結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

『風都探偵』がまさかの映画化!『ACMA:GAME』や『まどマギ』の映画も見てみたいし、秋冬が楽しみだ!

『鬼滅の刃』は……どうしよう?




EV14:血吸い紅葉殺人事件 〜真相解決〜

「うぅ……!本当に、良かった……!」

「本当に、本当に心配したんだよ?」

「ひ、ひっつかないでよ!」

「わ、悪かったッス……。兄貴達も、心配かけて面目ないッス」

「まぁ、大事なくて何よりだがな」

 

宿泊の拠点となっている旅館の一室は、数時間前とは打って変わって、和やかな雰囲気に包まれ始めているのを確認した藤四郎は、ホッと胸を撫で下ろした様子で、チュッパチャプス(ミント味)を噛み締める。

血吸い紅葉伝説になぞらえたかのように起きた連続殺人事件(?)も、祠を制圧した事で終息。意識不明だった3人の容態も回復に向かっており、真琴はなぜ感極まって泣きじゃくりながら夏凜に抱きつこうとしたり、樹も心底心配した様子で冬弥に顔を近づけている。

 

「それにしても……。結局、何が原因だったの?」

 

皆が落ち着きを取り戻した頃、誠也を労っていた美羽が、今回の核心に迫るような事を呟く。

 

「え……。さ、さぁ、何だったかしら?ねぇ冬弥」

「そ、そうッスねぇ……」

「2人して記憶に障害が……?これは、早急に脳検査を手配しないと!」

「あわわっ、ち、違う!記憶に問題はないから!」

 

何故か返答をはぐらかそうとしている2人。その様子を見ていた銀(小)がハッとなって、もう1人の被害者に顔を向ける。

 

「球子さんも、頭大丈夫ですか?」

「おい、言い方!大丈夫に決まってるだろ?」

 

返す刀でツッコミを入れる辺り、球子は脳にダメージを負っている訳ではなさそうだ。加えて彼女は、自分が気絶した原因を自覚しているようにも見受けられる。

彼女の身に何が起きていたのだろうか。一同からの問いに、球子は隠す素振りも見せずに、淡々と話し始めた。

 

「あ〜、銀達と分かれて、2人を探してたんだけど、途中でどうしようもなく、お腹が鳴ってさ……。厨房へ行ったんだ。んで、板前さんの目を盗んで、刺身とか煮物を素早く食べまくってな」

「あぁやっぱり!ズルい!」

「今そこでいう言葉か晴人……?」

 

呆れ口調の巧(小)。

 

「それで、流石に一気に詰め込みすぎて、喉が詰まりそうになったわけなんだが……」

「それもう、つまみ食いってレベルじゃないよ……」

 

尤もな事を呟く雪花。

ある意味で予想が的中していただけに、土居球子という少女の素行に開いた口が塞がらず、中には畏怖さえ覚える者も。

 

「良いな〜!美味しかったですか?」

「おうよ!そりゃもう、五つ星級に美味かったぞ!あれなら、晩御飯に期待大だ!」

「ほほう!球子がそこまで言うなら、俺も極限まで腹を空かして、極上の飯を堪能しようではないか!」

「そもそも球子って、五つ星級なんて食った事あるのか?」

「……で、話を戻すけど、喉が詰まりかけた後は?」

「水でも飲もうと思ったんだけど、そこにドヤドヤと仲居さん達が来ちゃってさ……」

 

恐らく、調理や接客業にひと段落ついた所で休憩するべく、厨房を通りかかったのだろう。球子曰く、おやつを食べに来たのだろうと言うが、仲居さんが厨房でおやつをつまむ様子は、容易に想像できないのだが……。

ともあれこの議論はスルーする事となり、話は水の代わりになるものを口にしようとする所に戻っていく。

 

「水道の所に行けなくなって、他に何か飲むものを探したら……」

「分かった〜!間違えて、お酒飲んだんだ〜」

「へっ?んじゃ厨房裏で倒れてたのは、酔いが回って……?」

「球子、お前……」

「違うちがう!この勇者タマ様が間違っても法律を破る訳ないだろ!」

「(厨房でつまみ食いしてる時点で、説得力が皆無なんだが……)」

 

あらぬ疑いをかけられて、必死に弁明する球子。それを証明するかのように、包み隠さず真相を曝け出す。

 

