結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
アニメ『ライアーゲーム』も2クール目に突入しましたが、このペースだと準決勝まで辿りつかない気がして……。個人的に準決勝の『イス取りゲーム』が原作の中では一番面白いと思っているので、ぜひ見てみたい……。
「ムゥ……!綾川のしだれ桜、さぞかし見頃だったのでしょうね……」
私も一緒に見たかった。
言葉に出ずとも、その感情が表情からひしひしと伝わってくる。
「私もひなたと、あの桜を見たかったが、その……、見られたのは偶々と言うか……」
「それは……分かってます。でも、それでも……!」
そんなやり取りを聞きつけたのか、部室に戻ってきた冬弥と藤四郎が何事かと詰め寄る。
「ふ、2人ともどうしたんスか⁉︎」
「夫婦喧嘩、か?」
「あらまぁ、夫婦だなんて」
「いや、これは喧嘩というか……」
「な、なんかスマン」
半ば冗談のつもりで茶化したはずが、間に受けられてしまい、若干の戸惑う藤四郎。
「綾川のしだれ桜、私も若葉ちゃんと見に行きたかったんです……」
「それってこないだ、兎角達と一緒に見たっていうアレか」
「はい。美しく力強いしだれ桜をバックに若葉ちゃんの写真を……、ウゥ、痛恨の極みです!」
「そこまで深刻な事なのか……」
「だったら明日、お花見に行くっていうのはどうなんスか?善は急げって言うじゃないスか」
「そうしたいのは山々だが、流石に急すぎじゃないだろうか……」
「そう、ですね。やるにしても、皆さんの予定や準備も加味しないと」
彼らのやりとりを聞いていた昴(小)も難色を示す中、その隣にいた園子ズはというと……。
「お花見なら、きっと明日でも大丈夫だよ〜」
「お花見楽しみ〜。ね〜、風先輩?」
これを受けて、部長の意思は即決だった。
「そうね。それじゃ明日は、勇者部のみんなでお花見と行きますか!」
『おぉ〜!』
「それじゃあみんなに知らせないと!」
晴人を初め、早速外に出ているメンバーに招集をかけに行く部員達。
一方、ひなたは突然の案に戸惑っている様子だ。
「風さん、藤四郎さん、良かったんですか?」
「こういうノリには慣れてるだろうからな、特に元祖勇者部員は」
「まぁ綾川……だっけ?そこに行くのはちょい難しいかもだけど、みんなでお花見を楽しめればいいのよ。桜ものんびりしてると散っちゃうじゃない?冬弥も言ってたけど、善は急げって感じ」
「良かったな、ひなた」
「はい!」
満面の笑みを浮かべるひなた。
お花見決行の話はすぐに伝わり、皆から賛同を得る事となった。
「話は聞いたわ。お花見なんてとってもエクセレント!」
「桜は日ノ本の国を象徴する花の一つ。みんなで鑑賞し護国精神を養うのにもうってつけね」
「その目的には賛同できねぇけどな」
「む、難しい事はよく分からないけど、すっごく楽しみだね!」
「えぇ。そろそろ満開だとテレビで言ってたし、いいんじゃないかしら」
「ほらね〜ひなタン。みんなお花見に賛成だったでしょ〜?」
「えぇ。勇者部の団結力を感じます!」
さて、お花見自体は決まったものの、話し合う事は他にも沢山あるわけで……。
「でもこっちは何だかんだで大所帯だし、色々と準備が必要ね」
「球子さん。こういう時、必要なものって何かありますか?」
「レジャーシートとかなら、タマがそれなりに持ってるからな!」
「水筒は……、この人数分を持ち歩くのは大変だからな。現地調達で良いだろう」
「食べ物は軽食の類を僕と昴君で担当します」
「私も手伝うわ」
「私も。この人数だと大変でしょうから」
「私も協力するよ」
「ありがとうございます。須美ちゃん、東郷さん、美羽さん」
料理担当のダブル昴に加えて、頼もしい補助がついてくれるなら、当日のご飯に困る事はないだろう。
そんな中、この2人が手を挙げる。
「はいは〜い。すばるん、私にも教えて〜」
「私にも教えて〜」
「……2人とも料理出来たっけ?」
「つ、ついていった方がいいっすね」
ダブル銀が、2人の料理スキルを思い返し、不安に思ったのか、パーティーに加わる事に。銀も、普段から自炊や、親の代わりに弟達へご飯を作る事がある為、補助に加わっても問題ないだろう。
「これだけ担当の割り振りがしっかりしてるなら、今回アタシは楽させて貰いましょうかね」
そう呟いた部長に対し、今度は流星が勢いよく手を挙げた。
「風さんに質問だっ!おやつは300円まででいいのか⁉︎」
