結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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『仮面ライダービルド』のシリアス感が、マジで笑えない……。

だからこそ、ここでハッキリと明言しておきたい。

仮面ライダービルドは、子供向けの番組ではない。ましてや未成年向けの番組ですらない。完全に今現在の世界情勢を謳っている。でなければ『戦争』なんてテーマは出てこない。北朝鮮と事を交えようとしている日本政府のトップが、番組制作に携わっているとしか思えない。

そういう意味では、ニチアサの改変はまだ正しかった方なのかもしれない。


25:もう1つの戦い……?

 

 

金色に輝く、1本の大樹。神々しいその有様は、生きとし生けるものに恵みを与える神様にほど近い。そんな大樹に向かって、天から降り注ぐのは、赤々と燃える火の球。星が降ってくるようにも見える。数は……5、6個といったところか。

まるで全てを破壊し尽くさんと言わんばかりに、目の前まで迫ってきて、ある種の恐怖感を覚えさせられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という夢を見たんです」

「ふむ……」

 

7月に入り、1学期も後10日ほどで修了を迎える頃。大赦の訓練場にて、須美の言葉に耳を傾けていた源道が唸る。

お役目の最中に重傷を負った晴人達が、意識が戻った巧を含めて回復に向かっている中、ここ最近、須美は同じような夢を見ていた。さすがに何度も同じ夢を見る事に疑問を感じた須美は、悩んだ末に先生達を初め、同じ勇者である銀や園子にも打ち明ける事に。

そばで話を聞いていた銀や園子、そして安芸も怪訝な表情を浮かべる。

 

「木に向かって星が落ちてくるのか……。あ、もしかしてその木って、神樹様だったりするのか⁉︎」

「きっとそうだよ〜!」

「その可能性はあるわ。でも、どうしてそんな不気味な夢ばかり見るのかしら……?」

 

須美が首を傾げる中、安芸が源道と相槌をうって、1つの結論を出した。

 

「恐らく、『神託』の可能性があるわ。詳しい検査をしてみないと分からないけど、鷲尾さんには、勇者になるだけじゃなくて、神樹様のお告げが聞ける、『巫女』としての資質も極めて高いという事よ」

「私が、巫女……」

「スッゲェな須美……。あでも、巫女さんって割と標高高いって言うし、須美ぐらいのデカさならノルマは軽く越えて」

「……銀。目線を辿れば何を考えているかは分かるわ。後でお灸よ」

「じょ、冗談だって⁉︎」

「でも凄いねわっしー! この総合力の高さ、旧世紀の明智 光秀超えてるよ〜」

「……誰だか知ってて言ってるのそのっち?」

「エヘヘ〜。ただなんとなく〜」

「お前ら数秒であたしに差をつけないでくれ!」

 

3人の勇者が喚く中、源道が咳払いを1つして注目を集める。

 

「詳細はまた改めて大赦側で検討するが、須美君が見たという内容からして、恐らくは、そう遠くない頃に敵の襲来がある、といったところだろう。それも、星がいくつも降ってきた事を踏まえると、複数体で総攻撃してくる事も懸念される」

 

源道のその言葉を聞き、3人は気を引き締める。複数体が同時に攻めてくる、それは先日の一件とほぼ同じ状況になるという事。3人の武神が血に染まった光景は、今でも3人の勇者の脳裏に焼き付いている。

もうあの時のような事態にはさせない。その為にも、須美達は強くなると決めたのだ。

 

「よし! とりあえずこの話はここまでにして、そろそろ訓練を始めるぞ! 先ずはウォーミングアップだ。気合い入れていけよ!」

「「「はい!」」」

 

一段と気合いの入った返事を返し、3人は両手首に、昨日観たアクション映画でも使われていたものと類似している重しをつける。

大きな敵が来ると分かれば、戦いが更に激しさを増すのは明白。今は療養している晴人達も何れは復帰するが、いつ敵が来るかは分からない。どんな事態にも対応できるように、出来る事をしておかなければならない。

 

「もっと強くならないと……!」

 

そう小さく呟いた須美は、銀や園子と共に、源道の後に続いてウォーミングアップがてら、裏山を駆け上がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、アレだよな」

