結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
本年度最後の投稿となります。
『プリンセッション・オーケストラ』が、シンフォギアのみならず、タカラトミー繋がりでまさかのWIXOSSとのコラボ……!来年も激アツの年になりそうです。
事の始まりは、歌野と水都のオシャレ騒動(?)がひと段落して、数日が経過した頃。
「まぁ騒ぎはあったけど、雪花の新たな一面が見れたわ」
「しかしまぁ、そんなにファッション好きだったとは」
「これでも色々本とか読んで、勉強してるんですよ」
それを聞いて、樹が感心したように呟く。
「ファッション界かぁ……。華やかそうで、何だか憧れます」
「それは違うよ〜、樹ちゃん。ファッションの仕事って、一口で言っても色々あるからねー。寧ろ地味でひたすら大変で、華やかさとはかけ離れた部分も多いんだよ」
「そうなんスか?てか、どんな人達がいるんスかね?」
「モデル、スタイリスト、デザイナー……、どれも違う仕事だし、それぞれ苦労がある。私はスタイリスト方面かなーって思ってるけど、デザイナーにも興味あるんだよね」
「へぇ……」
「どっちにしても勉強しなきゃいけない事は多いし、それを趣味じゃなくて仕事にするのは大変だろうけど」
「ほほぅ……」
いつになく力説する雪花に、風達は感心しっぱなしだ。
「って、何かガラになく語っちゃったよ。あーもう、恥ずかしいね」
「いいじゃない!何だかそういう雪花は新鮮で楽しいわ」
「というか、私の夢より、先輩はどうなんですか?あと、樹ちゃんも!」
雪花にそう振られて、ハッとなる風。この世界に召還される直前では、確か進路について考えていた事を今更ながら思い出したようだ。
「あたし?あたしは、そうね……。この香り立つ女子力を活かせるような仕事を」
「判ったぞ!大食い芸人だな!」
唐突に遮るように現れた球子が、これだと言わんばかりに答えるが、当の本人は……。
「ちっがーう!横から入ってきて的外れにも程がある!女子力関係ないでしょ⁉︎」
「風なら絶対なれると思うんだけどな……」
『(確かに)』
その場にいた殆どの者が、心の中でそう納得してしまうのも、無理はない。
……それはさておき、風自身も納得のいく解答が出てこないのか、自分の事を棚に上げて、妹にスポットライトをあてる。
「そういえば樹は決まってるのよね。ほら、堂々と言ってあげなさい」
「わ、私は……歌手、です」
「そうなんだ!じゃあ樹ちゃんがステージに上がる時は、私が衣装をコーディネートするわ」
「あ、いいですね!雪花さんが選んだ歌野さん達の服、凄く良かったから!」
このやりとりを聞いて何かを思いついたらしく、風の表情が一般する。
「……ふ。あたしの将来は決まったわね!ズバリ、樹のマネージャーよ!」
「風の場合、生活面じゃもうマネージャーみたいなものだけどね」
「寧ろお母さんじゃね?」
「今のオカンっぽさからすると、マネージャーよりも子育て上手の専業お母さんになってそうだぞ」
「じょ、女子中学生にお母さんとか言わないの!」
事実、両親を亡くしてからずっと家事全般をこなしてきている部長が否定したとて、説得力はほぼ皆無かもしれない。
そんな中、彼女だけは皆と違って、うかない表情をしていた。
「(将来の、夢……)」
「?杏さん、どうかしましたか?」
「え?ううん、何でも、ないよ……」
慌てて誤魔化す杏に、昴(中)は訝しむばかりだ。
「夢?」
「そうです。将来なりたい職業とか、こんな仕事をやりたいとか」
翌日。
空き時間に杏が、同じ西暦組の何名かに、『夢』について尋ねる姿が。
「うーむ、そうだな……。あまりそういう事を考える余裕も無かったが、強いて言えば」
「判ったぞ!うどん職人だな!」
「横から入ってきて、全く違う!……まぁ確かにうどんは好きだが」
「若葉なら、なれそうな気がするけどなー」
球子の呟きを他所に、若葉は少し悩む素振りを見せながらも、こう答える。
「私は居合と剣の道を極める事だな。そしてその技術を後世にも伝えていく事だ」
「若葉ちゃんらしいですね」
「ひなたさんはどうなんですか?」
「私は当然、若葉ちゃんの隣にいる事です。若葉ちゃんの隣にいる事が、私の人生の目標です」
「ひなたはブレないな……」
「紅希さんはどうですか?将来の夢とかは?」
