結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
プリンセッション・オーケストラも大円団に終わり、放送後も色々なイベントが催されていますが、何と言ってもWIXOSSとのコラボが月末に控えています!担当声優も興味津々なようで、これを機に新たなセレクターが誕生すればこれ幸いですね。
戦術面でも意外と奥の深い、ハマったら最後、願いを叶えるまで辞められない(闇の)カードゲーム、是非ともご堪能あれ。
赤嶺兄妹との一戦から数日後、再び神託を受けて、造反神に支配された土地の奪還に向かう勇者部であったが……。
「さぁ皆さん、出撃準備はオーケーコラル?樹海に遠征に行きますので」
「いつでも大丈夫だ。私の奥義で勝ちを呼ぶ、名付けて、一閃緋那汰……!」
「……なんか、むず痒くなる技名出してきたな」
「背中痒いの、兎角?はい、カキカキ」
「ちょ……!そういう意味じゃないっての!」
いつにも増してテンションの高い西暦組(+友奈)。愛媛の奪還に対して躍起になっているようだが、何やら変な方向に振り切ってしまっている気がしてならない。
「ネーミングについてはちゃんと本人から許諾済みだ。問題ないぞ」
「そういう問題か……?」
「ま、本人同士がいいなら、な」
「技名に私の名前を入れたいなんて聞いた時には、嬉しくて潤んでしまいました」
感涙(?)するひなたを他所に、高嶋が首を傾げる。
「やっぱり威力が違ってくるのかな、若葉ちゃん」
「そうだな。気分の問題とはいえ、闘いに気力は重要だろう」
これを聞いて、紅希が乗り気になる。
「面白そうだなそれ!なら俺は……、そうだ!精霊下ろしの時には、『連撃!サウザンド・シャドウ・スラッシュ』ってのが使えそうだな」
「……!素敵よ三ノ輪君」
「……流石に長すぎねぇか?」
照彦の冷ややかなツッコミも、我ながらよく出来た技名だと自画自賛する紅希と、陰ながらガッツポーズを取っている千景の耳には届いていない様子だ。
一方、諏訪組の方はというと……。
「私は大抵農作物を技名に取り入れてるから……。そこにみーちゃんの名前もドゥーンと入れるとなると……、『みーちゃんラディッシュウィップ』!うーん凄くストロングな雰囲気」
「わ、私の大根鞭……というネーミングはちょっと……」
「許可降りんかったの」
「これじゃ使用する事は出来ないわ!」
歌野の嘆きを他所に、部室内が和んできたのを見計らい、雪花が号令をかける。
「肩の力が抜けた所で、行きましょっかお姉様。赤嶺が何をしてくるか分からないけど」
「雪花までお姉様呼びはやめてくれ。な、何とも恥ずかしい」
「恥ずかしい?寧ろ嬉しくないか?さぁ調や。コールしてみてくれ。きっとタマに気合いが入る」
「……行こう。タマ、……お姉様」
「よっしゃのしゃあ!良いぞいいぞ!愛媛を救いに、樹海に行くぞぉ!」
若干顔を紅くしながら呟いた調の手を掴んで掲げながら、上機嫌になった球子を筆頭に、土地を奪還するべく樹海へと向かう勇者達。なお、前回の奇襲を踏まえて、現道と安芸も巫女達と共に部室に残ることとなった。
「……で、肝心の赤嶺兄妹は出てこなかった、と」
「はい。敵の総数も以前と比べると比較的減ったように見受けられました。紅希が自分で考案した技名を披露したくて、リスクが無いのをいい事に、早々に精霊下ろしを行使して殲滅した、というのもあるのですが」
弟子からの報告を受けて、腕組みをしながら唸る現道。
あれから1週間。全体的に見ても土地の奪還は順調そのものだった。唯一の懸念点は、先日あれだけ大胆な攻撃を仕掛けてきた赤嶺兄妹が姿を見せない所にあった。
「先日の奇襲が源道先生に阻止されたから、諦めてしまったんでしょうか?」
「そんな単純な相手なら、この上なくやり易い相手なんだがな……」
「そういえば、女子部員の間で棗さんを筆頭に、風さんら上級生をお姉様呼びする事で、当の本人が雲隠れを図ったようですけど、結局樹さんや杏さんにも呼ばれるようになって、本人もまんざらでは無さそうでしたね」
「すぐ終わってしまう流行かと思ってましたが……」
「……そちらは随分と平和そうね」
昴(小)と東郷の報告を受けて、やれやれといった様子の安芸。とはいえそれだけリラックスできる時間を確保できているなら、メンタル面は当分問題はないだろう。
だからこそ、気になってしまうのだ。赤嶺兄妹がここまで何一つアクションを起こしてこないという、この状況に。
「順調過ぎるような……」
「勝たせ続けて相手を油断させる、なんて手口も考えられるが……」
「一応、奇襲にはこっちも警戒してるけどね」
「その気持ちが緩むまで待つつもりなのかな〜?」
「一発逆転でも狙ってるのか?」
