結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
先日、大阪の『勇気のバトン展』に友人と観に行きましたが、パネルの演出を含めて、とにかく気合いの入り方が凄かった印象です!これを皮切りに、もっともっとゆゆゆイベントを画期的なものにして、世間に広めていきたいですね!
話は変わりますが、いよいよ造反神側の勢力が登場!
「……愛媛は土地が広いから、拠点との距離に問題が……うーん」
「攻撃と防衛の両立ねぇ……。でも、カガミブネは東郷さんがいるからね」
がらんとした部室にただ2人、杏と美羽が険しい顔つきで四国の……正確には愛媛の地図を眺めている。彼女らが地図を睨みつけているのには、ある理由があった。
先日、愛媛奪還の初陣に勝利した、勇者部一同。
だが、本当に厳しくなるのはここからだ。巫女達が受けた神託により、今後は愛媛の敵陣営に攻撃を仕掛けつつ、自陣営の香川を防衛する事も必要になる、との事。球子やダブル銀、晴人や流星といった前衛組は腹ごしらえも早々に、次の地域への侵攻を画策していたようだが、神託に合わせて行動しなければならない、という巫女達からの説得もあり、渋々引き下がってはいた。
その後方で、杏としても故郷である愛媛の奪還には、内心情熱を燃やしており、何より先日の戦闘での、球子の姿勢に背中を押された事で、こうして地図を片手に、次の行動を計画しているのだ。それを見た美羽が、何か役立てる事はないかと志願して、現在に至る。
と、そこへ部室の扉を開けて入ってくる者が。
「?あれ、どうしたんですか?2人で部室に残って」
「あ、真琴さん。愛媛の土地を調べていたんです。敵陣地を知る事は、戦いの役に立つと思って」
「真琴君こそ、どうしてここに?」
「依頼されてた仕事が終わって帰ろうとしたら、部室の窓に人の姿があったので」
「そうだったんだ。お疲れ様」
「あ、あの……。お邪魔じゃなければ、僕も参加させてもらえないでしょうか?愛媛の事、僕も知りたいと思っていた所なので」
そう言ってタオルで汗を拭き取りながら、2人の輪に入ろうとする真琴。
「え?でも仕事終わりで疲れてませんか?力仕事、だったんですよね?」
「え、えぇ。でも平気ですよ。これ位の運動なら、なんて事は」
「……前から思ってたけど。真琴君って、見た目や雰囲気と違って基礎体力って高い方なんだね」
「確かに……。失礼かもしれないですけど、そこまでアクティブに動くような感じには見えなくて。同じ飛び道具を使うのに、凄く動き回る立ち回りだから、最初に見た時は驚きました」
「アハハ……。完成型勇者の夏凜ちゃんにはまだ程遠いですけど……」
照れながらそう語る真琴。不意に杏が、先程の真琴の一言で気になるワードについて問いかける。
「そういえば、夏凜さんって常にその言葉にこだわってますよね、『完成型』って」
「そ、そうですね。……夏凜ちゃんも、勇者に選ばれるまで、色々苦労して、やっとここまで辿り着きましたから」
「色々、ですか?」
俄然気になり始める杏と美羽。そこで真琴は、周りに誰もいない事を確認してから、ポツポツと語り始める。
「……前に、小学生時代の銀ちゃん達が、瀬戸大橋跡地の合戦の後、記憶を失って一線を退いたって話がありましたよね?……夏凜ちゃんが所持している勇者のデータは、銀ちゃんのものを複製して作られたシステム。言ってみれば、銀ちゃんの戦闘データを引き継ぐ形で与えられた力。戦力増強の為、その適任者を見つける為に、大赦は四国全域から候補生を集めて、厳しい選抜試験を行ったんです」
「そして最後まで生き残ったのが、夏凜ちゃんだったのね。銀ちゃんとの相性が良いのも、分かる気がするかな」
「そう、だったんですね。夏凜さんにそんな過去が……」
