結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
キュアエクレールの正体が遂に判明!とはいえ、個人的には敵ボスであるウソノワールの妖精姿、そしてお供妖精であるシュシュタンのまさかの潜伏先、という2大インパクトに持ってかれた感がありますが(笑)。
でもそれ以上に、今回候補に挙がっていた他3人の、今後の物語との関わり方に期待したいですね。
若葉とひなたの願望により実現した、満開の桜の下でのお花見。
軽食も腹に収まり、軽い運動や外観を堪能したりと各々が有意義な時間を過ごす中、部員達が一同に会する現場が作り出されていた。
「……で、招集を受けた訳だが何するんだ?」
「ひなたの提案で、西暦時代に流行ったゲームをするらしいぞ」
「はい。題して『山手線ゲーム』です」
「ヤマノテセンゲーム……?」
「お、聞いた事あるやつだな!」
紅希ら西暦組の何人かは心当たりがあるらしく、相槌を打っていたが、冬弥ら神世紀組の何人かは首を傾げている。
それを見越してか、ひなたがゲームのルールを説明する。
「あるテーマやジャンルを決めてお題にして、それに沿った解答を順番に答えていく遊びです。答えられなかったり、一度出たものや無関係なものを答えても負けになります」
「答える順番は時計回り、とかですか?」
「それについてですが、今回、解答の順は、球子さんが持ってきてくれたボールを使いたいと思います」
「なるほど。解答後にボールを投げて、受け取った人が答えていく、って訳だな」
「ちょっと難しそうだけど、楽しそう!」
友奈を初め、興味津々な反応が見て取れる中、球子が口を開く。
「思いっきり投げて、相手が取れなかった時はどうするんだ?投げた方が勝ち、とか?」
「別ゲーになるから無しで」
即座に拒否する巧(中)。ゲームの方向性に支障をきたしかねない為、この横入りは妥当と言えるだろう。
「なら、取れないボールを投げた人も失格、と言う事で」
「賛成。その辺りを明確にしないと、ドッジボールに発展しかねん」
「私は……そんな事しないわよ」
「た、タマもしないぞ!ちょっと確認しただけだかんな」
発言者の球子のみならず、夏凜も否定する中、銀(小)が不意に手を挙げた。
「あの……ものすんごく初歩的な質問なんですけど、『ヤマノテセン』って?」
それに対し答えたのは、横にいた千景。
「技の名前よ。両手から電車が飛び出す必殺技。このゲームを極めたら修得できるかもしれないわ」
「ホントですか⁉︎カッコいい」
「ちょっと待て千景!お前サラッととんでもねぇ嘘を子孫に植え付けるなよ⁉︎」
「……え?」
本気で間に受けそうな様子を見て、慌てて先祖が嗜める。見開かれた目を向けられて、不適な笑みを浮かべる千景。
……とまぁそんな一悶着がありながらも、一同は輪になって、ゲームスタート。最初にボールを高く上げて、手に取ったプレイヤーから始まる事となり、その結果、最初にボールをキャッチしたのは……。
「わっ!受け取っちゃった」
「じゃあ友奈、先ずはお題を」
「えっと……、お題は、勇者部部員の名前をフルネームで!」
「すぐ終わっちまうぞ⁉︎」
部員総勢38名のフルネームを部員全員で、となれば、一人一答が必然となり、すぐに終わってしまうのではと懸念されたが、すでに賽は投げられた、と言わんばかりに友奈が部員の名前を告げる。
「久利生 兎角!はい!」
「い、いきなり俺か!……じゃあ、結城 友奈!」
「おっとワシか。なら……、神奈月 流星!」
「って言いながらワイかいな!ほんなら……西園寺 司!」
と言った具合に、次々とボールが宙を舞っていく。
やはりこの手のお題では、全員に回って、最後に残ったプレイヤーが答えられなくなるまで続く……と思われていた最中、中盤辺りで、ゲームは思わぬ動きを見せる事となる。
「古波蔵 棗さん。いくよー、タマっち先輩」
「受け取った!こんなの楽勝だな!じゃあタマは……西園寺 司!」
「あ」
「おっと。球子、脱落だな」
「なんでだっ⁉︎」
「司の名前は、奏太が口にしていた」
「せやな!」
堂々と胸を張る奏太を見て、ハッとなる球子。この手のゲームでは、記憶力も問われる。彼女も、この時になって山手線ゲームの難易度を理解したようだ。
「!そうか……!このゲーム、誰が何を言ったのかを覚えてないといけないのか!」
「ムズッ……⁉︎」
