結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

アニメ『ライアーゲーム』も2クール目に突入しましたが、このペースだと準決勝まで辿りつかない気がして……。個人的に準決勝の『イス取りゲーム』が原作の中では一番面白いと思っているので、ぜひ見てみたい……。


EV29:桜が川沿いに多いのは、土手を守る為

「ムゥ……!綾川のしだれ桜、さぞかし見頃だったのでしょうね……」

 

私も一緒に見たかった。

言葉に出ずとも、その感情が表情からひしひしと伝わってくる。

 

「私もひなたと、あの桜を見たかったが、その……、見られたのは偶々と言うか……」

「それは……分かってます。でも、それでも……!」

 

そんなやり取りを聞きつけたのか、部室に戻ってきた冬弥と藤四郎が何事かと詰め寄る。

 

「ふ、2人ともどうしたんスか⁉︎」

「夫婦喧嘩、か?」

「あらまぁ、夫婦だなんて」

「いや、これは喧嘩というか……」

「な、なんかスマン」

 

半ば冗談のつもりで茶化したはずが、間に受けられてしまい、若干の戸惑う藤四郎。

 

「綾川のしだれ桜、私も若葉ちゃんと見に行きたかったんです……」

「それってこないだ、兎角達と一緒に見たっていうアレか」

「はい。美しく力強いしだれ桜をバックに若葉ちゃんの写真を……、ウゥ、痛恨の極みです!」

「そこまで深刻な事なのか……」

「だったら明日、お花見に行くっていうのはどうなんスか?善は急げって言うじゃないスか」

「そうしたいのは山々だが、流石に急すぎじゃないだろうか……」

「そう、ですね。やるにしても、皆さんの予定や準備も加味しないと」

 

彼らのやりとりを聞いていた昴(小)も難色を示す中、その隣にいた園子ズはというと……。

 

「お花見なら、きっと明日でも大丈夫だよ〜」

「お花見楽しみ〜。ね〜、風先輩?」

 

これを受けて、部長の意思は即決だった。

 

「そうね。それじゃ明日は、勇者部のみんなでお花見と行きますか!」

『おぉ〜!』

「それじゃあみんなに知らせないと!」

 

晴人を初め、早速外に出ているメンバーに招集をかけに行く部員達。

一方、ひなたは突然の案に戸惑っている様子だ。

 

「風さん、藤四郎さん、良かったんですか?」

「こういうノリには慣れてるだろうからな、特に元祖勇者部員は」

「まぁ綾川……だっけ?そこに行くのはちょい難しいかもだけど、みんなでお花見を楽しめればいいのよ。桜ものんびりしてると散っちゃうじゃない?冬弥も言ってたけど、善は急げって感じ」

「良かったな、ひなた」

「はい!」

 

満面の笑みを浮かべるひなた。

お花見決行の話はすぐに伝わり、皆から賛同を得る事となった。

 

「話は聞いたわ。お花見なんてとってもエクセレント!」

「桜は日ノ本の国を象徴する花の一つ。みんなで鑑賞し護国精神を養うのにもうってつけね」

「その目的には賛同できねぇけどな」

「む、難しい事はよく分からないけど、すっごく楽しみだね!」

「えぇ。そろそろ満開だとテレビで言ってたし、いいんじゃないかしら」

「ほらね〜ひなタン。みんなお花見に賛成だったでしょ〜?」

「えぇ。勇者部の団結力を感じます!」

 

さて、お花見自体は決まったものの、話し合う事は他にも沢山あるわけで……。

 

「でもこっちは何だかんだで大所帯だし、色々と準備が必要ね」

「球子さん。こういう時、必要なものって何かありますか?」

「レジャーシートとかなら、タマがそれなりに持ってるからな!」

「水筒は……、この人数分を持ち歩くのは大変だからな。現地調達で良いだろう」

「食べ物は軽食の類を僕と昴君で担当します」

「私も手伝うわ」

「私も。この人数だと大変でしょうから」

「私も協力するよ」

「ありがとうございます。須美ちゃん、東郷さん、美羽さん」

 

料理担当のダブル昴に加えて、頼もしい補助がついてくれるなら、当日のご飯に困る事はないだろう。

そんな中、この2人が手を挙げる。

 

「はいは〜い。すばるん、私にも教えて〜」

「私にも教えて〜」

「……2人とも料理出来たっけ?」

「つ、ついていった方がいいっすね」

 

ダブル銀が、2人の料理スキルを思い返し、不安に思ったのか、パーティーに加わる事に。銀も、普段から自炊や、親の代わりに弟達へご飯を作る事がある為、補助に加わっても問題ないだろう。

 

「これだけ担当の割り振りがしっかりしてるなら、今回アタシは楽させて貰いましょうかね」

 

そう呟いた部長に対し、今度は流星が勢いよく手を挙げた。

 

