結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
先日、13年ぶりの最新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〜ワルプルギスの廻天〜』を観に行きましたが……、思った以上に面白く、続きが待ち遠しくなる内容でした。ネタバレ防止の為、詳しくは語れませんが、今作のMVPは間違いなく『美樹 さやか』だと思います!(個人的には『佐倉 杏子』も成長してるなと感じましたが)
全国で開催される写生大会の締切が刻々と近づきつつある中、讃州市の一角では、若葉と高嶋が周りに目を向けながら、この後合流予定の千景との待ち合わせ場所へと向かっていた。
「やはり風景画なら、季節感も大切にすべきだろうな」
「そうだね〜。あ、ぐんちゃん!」
「高嶋さんお待たせ……あら、乃木さん」
高嶋のみならず、若葉もいた事に気づき、軽く手を振る千景。
「ぐんちゃん、今ね。若葉ちゃんから良い事聞いたんだよ。この季節っぽいものを描けば、入賞できる確率がグーンとアップするんだって!」
「いや、そこまでは言ってないぞ⁉︎……それで、2人はどの位進んだんだ?」
「それが……、まだ描く場所が決まらなくて、ぐんちゃんとフラフラしながら見つけよっかなって」
「そうか。実は私もまだ決めかねてて……」
どうやら全員、写生に相応しい場所選びに難航しているようだ。
見兼ねた高嶋がこんな提案を。
「じゃあみんなで一緒に探しに行かない?」
「えっ……」
「いいのか?」
「みんなで探した方が、ピクニックみたいで楽しいよ!」
「え、えぇ。私は構わないけど」
「そうか。ではせっかくの機会だ。入賞できそうな、良い場所を見つけよう」
高嶋の笑顔に圧されたのか、千景は特に嫌な顔一つせず、若葉と3人で街を歩く事に。
「改めて見回すと、絵になりそうな風景が多くて選べないな」
「ほんと、描きたいものが多すぎて困っちゃうよ〜」
「(そういえば……、乃木さん、今日はどうして上里さんや神奈月君と一緒じゃないのかしら……?もしかして、仲違いしてしまったとか……?)」
一方、千景は普段一緒にいる事の多い面子と共に行動していない事が気になっているのか、あまり会話に参加できないでいた。
「他のみんなはどうしてるのかなぁ?」
「決まった者も多いようだぞ。ひなたも流星も、もう描き始めていると言っていた」
「気合い入ってるねー」
「ただ……、ひなたの場合は、内緒で描くと言って、何処に居るのかすら教えてくれなくてな」
「それって、若葉ちゃんを喜ばせる為に、何かしてるんじゃない?」
「人物画はNGの筈だが……、ひなたの事だ。その可能性は否めないな」
「だから今日は一緒じゃなかったのね」
ようやく疑問が晴れて、軽く頷く千景。
以前までの自分であれば、高嶋や紅希の事はともかく、若葉やその他の西暦組の事情など眼中になかった筈だが、この世界に来てから、自分の中で変化が起きている事を自覚し始める千景であった。
「そういえば、この所棗さんの姿を見かけないな」
「?学校には来てるみたいだけど……」
「そうなんだが、放課後になるとフラリと姿を消してしまうようなんだ」
「ぐんちゃん見た?」
「見てはいないけど、古波蔵さんの事だから、海の側で写生でもしてるんじゃない?」
当たり前のように見解を述べる千景。
「そうだね!棗さんならきっとすっごい景色、見つけてそうだよね」
「私もそうだと思っていたんだが、最近海の付近に行った誠也さんと美羽さん、それから浜辺でよく鍛錬をしている夏凜と銀からも、見かけたという話を聞かないんだ」
「棗さんと言えば海だと思ったのに。じゃあ何処で描いてるのかなぁ」
「古波蔵さんが、海以外の場所を描くとは考えにくいけど」
どうしても『棗=海』以外のイメージが払拭できない3人。
「それで心配になってきたんだ。もしかして棗さん、写生大会の事自体を知らないんじゃないかと」
