結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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遅ればせながら、新年最初の投稿となります。昨年に引き続き、1人でも多くの方々に、ゆゆゆに興味を持っていただけるように尽力して参りますので、今年度もよろしくお願いします。


EV21:お賽銭用に五円玉を用意するのって、結構苦労する

新年を迎えて、最初にする事と言えば何か。

そんなありきたりな質問に対し、神世紀を生きる人々からすれば、初詣改めこの世界の恵みである神樹様への願掛け以外の選択肢は存在しない。

それ故に、元旦の神社は多くの参拝客でごった返していた。

 

「なぁみんな、お賽銭っていつもどれくらい入れてんだ?」

 

その一角。神社の境内に向かって溢れ返る人波の列に沿って、4人の勇者が防寒着を身に纏って、固まって暖をとっていた。

 

「そうね……。年の初めだから、少し多めに……」

「多めだと……500円くらいかな?」

「割りかし結構入れてんだな……。いつもは5円玉で済ませてるけど。んじゃ今年は俺も」

「あ、友奈。500円きっかりはやめとけよ。父さんから聞いた事あって、500円は縁起が良くないらしい」

「えぇ⁉︎そうなの⁉︎」

「初めて知ったぜ……」

「語呂合わせの問題、かしら?」

「多分な……ん?」

 

ふと、照彦が行列の奥に目線を向ける。

 

「?照くんどうしたの?」

「今、向こうに風さんと藤四郎さんが見えたような……」

「へぇ。んじゃ樹と冬弥も来てそうだな。あっちも初詣か」

「いやそれよりも気になったのは、風さんが振袖っぽいのを着てた気がしてな……」

「へー、振袖!凄いなぁ。ねぇ、みんなは振袖とか、着物とかに着替えた事ある?」

「いいえ、私は……」

 

そう呟く千景の表情は、神聖な場所に似つかわしくないものだったと言えよう。元の世界でも、自身の家庭環境については明かしていない。とてもじゃないが、晴れ着を手にする機会など、今後一切見受けられないだろう、と自負する千景。

 

「俺は全然そういうの、興味ないしな。ってか、着物って動きづらい感じがあるから、俺には似合わねぇよ。……そーいや、照彦ん所って、まぁまぁ有名な家柄なんだろ?お前は着てたりしねぇか?」

「聞かれると思った……。まぁ無駄に親戚多かったからな。大体袴姿で迎えてたから、正直今みたいに普段着でこうして歩いていられるのも、悪い気はしないな」

「そっかー。私も着物っていうと、浴衣ぐらいしか着た事ないんだ」

「そう……」

 

妙な親近感を覚える千景。西暦時代の名家である久我家は兎も角としても、やはり晴れ着姿とは中々縁がないものだろう。

すると、そんな千景を見て何か思う所があったのか、紅希がこんな発言を。

 

「けどよ。こっちの世界じゃ難しくても、元の世界で大社に頼めば、案外すぐに着物とか、着せてもらえるんじゃねぇか?なんだかんだで融通効くだろ?」

「大社にお願いなんて……」

「それ良いね!そしたら、あっちのお正月は着物で、またみんなで初詣をしようよ!ね?」

「……そうね。高嶋さんがそう言うなら」

「わーい!今からが楽しみになっちゃった!」

「新年早々浮かれてるなぁ……。危ないから転ぶなよ?」

 

などと注意しつつも、先ほど見かけた風の晴れ着姿を、前を歩く高嶋の全体像に重ねる照彦。

 

「(……結構似合うな)」

「?照くんどうしたの?」

「!いや何でも……って友奈後ろっ」

 

不意に、後ろ向きに歩いていた高嶋が少し列を離れてしまい、参拝を終えたであろう少女とぶつかってしまう。

 

「わっ、ごめんなさい!……ってあれ、結城ちゃん?」

「あ、高嶋ちゃん!」

「「あけましておめでとう!」」

 

同じ声色で挨拶を交わした事で、他の3人もようやくその相手が同じ勇者である事に気づく。更には友奈の後を追って、同学年の面々が紅希達の前に姿を現す。

 

「お、兎角達も来てたのか!あけおめ!」

「偶然だね〜。ここで会ったが運命だよ〜。明けましてハッピー謹賀新年〜」

「初っ端の挨拶がカオス……」

「まぁ園子だからな。気にしたら負けだ。っと、今年もよろしく」

「本年度もよろしくお願いします」

 

とまぁ自然な流れで、総勢14名による新年の挨拶を済ませたのだが、その一方で高嶋には気になる点が。

 