「ん?」

「いや、須美達ってさ、俺達みたいに師匠の指導を直接受けてるって話だったじゃん」

「そうでしたね」

「……なんていうかさ。悪い気がしてさ。俺達がここまで怪我してなかったら、あいつらにも変な心配かけさせずに済んだのかな、って思うと罪悪感ってのが……」

「……」

 

所変わって、昼下がり真っ只中の病室。そこで遅めの昼食として、かけうどんを口に運ぶ、ベッドの上に座って病院服に身を包む晴人、巧、昴の姿があった。さすがはうどんの県という事もあって、病院食も消化の良いうどんが提供されている。とはいえ3人の武神達も満足げにご飯が食べられるわけではない。

晴人は敵の攻撃で左わき腹に穴が空いて、手術の結果、他の2人と比べて半分ほどしか、胃が残らなかった。つまり、食べれる量も半分ほどになった為、器に盛られたうどんの量は少ない。巧は両腕の傷がまだ痛むのか、食べるペースが遅い。当初は全身に包帯が巻かれていた巧だが、一際回復も早く、顔の部分を残して全て取り除かれている。そして最も食事に苦戦していたのが、右腕を失った昴だった。利き腕だった右腕を失い、慣れない左手で食べなければならないので、ツルツル滑るうどんを上手く掴めず、切れ込みがある部分に箸を通そうと、悪戦苦闘していた。

 

「……で、大丈夫か昴?」

「な、なんとか……。でも、さすがに辛いですね」

「慣れるまでの辛抱だな。それに、噂で聞いたが、近々義手も取り付ける話もあがっているらしいな」

「そうなの?」

「はい。……でも、正直抵抗があるといいますか。お金もそうですけど、色々と家族に迷惑かけそうで……」

「金持ちの家のセリフとは思えないなぁ。でも昴らしいぜ」

 

苦笑しながら口元を拭う晴人。

 

「……まぁ、話を元に戻すけどさ。今はこんな状態だけど、俺達も頑張って、須美達に負担ばっかかけさせないようにしような。師匠に体を鍛えなおしてもらって、みんなで強くなろうぜ」

「はい。まだ挽回は出来ますから」

「だな」

 

晴人の力強い言葉に、他の2人も後押しされる。

と、ちょうどそのタイミングでドアをノックする音が響き、昴が返事をすると、見知った顔ぶれの面々が入ってきた。

 

「あら、ちょうど昼食を摂ってる所だったのね」

「須美か。それに、銀も園子も」

「おう!」

「見舞いに来たよ〜」

「私達も鍛錬がひと段落ついて、休憩時間になったから、こっちに来てみたの」

「そっか」

 

それから、須美は晴人の、銀は巧の、園子は昴のベッドにそれぞれ腰をかける。それを良いことに、晴人は園子に指示を出した。

 

「あそうだ。園子、昴がご飯食べるのを手伝ってやってくれないか? まだ上手く箸で掴めないらしいぞ」

「まっかせて〜! 頑張るよ〜!」

「い、いやそこまでしてもらわなくても……」

「大丈夫だよ〜。はい、あ〜ん」

 

昴の制止も無視して、園子は箸を取ってうどんを摘むと、昴の口に運んでいく。介護ヘルパーのような事をしている園子と困惑した表情の昴を、ニヤニヤしながら見守っている晴人達。

ふと、巧が視線を外して銀の腕に注目する。見た事も無い場所に擦り傷が生じているのが確認できる。

 

「その傷は……」

「ん? あぁ、これはさっきの鍛錬でな。野球ボールが何個も飛んできて、かわしきれなかった分だな」

「大変ではあったけど、その分動体視力も鍛えられた気がするから、良い鍛錬ではあったわ。アクション映画様々ね」

「大変だな、須美もみんなも」

「晴人君達と比べれば、まだ初歩的な段階よ。まだ戦いは終わってないんだから、気を引き締めて頑張らないと」

 

そう呟く須美の瞳は、熱意が込められている。さすがに心配になったのか、晴人がベッドの上に手を置く須美に触れる。

 