「まさか……。普通に学校には来てるのよ」
学校に通っているのであれば、当然写生大会の事は耳にしている筈だ、と千景は語るが、若葉の不安は拭いきれない。
「そうなんだが、予想外の行動を取るのが棗さんだからな」
「そ、それじゃあ早く教えてあげなくちゃ!」
「あら、噂をすれば……」
慌てふためく高嶋の後方から、噂の人物が手提げ袋を片手に、こちらに向かってくるのが見えた。
「おーい、棗さーん!」
「お前達か。どうしたんだ?」
「最近、放課後に何処へ行っているんだ?」
「文房具屋だ。写生大会の買い物でな」
「ちゃんと知ってるみたいね」
「?何の事だ」
「いや、何でもない」
どうやら写生大会の存在自体は把握していたらしく、思わずホッと胸を撫で下ろす3人。
「そうか。買い物があるから、私はこれで」
そう言ってその場を立ち去る棗。後ろ姿が見えなくなった所で、再び向き合う。
「特に不審な点はなさそうだったな」
「乃木さん、心配し過ぎよ」
「そうだね。絵の具とか色々揃えないと描けないもんね」
千景と高嶋がそう呟くものの、依然として心の片隅に引っかかりを覚える若葉。準備は出来ている筈なのに、根拠はないにも関わらず、写生が上手くいっている様子が見えてこないのだ。
「何処で描きゃいいんだよぉ⁉︎」
「……るっせぇ」
とある公園でシャウトする紅希の側で、耳を塞ぐ照彦。
彼らもまた、写生に相応しい場所選びに苦戦を強いられているようだ。
と、そこへ同じ理由で街中を歩いていた若葉達と出くわし、各々状況を報告する。
「そうか。そっちも」
「ヤッベェぜ!そろそろやらねぇと間に合わなくなっちまう!」
「出遅れてしまった分、他のメンバーとは違う場所を狙って描きたいんだがな」
「目ぼしい場所は粗方回ってしまったし、見てきた中から選ぶしかなさそうね」
これ以上候補を広げるのは得策ではないかもしれない。そう千景が呟いたその時、高嶋が声を張り上げた。
「!まだ見てない場所があるよ!」
そう言って高嶋が4人を引き連れてやってきたのは、愛媛に程近い海岸。辺りは比較的静かで、波の音が心地良い。
「海か。悪くないな」
「他に写生している人も居なさそうだし、ここにしよっか!」
「そうね」
この地を起点に、絵を描き始めようとしたその時、各端末からアラーム音が。
「!バーテックスの襲撃か⁉︎」
「せっかく良い場所見つけたのに……」
よりにもよってこのタイミングで、と愚痴る面々だが、遅れるわけにもいかない為、荷物を置いて出撃しようとするが、照彦がハッとなって海に顔を向ける。
「!海の中から、何かが……」
「海の中?もしや、新型のバーテックス……!」
依然として樹海化はしていないが、そうなる前に敵が襲来するパターンもあり得なくはない。皆が海に目線を向ける中、気配はこちらに向かってきている。やがて大きな水音と共に、浮かび上がってきたシルエットが何なのかを把握できた瞬間、5人の目が見開かれた。
「こ、古波蔵さん⁉︎」
「わっ、本当だ!棗さん、こんな所にいたんだね!」
「驚かせるな……」
「?どうした」
5人の視線を浴びながら首を傾げる、全身ずぶ濡れの棗。しかもその手には、何故か筆としわくちゃの画用紙が。
「それはこっちのセリフだ!一体何を⁉︎」
「潜っていた。海の中で写生をしようと思ってな」
「海の中で?」
「えー、凄いね!海の中なんて思いつかなかったよ!」
常人なら誰も立ち入らない場所での写生。
素直に感嘆する高嶋だが、他の面々は、棗の現状を目の当たりにして、嫌な予感がよぎっている。
「でも、画用紙が水でよれてダメになってしまうんだ。だから毎回新しい紙を買ってきては海に潜っているんだが、これが中々……」
「……ツッコミどころは多すぎるけど、取り敢えず後回しにしましょう」
若葉の心配が、思わぬ形で的中してしまった事に億劫になりつつも、一同はアプリを起動する。
高嶋達が現場に辿り着いた時には、既に他の面々は準備を完了していた。