「それにしても、この大勢の人混みでよくバッタリ会えたね!」

「やっぱり勇者同士は赤い糸で結ばれてるのかもしれないね〜」

「「「「「(あ、赤い糸……!)」」」」」

 

その場にいる数人は、園子の発言にドキッとしてしまうが、幸いにも、周りの面々には悟られていない様子だ。

 

「えぇ?でも全員から赤い糸が出てたらこんがらがっちゃうよ、園ちゃん」

「友奈……」

「やだなぁゆーゆ、もうなってるよ〜」

 

新年でも平常運転な様子の幼馴染みを見て、呆れつつも安心感を覚える兎角。

 

「それはそうと!高嶋、偉いじゃないの。私が教えたこの神社、覚えてたのね」

「うん!初詣に最適って言われた時、照くん達と来なきゃって思ったから!」

「そ、そういやさっき、藤四郎さん達を見かけたんだが……」

 

不意に小っ恥ずかしくなったのか、先ほど目撃した内容に話題を変える照彦。

 

「風さんが着物を着てたってやつか?」

「お、見てくれたんだな!あれ、あたしらでプロデュースしたのさね!」

「東郷さんと園子ちゃんの着物を貸してあげたんです」

「みんなで見立てて、東郷の着付けで」

「ほぉほぉ。……ん?着物を持ってるって割には、みんなは着たりしてねぇのか?」

 

尤もな疑問を浮かべる紅希。

 

「あの姉妹の着物選びで時間がなくなったからな」

「やっぱり大変なのね、着付けは」

「まぁ時間をかけただけあって、綺麗だったとは思う」

 

唯一の目撃者である照彦にそう評価されて、提供者である東郷と園子もご満悦な様子だ。

 

「でしょ〜?嬉しいね〜、わっしー」

「本当。自分が褒められる以上に嬉しいわ」

「風もあれで、割と似合ってたものね」

「割と……とは言うけど、実は風先輩の帯や帯留めって、夏凜ちゃんが1番拘っていたような……」

「そうなのか」

「な、何言ってんのよ真琴⁉︎そんなわけないでしょ⁉︎園子だって……ねぇ!」

「私、な〜んにもしてないよ〜?」

「途中から寝てたもんね……」

 

助け舟を求めたつもりが、逆に味方を失ってしまい、悶える夏凜。新年早々、三好夏凜のツンデレっぷりはブレていない様子だ。

 

「!そうだ!お前らの所に着物があるなら……。なぁ、東郷、園子。ちょいと耳を貸してくれ」

 

すると紅希が何か思いついたのか、2人に耳打ちをする。ものの数秒もしないうちに、2人の表情が朗らかになった。

 

「それは良い考えだね〜」

「えぇ。2人に拒否権を行使させないよう、強制的に連行しちゃいましょう」

「何か嫌な予感がするし、正月早々、物騒なワード出さないでよ!」

 

夏凜のツッコミが炸裂したその瞬間、勇者部員達の端末に、聞き慣れたアラーム音が。

 

「んな⁉︎物騒そのものが来たぞ⁉︎」

「嫌な予感の正体はこれだったってわけ……?」

「え〜?私呼んでないよ〜?」

「だ、大丈夫だよ園子ちゃん」

「とにかく出撃だ!」

「「了解!」」

「新年早々荒事とは……」

「初バーテックスだね〜」

「……やっぱり呼び寄せたとしか思えない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで初詣の列から離れ、勇者姿となって現場に急行した一同。

とは言え規模が大きくなかったのが幸いか、兎角達が到着した時には、先に到着していた小学生組や西暦組が倒し切った後だった。

 

「ラスト1発!これでトドメだ!」

「元日から戦闘なんて、相変わらずのKYバーテックスだ!」

「あ、皆さん、遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます」

「お、そうだな。みんなも、おめでとう」

「アケオメコトヨロー」

「何語だ⁉︎」

 

珍しくツッコミ役に回る棗。

 

「しかし大晦日から元旦に連戦とは……。元の世界では考えられなかったな」

「年越しうどんを食べ切ってからの出撃だったのが、不幸中の幸いだな」

「アイシンクソー、年越し蕎麦!を食べ切ってからで本当に良かったわね」

「……あんた達、あたしらが初詣に行って帰る間も、まだ続いてたの、それ?」

 

やたらと『年越し蕎麦』の部分を強調する歌野を見て、空いた口が塞がらない風。

 

「当たり前です!年越し蕎麦の後は当然、初蕎麦に移行するわけですから」

「こちらも当然、年越しうどんの後は、初うどんを食べたに決まっている!」

「毎年の恒例になりそうな勢いだな……」

「全くだわ……」

 