「まぁ元気があるのは良いけどさ。あんまり無理すんなよ。俺も早く怪我を治して頑張るからさ!」

「⁉︎ そ、そうね!」

「?」

 

突然手を触れられて動揺した須美が顔を赤くして頷く。晴人がキョトンとする中、須美の心臓の鼓動はしばらく鳴り止む気配を見せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3日後、朝の通学路に須美だけでなく、晴人の姿もあった。

 

「ん〜! やっと学校に行けるな! 病院の中だとめっちゃ退屈だし」

「晴人君は、学校に通うのは嫌な方じゃないのね」

「俺にはその気持ちは分からんな。みんな、あれからどうしてるかな?」

 

ようやく退院の許可がおりて、晴人は腕を伸ばしながら須美と共に教室へと足を運ぶ。道中でサンチョを抱えてやってきた園子と合流し、3人は門をくぐって校舎に入っていった。

『6年1組』の看板が見えてきて、中から級友達の話し声が聞こえてくるのを確認してから、真っ先に晴人と園子が前に出て扉を開ける。

 

「おはよ〜!」

『オハヨー』(byサンチョ?)

「皆さん、おはようございます」

「おっはー! ってなわけで、帰ってきたぜ! みんな元気にしてた?」

 

早速3人(+1匹)が朝の挨拶をするが、晴人の姿を確認したクラスメイト達は一斉に静まり返った。一瞬、怪我で入院していた晴人が久々に顔を出して驚いているのかと思ったが、どうも様子がおかしい。まるでどう声をかけたらいいのか、困惑している感じの方がしっくりくる。

 

「……あれ? なんか思ってた反応と違う気が」

「何だろうね〜?」

「とりあえず、席に着きましょう」

 

3人が小声で話し合い(サンチョも寄せて)、自分達の席に向かって歩き出してすぐに、クラスメイトの女子の1人が、意を決したように話しかけてきた。

 

「あ、あの、晴人君」

「ん? 俺?」

「ずっと聞きたかったんだけど……」

「聞きたい事?」

「おい! 神樹様のお役目の事は聞いちゃいけないって決まりだろ?」

「そ、それは分かってるんだけど……」

「なぁ晴人! こないだの遠足が終わってからお役目があったんだよな? 疲れてるのに大変だったよな」

「ちょ、ちょっとみんな、そんな寄ってたかって……」

 

須美が止めようとするが、クラスメイト達は晴人に向かって質問を投げかける。

 

「怪我の具合はどうなの? もう平気なの?」

「怖くないの?」

「お、おう。俺も、巧も昴も平気、だと思うけど……」

「晴人、お役目ってどんな事するんだよ? そんな大怪我するって事は、それだけ命懸けなのか? 何でそんな危ないお役目を……」

「いや、それは、その……」

「なぁ、ちょっとで良いから教えてくれよ! お前が戻ってくるまでみんなすっごく心配してたんだぞ! もし少しでも気が楽になれるなら」

「おい待てって! お役目の事は本人から聞いたらダメなんだぞ! 大赦に消されるんだぞ!」

「それ言ったお前が消されるぞ」

「うわぁ⁉︎ マジか⁉︎ 俺大赦に消される⁉︎」

「お、落ち着いて皆さん! 消されるなんてそんな事はないから、事を大きくしないで!」

 

須美が真面目な顔で咎めようとするが、それを他所に置いて、女子達が晴人の周りに群がる。

 

「そういえば、晴人君達ってもしかしたら名前が教科書に載るかもって話だよ! お母さんが言ってたんだ!」

「それって凄いよね!」

「みんな、頑張ってね! 応援してるから!」

「神樹様に選ばれる人って凄いんだね!」

「神樹館のヒーローだな!」

「な、なんか俺がいない間に凄い事になってたんだな……。でもまぁ頑張るぜ! 応援ありがとな! ただまぁ……別にそうなりたくてこのお役目についた訳じゃないけどな」

 

晴人が皆の剣幕に驚きつつもそう返事をする。

と、その時。後方の扉が開いて、珍しく遅刻しなかった銀が、昴と巧を引き連れてやってきた。

 