「夏凜ちゃんは言ってました。『この立場を……勇者を目指してたのは、私1人じゃない。その人達の分まで背負って戦っているの』って……。そんな夏凜ちゃんの一生懸命な所が、とても心強くて、尊敬できて……、僕も、ほんの少しでも、夏凜ちゃんの支えになってあげたい。そう思って、僕も僕なりにやれる事を頑張ってみる。そんな感じです」
真琴の真剣な表情を見て、聴いていた2人も感化された様子だ。
「そうなんだ……!凄いね、真琴君。夏凜ちゃんも、こんな良い子がそばにいてくれて、幸せ者だね」
「はい!」
「あ、改めてそう言われると恥ずかしいですね……。でも、支え合うっていうのは、悪い気分でもないですよね。遊月君と東郷さん、それに兎角君も友奈ちゃんの関係を見ていて、それがよく分かった気がします。あ、勿論2人も誠也さんや司さん達の事を支えているのは、見ていて分かりますよ」
「うふふ。そう、なのかもね」
そんなこんなで本音を語り合う内に、思い出話へシフトした結果、愛媛の一件は片隅に追いやられてしまっていたが、ここでは多くを語らない事とする。
「(それに、いつかは夏凜ちゃんだけじゃない。彼にも……僕の数少ない友達にも、強くなった所を、見せたいから)」
それから数時間が経過した頃、犬吠埼姉妹が暮らすアパートに、1人の来訪客が。
「風さんやみんなには本当に感謝している。特に最近は、千景が前よりも生き生きしている気がするんだけど」
来訪客……若葉がそう語るように、この世界に召還されてからの千景は、大きく変わった。前以上に本音を口にするようになったし、歳下相手にも心を開いている。……若葉本人とは相変わらずツンケンする様子は見せているが。
「それならアタシだって若葉に感謝しないと。夏凜と銀の訓練に付き合ってあげてるんでしょ?2人とも楽しそうだし」
「私もあの2人と鍛錬するのは楽しいぞ!全力で模擬戦が出来る相手は、滅多にいないからな」
「あんた達って、そういう所、似てるわよね」
リビングでリーダー格が和気藹々と話し込んでいると、丁度宿題を終わらせて戻ってきた樹が、扉を開けで入ってきた。
「若葉さん、お姉ちゃん、もう結構遅い時間だけど……、若葉さん、泊まっていくんですか?」
「あぁ、今日はそうさせてもらおうと思う。ひなたには話をつけてある」
「樹はもう寝ないとダメよ。子供は寝る時間」
「ムゥ……。私、子供じゃないもん。中学生だもん」
「成長期なんだから、夜更かしは許しません。大きくなりたいでしょ?」
「は〜い」
頬を膨らませてそうボヤく妹。まぁそれを言ってしまえば姉も2つ歳が上であって、充分成長期の真っ只中ではあるので、人の事を言えるわけではなさそうだが……。
「若葉はどうする?樹の部屋で寝るか、アタシの部屋で寝るか」
「今日は風さんと一緒で。話したい事がまだあるしな」
「じゃあ、お休みなさい、お姉ちゃん、若葉さん」
「寝る前にちゃんと歯を磨くのよ。明日の学校の準備も忘れちゃダメよー」
「わかってるよー」
空返事な樹を背中越しに見送る風を見て、思わず笑みを浮かべる若葉。
「風さんは本当に樹の事が大切なんだな」
「うん。たった1人の家族だもの」
たった1人の家族。それを聞いて、ハッとなる若葉。
「!そういえば、ご両親への挨拶が済んでなかったが、もしや……。済まない、変な事を思い出させてしまったか」
