結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
13年ぶりの新作という事で、心してその結末を見届けようと思います。
月末に提出が予定されている、写生大会に応募する風景画の作成に、夏凜や銀(中)を初め、各々が奮闘する中……。
「ほら言え、言うんだぁ!」
「ダメダメ〜。ぜ〜ったいに内緒だよ〜」
「教えないと言うならば……!」
「きゃー、やめて!キャハハッ!」
「何だなんだ?随分と騒いでやんの」
部室に戻ってきた紅希達の目に飛び込んできたのは、銀(小)が園子(小)の脇腹をくすぐっている光景だった。
「あ、紅希さん!園子のやつ、写生大会の絵、どこで描いてるか全然教えてくんなくて」
「?乃木、何故そんな事を秘密にする必要があるんだ?」
提出された作品は、受賞の有無に関わらず廊下の壁に飾られる事となっている為、ここで秘密にしようとする意図が読めない。若葉の疑問に対し、子孫の1人が揚々と答える。
「わかちゃんのその質問には、私が答えて差し上げよ〜う!」
「あ、そっちの園子が答えるのか」
「そのっちは描いてる姿を誰かに見られてしまうと、本当の姿……鶴に戻って空の彼方へ飛んでいくのだ〜!」
「な、なんと……!」
本気で驚いた様子を見せたのは、若葉の隣にいた流星であり、慌てて子孫が割って入る。
「ま、真に受けなくて良いですよ?」
「要するに、出来てからのお楽しみってやつだな」
「流石はトッシー先輩!要するに、そーいう事、だよね〜?」
「うん!要約すると、そーいう事〜」
「(……俺、要約したか?)」
藤四郎が1人、チュッパチャプス(梅味)を咥えながら首を傾げる中、雪花がふと、皆の経過を伺う。
「そういえば、他のみんなはもう描き始めてる感じ?」
「それが、まだ良い場所が見つからなくてな」
「え?俺達もう描き始めてますけど」
「そうなのか」
「俺と友奈も、丁度下描きが済んだ所だ」
「皆さんがどんな絵を描くのか楽しみですね」
「絵って、案外描き手の性格が出るものねぇ」
雪花のこの一言に、樹がふと思い出したように呟く。
「そういえば、どんな絵を描くかで心理テストが出来るんですよ!」
「あ、私も聞いた事ある!」
「お題を聞いて、描いた絵から思いがけない一面が見える、というテストですね」
「そんな心理テストが……」
「面白ぇなそれ!やってみようぜ!」
興味が湧いた紅希の発言を受けて、一先ず室内にいる部員だけで、心理テストを実施して見る事に。
具体的なやり方はひなたが熟知しており、彼女の指示に従って進行された。
「それでは皆さん、船の絵を描いてみてください」
「船を……だと?いやしかし、船と一口に言えど、様々な用途の船が存在する。具体的にどのような船を描けば良いのだ?」
「そこは難しく考えずに、パッと思い浮かんだ絵を描けば大丈夫です」
「ふ〜む……」
ひなたのアドバイスを受けて、流星も真剣な様子で鉛筆を動かす。
皆の手が止まったのを確認して、藤四郎が口を開く。
「よし、みんな描けたようだから、先ずは一斉に見てみるか」
そうして一斉に、各々が白紙に描いた船を公開する。
『……』
……一瞬の静寂の後、奏太が口を開く。
「……まぁ色々とツッコミどころ満載やけど」
「夏凜ちゃんと、風先輩のそれは……」
「何って、船よ?」
「そうよ。私のはどう見ても船でしょ?」
「私のはって何よ!」
「まぁまぁ2人とも」
単なるテストにも関わらず、一触即発になりかけるのを阻止する樹。加えて美羽がこんなフォローを。
「取り敢えず、この部分が何を指しているのかを確認していけば、心理テストは成り立つから、絵の上手い下手は関係ないの」
「えぇ。それに言い方を変えれば、シンプルな絵という見方も出来ますからね」
「……で、こっから何が分かるんだ?」
肝心なのは、描いた絵から見えてくる、描き手の特徴だ。この絵から、どんな事が赤裸々になるというのか。
「先ず最初のポイントは、絵のディティール。これで行動のタイプが見えてきます」