心底呆れた様子の藤四郎と風。

 

「でも風姐さんも、神社の屋台でうどんをそこそこ食べてた気がするッス」

「うん。4杯もおかわりしてた」

「んな……。あんた、着物でうどん4杯って」

「ある意味尊敬するぜ……」

 

大食感の部長を前にして、いよいよ畏怖を覚える夏凜と銀(中)。

 

「屋台のうどんてオツなのよね。あ、着物は汚してないから安心して」

「そういう問題か……?」

「けどまぁ、さっきからみんなも言ってたけど、元旦からの戦闘は流石に肩にくるぜ。結局大晦日もしっかり寝れたわけじゃねぇし」

「んー、でもね〜、つかっちゃん。お正月のお参りは神樹様の力を高める、最高のイベントだから〜」

「初詣の期間を、バーテックスが見逃すはずがない、という事か」

「なるほどね……、んん?て事は……」

 

不意に何かに気づいた様子の風だったが、口を開くよりも早く、アラーム音がそれを遮った。

 

「む⁉︎次の敵襲か!」

「大変です!2時の方角より、星屑の大群を確認!こちらに向かってきます!」

「余程正月を邪魔したいのかのぉ」

「こちとらまだ初詣も済ませてねぇんだ!早く終わらせようぜ!んでもって良い思い出を作らねぇとな!」

「何を急いでいるのかは分からないけど、私達の初詣、誰にも邪魔はさせない!」

「うんうん!」

「「初メモ〜」」

 

紅希の背後で、今年1発目となるメモ取りに尽力する園子ズ。

と、更にその背後から風が中学生の彼女の肩を叩く。

 

「所で乃木ぃ、後で、お話があるぅ」

「え〜?はぁ〜い、何かな〜ワクワク〜」

「どうしてあんな言い方されて、良い話だと思うのかしら……」

「まぁ園子だしな」

 

そのやりとりで一旦一区切りつき、一同は再び戦闘体制へ。襲ってきたのは星屑だけだった事もあり、それほど時間をかけることなく、晴人の一撃で、第2波を退ける事に成功する。

 

「ラスト1発これでぇ!……ってあれ?」

「さっきと全く同じ事言ってるぞ、晴人!デブジャってやつだな」

「タマ、晴人は、太ってない」

「タマっち先輩、それを言うならデジャヴだよ……」

「っと忘れる所だった!乃木、さっきの話だけど!」

「あ、は〜いフーミン先輩、どこからでも口説いてどうぞ〜」

「何やと⁉︎誰が口説かれんねん⁉︎新年早々、どえらいニュースやで!」

「告白……するのか?」

「し、しないわよ!そうじゃなくて!あんた、襲撃の予測してたみたいだけど!だったらどうして、人に着物着せたりするの!人目もあったし、あの格好で駆けつけるの大変だったんだから!」

「あ〜、それはフーミン先輩だったら多分大丈夫だと思って〜。それに〜、神樹様の力を高めるための初詣は、すご〜く大切な事だから〜」

 

園子の説明を受けて、一応腑に落ちた様子の風。幾ら能天気な後輩といえど、一応は先輩に対して尊敬の意は示しているし、彼女とて悪気があって着物を提供したわけではなさそうだ。

 

「確かにお参りは大事ですけど、着物を着る必要は全然ないですよね〜?」

「そ、園子ちゃん……!」

 

慌てて小学生の昴が嗜めるが、時既に遅し。一瞬、時が凍りついたような感覚だけが樹海内を支配する。

 

「まさか自分自身に背中から撃たれるとはな……」

「や〜ら〜れ〜た〜」

「ふぉおおい!やっぱり面白半分だったんかい!」

 

前言撤回、と言わんばかりに噛み付く風。そこへすかさず友奈がフォローに入った。

 

「で、でも風先輩、とっても綺麗でしたよ!高嶋ちゃん達も褒めてたし!」

「そなの……?ってか、何であたしの着物姿を知ってるわけ?」

「俺達もさっきまで、初詣に向かっててさ。照彦が偶々見かけたんだ。な?」

「ま、まぁ……」

「うんうん!振袖着れて羨ましいなぁ、って、ぐんちゃんと話してたの!」

「それは……確かに私も、見たかったな」

「いつもパワフルな先輩だから、お淑やかな所って、想像しにくいしねぇ」

「確かにな」

「妹の私から見ても、素敵だったんですよ。まさにレアという感じでした」

「あぁ。良い感じに目立ってたしな」

 

