結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

先日の舞台版『結城友奈は勇者である 〜絆〜』から早数週間……。文字通りパワーアップした舞台を目の当たりにして、感無量です……!
願わくば円盤化してほしいところではありますが、向こうではその予定はないと言い切られてしまってますからね……。
でも、なるべく諦めない!ゆゆゆいのCS化もそうだったように、私達1人ひとりの声が積み重なって、結果的に実現する事だって無きにしも非ず、ですからね!




EV28:興奮している人との距離感は要注意

さて、時は少し遡り、樹海化警報が発令される少し前。

勇者部が所有する畑では、諏訪の勇者、白鳥 歌野が汗を垂らしながらも鼻歌交じりに手を動かしていた。その奥では3年近く諏訪で彼女を手助けしてきた童山も、力仕事をこなしている。

無論これだけ広大な土地を2人だけでほぼ毎日耕すのは困難を極める為、時折部員達が手伝いに来ている事も珍しくはない。

 

「いつにも増して上機嫌だな」

「大切な仲間と、大切な畑の世話をする。こんなに楽しい事って、他にあるかしら?」

「否!世の為人の為に仲間と苦楽を共にする!これに勝る宝物はないと見た!」

「いや、色々とあるとは思うけど……」

 

童山の同級生である流星を初め、この日は四国外出身の雪花、棗、そして流星に誘われた、子孫の昴(中)が手伝いに来ていた。

 

「しかし自信満々に言い切られると、不思議とそんな気がしてくるな」

「完全に歌野さんのペースに飲み込まれましたね……」

 

棗と昴(中)が苦笑いを浮かべる中、雪花が汗を拭きながら歌野に尋ねてきた。

 

「歌野、こっちの土も起こし終わったけど、次はどうするの?」

「ネクストステップはこれ!肥料を混ぜて土を作る工程よ。棗さんと雪花さんの方のエリアはこっちの肥料で、流星君と昴君は、そっちのを混ぜてちょうだいね」

「?何か違いでもあるの?」

「植える作物によって、必要な肥料が違うからね。これを間違えると大変な事になるのよ」

「農業って案外、奥が深いんですね」

 

普段は目の前に並べられた食材を調理する側の昴(中)が、野菜を作るまでの行程に舌を巻く中、歌野がここぞとばかりに力説をかます。

 

「そう、農業の世界は果てなきワンダーランド!肥料一つで作物の味も形も、全く別の物になるのよ。それから、肥料だけじゃなくて植える時期も重要!苗の状態や土の状態からベストなタイミングを」

「こ、こんなに語り出すなんて……」

 

思いがけないマシンガントークを前に、流石に責任を感じる昴(中)。

 

「これは誰の責任でもないような……。でも、ちょっと話題変えましょうか」

「そう、ですね。歌野さん、今日は何を植える予定なのですか?」

「今日植える苗は、ナスの予定よ」

「そうなのか……」

「?棗さん、ナス嫌いですか?」

「好き嫌いは良くないぞ!」

「いや、畑を見ていたら、沖縄のサトウキビ畑を思い出してしまってな」

「サトウキビ……?あぁ、確か、沖縄では砂糖の原料になる作物ですね」

 

この場で唯一神世紀育ちの昴(中)が、うろ覚えの知識を口に出す。

 

「沖縄はサトウキビ、北海道は甜菜。同じ砂糖の原料なのにね」

「地域の違いが作物にも出るのね。特に2人は全く逆の地域だものね!」

「確かに、北海道と沖縄では食べ物も全く違う」

 

片や広大な北国、片や島々が連なる南国。同じ日本でも文化を含め、南北で様々な違いが見受けられる事を聞いて、歌野の目は燦々と輝いている。

 

「2人の故郷の事、もっとたくさん聞かせてほしいわ!」

「ちょ、興奮し過ぎ!」

「プリーズテルミー!」

「ち、近すぎますよ⁉︎」

 

流石に危険と判断し、慌てて歌野を引き離す昴(中)。

 

「ソーリー、農業の事となると、つい熱くなりすぎちゃって……」

「別に謝る程の事じゃないけど。私は、普段は農業とか興味あるわけじゃないからなぁ。学校で習った知識と、近所で何を植えてたか位しか、分からないんだけど」

「良いのよそれ位で。教えて!」

「わっ⁉︎また近いから落ち着いて!」

 