などと論議が繰り広げられるが、相手の素性が今一つ判明していない分、結論を出せないでいる。
「勇者部の拠点は、神樹様の世界において中心部に近い所です」
「ここを取られちゃうと、とっても危ないもんね」
巫女達がそう話す中、雪花が戦闘中に気になっていた事を明かす。
「しかもさ、何だかここから離れる程に敵さんたら強くなってない?」
「中心であるこちらの拠点から遠いわけですから、加護から離れる程に敵は強くなる……」
「ゲームでありがちな展開だな。物語が進むにつれて敵も強くなる、ってやつだ」
兎角の後ろで、ゲーマーの千景が同意するように頷く。
そんな中、彼女だけは自信ありげな様子だ。
「益々気が抜けないな!赤嶺達も残念な奴らだ!タマ達を油断させようという目論見は崩れている!」
「油断しか感じられないのですがそれは」
「言いがかりはやめタマえ、海に還してしまうぞ」
「人を海から来たみたいに言わないでください」
巧(小)がジト目で先輩を見つめる中、ハッと起き上がる『お姉様』に注目が集まる。
「……海⁉︎」
「絶対反応すると思った」
「……もし」
「?」
と、ここで遊月が顔を上げて口を開く。
「この快進撃が、俺達を油断させるのとは別の意図があるとすれば……」
「どんなだ?」
「何かの準備をしていて、こちらに手が回っていない、とか?」
「有り得なくはないな。神様が関わっている以上、何が起こるかは未知数だ」
誠也も同感なのか、腕を組みながら呟く。考えすぎかもしれないが、用心に越したことはないだろう。
と、ここで園子(中)がウキウキモードで夏凜の肩をつつく。
「私達も勇者ロボの開発を急ごうよ、にぼっしー」
「さも建設してる風に言うな!……てか私、イジられてる?」
「完成型勇者だから、親しみやすいんじゃないのか?」
「そう言われると……、完成型の辛い所ね」
銀(中)の指摘を受け、人知れずため息をつく完成型勇者であった。
事態が急変したのは、それから2日後の事であった。
「此度も気を緩めず、愛媛を奪還していくぞ!」
「……って、敵さんどこにもおらんで?」
奏太がキョロキョロと見渡すも、確かに敵影が確認できない。高台を陣取っている真琴やダブル昴からも、これといった報告は受けていない。
「透明とかステルス機能を使っているのかしら……?」
「それはないと思う。気配というか、雰囲気で分かる。海もそう言っている」
「流石お姉様。海と対話できるだけあって、よくお分かりで」
『!』
久方ぶりに聞いたその声色に、ハッとなる一同。大勢の視線を向けられた少女は、肩をすくめて歩み寄ってきた。
「全く油断してないのは流石。少しくらい隙があってもいいのに」
予想に反して、真正面からのご登場に面食らう一同だが、すかさず同じ顔つきの少女が声をかける。
「こんにちは!挨拶はきちんと、だよ!」
「そこでそれ使うのかよ⁉︎」
「みんな元気そうで何よりだね。私もお兄様も低血圧気味だよ」
「ふん!投降するっていうなら、サプリと煮干しを分けてあげてもいいわよ」
「前は一本取られちゃったからね〜。色々と準備してきたよ。まぁその間に随分と土地を奪われちゃったけどね」
「無視かい!」
「か、夏凜ちゃん落ち着いて!」
若干青筋を浮かべる夏凜をどうにか宥める真琴。そんなやり取りを無視して、赤嶺は不敵な笑みを浮かべる。
「先に言っておくとね。今回は、精霊を使うんだ」
「精霊……?」
「と言っても、私が持ってきた精霊は造反神が造ったオリジナルでね。人の姿に変身するんだ。こーんな風に」
と、その時。赤嶺友奈の隣に怪しげに蠢く光が出現。その光は友奈達の前で人型となり、そして光が治まった時、そのシルエットを目の当たりにして、一同は驚愕することに。
そのシルエットは、赤嶺友奈よりは背が低く、小学生のように見受けられるが、容姿端麗な外見に加え、胸元が並び立つ赤嶺友奈とさほど変わらない大きさである事が一番の特徴だ。
その特徴に当てはまる人物を、彼らは知っている。
「何ぃ⁉︎」
「わ、私、そっくりな人間が……⁉︎」
鷲尾須美を含む全員の視界に映ったのは、紛れもなく鷲尾須美。文字通り空いた口が塞がらない様子の須美とは裏腹に、向かい合って赤嶺友奈に並び立つ須美はよく見る私服姿で佇んでいる。
にわかには信じがたいが、赤嶺友奈が用意した精霊は、勇者達の容姿を模造する能力が備わっているのは間違いない。当然赤嶺兄妹がそれを活かした戦法を仕掛けてくる事は明白だ。
「これが、新しい攻撃方法……」
「嫌な予感しかしねぇぞ」
「見ての通り、そっくりさんの登場だよ」
「須美が2人……。でもよく見ると、コピーの方は何か変な感じがするな。これなら俺も見分けがつくぜ!」
晴人がそう叫ぶように、目から光を失っている偽物の須美から放たれるオーラは、生きている人間とは別物だ。偽物を送り込んで仲間内で撹乱させるのが目的だとしても、まずもって通用しないと言っても過言ではない。