「お、来たぞ!」
「お待たせ!」
「?あんた達、一緒だったの?」
「実は……」
5人が固まって行動していた事に疑問を抱く風。若葉が代表して説明し終えた時のリアクションは、予想通りだったと言えよう。
「ウソやろ⁉︎」
「オーマイガァ⁉︎」
「それは……もう一周回って放置して良いレベルじゃ」
巧(中)に至っては、関わりを避けようとする始末だ。
「戦闘前だから体力温存の為に口出しは自粛したけど、困ったものだわ」
「そうだな、困っている」
「棗さんがそれ言うか?」
「紙がよれてしまって、一向に写生が進んでいないんだ。早く敵を倒して、海に戻らなくては」
いつになく焦っている様子の棗だが、他の面々は当然ながら、待ったをかける。
「早く倒したいって気持ちは大歓迎ですけど……」
「今のままじゃ、何度やっても結果は目に見えているしな」
「そうですね。水に耐える紙もあるけど、そういうのは写生に向かないし……」
「そもそも、海の中で見ながら描かなきゃいけない事もないんじゃないか?夏凜と銀だって、自分の目で観た光景をイメージしながら描いてるみたいだし」
「そうなのか」
「……もう関わりたくない」
巧(小)も、遂に匙を投げたらしく、アドバイスを諦める事に。
刹那、若葉がある事を思い出す。
「そうだ。確かひなたが海の中でも撮れるカメラを持っていた筈だ」
「写真は撮れないだろう。夏凜の写真も写っていなかっただろう」
「いやいや。樹海は撮れないってだけで、海は樹海じゃないですよ」
雪花も内心嫌々ながら、棗の勘違いに指摘を入れる。見兼ねた風が号令をかける。
「モヤモヤしてるとこ悪いけど、もうすぐ戦闘よ!」
そうして難なくお役目を終え、部室に戻ってきた棗は、若葉から事情を聞いたひなたから、水中でも使えるカメラの使い方をレクチャーしてもらう事に。
「これで、水の中を撮れるのか?」
「はい。ここがシャッターで、ピントはこっちです。これならいくら水に濡れても大丈夫ですよ」
「ありがとう。良い写真が撮れそうだ」
「写真もそうですけど、写生の出来上がりも楽しみにしてますね」
一先ず棗の写生については、これで解決した事だろう。出来上がりを楽しみにしつつ、若葉の中で依然残っていた疑問をひなたに投げかける。
「ひなた、随分と余裕みたいだが、お前の方は進んでいるのか」
「そういえば、結構早い段階で描き始めたって聞いてるけど」
「描いている所をさっぱり見せてくれなかったが、結局何処を描いているんだ?」
「フフフ。知りたいですか?」
「何だその思わせぶりは……」
訝しむ若葉に対し、ひなたは堂々と写生内容を明かした。
「私は日々撮影してきた若葉ちゃんコレクションの中から、1番お気に入りの写真を絵画に」
「な、何だと⁉︎」
「冗談ですよ♪残念ながら、写生大会は風景画の大会ですからね」
「驚かせるな……」
相変わらず翻弄されて項垂れる若葉をシャッターに収めながら、本当の事を明かすひなた。
「若葉ちゃんと2人で行った思い出の場所を描いています。楽しみにしていてくださいね。……それで、皆さんの調子はどうですか?」
「まぁそれなりには」
「やっぱり場所選びがポイントだったね」
「俺もシンプルなのにすれば良かったな〜……。屋上から見た街並みを見つけて、これだ!って思ったんですけど、描くものが多すぎて大変に……」
後悔先に立たず、といった口調で進行状況を語る晴人。
「そういえば、入賞候補の園子さん達、何だか凄いものを描いているみたいですよ」
「へぇ。それは先祖として負けらんねぇんじゃねぇか、若葉」
「そんなにハードルを上げないでくれ……」
司に煽られて、また違う意味で項垂れ始める西暦最強勇者であった……。
そして数日後……。
「兎角!みんなの写生大会の絵が貼り出されてるよ!」
「分かったわかった。そんなに焦んなよ」
無事に写生も終わり、全員の絵が讃州中学の廊下という廊下中に貼り出されている光景が。
「全員分揃うと賑やかね」