「俺か?そーだなー……、そーいや、俺も思いつかないような……」
「紅希さんは、野良猫の世話に奮闘していて度々遅刻している印象がありますよね?でしたら、動物関連の仕事を考えてみるのはどうでしょうか?」
「なるへそ……。それもアリかもな!」
すると今度は、球子が執拗にせがんできた。
「あんず、あんず!タマにも聞いてくれ!」
「大体予想がつくけど……、タマっち先輩は将来、何になりたいんですか?」
「えっへん!タマは冒険家になるぞ!世界中の秘境を巡るんだ!」
「予想通りだな」
「……カッコいい」
「球子もブレねぇな、そのアウトドア好き」
やれやれといった表情の照彦。
と、そこへ偶然通りかかろうとする千景を発見し、声をかけてみる事にする紅希。
「そうだ、千景にも聞いてみるか!おーい、千景!」
「何かしら……?」
「千景さんは、将来の夢とかありますか?」
「夢?そうね……」
「判ったぞ!プロゲーマーだな!」
「既に極めたものを、将来の夢と言えるかしら?」
「おぉう……」
思いもよらぬ返答にたじろぐ球子。そんな彼女を他所に、プロゲーマーはこう語る。
「私の夢は、勇者として大成する事よ。もっともっと、バーテックスを狩って、そして三ノ輪君……に……」
「?最後何て言った?聞こえなかったけど」
「な、何でもないわ……」
「立派な目標だな。流石は千景だ」
「(そのキッカケを作ったのは、あなただけどね)」
「みんな、凄いなぁ……。夢や、叶えたい事が見えてるんだ」
大なり小なり、将来について定まりつつある面々を見て、ますます劣等感に陥る杏であった。
その後も、暇さえあれば勇者部員に『夢』について問い合わせていく杏。全員とまではいかないが、尋ねられた面々から得た返答は、以下の通り。
「郵便配達、かな……。いつか、うたのん達が作った野菜を、色んな所に届けられたら、嬉しいなぁって」(by水都)
「私は当然、農業王になる事よ!ノーギョウ・イズ・マイ・レゾンデートル!」(by歌野)←日本語と英語とフランス語が混合していて理解不能な点も有り
「ワシか?ワシは勿論、相撲が好きじゃからな。今はこんなちぃせぇ体でも、いつかはデッカくなって、豪快に投げ飛ばせるような強い力士になる事じゃ」(by童山)
「海と共にある事……、それだけだ。海の声が聴こえる……」(by棗)←恐らく海に関する職業に就きたい、という解釈
「せやなぁ……。今は中々難しいんやけど、お笑い芸人で頂点極めたいってのはあるで!」(by奏太)
「出来れば、歴史学に関わる仕事をしたいです。なので……、夢は歴史学者ですね」(by須美)
「私は小説家〜!今もネットとかで書いてるんよ〜」(by小園子)
「俺は師匠のような、体育の先生になる事だ!」(by晴人)
「僕は、プロの料理人になる事ですね。といっても、この夢も最近になって見つかったものですから、焦る事はないと思いますよ」(by小昴)
「俺は……、こだわりはないが、物の修理を活かせる仕事があれば、って感じだな。……因みに銀は、お嫁さんになる事だったな」(by小巧)
「そ、そうだよ!そうだけど、もう、言わないでくれぇ!」(by小銀)
「私の夢は小学生の私と同じだよ〜。2年前から変わってないって、何だか嬉しいな〜」(by中園子)
「私も……そうね。その頃と変わってないわね。歴史を学ぶ事は、人類の発展、つまりはお国のために役立つ事だもの。ただ……、最近は、ちょっと別の事を考えていて、まだ上手く言葉には出せないけれど……」(by東郷)
「俺は……、多分大赦の御役目に就く事になるかな。小学生の俺が言ってたのとは違ってくるけど、今はそっち方面でもやるべき事が出来たからさ」(by遊月)
などと、十人十色だ。
そんな調査が続く中、流石に気になった球子が、寮への帰り道に声をかけた。
「どうしたんだ、あんず?最近、色んな人に将来の夢とか聞いて回ってるらしいじゃんか」
「……あのね。わたし、あんまり将来の事とか、考えた事なかったから。みんな、ちゃんと考えてて凄いなぁ、って思ったんだ」
「それは仕方ないだろ。タマ達、小学生の時からずっと丸亀城で訓練とかばっかりだったからな」
「それは、そうだけど……。でも、少し置いてかれてる気分になって……」
「あんず……」
元々病気がちだった事もあって、小学3年生の時に原級留置となり、他の皆が進級したのに対し、1人だけ取り残された過去も相まって、周囲との劣等を感じずにはいられなかったようだ。