「はざーっす!」

「おはようございます」

「……」

「ほら、巧も挨拶」

「……お、おはよう」

 

銀に催促される形で、巧もぎこちなく挨拶をする。クラスメイト達は息を呑んだ。それもそのはず。昴の右腕は肘から先がなくなっており、巧の左目には縦に傷がついており、開いていない。どちらも深手を負い、お役目を全うする事の危険性を象徴するものだった。

皆の視線を気にする事なく、後からやって来た3人は晴人達に挨拶をする。すると、1人の男子が晴人達の所にやってくる。

 

「あ、あのさ……。事情は分からないけど、晴人達は、みんなの為に、大怪我をしても、ずっと……」

「それが出来る、強い奴だって事は、あたしが証明する」

「ミノさん」

「……実際、巧やみんなが、助けてくれなかったら、多分あたしは、死んでたと思うから」

 

銀が前に出て代表で返事をする。銀の言葉を聞いて、騒めくクラスメイト達。先ほど質問をした男子が拳を固めて口を開く。

 

「何なんだよお役目って……! 何で晴人も、巧も昴も、鷲尾も三ノ輪も乃木も、こんなに痛い思いして、死ぬかもしれないお役目なんか、やってかなきゃならないんだよ……! こんな事に、何の意味があるんだよ!」

『……』

「……ゴメン。別に八つ当たりしてるわけでもないし、バカにしてるわけじゃないよ。でも、お役目の内容、全然知らないし、目的が分からないから、何て言ったらいいのか上手く思いつかなくて……」

 

沈黙が辺りを包む中、最初に口を開いたのは晴人だった。

 

「みんなの気持ち、ちゃんと聞いたぜ。だから正直に答えるけど、俺は別に、死ぬかもしれないって事を前提に頑張ってきたわけじゃないんだ。俺なんてこの街に来てまだ1年も経ってないし、勉強もスポーツも、全然知らない事もたくさんあるんだ。だから、それを知りたいし、そんな場所をくれるみんなを守りたい。大人になりたいんだ」

「大人……」

「大人になれば、なりたいものに何でもなれる。そう教えてくれた人がいるんだ。だから、生きたいんだ。……それが、俺が辛くても頑張る理由かな? ヒーローになりたいってわけじゃないから。まだそこまで強くないし」

「……うん。あたしもそんな感じ。あたしはみんなと一緒にいられる時が一番幸せなんだ。だから、みんなを守りたい」

 

銀がいつになく真剣な眼差しを見せる。巧は右目だけでジッと銀を見つめる。

 

「だからさ。ほら、こないだ遠足でサインの話があったじゃん? 悪いけど、今のあたしにはまだそんな事できる資格はないと思う。あの時は天狗になってたけど、もうやめた。あたしは、まだまだ未熟者さね。だからゴメンな」

 

銀が両手を合わせて女子生徒達に謝る。

ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴ったので、晴人達は席に着く。安芸が来るまでの間、6人以外の生徒達は思った。

先ほど、晴人も銀も、自分はまだまだ未熟みたいな事を口にしていた。恐らく須美達も同じ気持ちなのだろう。だが、それでも彼らは思う。

晴人達は、世の為人の為に、そして明日の為に努力を惜しまず、勇んでいる。まさに『勇者』なのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦の施設内でのトレーニングは、遠足前と比べて激しさを増していた。源道が無理のない程度ではあるが、アクション映画を参照しつつ心身を強化しており、以前と比べて格段と個々の戦略が高まったと言える。彼女達が望んで選んだ道と言う事もあって、誰1人として弱音を吐かなかった。中でも、元々動く事が得意とは言えなかった園子は、今まで以上に気合いを入れて鍛錬に励んでおり、人一倍努力をしていた。それだけ隊長として、強くなろうとしているのだ。

 

「(負けてられないわね! この美しい御国を、晴人君達を守る為に!)」

 

須美も俄然やる気を出して、今日もスパーリングをこなしていく。

途中の、生卵の一気飲みに苦戦しつつも、今日の鍛錬を終えた3人の勇者は、呼吸を乱しながらも水分を摂り、汗を拭いていた。

 

