結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
連日猛暑が続き、外に出るのもしんどいですね。体調管理にはくれぐれもお気をつけて。
「みんなで外出て、雪遊びしましょうよ!」
神樹と造反神による衝突の影響で、依然として凍える日々を送る中、部室内では元気そうな様子の銀(小)。滅多に味わえない環境下で、まだ遊び足りないようだ。
「元気だね、銀ちゃん」
「バーテックスも倒したばかりだし、ちょっとはゆっくりしたら?」
「おうよ。こうやってあったかいお茶を啜りながらのんびり出来るのも、この時期の特権なのさね」
などと、殆どの面々は外に出る事なく、暖房のついた空間を堪能している。
「だって折角の雪ですよ?ね、雪花さん、外行きましょうよ!」
「んにゃ、あたしも部室に残るよ」
「えぇ⁉︎」
「ありゃ意外。寒いとこに住んでる人って、みんな雪遊び大好きかと思ってた」
「そうね。私も、北国育ちの人はそういうものかと」
頼みの綱でもあった雪花も、あっさり拒否した事に意外性を感じる晴人と須美。
「ま、雪遊びも嫌いじゃないけど、雪の日の1番の贅沢はそれじゃない」
「え、もっと楽しいものが⁉︎何すかそれ!」
「それはね、寒そうな外を眺めながら、室内であったかい物を食べること!」
「おぉいいなそれ!」
「私も!」
雪花の意見を聞いた面々が次々と賛同する中、ますます劣勢になっていく事に焦りを覚える銀(小)。
するとそんな彼女の様子を察してか、晴人がフォローに入る。
「ハイハイ!だったらさ、俺いっぺんかまくらってやつを作りたいと思ってさ!その中であったかいものを食べたりするのをテレビで見た事があるんだけど、あれ体験したいからさ!かまくら作ろうぜ!」
「ちょっと待って晴人君。鎌倉……それはかつて征夷大将軍が街を作った古都で」
「……ハイ?」
「勘違いにしては盛大すぎるな」
やれやれといった様子で話を聞きながら、道具の手入れをしている巧(中)。
とはいえ晴人の説得が功を奏したのか、かまくら作りに賛同するメンバーがチラホラ。
「楽しそう!私もやりたい!兎角もどうかな?」
「そう、だな。せっかくだし、やってみるか」
「俺も行こうかな」
「遊月君がやるなら……」
「「じゃあ私も〜!」」
「結局この流れか。俺は……」
「行ってきたらどうだ?後は手入れぐらいだから、1人でも何とかなる」
といった感じで、中学生の自分に背中を押される形で参加する事になった巧(小)。友奈、兎角、遊月、東郷、須美、そしてダブル園子も加わった事で、大きなかまくらの完成に期待を膨らませる晴人と銀(小)であった。
外に出ると、曇り空ではあるものの、雪は止んでおり、作業するにはうってつけの天候だ。早速男手で周りの雪をかき集めて、高く積み上げる。
ようやく中学生達の背丈の1.5倍程に積み上げられた所で、何故か席を外していたダブル園子が歩み寄ってきた。
「はわ〜、すっごいね〜」
「いつの間にか巨大な雪山が!」
「つーか2人してどこ行ってたんだ?あれだけ張り切ってたのに」
「ごめんごめ〜ん。雪の中に白いウサギが見えたから、追いかけてたんだ〜」
「まぁ。雪の中に白ウサギなんて、ロマンチックね」
「でも何だってこんな所にウサギが?飼育小屋から抜け出したのか?」
そう呟いた遊月の疑問は、園子ズの報告によりあっさりと解けた。
「それがね〜。捕まえたと思ったら、ただの白いビニール袋だったんです〜」
「紛らわしいよね〜」
「笑ってる合間に、もう完成間近なんだが」
「やれやれだぜ……」
流石に慣れない作業で疲れが出たのか、いつも通りのオチに反応が薄い男子達。
「後は、スコップでみんなが入れるくらいの大きな穴を開ければ良いんだよね?」
「じゃあ後は私が〜」
「いや待った!この作業は失敗が許されない!ここはあたしが」
「待て」
園子(小)に代わって銀(小)が張り切ってスコップに手をかけようとしたその時、それを遮るかのように、巧(小)が割って入る。
「この局面でお前が関わると、どんなトラブルが起こるか分からない。ここは俺がやる」
普段から彼女のトラブル体質を目の当たりにしているが故に、何か嫌な予感がしたのか、巧(小)が穴を掘り進める事に。彼の精密さなら、掘り進めても天井を貫通するようなミスはしないだろう。そこで一同は彼に命運を託す事にし、園子ズは応援に徹する。
「「頑張れがんばれたっくん〜!」」
応援を背に受けながら、着々と雪山を掘り進める巧(小)。