「風さんに質問だっ!おやつは300円まででいいのか⁉︎」

「子供か」

「いやまぁ、中学生やし、子供の内には入るやろ」

「そうねぇ……今回は風先生の大サービスで、1000円までだぁ!」

『オォ!』

 

流星を初め、何人かの歓声が上がる中、夏凜が小声でこんな確認を。

 

「ちょっと確認なんだけど、……煮干しはおやつに含まれないわよね?」

「おいおい。まさか1000円分以上の煮干しを貪り食う気じゃないだろうな……」

「ね、念の為の確認よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた、お花見当日。

 

「いい具合に晴れて良かったね、誠也」

「あぁ。こうやってみんなで歩くのも、久しぶりな気がする」

「徒歩遠足みたいで楽しいです」

 

などと和気藹々に歩き続ける中、皆の注目はやはり、男子達が手分けして運んでいる重箱に向けられていた。

 

「みんなが作ってくれたお弁当、早く食べたいな〜」

「腕によりをかけたので、期待していてくださいね。唐揚げは自信作ですから」

「そいつは楽しみだ」

 

といった感じの、遊月と須美のやりとりを、その後方にいる東郷が憎々しげに見つめている。

 

「……遊月君とのそのやり取りは、私がやりたかったのに」

「?須美ちゃんなら、自分がやったのと同じようなもんでしょ」

「……違う。それは、断じて……」

 

違いは分からなかったが、これ以上は触らぬ神に祟りなし、と言うやつだと判断した雪花は、距離を置く事に。

そんな中、話題は花見弁当作りに携わったこの2人に切り替わった。

 

「そういえば、園子さん達もお料理を手伝っていたそうですが、どうでしたか?」

「すんごく頑張ったんよ〜」

「ね〜。すばるん達に教わるの、とっても楽しかった〜」

「いやいや、園子達の手つき見てて、何回指切り落とすかと思ってハラハラしたわ……」

「見てるこっちは常に肝を冷やしたからな」

「心配ご無用〜。ちゃんと10本あるよ〜」

「もしかしたら11本になってるかも〜」

「それはもうホラーの領域だろ……」

 

やれやれといった表情で呟く巧(小)の隣で、園子(小)が目を輝かせながら呟く。

 

「でも〜、バーテックスと戦ってた時の傷とかすぐに治るから〜、もしかすると神樹様の力で指の一本や二本、ニョキニョキ〜って!」

「それは……、興味深い視点ね」

 

と、その時だった。一同の懐にある端末から、けたたましく警報が鳴り響いたのは。

 

「いやタイミングゥ!」

「生えてきたのは、バーテックスでしたね」

「花見の最中じゃなかったのは、不幸中の幸いだな」

「楽しんでるのを邪魔されたくないですからね」

「だな!バーテックスなんかさっさとやっつけちゃえばいいんだし!」

「大丈夫だと思うけど……、みんな、気をつけてね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ風さん、何か心配事でも?」

 

どうやらこの地を狙って侵攻してきたと思われるバーテックスと交戦する中、風のため息反応する若葉。

思えば彼女、今朝から何処となく覇気が薄れているように感じていたが、戦闘時にはそれがより顕著に表れていた。

 

「いやー、お弁当をひなたと水都と、美羽に任せてきたじゃない?」

「そりゃあそうだろ。弁当箱持ったまま戦うわけにはいかねぇしよ。だから表立って戦闘に参加しない巫女に預ければ問題ないだろ?」

「アタシ達が戻るまでに、全部食べきっちゃってないか心配で……」

「な、なんだとぉ⁉︎」

「……?」

 

風の発言に流星が驚く中、他の面々は空いた口が塞がらない、といった表情を浮かべている。

 

「お姉ちゃんのせいで、みんなポカンとしちゃってる……、流星さん以外……」

「え、そこまで衝撃なの?」

「美羽がそんな事する奴だと思うか?」

 

美羽と付き合いが誰よりも長い誠也が、さも当然と言わんばかりに指摘する。

 

「そもそもあの3人、風や流星ほど食い意地は張らないぞ」

「く、食い意地とかそういう問題じゃないの!だって、分からないじゃない……!昴達の作った料理、美味しいもの!」

「そ、それは……ありがとう、ございます?」

 

戸惑いつつも取り敢えずお礼を素直に受け止める昴(小)。

 

「でもあの弁当見たら、ちょっとつまみ食いしたくなるよなー」

「タマの気持ち、分かる」

 

そんな中、樹海の一角にて一際異様な音が鳴り響く。

その発信源は言わずもがな。

 

「……あ」

「今ので弁当の心配するほど空腹だって事は、よーく分かったわ」

「くっ……!このワガママボディが憎い……!」

「全然羨ましくないワガママボディね……。自慢の女子力が泣いてるわよ。……煮干しくらいならあげても良いわよ?」

「気にしないで夏凜。……空腹は、最高のスパイスよ」

「うむ!お花見決行の為、そしていち早く風のお腹を満たす為、更に加速して参る!」

「ワシも続くぞい!」

 