「えぇ⁉︎アタシ、巧と違って無茶苦茶ざっくり描いちゃいましたけど、大丈夫っすかねぇ」
「大雑把に描いた貴方は……リスクをあまり考えずに、自由奔放に行動してしまう『冒険者タイプ』。反対に、巧君のように精密な船を描いた場合は、何事にも慎重に取り組む『石橋を叩いて渡るタイプ』です」
これを聞いて、皆一斉に絵を確認する。石橋を叩いて渡るタイプに当てはまるのは、巧を含めて東郷、須美、誠也、調といった面々。一方で冒険者タイプに該当したのは、銀、紅希、流星、球子、棗、そして風と夏凜。
「言われてみれば……、この面子、考えるよりも先に行動に出るタイプよね」
「あんたもでしょ!」
「わ、私は無駄な線を描くのが嫌いなだけよ。シンプルなのが1番」
などと言い争いが繰り広げられているが、この2人を上回る注目度を誇ったのは、彼女の描いた船だった。
「まぁシンプルさでいえば、ダントツで棗が上だよな」
「あたしが言うのもなんだけど……。棗、その三日月みたいなのは、船のどの部分よ?」
「……全体だ」
「いや全然分かんないし!」
「あれ?でもこれ、見た事ありますよ!確か、カヌーとかゴンドラの類いじゃ……」
見兼ねた真琴が、彼なりの精一杯を示す中、棗は真顔でこう返す。
「いや、カヌーと船は別物だぞ?」
「……フォロー台無し」
力なく首を横に振る調。
ふと、兎角が視線を横に向けた先には、今なお鉛筆で書き込んでいる者が2名。
「?東郷と須美は、まだ描いてるのか?」
「お、おい!書き足しはズルいだろ⁉︎」
紅希の声が聞こえていないのか、2人は真剣な眼差しを、各々の作品に向けている。
「須美ちゃん、凄く良く描けているけど、武蔵は防空指揮所まで梯子は通じてないわ」
「っ!そうでした!東郷さんの大和につられてつい、描いてしまいましたが……」
「こっちはこっちで精密すぎる……」
「結構当たってるかも……」
やはり心理テストは恐ろしい。心理テストの事を最初に口に出した樹が内心震え上がる。
次にひなたがチェックポイントとして挙げたのは、『船の向き』だった。
「これで、得意な分野が分かるそうですよ」
「向き……?」
「船が正面を向いている方は、物事をじっくりと観察する分析系。人の動きを観察しているのが大好きで、監視役に向いているようです」
「あ!僕の船は正面を向いてますね」
真琴がそう告げるように、彼の描いた船は正面からこちらに向かってくる様子を表している。
「確かに真琴はお役目の時、その立ち回りになる事が多いからな」
「ひなたと美羽に、水都、それに東郷も揃って正面を向いているな」
「するとこのタイプは、真琴を除けば巫女に向いているって事にならないか?」
「まぁ、私は診断結果を知っている上で描いているのもありますし」
それを差し引いても、同じ描き方をした者の内、巫女の素質を持つ者が全員一致しているのは、単なる偶然とは思えない。いよいよ心理テストの信憑性が増したように見受けられる。
「確かに当たってる気がするなぁ……」
「いや必ずしもってわけじゃないでしょ?私も調君も正面向きだよ?」
「調はそういうタイプだと思うぞ?だってタマの事、いつもジーッと」
「……」
球子にそう言われている間も、調は常に彼女を見つめ続けている。何も言い返せなくなった雪花に、今度は園子(中)が顎に手を当てて呟く。
「フムフム〜。という事は、もしかしてアッキーも誰かの事、密かに監視してたり〜?」
「んなわけないでしょ!外れる事だってあるって」
「あ、でもせっちゃん。みんなの服装とかしっかりチェックしてるよね」
「言われてみれば、前にファッションショーの企画した時も、寸分違わず用意できてたよな」
「……やっぱり当たってる?」
友奈と兎角の指摘を受けて、若干縮こまった様子の雪花。
心理テストの結果はさらに続く。
「因みに、船を右向きに描いた方は、『文章の上手い文系タイプ』、左向きに描いた方は、商売や自然科学に興味を持つ傾向にあるそうです」
「ワォ!私は左向きに描いてるわ!農業を生業にするとラッキーって事ね!」
「うたのん、これ占いじゃないから……」