「よし! 今日の鍛錬は以上だ。風邪をひかないように、汗をちゃんと拭いとけよ」

「「「はい!」」」

「晴人君達も明々後日には慣らし運転ではあるが、鍛錬に参加する事になるからな。しっかりついていけるように励むんだぞ」

「明々後日か〜」

「あたしらも気合い入れてかないとな!」

 

源道から激励の言葉をもらい、ガッツを見せる銀と園子。と、そこへ安芸から連絡事項が。

 

「それでね。あなた達にちょっとした任務を与えようと思ってるの」

「任務……?」

 

普段聞き慣れない単語を耳にして、思わず直立不動の姿勢をとる3人。対する安芸は肩の力を抜いて、こんな事を告げた。

 

「明日と明後日、あなた達を含めた、勇者並びに武神の6名に、休暇を設けます」

「……え?」

 

予想外の言葉に、思わず声が出てしまう須美。

 

「市川君達の事もあって、常に鍛錬して有事に備えているのは分かるし、心強いわ。けど、前にも言ったように適度に休んだ方が、何かあった時に一杯力を出せるものよ」

「お言葉ですが先生、私達は……」

 

須美が反論しようとするが、安芸はそれを遮る。多少強引な手ではあるが、こうでもしないと頑固な須美が了承しない事を、担任である安芸は知っている。

 

「そういうわけで命令よ。2日ほどしかないけど肩の力を抜いて楽に過ごしなさい。市川君達には私の方で連絡を入れておくわ」

「それに、俺も安芸君も、明日明後日は用事があって鍛錬に付き合う時間がないのだよ。大赦から、今後の勇者システム並びに武神システムに関する事で招集をかけられてな。ずっとここにはいられない。かといって俺達以外に代わりはいない。だから休暇が出来たのさ」

 

源道から理由を聞いて、銀と園子は真っ先に納得した。

 

「それならしょうがないよな」

「そうだね〜。わっしーもそう思うでしょ〜?」

「……そうね。分かりました先生」

 

須美も納得したところで、2日間の休暇が決まった。帰る間際、着替えを終えて身支度をしていた3人の所に、安芸がやってきた。

 

「そうそう。この2日間の過ごし方だけど、せっかくの機会なんだから、あの子達ともっとスキンシップをとる事をお勧めするわ。同じ勇者として、距離を縮めておいた方が、何かと好都合だと思うから。各自、頑張ってらっしゃい」

「距離を、って、どういう事ですか? それに頑張るって何を?」

「さぁ、何でしょうね?」

 

何やら含みのある助言を言い渡され、須美達は首を傾げる。

 

「……で、明日から何しよっか」

「みんなは何か予定あるかしら?」

「う〜ん。特に考えてなかったかな〜」

 

休暇を貰ったとはいえ、何をどう過ごせばいいのか、中々思いつかない3人。

 

「仕方ないわね。各自家で考えて、思いついたらすぐ実行できるようにしましょう」

 

須美がそう結論づけて、3人は家路につく。

 

「(とは言ったものの……。何をしたらいいものか。晴人君達の都合も聞いておかないと)」

「(みんなでどこかに出かけたい気もするけど、あてもないしなぁ……)」

「(みんなとお出かけもいいけど、偶には違う過ごし方もしたいな〜)」

 

各々が考え込む中、ほぼ同時に名案を思いつく。

 

「(! そうだわ! 全員で動く必要もないから、ここは一つ、面と向き合って話し合う機会を)」

「(こないだの借りもあるし、いっちょこの辺りで仕掛けておくか!)」

「(ピッカーンと閃いた!)」

 

3人は立ち上がり、すぐさま端末を開いて、それぞれ特定の人物にメールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日は晴天だった。

 

「暑いなぁ……」

 

夏の日差しを帽子のつばで隠しながら、門付近で待っている昴が呟く。右腕の事もあって、夏場でも薄手の長袖で隠すように施しており、汗が中々止まらない。待ち合わせの時間までもうそろそろといったところだ。

 

「お〜い、すばるん〜!」

「あ、園子ちゃん」

 

