結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。

先日、『結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜』の通算UAが10万を突破しておりました!長年に渡り、皆さんがこの作品を読んでくださっている事に大変感謝しており、これからも自分なりのペースで頑張っていきたいと思っておりますので、ご意見・ご感想等、よろしくお願いします!


EV24:女子でイケメンほど、羨ましいジャンルはない

「はぁ〜……」

 

放課後の部室。

数日前に、球子ら5名によるファッションショーの会場となった場所で、主催者のため息が一つ溢れた。

それに反応した、同じく部室にいた杏が声をかける。

 

「どうしたんです?そんなしかめっ面して」

「いや、この間の着せ替えにちょっと心残りがね……」

「え?タマっち先輩も調君も、すっごく可愛かったですよ」

「うん、私もそうは思うよ。でも、大事な人を忘れてたーって気がついてね」

「?大事な人って……?」

 

そう言って首を傾げたのは、ファッションショー参加者の調。この日は球子が部活動の助っ人で不在の為、部室で暇を持て余していたのだ。

さて、話は元に戻るが、雪花が忘れていたという、その人物とは……。

 

「棗さん」

「棗さん?どうしてですか?」

「ボーイッシュなタマちゃん達や、可愛らしげのある調君達を女の子らしく飾るのは楽しかったよ。……でも!棗さんなら、もっと新鮮な大変身が出来るはず!って、今更気づいたんだよ」

「女の子っぽい格好の棗さん?確かに新鮮だとは思いますけど……」

 

確かに、沖縄育ちで海をこよなく愛する、という第一印象も相まってか、ピンク色のスカートや、艶のあるメイクを施している姿が容易に浮かんでこない。

だが雪花の思案は、その上をいくものだった。

 

「んにゃ、その逆。棗さんて、絶対男装似合うと思うんだよね」

「棗さんの男装……」

 

女装ではなく男装。

脳内でそれとなくイメージした瞬間、眼前にこれでもかと、大輪の花が咲き誇ったかのような情景が浮かび上がり、興奮した様子を見せる杏。

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!分かりますそれすっごくよく分かりますハイ!」

「でしょでしょ?あのスレンダーな体型に、クールな顔立ち」

「男性のイケメンさんよりも、ずっとイケメンさんになりそうです!」

「……」

 

それはそれで、うちの男子部員が可哀想じゃないかな……、と無表情で思う調だが、特に口には出さずに取っておく。

 

「何でもっと早く思いついてくれなかったんですか、雪花さぁん!」

「そうなんだよ〜。今更気付いた自分に悔しい!」

「今からでも何とか出来ませんかね?見たいです!棗さんの男装!」

 

是が非でも、棗の男装を見たい。そう志願する杏の前に、まるでタイミングを見計らったかのように、彼女達が降り立った。

 

「話は全て聞かせてもらった〜!」

「なっちイケメン計画!我々が、力にならせていただこう〜!」

「……やっぱり、来た」

 

この手の企画に、彼女達が乗っからない訳がない。さも分かっていたかのような表情を見せる調。

 

「ほんと?嬉しい!それで、何か作戦はあるんですか?」

「ふっふっふ、それはね〜……」

「それは?」

「いっひっひ、その作戦とは〜……」

「「その作戦とは?」」

「今から、みんなで考えよ〜!」

「考えよ〜!」

「……知ってた」

 

あれだけ長いフリからの、無計画発言。ため息一つつかずに、調は腰を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは棗さんをどう呼び寄せるか、だよね」

「そこは一先ず沖縄名物の黒糖とサーターアンダギーなるものを、すばるんにお願いして、用意すればよろしいかと〜」

「更に大赦に保管されている、沖縄の民謡が入ってるCDを流して、楽しそうな空気を醸し出し……」

 

まるで餌付けのような方法を、いけしゃあしゃあと言ってのける園子ズ。それに対して、誰もツッコむ者がいないのが末恐ろしい。

 

「良いとは思うけど、その前に、今回みたいな後悔がないように、話し合うべき事があると思うの」

「後悔……?」

「棗さんの他にも、男装させたいメンバーはいないかしら?」

「確かに!せっかくやるなら、メンバーが多い方が盛り上がりますよね」

 

ファッションショーの時もそうだが、1人だけ容姿をイジられるのは抵抗もあるだろうと考え、他の有力候補を探す事に。

 

「誰か他に思い当たる人はいる?」

「ボーイッシュっていうとやっぱり、タマっち先輩と銀ちゃんが浮かぶけど……」

「でも、あの2人は小柄だし、そもそもちゃんとオシャレさえすれば美少女だからねぇ」

「うーん、もっと新鮮な驚きが欲しいですよね、棗さんみたいな。う〜ん……」

 