……が、異変が起きたのは、丁度全身がトンネルに入りかけた時だった。
「……ん?……っ⁉︎」
巧(小)の声が何かを感じ取った直後、呻き声と共に高く積み上がった雪山が亀裂を作って崩落し、中にいた彼の全身を完全に埋め尽くした。
「えぇ⁉︎巧君が雪に消えた⁉︎」
「これはまさに〜?」
「「イリュ〜ジョン!」」
「ふざけてないで助けろぉ……!」
「た、巧⁉︎早く助けないと……!」
足をバタつかせ、雪を飛ばしながら救援を求める巧(小)。まさかの展開に、自分が埋もれるはずだった銀(小)も慌てふためきながら、埋もれた雪の中に腕を入れる。
他の面々に手伝ってもらいながら、どうにかして彼の救出に成功したが、先ほどまで高く積もっていた雪山は影も形もなくなってしまい、文字通り振り出しに戻ってしまった。
「巧の技術をもってしても、これとはな……」
「かまくらって、案外難しいんだな」
「どうすればいいんだよ〜!」
銀(小)が頭を抱える中、晴人がふとある事に気づく。
「……あれ?そういや須美と東郷さんは?」
「わっしーとわっしー先輩は、あっちで何かすっごいの作り始めてるよ〜」
そう呟いた園子(小)の視線の先では、確かに別行動をしていた須美と東郷が、雪を手で固めていたのだが……。
「ふふふ。如何なる寒波が来ても生き残れる、堅牢な雪壕を……」
「はい。どんなに吹雪いてもびくともしない、立派な壕にしましょう!」
「あれはあれで凄いけど……、かまくらではなくね?」
丸みを全く帯びていない雪山を見て、呆然と呟く兎角であった。
……話を元に戻すが、手先の器用な巧であってもこの有様では、到底かまくらの完成は程遠い。流石の巧も、普段から見慣れない雪に関する知識は乏しい。
ここは専門家の意見を聞くべきでは、と、濡れた体を拭いている巧(小)の提案により、2人を残して一旦グラウンドから撤退して、部室に残っている雪花に応援を要請する事に。
「……という訳で、雪花さんにかまくら作りの極意を教わろうと思いまして」
「ん〜。私じゃ力になれないなぁ」
「そ、そこを何卒……!」
「いや、寒いのが嫌とかじゃなくて、そもそも北海道の雪って、パウダースノーで固まらないから、作った事ないの」
「何っ⁉︎」
予想外の返答に、困り果てる一同。どうやらかまくらというものは、雪さえあれば簡単に作れる代物ではないようだ。
「いよいよ手詰まりだな……。雪花でダメとなると……」
「なら、歌野に聞いてみたら?長野の雪の方が向いてそうだし、作り方知ってるかも」
「……お、噂をすれば」
丁度そのタイミングで、畑から戻ってきたばかりの歌野と、途中で合流したであろう誠也と美羽が部室に入ってきた為、休憩している3人に、晴人と銀(小)がかくかくしかじか説明する。
「オッケー!そういう事なら、私に任せて!スノーで畑が埋まっちゃってて、作業もままならなかったから、手伝うわ」
「誠也さんも是非!スケート選手なら何かと知ってそうだし!」
「いや、滑る事とかまくら作りはまるで接点ないんだが……。まぁ、偶には外で体を動かすか」
「私も手伝うよ」
という訳で、新たに3人加わったところでかまくら作りを一から再開。改めて男子達が雪山をこしらえている間に、歌野が畑作に使っていたバケツに貯めておいた水を、柄杓を使って雪山にかけ始める。
「へぇ〜。水をかけながら雪山を作るんすね」
「柔らかい雪のまんまだと、すぐに崩れちゃうからね」
「奥が深いんだなぁ」
水分を多く含ませた雪の方が、冷気に触れて固まりやすくなる。
そんな歌野のアドバイスをこっそり聞いていた者が2名。
「この技術は、私達の雪豪作りにも大いに役立ちそうね」
「はい。しっかり固めて、氷の要塞も作れるかと」
「氷の要塞……、魅惑の響きね」
声をひそませながらも、早速水を用意して黙々と作業に取り掛かる別働隊。
「あの2人、まだ別のもの作ってるし」
「ま、まぁあたしらはあたしらで、頑張ろう!」
と、そこへ予備のバケツを探していた園子ズが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「歌野先輩、事件です〜!寒すぎてバケツの水が凍っちゃいました〜!」
どうやらこの大寒波で、外に放置されたままのバケツに残っていた水がそのまま凍ってしまい、新たに注ぐ部分がなくなっているようだ。これでは作業には使えないだろう。予備分は改めて探すとして、このバケツはどうしたものかと頭を抱える中、歌野には妙案があった。
