結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

37 / 150
今回から、新章に突入します!

引き続き応援よろしくお願いいたします!


結城 友奈・久利生 兎角の章
プロローグ:讃州中学『勇者部』の日常


 

 

昔々、ある所に勇者がいました。

 

勇者は、人々に嫌がらせを続ける魔王を説得するため、そして、捕らわれてしまったお姫様を取り戻すために、旅を続けています。

 

様々な困難にあいながらも、勇者は挫けず、仲間を作りながら、前へと進みます。

 

そして遂に、勇者とその愉快な仲間達は、魔王の城にたどり着いたのです。

 

「やっとここまでたどり着いたぞ、魔王!」

 

「勇者様〜!」

 

城の窓から、姫様が勇者達を見つけて、大声で叫んでいます。そこへ、魔王が子分達を引き連れて現れました。

 

「現れたな勇者ども!」

 

「姫様! 今しばらくお待ちを!」

 

「さぁ、姫様を返しなさい!」

 

「もう悪い事はやめるんだ!」

 

勇者達は魔王を説得しようとしましたが、当の本人は全く聞く耳を持ちません。

 

「私を怖がって悪者扱いを始めたのは、村人達の方ではないか!」

 

「「そーだそーだ!」」

 

魔王に続いて、子分達も口々にそう叫びます。勇者は諦めずに説得を続けます。

 

「だからといって、嫌がらせは良くない! 話し合えば分かるよ!」

 

「話し合えば、また悪者にされる!」

 

「「そーだそーだ!」」

 

魔王達は勇者達の説得に応じません。それでも、勇者は挫ける事なく叫びます。

 

「そんな事ない! 君を悪者になんか、絶対にしない! ……ってウワァ⁉︎」

 

「危ねぇ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に舞台が前のめりに倒れて、露わになったのは、それぞれ人形を手にはめている少年少女達。

 

「や、やっちゃった……!」

 

低い声で慌ててそう呟いたのは、勇者役を演じていた、赤髪の少女。どうやら興奮のあまり手を振った際に、舞台にぶつけてしまったようだ。

 

「ちょ、お前何してんだよ……⁉︎」

「やばっ……」

「これ、は……」

 

その後ろに控えている、勇者のお供役を演じていた、やや小柄な少女と、少しだけ日に焼けた肌の少年、そして金髪で背の高い少年が、この非常事態に困惑している。否、それは魔王役を演じていた、黄色髪の少女や魔王の子分役である2人の少年、そして姫役を演じていた金髪の少女も同じか。

 

「あ、当たんなくて良かった……」

「喜んでる場合じゃないぞ。この空気どうすれば……」

 

子分役のうち、背の高い少年が辺りを見渡してそう呟く。

子供達は口を開けて唖然としており、その後方にいる先生達も反応に困った様子だ。

このままでは話が進まない。そう思ったのか、勇者役の少女がとった行動はというと……。

 

「ゆ、勇者キィーック!」

『えぇぇぇぇぇぇ⁉︎』

 

勇者によるキック(という名のパンチ)で、魔王に攻撃するという暴挙だった。当然ながら、後ろに控えていた勇者のお供達や魔王の子分達は、この予想外な行動に驚きを隠せない。

たまらず魔王が激昂した。

 

「ちょ、おまっ⁉︎ それキックじゃないし! っていうか、さっき話し合おうって言ったばかりじゃないの!」

「い、言っても聞かないから!」

「何言ってんの⁉︎ 台本通りなら聞くわよ!」

「メタい! メタすぎますよ!」

「アワワ……!」

「おのれぇ、そっちがその気ならこっちだって……! 魔王ドリルヘッドバット!」

「痛い⁉︎」

「ゆ、勇者を守れぇ!」

「者共! 私に続けぇ!」

「「い、イエス、マム!」」

 

魔王の反撃を皮切りに、仲間達も交戦し始める。場はカオスな状況に陥ろうとしていた。

 

「お、お姉ちゃん、みんな……。な、何がどうなって……」

 

すぐ近くにいた、音楽係を担当しているであろう少女があたふたとしていると、彼女に向かって魔王役の少女が指示を出す。

 

「樹、ミュージック!」

「えっ⁉︎ えっとじゃあ……これで!」

 

樹と呼ばれた少女は慌てて操作を始め、ある1曲を流し始めた。

流れてきたのは、いかにもおどろおどろしいテーマ曲。それを聞いて勇者役の少女がギョッとする。

 

「えぇ⁉︎ ここで『魔王のテーマ』⁉︎」

「ゆ、勇者! 前、前……!」

「えっ?」

 

お供の1人に呼ばれて勇者が振り返ると、そこにはさっきと打って変わって目をぎらつかせた魔王の姿が。

 

「ファッハッハッハァ! ここが貴様らの墓場だぁ! 仲間共々葬ってくれようぞ!」

「魔王が超ノリノリなんですけど⁉︎」

「こうなったら……! あたし達もやるぞ!」

「えっ? お、おう……?」

「突撃ぃ!」

 

そして現場は再び大混乱。観客である園児達は全くその空気についていけてない。唯一巻き込まれていない姫役の少女も、「これはこれで美味しいシチュエーション〜」などと呟いて、止める気配がない。

このままでは劇どころではなくなる。そんな雰囲気になり始めたその時、司会進行役を務めている、車椅子に乗った少女が園児達に呼びかけた。

 