どうにも人は興奮状態だと、視野が狭まって相手との距離感を見誤ってしまいがちだ。自分も気をつけよう、と昴が思う中、雪花が北海道の農作物について語り始める。

 

「私の地元だと、ジャガイモとかトウキビとか」

「サトウキビ、だとぉ⁉︎北海道にもサトウキビ畑があるというのか⁉︎」

「サトウキビじゃなくて、トウキビ。そっか、こっちではとうもろこしって言うんだよね」

「ほほぉ!とうもろこしにそのような呼び名があったとは驚きだ!」

「同じ作物でも、地域によって呼び名が違うんですね」

「これも気になる研究課題よね」

「研究熱心だなぁ、歌野は」

「他には?北海道ではどんな物が穫れるのかしら?」

「後は、メロンとか玉ねぎとか、人参とか」

「沖縄では獲れないものばかりだな」

 

世間的にはポピュラーな農作物でも、気候など様々な条件が合わなければ、その地で作物は育たない。とりわけ沖縄は、独特な文化の下で発展してきた関係上、農作物にもその影響は出ているようだ。

 

「それからそれから〜?」

「思い当たるのは、その位かな。でも個人的には、ラベンダー畑の方が好きだけど」

「食べ物ではないではないか!」

「食べ物から離れなさいよ流星!」

 

ある意味予測できた反応に、ツッコミも億劫になりつつある雪花であった。

 

「そういえば、歌野は畑は好きだけど、お花畑には興味ない感じ?」

「そんな事ないわ!お花だって好きよ。けど、食べ物以外を育てる事にはあまり興味がないの」

「しかし、何故歌野はそんなに食べ物への執着が強いんだ?」

「実家が農家で、生まれた時から農業の英才教育を受けてきた、とか?」

 

それは、この地に召還されてからずっと気になっていた、諏訪組における異様なまでの、農業に対する執着。勇者部は癖の強い面子が数多く集っているが、その中でも彼女らは異質を放っているといっても過言ではない。

雪花達の問いに対し、歌野は首を横に振る。

 

「小さい頃から畑仕事は好きだったけど、私の実家は農家じゃないわ」

「じゃあ何でそんなに?」

「農業に本気になったのは、バーテックスの襲撃で諏訪の食糧事情が悪化したのがキッカケね。大好きな街が壊されて、食べる物も少なくなって、落ち込むみんなを見ているうちに、気付いたの。食べ物が足りないなら、作ればいいって。諏訪にはまだ、綺麗な土と水が残ってるって。それで、農家の人達を励ましながら一緒に作業をしているうちに、どんどん夢中になっていったの」

 

それを聞いて、納得した様子の雪花達。特に西暦の時代、四国外で戦ってきた勇者達にはバーテックス襲来後の苦労が身に染みて理解できる。

そしてこの精神が、メンタルの強靭さにも影響している事だろう。事実、赤嶺兄妹が諏訪の勇者達に精神攻撃を仕掛けなかったのも、それを聞けば何となく頷ける。

 

「立派だな、歌野は」

「そうですね。ごめんね、何も知らずに」

「ん?どうしたのみんな?そんな暗い顔しないで。農作業に悲しい顔は似合わないわ!スマイルスマイル!」

 

底抜けのポジティブさも、彼女の取り柄のようだ。改めて、彼女が勇者に選ばれて良かったと思う昴(中)であった。

 

「さ、気を取り直して棗さん、沖縄の農作物の事、教えて!」

「そうだな……。沖縄はやはり、サトウキビ畑が一番多いな」

「他には?」

「後は、マンゴーやパイナップルのような、トロピカルフルーツを多く作っていた」

「おぉ!沖縄ではそのような果物も穫れたのか!」

「ワォ!知ってはいるけど、木になってる所は見た事がないのよ!」

 

流石に諏訪でも、果物の栽培まではしていなかった為、歌野も大いに驚いている。

 

「私も!本当、北海道とは全く違うんですね」

「うむ!それぞれに良き所が見受けられる!」

「色んな違いが見えてきたね」

 