「案外奥が深いなぁ」
「球子って、山手線ゲームやった事ない感じか?」
神世紀組も、ゲームの肝を理解したのか、徐々に自信をなくしていくのが表情から見て取れる。
それが証拠に、球子の脱落から間もなく、何人かが答えの重複が原因で脱落する事となった。
「大分人数も減ってきたな……」
「なぁ、この辺りで一旦お題変えてみないか?」
「賛成です。宜しければ、少し難易度を上げてみても良いかと」
ある程度人数が減ってきた所で、ここまで残っていた誠也がお題の変更を提案。昴(中)も賛同する中、雪花がいち早く挙手をする。
「なら、名城……日本のお城の名前ってのはどう?」
「……!そのお題でやりたいです!」
「これは負けられない戦いね、須美ちゃん」
「俺は……あまり詳しくはないな」
そう呟いたのは、大赦に頻繁に出入りするようになった遊月。戦いに一区切りつき、大赦に保管された資料を閲覧する機会も増え、四国の外にあった世界の事も習得できるようになったが、流石に日本中の城名を把握できている訳ではない。
そんな彼を安心させるように、東郷が口を開く。
「だったら、私の唇の動きをよく見ていて、口パクで答えを」
「ダメに決まってるでしょ⁉︎」
堂々と不正を働こうとする東郷を咎める風(当然の事である)。
そんなこんなでゲームは再開。先手は、現時点でボールを保有している歌野からとなった。
「長野の名城の一つ、松本城。はい、みーちゃん」
「え⁉︎えっと……江戸城!」
「お、俺⁉︎えぇっと……丸亀城!」
「……!(こ、紅希の野郎……!俺知ってるの丸亀城しかねぇのに……!)」
思わず表情を強張らせる司。その微々たる変化を、雪花は見逃さなかった。
「松前城。……司さん、お覚悟!」
「いや卑怯すぎだろぉ……!」
「こりゃあ隙を見せるとやられるぜ……!」
一気に難易度が上がり、唸る兎角。
事実、殆どのプレイヤーが1つ2つは答えられるものの、後が続かなくなり、最初のお題と打って変わって、自ら降参する者達が続出。
「げ、限界、です……!」
「う〜ん。私も、ここまでかな」
「気にするな。私も、首里城しか答えられなかった」
棗がそうであるように、大抵の者が地元の城名しか答えられず、何とも言えない気持ちで後方に下がっていく。
それを見て、早々に脱落した司がゲッソリとした表情で呟く。
「これ、さ。脱落せずに答え続けてる方が異常な気がする」
「あいつらのやりとりを見てれば、そうなるわな」
藤四郎が、チュッパチャプス(さくらんぼ味)を咥えながら顎でしゃくるその先では……。
「二条城。このお城は歴史的にも外せません。15代将軍足利 義昭の居城、見てみたかったです」
「う〜ん、岡山城はまだ出てないですよね?これほどの名城も中々ないと思います」
「岐阜城……稲葉山城とも言うらしいわね」
「清洲城。織田 信長が天下統一を目指す拠点となった城だ」
「熊本城。加藤 清正が改築したこのお城もそそるよねぇ」
何故か、解答の度に己の持ち得る雑学を披露している光景が。
「……っ。ここまでか」
「残るは5人……。ここからは、雑学とかは無しで回していくか」
「構わないわ」
誠也がギブアップした時点で、残りは歴史に精通している東郷と、同一人物である須美。そして千景、雪花、照彦の5人。このままでは時間がかかり過ぎてしまうと思ったのか、以降は城名のみを答える事となりそうだ。
「惜しかったね、誠也」
「誠也も案外、お城詳しかったんだな」
「一応、地元愛知にある城とか、教科書に載るレベルのやつは抑えていたけどな。照彦が狙ってかは知らないけど、清州城を言われた時点で詰んでた」
「それにしても……、東郷や須美はまだ分かるけど、あの3人がここまで善戦するとは」
「雪花は、お城巡りが好きだと前に言ってた」
棗からその情報を聞き出した瞬間、アッと短い悲鳴をあげる兎角。
「!やられた……!今回のお題は雪花が提案してたやつじゃん……!」
お題の変更に対し、意気揚々に発案したのはこれが理由か。嵌められた、と言わんばかりに項垂れる一同。
そんな中、関心が向けられたのはこの2名。
「私もしては、千景と照彦がここまで残っているのは意外だな」
「ぐんちゃんは、お城建てたり領地を拡げていくゲームとかもやってたから、そのせいかも」
「あぁ。ゲームに出てくるやつなら、調べそうだしな」
「千景も凝り性な所があるからな……」
「でも……照くんはどうだろう?」