皆が頭を悩ませる中、園子(小)が推薦する。

 

「わっしー先輩は〜?中学生になって、イケメン度が増した気がするよ〜」

「そうだね〜。でもせっかくだったら、リトルわっしーとセットで見たいよね〜」

「東郷さんと須美ちゃんかぁ。素敵かも!あ、それなら若葉さんも良いと思います!」

「うん、そこは外せないね!」

「はわぁ〜、ご先祖様の男装!イケメンすぎて、ドキドキ〜」

 

元の世界での、若葉の人気ぶりを知っている杏の推薦に、誰1人として反対する者はなく、これで4人の候補者が揃った事になる。

 

「棗さん、東郷さん、須美ちゃん、若葉さん!どうしよう!イケメンさんがずらり!」

「うん、みんな男装映えしそうで良いと思う。……けど私、大きな問題点を見つけてしまったよ」

「問題〜?」

 

ようやくメンバーが揃ったというのに、何故か難色を示す雪花。彼女の語る問題点とは如何なるものか。

 

「東郷は、流石に難しくないか?」

「え〜、何でですか〜?わっしー先輩イケメンなのに」

「確かに東郷の顔はバッチリ男装映えすると思うよ。……けど、あの上半身、男に見える?」

「「「「……」」」」

 

それを聞いて息を詰まらせる4人。仮にサラシを用いて見た目をスッキリさせようにも、それだけで凹凸を上手く無くせる自信はない。須美ならギリギリ誤魔化せるかもしれないが、肉体的に成長した東郷では、やはり無理がある。

となれば、東郷に代わって、男装が似合う女子部員を見つけなければならないが……。

 

「そっか……。男装って奥が深いですね……。あっ、だったら千景さんはどうですか?」

「……今、何気にちょっと失礼な事言わなかった?」

「と、特別な意味はありません!でも、案外似合うと思いませんか?」

「んー、確かに!スリムでクールな美男子さん!これは見応えありそうね!」

 

というわけで、本人達の許可なく男装させるメンバーとして選ばれたのは、古波蔵 棗、鷲尾 須美、乃木 若葉、そして郡 千景の4人。

 

「4人揃って、イケメンフォー!」

「何そのユニット名?でもとりあえず、これで漏れはなさそうね!」

「我々の次のミッションは、この4枚を捕獲!という事で良いでしょうか〜?」

「何だか無理矢理連れてくるのは、難しそうなメンバーだね、イケメンフォー」

「……決まりなんだ」

 

いつの間にかユニット名(?)が決まっている事に若干たじろぐ調。

とはいえこの4人、芯が硬い事もあり、半ば強引に連れていくのは困難を極める。特に若葉は手を出そうものなら、そのまま返り討ちにあう恐れがある。

 

「でもちょっと待って!捕獲の前に、一番楽しいこと考えなきゃ!」

「一番楽しい事〜?」

「一口に男装って言っても、色んな系統があるでしょ?誰にどんな系統の男装が似合うか、きっちり考えて準備しなくちゃね!」

「さすが雪花さん!そうですね、後悔しない為にも、ここは慎重に考えましょう!」

 

というわけで、先ずは4人にどんな格好をさせるのかを思案する事に。

最初に、若葉の男装について提案したのは、子孫だった。

 

「ご先祖様は、やっぱり着物かなぁ」

「若葉さんの男着物姿……、良いですね!すっごく良いと思います!」

「そこは間違いなさそうね。棗さんは……そうだな、キリッと燕尾服なんかが良いんじゃない?」

「燕尾服の棗さん!素敵です!絶対に似合うと思います!」

「わっしーは、どんな格好がいいかなぁ。う〜ん……」

「う〜ん……」

 

須美とは付き合いの長い園子ズではあるが、いざ男装させようと考えると、思った以上にしっくりくる衣装が浮かんでこない。

不意に杏がこんな意見を。

 

「あ、あの〜。伊達メガネをかけさせて、学生服の優等生キャラ、なんてどうかな?」

「きゃー、リトルわっしーカッコいい〜!」

「図書館でデートしたいイケメン、ナンバーワンだよ〜!」

 

園子ズが大いに満足した様子を見て、雪花もホッと一息つく。

 

「杏も園子ズも分かってるねぇ。残るは千景だけど、杏はどう思う?」

「うーん、スリムでクールで、影のある美少年……。そんな千景さんには……そうだ、革ジャンです!」

「……革ジャン?」

 

ここまで沈黙を貫いてきた調が、口を開いた。

 