普段行動を共にしている球子も返答に困る中……、
「そこだ、タマ坊!抱きしめるんだ〜!」
「寧ろ身長差的に杏先輩が球子先輩を抱きしめるのもアリアリだよ〜!」
「……そこ、いるのバレてるぞ」
「あれ〜、バレちゃった」
「おっかしいな〜」
とぼけた様子で首を傾げるダブル園子の登場で、結局何の解決策も見出せぬまま、その日はお開きとなった。
「伊予島さん。ちょっといいかしら?」
「?安芸先生、どうしました?」
「最近、進路の事で色々と悩んでるそうね。部員達からその事で話題になってて」
それから暫くして、今度は副顧問の安芸から、杏が将来の夢について悩んでいる事で話題となった。側にいたひなたと司も聞く耳を立てている。
「成る程、最近杏さんが色んな人に将来の事を尋ねていたのは、そのせいだったんですね」
「
「何だかすみません、おかしな事を聞き回って」
「いえいえ、何もおかしな事じゃありませんよ」
「そうね。それにこういう時にこそ、相談役として先生という相手もいるわけだから、私でよければ、力になるわ」
「先生……」
「それにね〜。あんずんの将来の夢は、もう決まってるんじゃないかな〜?」
「お、園子先輩もそう思いますか〜?」
「?どういう事ですか?」
「というよりあなた達、また冷やかしにでも来たのですか?」
またしても、何処からともなく現れたダブル園子が横入りする。その側には昴(中)もひっついている。
「あんずんの将来の夢はね、ズバリ、お姫様になる事だ〜!」
「そして姫の王子様はもちろん、司先輩だ〜!」
「な、何でそうなるんだよ⁉︎」
何故か自分の名前が唐突に出てきた事に、珍しくたじろぐ司。
「ていうか、将来の夢って、そういう事じゃ……」
「あ、判ったぞ!あんずの夢はお姫様よりも、タマの妹になる事だな!うん、それもいいな!」
「そうだったんですか⁉︎妹と聞いては黙っていられません」
「何処から出てきた⁉︎」
と今度は何処で聞きつけてきたのか、勇者部員唯一の、妹ポジの少女が強制介入する事に。
「でしたら妹歴12年を超える私が、真の妹になる為の、12の方法を伝授します!」
「良かったな、あんず!あんずは樹に弟子入りして、真の妹を目指すんだ!」
「真の妹って何⁉︎」
「それを今から学んでいくんです!」
「頑張れ、あんず!」
最早荒れ狂う潮流に身を任せるしかないのか。杏は場の空気に流されっぱなしだ。
「え、あの……、えっと……。よ、よろしくお願いします……?」
「任せてください!まず第一に妹とは……」
「犬吠埼樹さん、そこまでです。本来の目的から外れすぎています。土居さんも乃木さん達も羽目を外しすぎですよ」
「「「「すいませ〜ん……」」」」
と言った感じで、安芸による強制介入で事なきを得た杏。その事に感謝しつつ、改めて気持ちを整理する。
「と、とにかく、これからは将来の事も、偶には考えてみようと思います」
「真面目な話をすると、杏さんは本好きを活かして、本に関わる仕事などがいいのではないですか?紅希さんの時もそうですが、趣味や、何気ない日常行動の中から選択するのも一つの手腕ではないかと」
ひなたの真面目な意見を聞いて、ハッとなる杏。
「あ、それは自分に合ってるかも……。本屋さんとか、司書さんとか」
「グッド!もし本屋さんになったら、私の書いた小説を置いてもらおう〜!」
「あぁ、そしたら私は園子先生の本と共に、一日中過ごせるんですね!うっとりします」
「少しずつ見えてきましたね、将来のビジョンが」
何かを見出し始めた様子の杏を見て、かつて彼女と同様に将来の夢について、思い悩んでいた事のある、プロの料理人志望の少年は頷く。
「自分らしさを見つけるのって、案外難しい事なんです。僕自身、同じ勇者や武神の皆さんの力添えがあって、この夢を見出せたようなものですから。だから杏さんも、自分を下に見る事をしなくても、堂々と周りを巻き込んで、相談すれば良いんですよ。正に勇者部五箇条の一つ、『悩んだら相談!』です」
「うんうん!あんずも不安になったら、ドーンとタマに向かってこい!困ったらタマに任せタマえ!」
「勿論、俺だって力になるぜ」
「司さん、皆さん……!ありがとうございます!」
「世界がどんな状況だろうと、夢は生きる糧になります。勇者だって、戦いが全てじゃありません」