遠くから園子が駆け寄ってくるのが確認できる。何故か迎えの車ではなく徒歩でやってきた事に疑問を抱く昴だが、本人曰く「今日は2人だけで歩いて周りたい」と言っていたので、素直に従う事にしている。

 

「それで、今日はどこにいくの?」

「ん〜とね〜。考えてないよ〜」

「えっ?」

「今日はね、すばるんが行きたいなぁ、ってとこなら何でもいいよ! 2人だけでどこかに出かけるの、初めてじゃない? だから、どこでもいいんだ!」

「まぁ、勇者になる前は外出も制限されてたからね。……うん。じゃあとりあえず、あそこにいってみよっか」

「それってイネス?」

「うん」

 

そう言って、昴と園子はイネスに向かって歩き出した。

一方で、待ち合わせ場所として公園にやってきた巧は、時折すぐそばを通る主婦達から異様な視線を向けられつつも、気にせず1人の少女を待っていた。

やがてその少女が姿を見せたのは、約束の時間よりも30分早い時間帯だった。因みに巧はその15分前に来ている。

 

「おっす巧!」

「珍しい事もあるな。お前が遅刻しないばかりか、予定よりも早く来るとは」

「へへっ! これでも楽しみにしてたんだから、遅刻なんて出来るかっつうの!」

「楽しみ……? よく分からないが、まぁいい。……そういえば、その服は」

「へっ? あぁ、うん……」

 

巧が指摘したのは、銀の服装だった。よく見るとそれは、以前休暇を貰って園子の家で着せ替え遊びをした際に、園子から貰った可愛らしさ溢れる洋服だ。あの時は恥ずかしさのあまり、もう着ないような言い方をしていたが、心境の変化でもあったのだろうか。

 

「へ、変じゃ、ないかな……?」

「そ、そんな事はない。よく似合ってる」

 

銀につられて巧も若干恥ずかしげにそう答える。

 

「それにしても……。今日は他の連中は誘ってないのか。せっかくの休みなのに、お前ならみんなとどこかに出かけたいと言うもんだと思ってた」

「いやいや。あたしは巧と一緒に出かけたいんだ。今日ぐらい良いじゃん」

「ま、いっか。行き先はこっちで決めて良いと言ってたな。なら、イネスに行くか」

「それで良いの?」

「そもそも、そこ以外良い場所が思いつかない」

 

こうして巧と銀は、肩が触れるか触れないかの距離を保ったまま、イネスに向かって歩いて行く。

そしてまた別の場所では、晴人と須美が同じタイミングで集合場所に出くわした。

 

「おはよう晴人君!」

「おう、おはよう須美! でもびっくりしたぜ。お前の方から誘って来るなんて、今までなかったし」

「そ、そうね。今日は、その……。2人で、楽しみましょう。行きたい所があったら、私もついて行くわ」

「? 良いのか?」

「えぇ、もちろんよ。その為に、他のみんなを誘ってないのだから」

「言われてみればさ。2人きりでなんて、初めてだな」

「2人きり……!」

 

不意に顔を赤くする須美。晴人が気になって声をかけるよりも早く、須美が口早に告げる。

 

「さぁ行きましょう! 晴人君、どこに行きたい?」

「そ、そうだな……。じゃあさ。イネスに寄ってもいいか? せっかくだし、まだ行ってない所に行きたいんだよね。最近行ってないってのもあるけどさ」

「そうね。私も行ってないから、今日は気分を変えて楽しみましょう(とりあえず、第1段階の目標は達成したわね。この調子で……)」

 

そして晴人と須美は、イネスを目指して歩き出す。ただ、須美の方は緊張からか、ぎこちない感じが垣間見えており、その度に晴人が気にかけて、須美が顔を赤くする光景がよく見受けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三者三様の『戦い(デート)』が、今、始まる……。

 

 

 




最近、ハーメルンでゆゆゆ関連の小説を投稿する人が多くなったなぁ、と思う今日この頃。



〜次回予告〜


「こいつで勝負しようぜ!」

「似合うじゃん!」

「わんこだ〜!」

「気にしなくても大丈夫だよ」

「気に病みすぎだ」

「わ、私ね……」

「みんな一緒が一番だな」


〜ズッ友だから〜

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