「ううん。気にしないで。……もう、2年くらい前の事だからさ。アタシの親は大赦に勤めてて、……ほら、遊月から聞かされたでしょ?瀬戸大橋跡地の合戦ってやつ。樹海がダメージを受けると、現実にも被害が出るって。あの時も親2人は住民の避難誘導に必死で、その最中に樹海がダメージを受けたフィードバックが引き起こした災害に巻き込まれて……。世間では自然災害による犠牲って事になってるけど、大赦からは一応事実を説明されたわ。けど樹には……、その時はまだ、本当の事を話さなかった。頼れる親戚もいなかったし、これからは自分が妹の面倒を見なきゃって、目の前の事に必死で……。だから、樹には話せなかった。アタシが戦う理由が、親を殺した奴らへの復讐だった事も。それと……、あの子の夢にも、気づいてあげられなかった。そのせいで、後悔した事、絶望した事もあった」
「風さん……」
「でも、そのお陰もあって、あの子の本当の気持ちを、強さを知る事も出来た。だから今は独り立ちできるように、少し厳しくしてる所。まぁ、夏凜や東郷からは相変わらず甘いって指摘されてるけど」
「……私にも、その気持ちが分かる。私も勇者の力を手にしたあの日、級友達が目の前で無惨にも食い殺された。奴らに報いを受けさせる為、それから3年もの間、力をつけてきた。そのせいで、リーダーとは名ばかりで周りが見えてなく、流星や、仲間が傷ついてしまい、千景にうんと叱られた。ひなたにも頼れず、途方に暮れていた私を救ってくれたのは、傷ついた流星だけでなく、同じ勇者や、街で私達を応援してくれる者達の声だった。……後で知ったのだが、流星もまた、童山や他の学友達と共にバーテックスに出くわし、離ればなれになった童山を除いて、学友は皆命を落としたそうだ。だが彼は、そんな目に遭ったにも関わらず、復讐心を宿す事なく、今を生きる者達を守るべく、武器を手に取って、戦っている。その事を知った私は、流星の芯の強さを理解し、仲間と面と向き合い、そして大一番を切り抜けた。まだ堅苦しい部分もあって、風さんや皆に迷惑をかける事もあるだろうけど、四国を奪還したいという気持ちはある。だから……」
「はいはい!また堅苦しいとこ出てるわよ。言葉にしなくても、その気持ち、ちゃんと伝わってるから。なんかしんみりしちゃったし、こっからはリーダーミーティングって事で、先ずは……」
お互いのルーツを知り、少し空気が澱んでいるのを察したのか、風がせっかくの客人を曇らせまいと振る舞う様子を見て、改めて部長が彼女であって良かったと心底感じる若葉であった。
その後は男性経験の有無についてや、風のチアガール姿に惚れた男児について(若葉は既に4回ほど聞いている内容)などと、リーダーミーティングとは何ぞやとばかりの内容だけがリビング内に響き渡り、数時間後には、2人ともリビングの机に伏して、寝息を立てていた。
ようやく静まり返った所で、扉を開けて樹が入ってきた。どうやら占いをして夜更かしをしていたらしく、先に寝入った2人を見て、苦笑いを浮かべている。
そばに置いてあったブランケットを肩から静かにかけながら、不意に彼女は思い返す。
「(さっきまでやってたタロット占いの結果……。出たのは『吊るされた男』、『恋人』、『戦車』……)」
『試練』『選択の時期』そして『争いを伴うトラブル』。これらが暗示するものとは、果たして……。
樹の心配事とは他所に、神託が下った事で、一同は二度目となる愛媛奪還行動へ。
風を初め、俄然やる気に満ちたメンバーが進軍する中、遊月は時折立ち止まりながら、周囲を見渡している。
「……」
「遊月君?どうかしたの?」
「まただ」
「えっ」
「こないだ、小学生の園子が感じてた視線と気配。確かに感じる。バーテックスとは違う何かが、この樹海に干渉してる気がするんだ……」
警戒心を強める遊月に対し、東郷は無言で彼の手を握る。
「大丈夫よ。私がついてる。何があっても、私が守るわ」
「……頼りにしてるぜ(俺だって、いつまでも守られっぱなしじゃないからな)」
交わす言葉は少なくとも、一心一体。真琴達が語っていた事は決して間違いではないようだ。
少し進んだ所で、ようやく星屑と遭遇し、前衛メンバーは意気揚々と飛び出す。