妹や彼氏からベタ褒めされたとあっては、先ほどまでの怒りは何処へやら、モジモジしてばかりの風が目立っている。

 

「そうか〜。そうよね〜?振袖姿のあたしの女子力ってハンパないから、みんなが褒め」

「何っ⁉︎またか!」

 

またしても風の言葉を遮るように響き渡るアラーム。

 

「……みんなが褒めるのも無理はな」

「第3陣、来ます!」

「ちょっと!最後まで言わせなさいよ!」

「へっ?あぁ分かった、それで……?」

「いや改まって聞かれると言いにくいわ!出撃開始ぃ!」

「どっちなのよぉ!」

 

といったやりとりがあったものの、流石に後続は数も揃えてはいなかったのか、ものの数分で決着がついた。

 

「ラスト1発……っと、これ以上は言わない方が得かな?」

「そうだな……。二度ある事は三度も四度も何回でもあるって言うし」

「……エンドレス」

 

調がボソリと呟いた直後、ひなたから連絡が入った。今度こそ、敵の襲撃は完全に退けられたようだ。新年の挨拶を済ませると同時に、若葉に帰宅を催促させるひなた。それに対しやれやれと思いながらもすぐに戻る旨を伝える若葉。すかさずメモを取ろうとする園子(中)だったが、出撃前の、紅希とのやりとりを思い出したのか、結局メモを取る事なく、東郷と共に、高嶋達をとある場所へと連れていく事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イイよイイよ〜。はい、目線くださ〜い」

「ポーズポーズ、高嶋ちゃん!」

「あはは、何だか恥ずかしいなー。所で、ぐんちゃんまだー?」

「あ、今行くわ……」

 

東郷の部屋で先んじて園子達に写真を撮られていた高嶋は、この場にいないもう1人の主役に声をかける。

 

「ダメ、動かないで。もうちょっとで髪の毛も終わるから」

「ふーん、こうして見るとやっぱり、着物には黒髪が合うのね」

「そうね。それに、郡さんこ髪は凄く美しいから余計にそう感じるのよ」

「そ、そんなに言われる程では……」

「お〜お〜、照れてやんの。千景にしちゃ珍しいもんだな!」

「うぅ、三ノ輪君の子孫にそう言われると、反論の余地が……」

 

などといったやりとりがあったものの、ようやく準備が整った千景が襖を開けて、その容姿をお披露目する事に。

おぉ、と感嘆する紅希。それもそのはず。今現在目の前に立っている千景は、赤色の着物を身に纏い、紫色の簪がよく目立つ程、麗しい姿になっているのだ。因みに高嶋も、桜色とオレンジ色をブレンドした色の着物を身につけている。

 

「み、三ノ輪君どうしたの?……やっぱり、変、かしら」

「んな事ないぜ!似合ってるぜ!」

「良かったねぐんちゃん!」

「え、えぇ。でもまさか、三ノ輪君から提案されるなんて、夢にも思わなかったわ」

 

千景の言う通り、2人に振袖を着てもらおうと提案したのは、紅希本人に他ならないからだ。元の世界に戻ったら着ようと話をしていたものの、ひなたからいつ戻れるか分からないと言われていた事を覚えていたのか、『思い立ったが吉日』とばかりに、着物を所持している東郷と園子にお願いして、現在に至る。

尚、このまま初詣に再出発するならば、という事で、紅希と照彦にも、特別に袴に着替えてもらっており、4人で写真に記録を収めている最中だ。

 

「うんうん。今すぐ着てもらって良かったんよ〜。私達も見れたもんね〜」

「園ちゃん、東郷さん、大切な着物を貸してくれて、本当にありがとう!」

「あの……、私からも、お礼を言わせて。感謝してるわ。……ありがとう」

「どういたしまして」

「んじゃ、このまま初詣の続きしようぜ!」

「えぇ(三ノ輪君にも、後でちゃんとお礼を言わないと)」

「みんなのお陰で、今年は最高の年になりそうだよ!」

 

新年早々、目標を叶えた事に意気揚々とする高嶋と共に、千景、紅希、照彦の4人は、再び神社へと足を運んでいった。

 

 

 




『魔法使いプリキュア2』のクオリティの高さ……。何がとは言えませんが、あれは深夜枠でしか出来ない芸当ですな(笑)。


〜次回予告〜


「新年早々どうした?」

「少しだけ苦しかった……」

「何故に和装でそれを食べたんですか……?」

「苦しゅうな〜い」

「勝手にアテレコすんなよ⁉︎」

「今年もよろしくなっ!」


〜着物にナポリタンはNG〜

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