などと口々に感想を述べる中、普段は食材を調理する側の昴(中)も、広大な畑を見渡しながら呟く。

 

「ちょっと面白いかもしれませんね」

「まぁ昴君!遂に農業の魅力に目覚めたのね!」

「いや、ただちょっと興味を持っただけですが……」

「それで、他にはどんな作物が?」

「……」

 

更に情報を引き出そうとする歌野だが、どういう訳か、棗の様子がおかしい。先程と打って変わって、陰りが見受けられる。

 

「棗さん、どうしたんですか?そんなに暗い顔して」

「あ、すまない。ちょっと、な……」

「棗さん、農作業にブルーなフェイスは似合わないわ。良かったら訳を話してみません?」

「私らに話して楽になるなら」

「そうですね。勇者部五箇条一つ、『悩んだら相談』ですから」

「うむ!我々はいつでも相談に乗ってあげられるぞ!」

「心配かけてすまない。つい、あの時の事を思い出してしまってな」

「あの時、とは?」

「バーテックスが襲来したあの日、サトウキビ畑が奴らに踏み潰されてしまって……。お爺が大切に育てていた畑が、あの一瞬で全てダメになってしまったんだ」

 

世界中で発生したとされるパンデミックは、農作物にも悪影響が出ていたのは容易に想像できる。人類の粛清の為、それまで丹精込めて育ててきた作物など意に介さず、全てを蹂躙したのが、天の神なのだ。

到底、納得できる話ではない。粛清の為とはいえ、神様と言えど、人間の努力を一瞬にして無に返す権限は存在しないのだ。

 

「酷い話ね……」

「バーテックス、許せない!」

「もう一度……、美しく育ったサトウキビ畑が見たい……」

 

それを聞いた歌野が、落ち込みつつある棗を元気付けようと、こんな提案をもちかける。

 

「そこまで言うなら、作ってみましょうか!」

「?そんなに簡単に作るもの変えちゃっていいの?」

「ナスはナスで作るけど、結構畑は広いし、もう一つくらい増やしても大丈夫よ!それに、食べ物っていうのは希望の象徴なのよ?バーテックスに潰された畑を作り直す、いいじゃない!」

「逞しいな、歌野は」

「うたのんはいつもこうですよ」

「あ、水都さん!」

 

と、そこへ外に出ていた諏訪の巫女が、大きな荷物を持った童山と共にこちらへ向かってきた。どうやら荷物持ちとしてここまで運んでくれたようだ。

 

「お疲れ様、お弁当とお茶持ってきたから、休憩にしたら?」

「えぇタイミングで持ってきてくれたから、助かったのぉ!」

「丁度お腹が空いてきたとこだったの!」

「確かに、働きすぎてお腹ペコペコ!」

「うたのんの畑の野菜たっぷりだから、美味しいよ」

 

そうしてレジャーシートを広げて、中身が色鮮やかな弁当箱を並べる一同。

そんな中、何故か棗の前に弁当箱が集中している。

 

「棗さんは、特にたっぷりと召し上がれ!」

「何故、私?」

「この野菜には、希望がいっぱい詰まってるから!これ食べて、サトウキビ作り、頑張りましょう!」

「ありがとう。では遠慮なく……」

「いただきます!……んまい!んまい!」

「ちょ、流星がっつきすぎ!ってかそれ私の!」

 

棗の横から、これまた豪快に箸を使って野菜を口に運んでいく流星。棗も負けじと箸を動かし、自分の取り分が無くなる事に心配する雪花。

そんな彼らのやりとりを見つつ、昴(中)は今一度畑を見渡しながら、こう呟く。

 

「逞しく育つと良いですね」

「!そうね」

 

これからは、畑で農作物を作る工程にも目を向けながら料理に励んでいこう、と決意を新たにする昴(中)であった。

 

 

 




いよいよ『リリカルなのは』の新作が迫ってきてますね。楽しみです!


〜次回予告〜


「夫婦喧嘩、か?」

「生えてきたのは、バーテックスでしたね」

「何にでも例外はあるわ!」

「興味深い視点ね」

「お花見楽しみ〜」


〜桜が川沿いに多いのは、土手を守る為〜

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