「なんか前回よりも敵多いな!それにしつこい!」
「そりゃ2戦目だしな!相手もこれ以上なめられてたまるかって感じだろ!」
司が大きな鉄扇を力一杯振るって、突風を巻き起こし、敵を退ける中、遠距離攻撃が前衛を通り越して、後衛の東郷に向かってくるのが見えた。
「!」
「させるか!」
だがそこは、遊月を初めとした他の後衛陣が捌いていて、事なきを得ている。が、ここまで来れば、前衛メンバーも違和感を覚えた様子だ。
「おい、これってさ……」
「あぁおかしい。さっきから東郷ばかりに攻撃が集中してるように見える」
「何故、東郷ばかりが……?」
棗達が首を傾げる中、杏がある仮説を立てる。
「もしかして……、巫女だからではないでしょうか?」
「何だと……⁉︎」
「私達の移動手段、カガミブネの要である巫女がいなくなれば、戦略上、圧倒的に有利ですから」
「そういう事か……」
「でも、何故急にそんな……人間が考えるような戦い方をするように……?」
須美の疑問は尤もだ。カガミブネを使った戦略は、今回が事実上初の試み。故にいくら知能が高いとされているバーテックスとて、未知数の技術に対抗策を打ち出せるとは考えにくい。元を潰すという策略は、これまでも勇者部達が行使してきたが、それをバーテックスが思いつく、というのも妙な感じだ。
「……だったら」
不意に夏凜が左手に持っていた刀を地面に突き刺し、もう片方の手に握られていた刀を大きく振りかぶる。
「さっきからそこでコソコソ突っ立ってる奴に、聞けばいいだけでしょ。気配で……見えてんのよぉ!」
そうして彼女が刀を投擲した樹海の根元部分を目で追っていくと、地面に突き刺さる直前、何かが陰から飛び出してきた。
そしてその何かは、東郷めがけて突進してくる。
「何奴!」
すかさず流星が前に出て、童子切で受け止める。お互いの力が拮抗し、ようやく相手の全体像が明らかとなる。
「ムッ……!」
流星を初め、皆が驚くのも無理はない。
襲撃者は、彼らと同じ、人の形をしたもの……否、人間だ。それも、紫色の神秘的な装束を身に纏った、紛う事なき……。
「勇者……いや武神か!」
「……ダリィことすんなよ、ったく」
目つきや口調こそ気怠そうだが、トンファーのような形をした武器を持って、流星と互角に渡り合っている姿を見るに、その少年の実力は確かなようだ。
「流星!」
このままでは埒が明かない。兎角がレイピアを持って彼を引き離そうとした、その時だった。
不意に間に割り込むように人影が降り立ち、そして。
「お兄様の邪魔は、させないから♪」
そう呟いたかと思えば、次の瞬間には兎角の体がくの字に折れ曲がったのが見えた。目にも留まらぬ回し蹴りでレイピアごと地面を転がっていく兎角。
「!兎角ぅ!」
真っ先に我に返った友奈が駆け寄る。その様子に気を逸らした流星も、対峙していた武神に吹き飛ばされ、距離を取られてしまう。他の皆も唖然としていたが、皆の意識はこの時、謎の襲撃者の実力以上に、割り込んできた人影が発した声色に向けられていたといっても過言ではない。
割り込んできたのは、少女だった。樹海内で動ける点から見ても、勇者であるのは間違いない。ないのだが、問題はその声だけでなく、顔つきだ。
「ばーん。皆、初めまして、だね」
そう呟く少女の顔も、口から発せられる声も、兎角に駆け寄った少女や、照彦の隣で唖然としている少女のものと、ほぼ同じものだったからだ。
「なっ……⁉︎」
「「3人目⁉︎」」
その少女を見て、驚いたのはダブル友奈のみならず、精霊バリアのおかげで立ち上がれた兎角や、東郷、遊月、千景、照彦、紅希もまた、信じられないといった表情を浮かべている。
「どうだろうねぇ?」
「ま、また友奈が増えた⁉︎」
「けど、この感じ……」