「子供か」
「いやまぁ、中学生やし、子供の内には入るやろ」
「そうねぇ……今回は風先生の大サービスで、1000円までだぁ!」
『オォ!』
流星を初め、何人かの歓声が上がる中、夏凜が小声でこんな確認を。
「ちょっと確認なんだけど、……煮干しはおやつに含まれないわよね?」
「おいおい。まさか1000円分以上の煮干しを貪り食う気じゃないだろうな……」
「ね、念の為の確認よ!」
そして迎えた、お花見当日。
「いい具合に晴れて良かったね、誠也」
「あぁ。こうやってみんなで歩くのも、久しぶりな気がする」
「徒歩遠足みたいで楽しいです」
などと和気藹々に歩き続ける中、皆の注目はやはり、男子達が手分けして運んでいる重箱に向けられていた。
「みんなが作ってくれたお弁当、早く食べたいな〜」
「腕によりをかけたので、期待していてくださいね。唐揚げは自信作ですから」
「そいつは楽しみだ」
といった感じの、遊月と須美のやりとりを、その後方にいる東郷が憎々しげに見つめている。
「……遊月君とのそのやり取りは、私がやりたかったのに」
「?須美ちゃんなら、自分がやったのと同じようなもんでしょ」
「……違う。それは、断じて……」
違いは分からなかったが、これ以上は触らぬ神に祟りなし、と言うやつだと判断した雪花は、距離を置く事に。
そんな中、話題は花見弁当作りに携わったこの2人に切り替わった。
「そういえば、園子さん達もお料理を手伝っていたそうですが、どうでしたか?」
「すんごく頑張ったんよ〜」
「ね〜。すばるん達に教わるの、とっても楽しかった〜」
「いやいや、園子達の手つき見てて、何回指切り落とすかと思ってハラハラしたわ……」
「見てるこっちは常に肝を冷やしたからな」
「心配ご無用〜。ちゃんと10本あるよ〜」
「もしかしたら11本になってるかも〜」
「それはもうホラーの領域だろ……」
やれやれといった表情で呟く巧(小)の隣で、園子(小)が目を輝かせながら呟く。
「でも〜、バーテックスと戦ってた時の傷とかすぐに治るから〜、もしかすると神樹様の力で指の一本や二本、ニョキニョキ〜って!」
「それは……、興味深い視点ね」
と、その時だった。一同の懐にある端末から、けたたましく警報が鳴り響いたのは。
「いやタイミングゥ!」
「生えてきたのは、バーテックスでしたね」
「花見の最中じゃなかったのは、不幸中の幸いだな」
「楽しんでるのを邪魔されたくないですからね」
「だな!バーテックスなんかさっさとやっつけちゃえばいいんだし!」
「大丈夫だと思うけど……、みんな、気をつけてね!」
「どうしたんだ風さん、何か心配事でも?」
どうやらこの地を狙って侵攻してきたと思われるバーテックスと交戦する中、風のため息反応する若葉。
思えば彼女、今朝から何処となく覇気が薄れているように感じていたが、戦闘時にはそれがより顕著に表れていた。
「いやー、お弁当をひなたと水都と、美羽に任せてきたじゃない?」
「そりゃあそうだろ。弁当箱持ったまま戦うわけにはいかねぇしよ。だから表立って戦闘に参加しない巫女に預ければ問題ないだろ?」
「アタシ達が戻るまでに、全部食べきっちゃってないか心配で……」
「な、なんだとぉ⁉︎」
「……?」
風の発言に流星が驚く中、他の面々は空いた口が塞がらない、といった表情を浮かべている。
「お姉ちゃんのせいで、みんなポカンとしちゃってる……、流星さん以外……」
「え、そこまで衝撃なの?」
「美羽がそんな事する奴だと思うか?」
美羽と付き合いが誰よりも長い誠也が、さも当然と言わんばかりに指摘する。
「そもそもあの3人、風や流星ほど食い意地は張らないぞ」
「く、食い意地とかそういう問題じゃないの!だって、分からないじゃない……!昴達の作った料理、美味しいもの!」
「そ、それは……ありがとう、ございます?」
戸惑いつつも取り敢えずお礼を素直に受け止める昴(小)。
「でもあの弁当見たら、ちょっとつまみ食いしたくなるよなー」
「タマの気持ち、分かる」
そんな中、樹海の一角にて一際異様な音が鳴り響く。
その発信源は言わずもがな。
「……あ」
「今ので弁当の心配するほど空腹だって事は、よーく分かったわ」
「くっ……!このワガママボディが憎い……!」
「全然羨ましくないワガママボディね……。自慢の女子力が泣いてるわよ。……煮干しくらいならあげても良いわよ?」
「気にしないで夏凜。……空腹は、最高のスパイスよ」
