結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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今回はタイトル通り、隊長が決まります。


6:隊長決め

「……何というか、君達のやり方は、ゴリ押しそのものだな」

「「「「「「……はい。すいません」」」」」」

「まったく、あなた達は……」

 

翌日。合同訓練の時間を割いて急遽、安芸と源道に呼び出された晴人ら6人は、誰もいない教室内で軽く説教を受けていた。昨日の怪我の具合を見て、このままではいけないと判断したが故の、緊急会議である。

安芸は自身のスマホに特殊な方法で記録されていた、昨日の戦闘風景を再度見返しながらため息をつくばかりだった。一方で、晴人と銀は樹海化された中でも映像が撮れている事に不服を感じていたが、その視線は安芸には届かない。

 

「これじゃあ、命がいくつあっても足りないわ……。お役目は成功して、現実への被害が軽微なもので済んだのは、よくやってくれてるのだけど……」

 

それに対し、腕に包帯が巻かれた晴人が笑顔で答える。

 

「それは、みんなのお陰ですよ! みんなで一緒に立ち向かえたから、この時間も守れたわけですし!」

「市川君……」

「えへへ〜。でもイッチーも凄かったよ。すばるんもそう思うでしょ?」

「え? えぇ。突破口を開いてくれたのは、彼ですからね……」

「見ているこっち側は何度も肝を冷やすが、まぁ、お陰でこっちもやりやすかった」

「素直に感謝すりゃいいのにさ。巧って意外とツンデレ?」

「……っさい」

「ハッハッハ! その分なら、怪我の方も心配なさそうだな!」

 

源道が腕を組みながら6人を見て豪快に笑う。須美や安芸の方はやれやれといった表情だ。

 

「……とにかく、あなた達の弱点は、連携の演習不足ね。それを解消する第一歩として、先ずは勇者と武神、各1人ずつ、指揮をとる隊長を決めましょうか」

「これから先、どんな不測の事態が起きるかも分からないからな。安芸君と話し合った結果、便宜的に隊長を決めてチームの士気を高める事にしたんだ」

 

なるほど、と心の中で納得する須美。中心核となる人物がいるだけでも、精神的にも落ち着く気がする。

 

「(隊長……。私だわ……!)」

 

須美はやる気満々の表情で、自分が選ばれるのを確信し、待ち構えた。実際、指揮を取るなら3人の勇者の中でもバックス担当の人の方が効率も良いと思うし、須美自身も指示を飛ばす事に苦手意識はない。

須美が興奮をどうにかして抑え込む中、安芸は隊長に相応しい人物の名を告げる。

 

「乃木さん。隊長頼めるかしら?」

 

安芸の口から挙げられたのは、あろうことか、3人の中で終始ポヤーッとしており、とても指示を飛ばす役には向かなさそうな、園子だった。意外な結果に須美は呆然となるが、それ以上に驚いているのは、選ばれた本人だった。

 

「え? わ、私ですか?」

「あたしはそういうの、柄じゃないから。あたしじゃなければ、どっちでも」

 

銀は初めから隊長になる気もないのか、それとも初めから隊長には向いていないと周知しているからか、園子が隊長になる事に異論しない。こうなると、残すは須美の返事だけだ。園子が隊長に選ばれた理由を考察していた須美は、そこである事に気付いた。

 

「(そっか……。考えてもみれば、乃木家は大赦の中で力を占めている。こういう時も、リーダーに選ばれる家柄なんだ)」

 

鷲尾家も名家といえば名家なのだが、乃木家と比べればずっと小さい。富も名声も、ずっと格上なのは事実であり、そう考えると隊長に選ばれた理由も、何となくではあるが理屈が通る。そう考えを改めた須美の中で、答えは決まった。

 

「私も、乃木さんが隊長で賛成よ」

「わっしー……」

「(でも、実際は私がまとめないと……。うん、頑張ろう)」

 

便宜上、園子に決まってはいるが、彼女の能天気さや、銀の危なっかしいほどの大胆さをコントロールできるのは、須美だけだ。実戦になれば自然と自分が指揮をとっていく事になるだろう。須美は自分をそう納得させ、決意を新たにした。

 

「勇者の方はこれで決まりだな。次に、武神の方だが……」

「(これも、乃木さんの時と同じね。あの3人の中で地位が高いのは、神奈月家だから)」

 

須美は、武神組のリーダーは乃木家と深い関わりを持ち、格上の名家として知られている昴が選ばれるだろうと推測する。

だが、源道が告げた人物は、須美の想像を遥かに超えていた。

 

「これは、晴人君に一任しようと考えている」

「……え、えぇ⁉︎」

「市川君が、ですか……⁉︎」

「鷲尾さん? 何か問題でも?」

「い、いえ……」

 

安芸の視線を受けて黙り込む須美。

 

「(どういう事……⁉︎ 市川家は大赦の中でも格下の地位。それが関係なかったとしても、どう考えても市川君には無理があるような役目を、何故先生方は……?)」

 

須美の中でも生まれた疑問は、晴人自身も感じていたらしく、戸惑いを隠せない。

 