「調理棚の所に、ジュースの瓶が置いてあったのを見つけて、咄嗟にそれをがぶ飲みしたんだ。そのジュースがまぁ美味いのなんの!あまりに夢中で飲んでたら見つかりかけて、慌てて外に向かって走り出しちゃったんだ」

 

思えばあれが失敗だったな〜、とボヤく球子。

話を聞く限り、一応は仲居にバレる事なくやり過ごす事が出来たように思えるが……。

 

「逃げる時に、まだ口いっぱいにジュースを含んだまま厨房を飛び出しちゃったからさ」

「……猿ね」

 

千景の毒突きが聞こえているかは定かではないが、球子は表情一つ変えずに、自分が置かれていた状況を説明する。

 

「んで、ダッシュしてたら勿体無いことに、少しだけ口から零れちゃってさ」

「……何故、早く飲み込まない」

「しょうがないだろ!慌ててたんだから!」

「……すまない」

「そこ謝る所か?」

「口からジュースがピュって零れたから、咄嗟に下を向いて服の汚れを確認してて、そしたら次の瞬間、なんか頭にドンって衝撃がきて、そのまま地面にぶっ倒れた訳だ」

「ほぉほぉ……んんっ⁉︎」

「頭に、って事は……!」

「あぁ、おかげで折角口いっぱいに含んでたジュースは全部出ちゃうし、散々だ!」

「そこじゃねぇだろ!お前を後ろからぶん殴った奴の正体って」

「あぁ、多分バーテックスだな」

 

あっけからんと答える球子。その図太さ(?)に驚きつつも、何故自分を強襲したのがバーテックスだと判ったのかを問いかける。

 

「だって、なんか変な音っていうか、鳴き声みたいなのしてたから、いつもの」

「え⁉︎じゃあ、あの血は⁉︎バーテックスに反撃したの⁉︎」

「そんな暇なかったって。何せいきなり後ろからだし、卑怯だよなぁ」

 

当時を思い出して膨れっ面をする球子。その一方で、昴(中)が最も疑問に思っていた事を口にする。

 

「あの、球子さん。つかぬ事を伺いますけど、口にしたっていうジュースが何なのか、ご存知ですか?」

「それなら覚えてる!瓶に書いてあったからな。ザクロジュースだ!」

「ザクロジュース⁉︎何それ美味そう!」

 

未知なる飲料の存在を知り、目を輝かせる晴人。

一方他の面々は、球子の服に付着していた真っ赤でベットリとした液体の正体を悟り、微妙な反応を見せる。

 

「成る程。ザクロの果汁に含まれる色素は、アントシアニンやエラグ酸といった赤色のポリフェノール。それに糖度もメロンやスイカに匹敵するものもあるそうですし、子孫繁栄を願う仏教の思想が反映されて、人の味と呼ばれる事もあるそうですからね。よく調べないと、血液と間違えても不思議じゃなさそうですね」

「ま、そういう事だ。タマはこの通りピンピンしてる!怪我なんてしてない!だから何も心配ない!」

 

昴(小)が冷静に解説し、球子が両手を腰に当てて元気な姿を証明する中、この2人はと言うと……。

 

「タマっち先輩の……!タマっち先輩の、おバカー!とーへんぼくー!」

「……!……!」

 

罵詈雑言をこれでもかと浴びせる杏と、無言で密着し、力のこもってなさそうな拳で球子の身体をポカポカと殴る調。

 

「な、何をぉ⁉︎タマは被害者だぞ⁉︎」

「……呪われてしまえ」

 

憎悪に満ちた様子で呟くのは、今回良いとこなしの部長。

 

「まぁ、ガチのやつじゃなかっただけ良かったけどな!」

「うんうん!」

「良くないわ、三ノ輪君、高嶋さん。全ての元凶は土居さんの食い意地だったのよ」

「まぁあたしもイネスのジェラート食べてたら同じくらい油断してたかも……」

 

銀(小)が少しでも球子の味方になろうと発言する中、不意に友奈が疑問を口にする。

 

「あれ?じゃあ夏凜ちゃんも冬弥君も、何か食べてて襲われた、のかな?」

「煮干しか?煮干しを貪ってて襲われたのか?」

『あぁ……』

 