「そんな時は、キャンドルの出番よ!」
「?ロウソクの火で氷を溶かすのか?」
「ノンノン。氷の真ん中に穴を開けて、キャンドルを入れると……」
「おぉ。氷の灯篭になるって訳か」
「キレー!」
「いっぱい並べたらロマンチックだね〜」
幸いにも風が吹いていない為、ロウソクの火は消える事なく、ちょっとした暖炉にもなっていた。
すると、そんな一連の出来事をチラ見していた者が2名。
「東郷さん。あれは吹雪の中でも火を絶やさない、良い道具になるのでは?」
「そうね。私達もしっかり習っておきましょう。遭難時にも役立つはず……」
黙々と作業を続けながら、有事の際の備えを語り合う愛国主義者。
「……あいつらにロマンチックは似合わねぇ」
そんな彼女達の奇行(?)を、背中越しに見ていた誠也が心底呆れた様子で呟き、遊月も苦笑いする他なかった。
歌野達の手助けにより、今度は崩れる事なく巧(小)が内部を掘り進めて、無事に完成形となったのは、夕方頃だった。
改めてみると、十数人が入っても問題なさそうな大きさに仕上がっており、すぐそばに備えられている要塞(?)に目を向けなければ、上々の出来栄えであろう。
「それじゃあ、1番頑張った巧から入ってみてよ!」
「?俺が、か?それなら銀だって同じだろう」
「じゃあ2人でせーの、で!」
そうして友奈に背中を押される形で、巧に手を引っ張られながら、何故か顔を赤くする銀(小)と共にかまくらに入室する。
そうして次々とかまくら作りに携わった面々が入り、最後に須美と東郷を入れても、まだ余裕がある程の空間で、一同は腰を下ろす。入ってしばらくの間は初めて見る光景に感嘆していた面々だが、銀(小)がある事に気づく。
「かまくらって凄いな〜。雪の中なのに、体が熱くて汗が噴き出てくる!」
「それだけ頑張った証拠だな」
と、そこへ新たな入室者が姿を見せた。ダブル昴に、歌野同様、畑作から戻ってきた水都である。
「銀ちゃん、はい、タオル。みんなも汗が冷えると風邪ひいちゃうから、気をつけて」
「ありがとう水都さん」
「ん?この匂い……」
「水都先輩と一緒に作った甘酒を持ってきました」
「かまくらの中で温かい飲み物を啜るのも、醍醐味だからね」
どうやら園子ズから事情を聞いていた3人が、家庭科室で作っていたらしく、作業で疲れていた面々にとって、極上の褒美と言えよう。
「さっすがみーちゃん!かまくらの中ではやっぱり酒を飲まないとね!」
「一応ノンアルコールをつけなさい」
「ぷはぁ〜!仕事の後の一杯、最高ですな〜!」
「ですなぁ〜」
「……なんか既に酔っ払いみたいなテンションの人がいるけど、ホントに子供が飲んでいいやつなんだよな?」
「も、勿論ですよ。米麹とお米だけで作っている、アルコール度数0の飲料ですから」
すると、甘酒の匂いを嗅ぎつけたのか、新たにかまくらへ入室してくる者が。
「甘酒は飲む美容液!お肌にも良いのよね〜」
「何で風先輩がここに?部室に篭ってたんじゃ」
「女子力が上がりそうなものには敏感なのよ、あたしは」
「(単純に腹が減って食い意地を張っているだけなんじゃ……)」
「甘酒もかまくらの中だと、また違った美味しさがありますね」
「そーなの!あと七輪があれば、お餅も焼いたりするけどね」
「そいつは美味そうだな!」
「七輪はないけど、お汁粉ぐらいだったら作れるよ」
「ワォ!みーちゃん最高!」
目を輝かせて、水都に抱きつこうとする歌野。そんな彼女を見て、須美が一言。
「水都さんって、本当に歌野さんのお嫁さんみたいですね」
「えっ⁉︎そ、そんな……!」
「おぉ、ミトりんお顔が真っ赤ですぞ〜?」
「やっぱり甘酒にお酒が入ってた〜?」
「そんなはずないのにぃ……!」
ここぞとばかりに園子ズにイジられて、困り果てる水都を見て、白いドーム状の空間にドッと笑い声が響く。
甘酒には、アルコールを含まない代わりに、人を笑顔にする成分が含まれているのかもしれない。
……が、後々この甘酒が思わぬ形で牙を剥き、勇者部に一波乱を呼び起こす事となるのだが、それはまた別のお話。
甘酒ってホントに美味しいですよね。
個人的には、冬の伊勢神宮にお参り後の、おかげ横丁でひっかける甘酒がこよなく好きです(笑)。
〜次回予告〜
「まだ倒しきれていなかったみたいで……」
「私の末裔は自由だなぁ……」
「本気で言ってるのか?」
「また冬眠した⁉︎」
「メリークリスマス!」
〜サンタにとって1番のプレゼントは、受け取った子供の笑顔〜