「そうね。上里さんの言う通りだわ。誰にだって夢を見る権利はあって当然。……これは源道先生の受けおりではありますが、夢を持つ事は、それだけ人生を謳歌している。そしてその夢に向かっていく姿勢を応援している人達が、この世界には沢山いる事も忘れずにね」
「……はい!」
その力強い返事に、ようやく安心した安芸であった。
「将来の夢……、本屋さんも良いけど、もしかしたら違う道も見つかるかもしれない……。うん、焦らず自分のペースで見つけてみよっかな」
その日、珍しく1人で帰路につこうとする杏。
そんな彼女の目線が、近所の公園に向けられた時、見覚えのある人物達が目についた。
「あれは……、東郷さんに、遊月さん?」
互いの肩が密着するぐらいに隣り合って座っており、彼らも部活帰りのようだが、友奈や兎角と一緒ではない、という光景は、何となく珍しい。もしかしたら、普段から熟読している恋愛小説のようなワンシーンが見られるかもしれない。そんな邪念を抱えつつ、気づかれないように背後まで回り込む事に。
ややあって聞こえてきた2人の会話の内容が……。
「ねぇ晴人君」
「ん?」
「杏さんが、将来の夢の事でみんなに聞き回ってた時の事なんだけど……」
「……武神になって、この世界の秘密を知って、それで本来の夢を捨てる事になっても良いのか、って事だろ?」
「……晴人君には敵わないわね」
「そうだな……。勿論師匠のような大人になりたくて、体育教師を目指したいってのもあるけど……。でも今はもっと視野が広がったっていうか……。みんなと一緒に過ごせるこの時間が大切で、ようやっと取り戻し始めた日常を、守りたい。だからその為に、今の俺がやるべき事が、見つかったんだ。だから俺は大赦に入って、本当の意味での平和を取り戻したい。それを実現しようとするそれも、師匠のような『強い大人』なんじゃないか、って思い始めたんだ」
「……ほんと敵わない」
「そんな事ないさ。それに、こうして須美が隣にいてくれるから、変に力まずに、やってこれるのさ。だから、ありがとな、須美」
「私こそ、晴人君がいてくれたから、こうしてここにいられる。……私も実は将来の事で少し考えが変わり始めたというか……。もし、叶うなら、晴人君の側にずっといられるような、そんな職種も、将来の道として選択できると良いなって、思い始めたの」
「須美……」
「……今はまだ決めきれないわ。これから時間をかけて、お互いゆっくり話し合いましょ。将来の事とか、これからの事とか」
「そうだな」
「……春先でも、今日はまだ冷えそうね。もう少し、このままでいてくれる?」
「……フ。俺も、同じ事言おうとしてた」
「ウフフ」
そんなやり取りを木々の裏で聴いていた杏は、我ながらよく自我を保っていられたと自画自賛する。どうやら将来について悩んでいたのは自分だけではなかったという安心感と、夕暮れ時の肌寒さなど気にならない程の熱量が体から発しているという高揚感が入り混じっている。
事実は小説よりも奇なり、とは聞くが、少なくともその起爆剤となった要因が自分にあった事だけは事実のようだ。
もういっその事、今のやりとりを園子先生にそのまま報告して、新作の小説のネタにしてもらうのも良いのではないだろうか。そうなれば、作家のアシスタント、という夢もアリなのかもしれない。
そんな将来のビジョンにまた一つ華を咲かせる、伊予島 杏であったとさ。
球子って、銀の『お嫁さんになりたい』という夢は鼻で笑ってましたけど、それ以外の面々の夢については、否定的なコメントをしてないんですよね。なんだかんだで相手の意見を尊重するあたり、流石はタマっち先輩ですな(偉)。
因みに『結城友奈は勇者部所属 3巻』曰く、
・夏凜……『私の手で勇者を育てる!』
・友奈……『東郷さんのサポートありきで、将来やりたい事を考える!』
との事。
皆さんも将来やりたい事があれば、その方面の方々にとことん関わっていく、つまりはキッカケを作っていくと良いかもしれません。それが私なりの、小さい頃からの将来の夢を叶えた者としての、ささやかなアドバイスです。
それでは、来年度も自分なりのペースで投稿して参りますので、よろしくお願いします。
〜次回予告〜
「造反神側、か……」
「本命はこーっち」
「あんた、何者だ……?」
「やられた……!」
「こんな作戦を使ってくるなんて」
「漢にも譲れないもんがあるのさ」
〜大人の務め〜