「うんにゃ。あぁいう笑みを浮かべてる時って、大体敵パターンなんだよね」
などと雪花が考察する中、後方にいた武神が、両手に持っていたトンファーをくっつけたかと思うと、何処からともなく光る矢を出現させ、天に向かって引き絞り始める。
「!あの武器、俺と同系統の……!」
トンファーから弓へ。どうやら遊月と同じタイプの武器らしく、戦闘スタイルも、近接から遠距離まで、オールラウンダーのようだ。
やがて光る矢が天高く昇り、それを見届けた謎の2人が互いに頷くと、音もなく飛び上がり、一瞬で皆の視界から姿を消した。
「ウェイト!あなた結局何なのよ⁉︎」
「ちょっと待ちなさ」
「うぉっ!何か大群が出てきたぞ⁉︎」
「まさか、さっきの矢は信号弾のようなものか……⁉︎」
「とにかく先ずは、こいつらを倒すぞ!」
「あの人達が去った方角は覚えてます!先ずはこのバーテックス達を退けましょう!」
藤四郎と真琴がそう叫ぶと、波のように押し寄せてきたバーテックスの大群と対峙する一同。
どうにか連携して敵襲を退けた一同は、真琴の情報を基に、休憩もそこそこに駆け出す。奥へ進むと、例の2人が樹海の幹に腰を下ろしていた。最初からそこで待っていたのか、今のところ遠くへ逃げ出す素振りは見せない。
「凄いね。やっぱり簡単には無理か」
「さっきのバーテックスの群れ……お前らの合図と同時に侵攻し、しかもこれまで以上に連携が取れていた……。って事は、今までのバーテックスも」
「そだよ。私が命令しているからだよ」
「お前ら、一体何者だ……?」
兎角が警戒心MAXでそう尋ねると、武神の方は欠伸一つするだけでこれといった反応は見せないが、勇者の方は思い出したかのように腰を上げて地面に降り立つ。
「そっか。自己紹介だね。私の名前は『
「やっぱり友奈……!」
「ほーほー。『赤嶺ゆーゆ』に、『らいとん』ね〜。……んん〜?アカミネ〜?どっかで聞いた事あるような〜?」
「いやいやいや!いつもの園子らしい反応だけど、あんたは知ってなきゃダメでしょ⁉︎」
「まさか、あの赤嶺家の……⁉︎」
「そ。大赦ではそこそこ有名な家なんだよね。そこの赤嶺さん家の兄妹だよ」
大赦に携わる一族である面々(ダブル園子の反応は芳しくないが)が驚くのも無理はないだろう。それだけに、目の前に立ちはだかる存在に、妙な緊張感を漂わせる。
「だけど、これだけは分かる。あれは、友奈とは全く違う」
「あぁ。高嶋の方とも別物だ」
兎角や照彦を初め、東郷と千景も困惑しつつも、すぐに違いを感じ取ったようだ。
「……こ、こんにちは。結城友奈です」
「……うん、ある意味私の後輩だね。よろしく、結城ちゃん」
「コーハイ?」
「いきなり挨拶から始めるとは、流石は友奈の名を継ぐ者!」
「感心しとる場合か!」
流星と童山のやり取りを他所に、赤嶺は目の前の彼女を後輩と呼ぶ理由を語り始める。
「私達はさ、神世紀序盤の時代から召喚されたからね」
「こんにちは。高嶋……友奈です」
「高嶋さん⁉︎危険よ離れて⁉︎」
「高嶋さんは、先輩だね。貴方がいなければ私は、私達はいなかったから。会えて嬉しいな」
「へっ?それってどういう事?子孫……とか?」
「子孫じゃないよ。でも、同じ友奈。逆手を打って生まれたからね。そういう名前になるんだ」
それを聞いて、ハッとなる神世紀300年代表の勇者、武神一同。以前園子(中)から聞いた言い伝えによれば、産まれた際に特定の行動……逆手を打ったりした女子には、大赦から『友奈』という名前が贈られる。恐らく、初代友奈改め高嶋友奈の功績が関係しているのだろう。
「ちょいちょい!さっきからついてけへんのやけど⁉︎何がどうなって友奈の名前になるんか、分かるように説明してくれや⁉︎」
「うーん、説明はあまり得意じゃないんだけどね……。擬音が入りそうで、ドーンときて、バーンとか……」