「うむ!お花見決行の為、そしていち早く風のお腹を満たす為、更に加速して参る!」
「ワシも続くぞい!」
これを見て、何故か躍起になる流星と、その親友である童山。豪快に敵を蹴散らしていくその姿勢に、残された面々は目が点だ。
「な、何だか凄い気合い……」
そうして彼らに続いて武器を振り下ろす一同だったが、依然として敵の侵攻にピリオドがつかないでいる事に、段々と風の苛立ちが増してきていた。
「まだ来るぞ!」
「アタシの女子力がそんなに惹きつけてしまうの⁉︎さては、バーテックスも花見弁当を狙ってるとみた!」
「でもアイツら、うどんにも興味を示さなかったぞ。なぁ紅希」
「あぁ、前にうどん玉を見せても、無反応だったし」
それを聞いて、ハッとなる昴(小)。以前、兄から聞いた話によれば、西暦時代にバーテックスに対する有効打を模索する中、うどんに興味を示すか否かを試した、という話があり、当初は笑い話の類だろうと思っていたが、その当事者が目の前にいたとなれば……。
「(あの噂、本当だったんだ……)」
「何にでも例外はあるわ!弁当とおやつ取られてからじゃ遅いのよ!」
「そ、それは困る!」
球子らが喚く中、樹が縮こまりながら頭を下げる。
「えっと……すみません。姉はお腹が空きすぎてちょっと我を失ってるみたいです」
「樹さん……。偶に容赦ないワードが飛び出てきてちょっと怖いです」
「どんなに訓練しても、ハングリーは強敵だもの、仕方ないわ」
「風さん。食いしん坊な所あるけど、普段はそんな事ないのにね。どうしたんだろ?」
「今日はビーストモード一歩手前って感じだもんね〜」
「どんなモードだよそれ……」
「でも確かに、いつもと様子が違うような……」
元々大食感である事は承知していたが、ここまで冷静さを失っている部長は見た事がなく、兎角らも疑問に思っている様子だ。
その問いに答えたのは、やはり妹だった。
「それが、いつもは早起きしてお弁当作るから、朝ごはんもしっかり食べるんですけど……、今朝は珍しく寝坊しちゃって、朝ごはんを食べる時間がなくなっちゃったんです……」
「!じゃあまさか、風先輩は朝ごはんを食べずに戦ってるんですか⁉︎」
友奈の悲痛(?)な問いかけに、風も無言で頷く。抑えていた空腹の感情も、限界に近づきつつあるようだ。それを見て、口元を両手で塞ぐ友奈。
「辛い……!そんなの、辛すぎるよ!何で、風先輩が犠牲にならないといけないの⁉︎」
「犠牲って、んな大袈裟な」
「仕方ないのよ友奈。これも、部長にして上級生の務めだから……」
「バーテックス、絶対に許せない!」
いつになく真剣な眼差しを敵に向ける友奈が、依然として戦闘中の流星に続いて交戦に出る。
「いや部長も上級生も、バーテックスも関係ないから!」
「でもまぁ、朝メシ抜きで戦うのはきちぃよな!」
「おむすび一個くらい、先に貰えば良かったんじゃ?」
「ダメよ。後輩がまだ食べてないのに、1人だけつまみ食いなんて真似、出来るわけないじゃない!」
「あ、そこは律儀なんですね」
「立派な心がけなんだか、てんでダメなんだか、判断に困るわね……」
複雑な表情を浮かべる真琴と夏凜。
その間にも、風の腹の虫は更に大きな音を鳴らす。
「フーミン先輩のお腹も警報、何だか大きくなってる気がするね〜」
「よーしみんな!風先輩の為に、一気に全部やっつけちゃおー!」
といった感じで、いつも以上に一致団結して飛び上がる面々。その気遣いに少々目元を潤わして、風も後に続いた。
こうして無事に戦闘を終え、巫女と合流した一同は、目的地に到着。
当然ながら、先ずは風の腹を満たす事から始まり、文字通り『花より団子』状態となった勇者部。
ひなたも、食後の散策で散る桜の花びらをバックに写る若葉を、写真に収め続けており、上里流のお花見(?)を満喫して、大満足といった様子だ。
遊月も、久方ぶりに仕事から離れて腰を下ろし、東郷と共に肩を並べて桜色の風景を堪能していた。
「(これからも、こうして須美と、この景色を見られますように)」
と、心の中で強く願いながら。
今年はバタバタしてお花見どころではありませんでしたが、いつか勇者部みたいにお花見を堪能できる時間を作りたいな、と思った作者でした。
〜次回予告〜
「ヤマノテセンゲーム……」
「そんな才能が開花していたとは……」
「ムズッ……⁉︎」
「すぐ終わっちまうぞ⁉︎」
「いっくよ〜!」
〜才能は何処で開花するか分からないから面白い〜