「はい、テーマは、本当は優しい不良少年!普段は人を近寄らせない鋭い目つきの不良少年。だけど雨の日にはずぶ濡れで子猫を抱きしめる!」

「きゃー、千景先輩カッコいい!」

「そこから芽生える珠玉のラブストーリーだ〜!」

「恋のライバル役の優等生須美ちゃんと、1人の女の子を奪い合ったりなんかして!」

「ふむふむ、創作意欲が湧いてきた〜!新作が一本書けそうだ〜!」

「俄然、盛り上がってきたねぇ」

「……」

 

突然の盛り上がり様についていけていない調。

興奮は冷める事を知らず、仕舞いには、園子ズによる即興の寸劇までおっ始める始末。

 

「『バカヤロー、杏は俺の女だ!』とメンズちーちゃん」

「『ぼ、暴力はやめたまえ。杏ちゃんは僕の……』と、メンズわっしー」

「さぁ、あんずんはどっちのイケメンを選ぶのか〜?」

「わぁ、どうしよう……!どっちも素敵すぎて選べない……!」

「よくもまぁそんなに妄想ストーリーが思いつくもんだねぇ」

「あとは、衣装の手配ですね!4人のサイズ、こっそり採寸しなくちゃね」

「……」

 

嗚呼。こんな事なら、タマに付いていって、応援に徹していればよかった、と居心地の悪さを感じながら項垂れる調であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

そんな部室内の只ならぬ雰囲気を察したのであろう、イケメンフォーの1人、郡 千景は扉の前で立ち止まっていた。

そこへもう1人、依頼をこなしてきたばかりの棗が近づいてきた。

 

「部室、入らないのか?」

「静かに。多分だけど今入ると、確実に面倒な事になるわ……」

「?それはどういう……」

 

そんなやり取りをしていると、向こうから残りの2名が、まるで見えない何かの力が働いているかのように、部室に集う事となった。

 

「千景、棗さん、どうしたんだ?そんな所で」

「部室、入らないんですか?」

「はっ、もしやその声は!」

 

と、ここで部室にいた園子(中)が、外にいる4人の気配を察したのか、扉から離れた。千景が止める間もなく、須美の手で扉が開かれ、杏が興奮した様子で叫び始める。

 

「きゃー!イケメンフォーがぁ!」

「い、イケメンフォー?何の事だ」

 

当然何の事かさっぱり分かっていない若葉だが、ふと須美が、扉を開けた拍子に、風に吹かれて足元に滑り落ちた、メモ用紙を拾い上げて、そこに雪花が殴り書きしたであろう文を読み上げる。

 

「『イケメンフォー男装化計画』?」

「あっ、いやこれは、何でもないよ」

「そうそう、この4人を捕まえて無理矢理男装させようだなんて……」

「男装姿で、色んな物語の主人公にしようだなんて、誰も考えちゃいませんよ〜」

「……バラした」

「「「「……」」」」

 

園子ズによるネタバラシで、一瞬で事の次第を察した4人。

数秒の沈黙後、千景が先に口を開いた。

 

「悪いけど、私は辞退させてもらうわ」

「「私も」」

「私もだ」

「「はぁ〜……」」

 

イケメンフォー男装化計画、これにて終幕。

予想通りの展開とはいえ、落胆の色を隠せない雪花と杏。

 

「どうしたんですか?暗い顔して」

「実は……」

 

と、そこへ若葉を追って部室に入ってきたひなたに、杏が説明する。

 

「それで落ち込んでいたんですね。……若葉ちゃんの男装姿なら、すぐお見せできますよ」

「ひ、ひなた」

 

ひなたとしても、幼馴染みの男装姿を見てみたい欲はあったようだが、他の3人の雰囲気を察して、大人しく引き下がったように見受けられる。

 

「私の秘密の写真コレクションを、今日は特別に。だから、元気出してください」

「「やったー♪」」

「若葉さん、素敵です!」

「うん。ひなた、次は和服姿もよろしく」

「はい、楽しみにしていてくださいね!」

「くっ、何故私だけ……」

 

結果的に損した気分になっている若葉。

そんな彼女を見て、良い気味だと言わんばかりの表情を浮かべる千景に気づく者はおらず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして一部の者達によって計画し、結果頓挫した、『イケメンフォー計画』。

だがその計画の火種は、未だに燃え尽きる事なく、不意に再び燃え上がる事になろうとは、この時はまだ、知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 




このストーリーが配信された頃は、まさかまた『イケメンフォー計画』がしばらくしてから遂行されるとは思っておらず……。
ひょっとしたら多数のユーザーから、4人の男装姿を見たいという願望から、後々あのイベントストーリーが生まれたのかもしれませんね。


〜次回予告〜


「……独特」

「取引きまでし始めたぞ⁉︎」

「こだわり……ですか?」

「ペアルック⁉︎」

「まだ気にしてたのか」

「こうなりゃファッションのいろはを……」


〜外見よりも中身で評価されたいお年頃〜

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