「くっ……。別人だと分かってるのにこの共通点は……」
「う〜ん、色んな時代の人が入り混じって、何だかややこしや〜」
「……お前もややこしくしてる材料の一つなんだがな」
そう呟く巧(小)の声は、誰にも届いていない。
「えぇいまどろっこしい!要するにお前ら!敵か味方か⁉︎」
小難しい事が苦手な紅希が、ストレートにそう尋ねると、友奈だけでなく、それまで黙っていた来人も、それに答える。
「……敵だね」
「俺達は造反神に呼ばれたからな」
「⁉︎造反神も、勇者や武神を召喚できるのかよ……!」
「では、愛媛に来てから我々を監視していたのは、お前達か!」
「アハっ、流石は実質初代の武神様。そうだよ。貴方達が香川を奪還したって聞いてね。私達が行かなきゃって思ったから」
「……本当に、敵だ」
「ゲームでいうネガ……もしくはダークサイドキャラっていう事かしら?」
「まぁ、そういう感じかな?」
「造反神側の武神だからな。だからまぁ、造反神が造ったバーテックスも操れる」
淡々と呟く来人だが、聞いてる側は決して気分の良い話ではない。
「造反神が暴れ回れば、神樹様がバラバラになって、四国が滅びるかもしれないんですよ⁉︎そうなれば、元の時代……あなた達がいた場所にも悪影響が出るのに……!」
「うん。勿論知ってて味方してるよ。私達の時代ならではの事情があってね。今の説明だと難しいかな。……ま、私達の時代の人なら、造反神に協力する理由が分かるかな」
「逆に言えば、お前らの時代背景を知らない俺達には、到底理解できない事があった。だから俺達の目的を阻止するべく、造反神は利害の一致とばかりにお前らをここに呼び出したってわけか」
「ま、そういう事かな」
問答無用、とばかりの返答に、複雑な心境の面々。バーテックスのような無感情の塊が相手ならば前に出られるが、相手は同じ人間だ。
「ふふ。人間相手は不慣れかな?逆に私達は、対人戦の方が慣れてるんだよね、時代柄〜」
まるで見透かされているかのような佇まい。誰かがゴクリと息を呑み込む。
「……その辺にしとけ。今日は挨拶だけだ。ダルいから、後はこいつらに任せる。……行くぞ」
「!は〜い、お兄様♪」
再び矢をセットした弓を天に向けて引き、思いっきり放たれると同時に、バーテックスが姿を現す。その中には、最初にこの地に召喚されてから戦った『アタッカ』も含まれている。その素早さに、苦手とする勇者達も少なからずいる。
「それじゃまたね。先輩に後輩。……そして、アハっ。お姉様♪」
そう言うが早いか、2人は音も立てずにその場から姿を消した。取り逃してしまう形になったが、それ以上に困惑が彼らを支配する。
「お、おねっ⁉︎先輩と後輩が私と結城ちゃんだとしたら、誰に言ったんだろう?」
「タマというセンが濃厚だな。滲み出る包容力に惹かれてしまったのか?」
「……何だか、私の方を向いていたような」
「もしかして、赤嶺と古波蔵って親戚だったりして?」
「……無視かよ!タマ泣くぞ!」
「言ってる場合か!とにかくこいつらを倒すぞ!」
「やる事やらないと、それこそ完成型の名が廃るってね!」
夏凜の言う通り、情報の整理がつかない中でも、先ずは敵を退ける事が最優先だ。再び戦闘が始まり、再度捜索を試みたが、結局それ以上の収穫は得られず、樹海化が解除される。
『吊るされた男』が指し示した『試練』。その序曲を垣間見たように感じた樹は、人知れず拳を握りしめていた。
はい、という訳でオリキャラとして、赤嶺友奈の実兄が登場!モチーフは……特撮好きな方なら何となく分かるかも?
〜次回予告〜
「どんな話?」
「お節介な奴だ」
「……無自覚か」
「更にダメ押しで……」
「な、なな何言い出すのよぉ⁉︎」
〜Tsundere 〜hot and cold〜〜