「みんな、勇者達を応援してあげて! 一緒にグーで、勇者にパワーを送ろう! がーんばれ、がーんばれ!」

 

園児達を先導するべく、少女がとった行動は、園児達を巻き込んで勇者を応援する事だった。これに触発される形で動きを見せる、2人の少年が。

 

「さぁ皆さん! 僕達からも勇者にパワーを送りましょう!」

「こうやって手を丸く握って、前に突き出すんだ」

 

それまで先生達の隣に立っていた、メガネをかけた少年と、左目に大きな傷がついている少年が、園児達の隣に立って真似事をさせる。ようやく園児達も理解が進み、

 

『ガンバレー!』

 

の大合唱となった。これを聞いて魔王も苦しむ動作を見せる。

 

「グォォォ……⁉︎ みんなの声援が、私を弱らせていく……!」

「魔王様、しっかり!」

「ナイスアドリブ〜」

 

姫役の少女がその光景を見てノホホンと呟く。

好機と見た勇者が、お供達に呼びかけた。

 

「今だ! いくよみんな!」

 

そうして勇者とお共達は一箇所に集まって、魔王に突撃する。

 

「四位一体!」

「「「「勇者ぁ、パーンチ!」」」」

「イッテェェェェェェェェェェ⁉︎」

「「ウワァ⁉︎」

 

こちらもほぼアドリブ感覚で決まった、4人がかりのパンチをまともに受けて、魔王はその背後にいた子分達を巻き込んで、地面を転がる。

園児達から歓声が湧き、その間に力尽きたであろう魔王とその子分達に、勇者とそのお供、更には城から出てきた設定で、姫が駆けつけてくる。

 

「姫! ご無事でしたか!」

「はい〜。皆さんのお陰です〜」

「でも、これで魔王も分かってくれたよね!」

 

それから、姫が勇者と魔王の手を握る。

 

「えへへ〜。これでもう、私達はお友達だね〜」

 

姫役の少女が良い雰囲気に持っていく中、魔王役の少女が司会に小声で告げる。

 

「東郷、しめてしめて……!」

 

東郷と呼ばれた少女は戸惑いながらも、締めの言葉に入る。

 

「と、いうわけで、みんなの力で姫の奪還に成功し、更には魔王とその子分達も改心し、祖国と平和は守られましたとさ。めでたしめでたし」

「みんなのおかげだよ!」

「イェーイ! ビクトリー!」

 

勇者役の少女と、お供役を演じていた少女がVサインを送り、園児達は興奮冷めやまないと言った感じでそれに続く。演技の内容や全体の流れはともかくとして、一応は子供達に好評だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……といった感じで校外活動に青春を燃やす、少年少女達がいた。

 

 

 

魔王役を演じていた、ホッと一息ついている部長の『犬吠埼(いぬぼうざき) (ふう)

 

音楽係を担当していた、風の妹である『犬吠埼(いぬぼうざき) (いつき)

 

魔王の子分役を演じていたうちの1人で、背が高く、口に爪楊枝を咥えながら苦笑している『浜田(はまだ) 藤四郎(とうしろう)

 

もう1人の子分役で、藤四郎とハイタッチをしている『日村(ひむら) 冬弥(とうや)

 

今回の劇の台本の作成者であり、姫役を演じていた、今現在風を労うように肩を揉んでいる『乃木(のぎ) 園子(そのこ)

 

勇者のお供役の中で唯一の女性で、笑顔でVサインを送り続けている『三ノ輪(みのわ) (ぎん)

 

園児達の後方で応援役に徹していた、丸みの帯びた顔付きでメガネをかけている『神奈月(かんなづき) (すばる)

 

昴と同じく応援役に徹し、開いていない左目に大きな傷がついていて、若干強面な印象にも関わらず、子供達の方から寄ってかかってきている『大谷(おおたに) (たくみ)

 

司会進行役を務め、今現在はミニサイズの日本国旗を振っている、親友からも本人の希望で苗字で呼ばれている『東郷(とうごう) 美森(みもり)

 

勇者のお供役を務め、2年生ではあるが、とある事情で1番最近になって入部した『小川(おがわ) 遊月(ゆづき)

 

主役である勇者を演じ、笑顔が絶える様子もなく喜んでいる『結城(ゆうき) 友奈(ゆうな)

 

そして、勇者のお供役を演じ、今現在は園児達と握手を交わしている『久利生(くりゅう) 兎角(とかく)

 

 

 

 

 

 

 

以上、12名によって構成されている、『皆の為になる事を勇んで実施するクラブ』をモットーに、地元でもその活躍ぶりが噂されている、讃州中学『勇者部』の日常が、そこにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、ちょっとヘンテコな部活に所属する、普通の少年少女達が織りなす物語。

 

迫り来る真実を前に、悩み、苦悩し、そして勇気と根性で困難に打ち勝つ物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜』

 

 

 

〜結城 友奈・久利生 兎角の章〜

 

 

 

 




プロローグなので今回はこの辺で。

大人数ではありますが上手く動かせるように尽力します。
皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。


〜次回予告〜

「大事な話って……?」

「ピッカーンと閃いた!」

「アバウトだよお姉ちゃん……」

「大成功でしたね!」

「何だ、ここは……」

「私達が、当たりだった……!」


〜変貌する日常〜



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。