一同は何とも言えない表情を、第一、第二の被害者に向ける。

 

「そんなんじゃないわよ!残念な人を見る目で見るなぁ!」

「オイラも巻き添えにしないでほしいッス!偶にお裾分けしてもらう事もあるッスけど、そこまでは食ってないッスから!」

 

などと猛抗議する2人だが、真相を話さない以上、疑われるのも無理はない。

 

「へいへーい。もう正直に吐いちゃった方が良いよぉ〜。にぼっしー、とーやん、白状しちまいなよ〜」

「は、話すも何も、オイラ達、ランニングを終えて、夏凜先輩がその辺にあった木に向かって打ち込み始めてたんスよ」

 

このままでは埒が開かないと思ったのか、冬弥が当時の状況を説明する。

 

「それで?」

「それで、オイラも真似しながら夢中で振り回してたら、いつの間にかバーテックスに囲まれてたんスよ」

「えぇ。冬弥は突然の事でパニクってるし、流石にヤバいと思って、ポケットから携帯取り出そうとしたんだけど、汗で中々取り出せなくて……。焦ってイライラしてた上に、ようやくかけた電話に、風が出ないし……」

「思わず叫んでたッスもんね。『何で出ないのよ、風のバカーッ!』って」

「誰がバカじゃい!……って、あれ、ホントだわ。夏凜から着信が入ってる」

 

ツッコミを入れながらも、端末を取り出して着歴を確認する風。確かに夏凜からの着信が入っており、時間帯も最初の樹海化警報が発令される数分前である。

 

「この頃って確か、風が血吸い紅葉伝説を耳にして、気絶してた時じゃなかったっけ?」

「悲鳴もあげまくってたしな」

「それでバイブ音に気づかなくて……」

 

夏凜と冬弥の身に起きた事態の発見が遅れた原因となる彼女に、顔を向ける一同。向けられた張本人は、彼らと同じ方に顔を向けて視線を逸らしている。

 

「せやけど、いきなり叫んだんはマズかったんとちゃうん?あいつら、音にはめっさビンビンやったし」

「そうね。それで一斉に襲い掛かられたし」

「それでボコボコにされちゃったんだね!でも大丈夫!仇は取ったから!」

「ちょっと友奈!この私がそんな簡単にやられると思って⁉︎」

「えっ?じゃあ何があったの?」

 

尤もな事を口にする真琴。確信に迫るような質問に、夏凜はまたしてもたじろぐ。

 

「そ、それは……」

「「続きはCMの後で〜」」

「いやそれは良いから、続きを」

 

と、巧(中)が軽く一蹴し、説明を続けさせる。

 

「迫り来るバーテックスから、私も冬弥も一旦は逃げる為に、全速力で走ったんだけど、その間に、どうやって不意を突けるのか、2人で考えていたのよ」

「それで、色々考えてるうちに、閃いたんスよ!とっておきの技を!」

「技?どんなだ?」

「前にある壁を勢いよく蹴って、その勢いで後ろに回り込んでキックするってやつッスよ!」

「あれ?そのやり方、何処かで見たような……」

「!アレだよ昴!前に、師匠が見せてくれたアクション映画のワンシーンにあったやつ!」

「三角飛び、だったか?」

「カンフー映画とかで見るやつだな!」

 

小学生の武神達は、以前源道が用意した教材の中に、冬弥が口にしたやり方と酷似したシーンを思い返し、司も顎に手を当てながら、それらしい雰囲気を思い出す。

 

「それで、それを喰らわせれば、敵も面食らって逃げるんじゃないかと思った、ってわけか?」

「そうッス!」

「それで、喰らわせたのか?」

「えっと、それが……」

「失敗したの⁉︎」

「まぁ、あんな状態で発見されたんだから、そうなるよな」

 

ため息をつく照彦。

 

「失敗というか……。先んじて冬弥が試したんだけど、ずっと濡れた落ち葉の上を走ってたせいで靴の裏が滑りやすくなってて……。木を蹴った拍子にズルっと滑って、上手くいかなかったのよ。しかも私の頭の上に落ちてきたから、それで、その……」

「それでお互い頭をぶつけたのか⁉︎バカだなぁ」

「「「「「「お前が言うな」」」」」」

 

