚も触手を広げて攻撃してくるのに対し、調は手を動かし、その巨大な武器に似合わぬ動きで、触手ごと拘束する。更に巨大化した刃を回転させて、徐々に胴体を削り落としていく。

 

「これで……!」

 

トドメとばかりに、紅刃のワイヤー部分を掴んで、力一杯振り上げる調。上空に舞い上がったマエストーソは、調が思いっきりワイヤーを引っ張る事で、締め上げられ、遂には原型を留めることなく消滅した。

 

「す、凄い……!」

「あれが、調さんの本気か!」

「やるじゃねぇか!」

 

弟分として面倒を見てきた事のある司も、笑みを浮かべる。

 

「……終わった」

 

一気に疲労が溜まったのか、精霊降ろしを解除した調は、すぐに地面に座り込む。慣れない程にアグレッシブな動きを続けていた事もあり、しばらく自力で起き上がれる自信はない。

 

「やりましたね、調さん!」

「晴人……。うん」

 

晴人ら小学生組が駆け寄ってきて、今回のMVPを両方から支える。お互いに労っていると、難なく戦闘を終えた誠也が近づいてきた。調に伝えたい事があるようだ。

 

「さっき、美羽から連絡が来た。さっき、あの3人が目を覚ましたらしい。どうやら、3人ともあのバーテックスに何らかの形で意識を奪われていたらしい。後遺症も無さそうだし、もう起き上がっても大丈夫そうだぞ」

「そっかぁ!良かったですね、調さん!」

「……うん」

 

もう隠すつもりもないのか、その両目からは、玉粒だった水滴が一筋の川となり、ぐしゃぐしゃになりながらも、笑みが溢れていた。

 

 

 

 




今年の6月は、去年と比べて過ごしやすい気候のような気がするのは、私だけでしょうか?
ともあれ、体調管理には気をつけましょうね。


〜次回予告〜


「結局、何が原因だったの?」

「……呪われてしまえ」

「続きはCMの後で〜」

「オイラもやってみたかったんスよ」

「犬部長ぉ!」


〜血吸い紅葉殺人事件 〜真相解決〜〜

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