これを見て、何故か躍起になる流星と、その親友である童山。豪快に敵を蹴散らしていくその姿勢に、残された面々は目が点だ。

 

「な、何だか凄い気合い……」

 

そうして彼らに続いて武器を振り下ろす一同だったが、依然として敵の侵攻にピリオドがつかないでいる事に、段々と風の苛立ちが増してきていた。

 

「まだ来るぞ!」

「アタシの女子力がそんなに惹きつけてしまうの⁉︎さては、バーテックスも花見弁当を狙ってるとみた!」

「でもアイツら、うどんにも興味を示さなかったぞ。なぁ紅希」

「あぁ、前にうどん玉を見せても、無反応だったし」

 

それを聞いて、ハッとなる昴(小)。以前、兄から聞いた話によれば、西暦時代にバーテックスに対する有効打を模索する中、うどんに興味を示すか否かを試した、という話があり、当初は笑い話の類だろうと思っていたが、その当事者が目の前にいたとなれば……。

 

「(あの噂、本当だったんだ……)」

「何にでも例外はあるわ!弁当とおやつ取られてからじゃ遅いのよ!」

「そ、それは困る!」

 

球子らが喚く中、樹が縮こまりながら頭を下げる。

 

「えっと……すみません。姉はお腹が空きすぎてちょっと我を失ってるみたいです」

「樹さん……。偶に容赦ないワードが飛び出てきてちょっと怖いです」

「どんなに訓練しても、ハングリーは強敵だもの、仕方ないわ」

「風さん。食いしん坊な所あるけど、普段はそんな事ないのにね。どうしたんだろ?」

「今日はビーストモード一歩手前って感じだもんね〜」

「どんなモードだよそれ……」

「でも確かに、いつもと様子が違うような……」

 

元々大食感である事は承知していたが、ここまで冷静さを失っている部長は見た事がなく、兎角らも疑問に思っている様子だ。

その問いに答えたのは、やはり妹だった。

 

「それが、いつもは早起きしてお弁当作るから、朝ごはんもしっかり食べるんですけど……、今朝は珍しく寝坊しちゃって、朝ごはんを食べる時間がなくなっちゃったんです……」

「!じゃあまさか、風先輩は朝ごはんを食べずに戦ってるんですか⁉︎」

 

友奈の悲痛(?)な問いかけに、風も無言で頷く。抑えていた空腹の感情も、限界に近づきつつあるようだ。それを見て、口元を両手で塞ぐ友奈。

 

「辛い……!そんなの、辛すぎるよ!何で、風先輩が犠牲にならないといけないの⁉︎」

「犠牲って、んな大袈裟な」

「仕方ないのよ友奈。これも、部長にして上級生の務めだから……」

「バーテックス、絶対に許せない!」

 

いつになく真剣な眼差しを敵に向ける友奈が、依然として戦闘中の流星に続いて交戦に出る。

 

「いや部長も上級生も、バーテックスも関係ないから!」

「でもまぁ、朝メシ抜きで戦うのはきちぃよな!」

「おむすび一個くらい、先に貰えば良かったんじゃ?」

「ダメよ。後輩がまだ食べてないのに、1人だけつまみ食いなんて真似、出来るわけないじゃない!」

「あ、そこは律儀なんですね」

「立派な心がけなんだか、てんでダメなんだか、判断に困るわね……」

 

複雑な表情を浮かべる真琴と夏凜。

その間にも、風の腹の虫は更に大きな音を鳴らす。

 

「フーミン先輩のお腹も警報、何だか大きくなってる気がするね〜」

「よーしみんな!風先輩の為に、一気に全部やっつけちゃおー!」

 

といった感じで、いつも以上に一致団結して飛び上がる面々。その気遣いに少々目元を潤わして、風も後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして無事に戦闘を終え、巫女と合流した一同は、目的地に到着。

当然ながら、先ずは風の腹を満たす事から始まり、文字通り『花より団子』状態となった勇者部。

ひなたも、食後の散策で散る桜の花びらをバックに写る若葉を、写真に収め続けており、上里流のお花見(?)を満喫して、大満足といった様子だ。

遊月も、久方ぶりに仕事から離れて腰を下ろし、東郷と共に肩を並べて桜色の風景を堪能していた。

 

「(これからも、こうして須美と、この景色を見られますように)」

 

と、心の中で強く願いながら。

 

 

 

 

 




今年はバタバタしてお花見どころではありませんでしたが、いつか勇者部みたいにお花見を堪能できる時間を作りたいな、と思った作者でした。


〜次回予告〜


「ヤマノテセンゲーム……」

「そんな才能が開花していたとは……」

「ムズッ……⁉︎」

「すぐ終わっちまうぞ⁉︎」

「いっくよ〜!」


〜才能は何処で開花するか分からないから面白い〜

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