どうやら技を繰り出そうとした冬弥がバランスを崩し、それが運悪く夏凜がいた地点に落下し、そのままどうする事も出来ず、衝突してしまったようだ。

 

「?けどよ。頭ぶつけたくらいで、意識なくなる事なんてあるのか?それにあの後俺達が呼びかけても、一向に目を覚まさなかったし」

「……多分だけど、気絶した後に麻痺効果を持つバーテックスの触手に触れられたんじゃないかな?変身する前にやられたから、麻痺の効果が長く続いたのかも」

「だろうな。しかし冬弥、いくら何でもぶっつけ本番過ぎる行為だった事に変わりはないんだ。相手が相手だからな。くれぐれも注意してくれよ」

「ご、ごめんなさいッス兄貴。でもテレビで観て、オイラもやってみたかったんスよ!」

 

とはいえ、変身前の状態で急襲されたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。相手が自分達を脅かす存在だと知れば、たちまちトドメを刺されたかもしれないのだ。気絶した事で、敵も死んだと油断したのかもしれない。

 

「なーんだ!それじゃあ呪いなんて結局関係なかったんじゃない!ビビって損したわ!」

「いや、そもそもさ。風が夏凜の電話にちゃんと出てれば、ここまで大事にならなかったんじゃね?」

 

銀(中)の指摘にハッとなる夏凜。

 

「そ、そうよ!全部風が悪いのよ!たかが怪談話で腰抜かして、挙句気絶までする⁉︎風のバカ!犬部長ぉ!」

「にゃ、にゃにうぉおぉぉぉぉぉぉ⁉︎歳上のあんたがしっかりしてなきゃ、冬弥が危険に遭わずに済んだんだし!そもそも人の話を聞かずに勝手に外に出てったのがいけないんでしょうがぁ!この、失敗型ヘッポコ勇者!」

「な、なんですってぇ!言わせておけばぁ!」

 

などと、折角の旅行にも関わらず、殺伐とした雰囲気が包み込み始める。ただでさえ戦闘でクタクタになっているのに、これ以上暴れられても、かえって疲労が増すだけだ。

これ以上揉め事が長引いて、若葉の背中を掛け流す時間が減らされるのも惜しい。見兼ねたひなたが、東郷に耳打ちして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでひと騒動あったものの、ようやく羽を広げて足を伸ばす事が出来た一同。

パニックになりながらも冷静さを保ち続けた杏、未解放地域のカラクリを解いた遊月、『お前のためなら死ねる』的な事を堂々と宣言した若葉、そして今回、人一倍ガッツを見せた調を労うように、豪勢な夕食を堪能するまで、夕暮れ時に一際美しさを見せる紅葉の絶景に浸りながら、露天風呂を満喫する一同であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……この3人を除いて。

 

「何で私までこんな目に遭わなきゃならないのよ!」

「それはこっちのセリフよ!折角一休みできると思ってたのに、電話に出れなかっただけでこの仕打ちってぇ⁉︎」

「それが嫌なら、もうちょっと気絶癖を治しなさいっつうの!」

「ていうか何なのこの状態⁉︎本当に夕飯までに解放してくれるんでしょうねぇ⁉︎」

「……あぁ〜。タマ、もう頭パーになりそーだぁ……。つまみ食いしたのは謝るから、早く降ろしてくれぇ……」

「「あんたは一生、そこで吊るされてなさい!」」

 

祠のすぐ近くに佇む巨木。3人の少女が、予め持ち込まれていたであろう縄に、生贄の如く吊るされていた。うち小柄な1人は逆さまに吊るされており、その顔は血が溜まっているからか、ヒラヒラと舞い散る葉と、段々色が似通って行くのが見てとれた。

 

 

 

 




いよいよ『キン肉マン』の新作が放送されますね!
個人的に『アトランティスvsマーリンマン』の試合が楽しみです!

話が逸れてしまいましたが、次回もイベント回となります。


〜次回予告〜


「流石に寒すぎねぇか……?」

「寝ちゃダメですよ⁉︎」

「生きては帰れぬ白い地獄……」

「あたしが世界一ロマンチック⁉︎」

「四国の冬とは、こんなにも厳しいものなのか……」


〜雪ではしゃぐのは子供と犬だけ、って聞くけど、大人だってはしゃぎたくなるよね〜


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