千景や雪花がこの手のお題に強い理由は、彼女達の趣味を知っていればある程度納得はいくが、照彦の場合は、その限りではない。好物のみたらし団子を初め、甘いものには目がない性格の彼が、どうやってその知識を得ているのか。
「そういえば……。久我家は京都でも指折りの名家だと言われていますが、もしかしたら、彼も兄と同様に英才教育を受けていて、その影響で地理に詳しくなった、とも考えられますね」
ひなたが代表して答える中、次々とマニアックな名城を口に出すプレイヤー達に動きが。
「川越城」
「二条城」
「?それってさっき言わなかったか?」
「待って。二条城と呼ばれるお城には複数あるのよ?最初に言ったのは足利 義昭の居城で、今のは徳川 家康が作ったものを指しているわ」
「それは否ね。そうであるなら、先に言った方は『旧二条城』と称するべき」
「っ!」
「東郷……、お前の負けだ……!」
東郷の必死な弁明も虚しく、何故か目力を強くして指を指しながら、彼女の敗北を宣言する照彦(後に聞いた所、とある漫画がドラマ化した際、劇中の決め台詞を言ってみたくてこんな口調になった、との事)。
一方、東郷も込み上げる悔しさをギリギリの所で留めて、膝から崩れ落ちる。
「無念……!されど、二条城で果てるなら、本望……!」
「いやもうハイレベルすぎてついてけれん」
「勝負の内容も、東郷の精神性もハイレベルだわ……」
「あれ?流星の姿が見えないが」
「あいつ、最初の方で脱落してから退屈だったのか、向こうで銀達とアスレチックで遊んでる」
見れば、最初の方で脱落していたメンバーの殆どは、退屈を凌ぐ為、敷地内に点在している遊具で戯れていた。
そうして東郷脱落後も、次々と城名が出される中、4人の先鋭達にも限界の色が見え始めた。
「若、松城」
「……萩城」
「金山城。これはまだセーフよね?」
「唐津城……だな」
どうにかして絞り出している様子の4人。
とはいえギャラリーの殆どは、別の意味で疲れ始めていた。
「4人になってから、まるで終わる気配が……」
「日が暮れそー」
「大丈夫。間もなく決着がつくわ」
アスレチックでの遊びも飽き始めて戻ってきた晴人に対し、何故か自信満々に答える東郷。何人かが訝しむ中、その時は突然訪れた。
「う〜ん。白河、小峰城!はい、須美ちゃん」
「……参り、ました」
「惜しかったなぁ、須美!」
晴人が彼女の健闘を讃える中、残された3人は苦笑いを浮かべている。
「まぁ、鷲尾さんの負け、というか……」
「何かゴメンね」
「いいえ……、こうなる感じは予期していた、といいますか……」
「……はい?」
意味がわからず、前のめりになる銀(中)。側にいた東郷も、納得した様子だ。
その疑問に答えたのは、腕を伸ばしてリラックスしていた照彦だった。
「雪花が言った小峰城が、ここまで唯一被りのなかった名城だったからな」
「⁉︎って事は、次にボールを受け取った奴は、もう答えられるものが無くて、敗北確定だったのか⁉︎」
今回のお題では、暗黙の了解で一般見学が可能な城……約200種類の城名が発表されていた(かつては日本に4、5万程の城があったとされているが、定義が曖昧な為、実総数は不透明)ようだが、まさかそれら全てを被りなく解答していた事に、違う意味で畏怖を覚えるギャラリー達。
「ま、そういうこった」
「す、スゲェ……」
「恐れ入りました」
「そ、それじゃあ戦い抜いた4人に拍手!」
戸惑いながらも、風の号令で4人に惜しみない拍手が送られる。
一方、讃えられた側は、何とも小っ恥ずかしい気持ちに苛まれた。
「何だか気恥ずかしいわ」
「大好きなお城を言い合ってただけですからね」
「いやぁ、我ながらマニアックなお題を選んじゃってちと反省。凄く楽しかったけどね」
「まぁ次やる時は、動物の名前とか、メジャーなもので回していった方がいいかもな」
照彦がそう呟くように、気がつけば日も傾き始めており、一同はレジャーシート等を片付け始める。
余談だが、歴史に強い東郷や須美を除いて、思わぬ形で地理歴史の才能を発揮した3人に、その後数日は頭が上がらなかったそうだ。
猛暑日が続きますが、皆さん、体調管理に気を付けてお過ごしください。
〜次回予告〜
「1年間うどん食べ放題!」
「私には選べないっ!」
「個性的なのは事実だしな」
「随分拘っとるのぉ」
「学校で、一番……!」
〜ハードルの上げ過ぎは自滅の基〜