「それにしても、あの一際巨大な画用紙は……」
遊月が指摘したのは、他の画用紙と比べても巨大なアート。教室一つ分の大きさを誇っており、よく見ると、その絵は一枚の画用紙で作られているのではなく、何十枚もの画用紙を繋げて貼り出されているのだ。
一体誰がこの規格外なアートを、と普通なら疑問に思う所だが、勇者部の面々には、その作品が誰のものなのか、一目瞭然だった。
「えへへ。私と園子先輩の合同作品!」
「畳10畳分の画用紙をくっつけて作った、魂のアート!」
「「これで入賞間違いな〜し!」」
「……なぁ。盛り上がってるとこ悪いけど、合作ってOKだったっけ?」
「「……しょぼ〜ん」」
兎角の指摘を受けて、一気にテンション駄々下がりの園子ズ。改めて審査基準を確認してみようとは思うが、先ずは他の面々の画力を確認する事に。
歌野ら諏訪組の目についたのは、色鮮やかに描かれた画用紙だった。
「ワォ!夏凜さんか銀さんの描いた樹海があるわ!」
「割と雰囲気出とるのぉ」
「……」
「?何じゃ風さん。何故固まっとるんじゃ?」
樹海を描くと宣言していた夏凜、もしくは銀の絵を評価していたにも関わらず、何故かショックを受けている風。
その理由を、妹がやんわりと告げた。
「あ、あの……。それ、お姉ちゃんが描いたウサギさんでして……」
「な、何じゃと⁉︎」
「よ、よりにもよって樹海と間違われるなんて……」
自分の絵のレベルが決して高くない事は自覚していた風だが、想像以上の酷評に膝から崩れ落ちてしまった。歌野と童山が詫びる中、水都が夏凜と銀(中)の絵を発見する。
「こっちが2人の作品みたい……だけど、樹海って、これで合ってる?」
「ん〜……。私も自信はないけど、私の知ってる樹海とはちょっと違うわね」
歌野がそう告げるように、この世界に来てから樹海の存在を知った彼女から見ても、2人が画用紙に描いた樹海は、カラフルさこそ目立つが、根っこの部分が歪であったり、所々色が線からはみ出ていたりと、お世辞にも神樹が創り上げた結界とは言い難いものが写されていた。
それを見て、風が僅かに正気を取り戻し、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
「ほほぉ。2人の画伯の目にはこう写ってるのね」
「樹海みたいなウサギを描く人には言われたくないんですけど⁉︎」
「何ですってぇ⁉︎」
「あっはっは!まぁこういうのは……アレだな!痛み入るってやつ!」
「それを言うなら、『痛み分け』だ」
銀(中)の発言に訂正を入れる巧(中)。どうやらこの勝負、夏凜と銀の画力はほぼ互角と見て取れる為、文字通り引き分けという言葉が相応しい。
「若葉ちゃん、見てください!棗さんの絵、海の色合いが素敵ですね」
「あぁ、微妙な色の濃淡が綺麗に出ているな。……所で、この海の真ん中に描かれているのは何だ?」
「深海魚、とかじゃないのかな?」
「いや、どちらかと言えば、岩だろ」
若葉とひなたの隣で見ていた美羽と誠也が、各々の解釈を述べるが、ここは本人に直接問いただした方が良さそうだ。
「棗さん、これは何を描いたんだ?」
若葉の質問に対し、何を言ってるんだ、と言わんばかりの表情を見せる、海人。
「何処から見ても、ウミガメだろう」
「……はい?」
予想外の返答に固まる一同。やや湿った隙間風が、一同の肌を撫でる。
ややあって、風が静かな笑みを浮かべながら、棗画伯の右肩に手を添える。
「……どうやら棗も、『こっち側』の人間みたいね」
「何で嬉しそうにしてるんだ?」
『仮面ライダーゼッツ』が大円団で終わり、今日から『仮面ライダーマイス』が始まりましたが、1話目から結構惹かれる内容で、この先の物語の展開が俄然楽しくなりました。
〜次回予告〜
「自分自身だよ〜」
「一才の迷いが無い……!」
「当たり前ですから」
「そんなに凄いのか?」
「人間と一緒、という事か」
〜「好きこそものの上手なれ」って諺、好きな人挙手〜