既に生業を叶えている(?)歌野を水都が嗜める中、またしても話題の中心に彼女が挙げられた。
「……あの、棗さんの船は、右向きでしょうか?それとも左向きでしょうか?」
「……どっちとも言い難いな」
「これ、どっちを向いてるんだ?」
「両方に進めると便利だろう」
「いやそんな堂々と言われても……」
「それでひなたさん、この場合はどう判断するんですか?」
「け、結果は書いてませんけど、どちらの才能もある、という事になりますでしょうか……?」
流石にどちらとも読み取れないパターンは想定しておらず、曖昧に答えるひなた。
と、今度は普段から思想が読み取れない彼女から頼みが。
「はいは〜い!私達のタイプも教えてくださ〜い!」
「?他にどんな方向が?」
そう思いながら園子ズの絵を改めて確認するが……。
「何じゃこれ⁉︎園子達の船、画用紙の奥に進んでる⁉︎」
「どんな生き方したらこんな発想になるのさ⁉︎」
「普通はこうじゃないの〜?」
「私達は何タイプ〜?」
「やっぱり規格外だな」
予想外のセンスに、答えが浮かばずに困惑するひなたを見据えながら、兎角はポツリと呟く。
気を取り直して、最後のチェックポイント『船の大きさ』に移る。
「これは、『聞き上手度』を示しています。大きい程、人の話をよく聞いてくれるタイプだそうですよ」
「この中で1番大きな絵を描いたのは……」
「お姉ちゃん、かな。大き過ぎて画用紙から船の先がはみ出しちゃってるし」
樹がそう指摘する通り、風の描いた船は、アップに描きすぎて全体像が見えていない。
「でも、これは満場一致で当たってると言っても差し支えないのでは?」
真琴の言う通り、常に皆を引っ張り、部員の悩み事に対して自ら聞きにきて相談に乗ってくれる事が多い現部長には、当てはまる部分が多い。それは夏凜や、今現在この場にはいない千景が1番理解している事だろう。
「うん!流石風先輩!」
「あたしの画力も捨てたもんじゃないわね!」
「絵が上手いとは誰も言ってないけどね」
そんな中、紅希が意外そうな顔で若葉の描いた船に注目する。
「……そういえば、若葉の絵は他の人と比べると、やけに小ぶりだよな」
「そういう紅希は、案外大きいな」
確かに、紅希が描いた絵も大きく、よく見比べてみると、風の次に大きく描かれているのが判明した。何かと突撃思考のイメージが強い彼だが、元の世界でも色んな人に好かれる印象も見受けられる為、あながち間違いではないだろう。
「ご先祖様の次にでっかい船を描いたのは……、友奈さんっすね」
「やったー!でも、高嶋ちゃんのも同じくらいじゃない?」
「本当だー!けど、よく見ると結城ちゃんの船の方が大きいよ?」
「流石、懐の大きい友奈ちゃんね」
東郷が妙な形で感心する中、再び注目の的となったのは……。
「にしても、園子のは2人とも……」
「ダントツに小さいですね」
「まぁ確かに園子は基本マイペースで、人の話聞かないわよね」
「そんな事ないですよ〜」
「聞いてる時は聞いてるよ〜」
「お前達の場合は、聞いてる時とそうでない時の差が激しすぎるんだよな」
藤四郎がそう指摘する最中、小学生の園子が大きく口を開ける。
「……ふぁ〜。いっぱい集中したら、眠くなっちゃったね〜」
「お昼寝の時間にしよ〜……」
そう呟くが早いか、船が描かれた紙を机に置いて、ものの数秒もしないうちに、スヤスヤと寝息を立てた。
「言ったそばからこれだからな」
「侮れんなぁ……」
違う意味で、心理テストに対して畏怖を覚える誠也と兎角。
とはいえ気分転換にはなった、との事で、ある程度リラックスした所で、再び写生作業を再開。期日までの提出に向けて、筆を走らせる。
自分で言うのもアレですが、本格的な心理テストってやった事がなくて……。(霊感テストはやった事有り)実際、どこまで的確に当たっているのか、これを機に調べてみるのも良いなと思いました。
〜次回予告〜
「どこで描きゃ良いんだよぉ⁉︎」
「……もう関わりたくない」
「驚かせるな……」
「ウソやろ⁉︎」
「「これで入賞間違いな〜し!」」
「潜っていた」
〜画廊の思考は、庶民には理解不能〜