「須美ちゃんそっくりの敵だから、私達が攻撃するのを躊躇させるのが狙い、なのかしら……?」
「だとしたらせこいわね。大体、友奈に似たあんたと腕比べしてる今、そんな作戦を使った所で……」
「アハッ。勿論それが狙いじゃないよ。今回のテーマは、『自分自身との闘い』ってとこかな」
「ど、どういう事だ⁉︎」
「例えばこの鷲尾須美そっくりになった精霊に……バァーン」
何を思ったのか、隣にいた偽の須美に予備動作なしでパンチを繰り出す赤嶺友奈。見ている全員の思考が停止する中、目を凝らすとそこには、神の力を宿した攻撃を受けたにもかかわらず、平然と立ち尽くす須美の姿が。
「……え。無傷⁉︎」
「ほら、元気そのもの。変身した精霊はね、その姿の元ネタの人じゃないと倒せないルールなんだ」
「えーっ、凄く強いルール」
「何か制約があるように思えますが……」
昴(中)の着眼点に、関心した様子の赤嶺友奈。
「そうだね。すぐバレるから白状するけど、変身した精霊は肉体的な攻撃が一切できない。つまり物理的には無害なんだよ」
「どちらにせよ、私が射貫けば……!」
単なる嫌がらせのつもりなのだろうか。
自分の現し身に向かって躊躇う事なく矢を放つ須美。だがどういうわけか、放たれた矢は偽物に溶け込むように消えてしまう。
「?矢が命中したのに、偽物が消えてない?」
「何だこれは……⁉︎」
「本人であろうと、物理的な攻撃じゃ倒せないよ。肉体的に、じゃなくて精神的に倒さないとダメな敵なんだ」
「……?」
言葉の意味がわからず首を傾げる須美に答えたのは……、
『簡単な事よ、須美』
「キェアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ⁉︎シャベッタァァァァァァァァァァァァ⁉︎」
偽物の精霊が、本物と寸分違わぬ声色で言葉を発した事に驚く晴人。そのリアクションに小さく吹き出しながら、赤嶺友奈の説明が続く。
「この精霊はね、変身した人に対して質問を投げかけたり、論戦を仕掛けてきたりするんだ。その質問に対して答えられなかったり、論戦の末に論破されちゃったりすると……悲しい事が起こるの」
「か、悲しい事⁉︎な、何ですかそれは⁉︎」
嫌な予感がして畏怖する真琴。
「死ぬまではいかないけど、もうこの樹海の中では戦えなくなるだろうね。議論は本人の精神世界で行われるものだから、負けたら飲み込まれる感じ?」
「……随分とタチの悪い作戦を練ってきたな」
改めて、自身の中で危険度がランクアップした事を認識する藤四郎。
そんな中でも、照彦は手甲鉤を構えながら、淡々と呟く。
「要するに、だ。向こうの仕掛ける口喧嘩に勝てば良いって事だろ?」
「因みに、これは個人差もあるけど、本人にとってかなりエグい話題が飛んでくる事もあるからご注意」
「そういう事か」
どうやら今度の相手に対しては、得手不得手が分かれそうだと判断する巧(中)。力押しであれば、脳筋思考寄りが多い勇者部にとってさほど脅威ではないが、精神面となれば、話は別だ。個人差があるとなれば、どんな口撃を仕掛けてくるか、検討もつかない。
「どうかな、この趣向?ある意味自分自身との対話とも言えるから、中々出来ない体験だよ」
自信ありげに語る赤嶺友奈だが、この時点では彼女も大事な点を見落としていたと言っても過言ではない。
「自身との対話……、須美ちゃんとなら、何度もやっているわ」
「私は私とお喋りするし〜」
「息もピッタリだし〜」
「(あそっかー、そのパターンは考えてなかったなー。まいっか)さぁ、説明と警告はきちんとしたからね。そろそろ」
「始める前に、お前を倒せば問題ない」
相手のペースに合わせる必要はない。流れが傾く前にこちらから打って出る。照彦がいち早く行動を開始し、手甲鉤を向けるが……。
「……っ!」
「……ダルい事すんなよ」
寸での所で、これまで姿を現していなかった兄がトンファーで攻撃を凌ぐ。
「勇者ならこの攻撃、正攻法で打ち破ってくれると嬉しいな」
「今度は自分自身との戦いってわけか……!」
「何ともホットな戦いになりそうね!」
「……歌野は楽勝だと思うが」
「皆の衆、気をしっかり保てよ!来るぞ!」
流星の号令に身構える一同。
赤嶺兄妹の周囲に、須美だけでなく、次々と人型が形成されていく。
ここからが本当の戦いだ、と言わんばかりに。
次回は長編になる予感……。首を長くしてお待ちください。
〜次回予告〜
「何とも奇妙奇天烈な妖術……!」
「俺は……信じるぜ!」
「何だろうと打ち破ってやるわ」
「タマがついてるからな!」
「関ヶ原ってわけね」
「……どこまで抗うんだよ」
〜試練(後編) 〜困難に打ち勝つ〜〜