「お、俺が隊長……? 学級委員どころか、班長すらやった事ないんですけど⁉︎」

 

だが、晴人の両隣にいた2人は、異議を唱える事なく逆に晴人を励ました。

 

「僕も、晴人君が隊長なら心強いです。慣れない事かもしれないですけど、何事も経験ですよ」

「……まぁ、俺も晴人なら構わない」

 

側にいた銀、園子も言葉には出さなかったが、晴人が隊長になる事に賛同しているような眼差しを向けている。それに気付いた晴人は、少し唸った後、大きく頷いて返答する。

 

「んじゃあ、俺やってみます!」

「よぉし! 良い返事だ! 色々と大変かもしれないが、頼んだぞ!」

「はい!」

 

晴人と源道は人一倍気合いのこもった声を張る。その様子を見て、須美は内心やれやれといった表情を浮かべる。

 

「(これは……、3人追加ね)」

 

かなり癖のある連中ばかりだが、この5人をまとめて、これから面倒を見ていこう。須美は心の中のハードルを上げた。

各役割担当のリーダーが決まったのを確認した安芸は、次の議題に移った。

 

「決定ね。神託によれば、次の襲来までの期間は割とあるみたいだから、勇者も武神も、それぞれ連携を深めていく為に、合宿を行おうと思います」

「「「「合宿⁉︎」」」」

「オォ!」

「強化イベントキター!」

 

晴人と銀が興奮する中、差し迫る3連休を活用して行われる合宿の概要が、2人の口から説明された後、予定通りにその日の鍛錬へと移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた3連休の初日。神樹館小学校が貸し切ったバスの中で、須美は1人、苛ついていた。

 

「……ムゥ〜」

「ZZZ……」

 

むくれている須美に寄りかかるように、園子がいつものように夢の中にいる。その近くの席では……。

 

「負けたぁぁぁぁぁ⁉︎」

「これであがり、ですね!」

「晴人、お前弱すぎだ……。もう少しポーカーフェイスを装えるようにしておけ」

「うぅ、返す言葉がございません……」

 

若干涙目で、空いた席に積み重ねられているトランプを回収し、再度ババ抜きをしようとする晴人。

これからお役目に向けた、特別な鍛錬だというのに、緊張感の欠片も見受けられない3人を見て、須美は頭を抱えそうになる。が、それ以上に須美を困らせているのは……。

 

「……遅い! 三ノ輪さん遅い!」

「どうしたんだよ須美? いきなり叫びだして。須美もやるか、トランプ?」

「結構です! それより……」

「まぁ、彼女が来るまでバスは発車しませんし、まだ集合予定から10分しか経ってませんよ。もう少し待ちましょう」

「だからってこれは」

「んっ。来たみたいだぞ」

 

巧が窓の外に目をやり、皆が視線を上げると、乗車口の戸が開き、荷物を抱えて駆け込んでくる銀の姿が。

 

「悪いわるい! 遅くなっちゃって……!」

「おう、おはよう銀!」

「おはようございます」

「おいっす!」

「遅い! あれだけ張り切ってたのに10分も遅刻よ!どういう事かしら⁉︎」

 

大幅な遅れではないとはいえ、規律に厳しい須美からしてみれば、遅刻に他ならない。挨拶もそこそこに理由を問いただす須美。頭に角を生やしているイメージが、武神達の中で共通している。

 

「いや〜、色々あって……」

「何かあったんですか?」

 

今度は昴が問いかけるが、銀は理由を語る事なく謝った。

 

「……や、悪いのは自分だけど。とにかくゴメンよみんな」

「俺は気にしてないから大丈夫だぞ!」

 

晴人は手を振りながらそう答え、巧と昴も特に言及するような事はしない。が、彼女だけは別だった。

 

「この際だから注意させてもらうけど、三ノ輪さんは普段の生活が少しだらしないと思うわ! 勇者として選ばれた自覚を」

 

と、その時。須美による精神年齢高めの説教を遮るかのように、鼻提灯が割れて、園子が現実世界に帰還。そして寝ぼけ眼のまま呟く。

 

「……はれ? お母さんここどこ?」

「ここは神樹館小学校が借りられたバスの中で、もうすぐ合宿が始まるんですよ、園子ちゃん」

 

昴が丁寧に説明し、晴人と銀が笑い、巧が肩を竦める中、須美は言葉をかける気すら失せた。

 

「(やっぱり私がしっかりしていないと……。この美しい国を護る為に……!)」

 

目的地へと向かうバスの中。須美は心の奥底でそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦が管理下に置いている旅館に到着した一同は、荷物を置き、予め待機していた源道と共に準備運動を始めた。

体が温まってきたところで、源道が告げる。

 

「よぉし、それじゃあ須美君、銀君、園子君は海岸の方に集合し、安芸君の指示に従って訓練に励んだまえ!」

「えっ? 勇者だけ? 俺達は?」

「晴人君、巧君、昴君は俺についてこい。みっちり指導してやるからな!」

「一緒に合同訓練をするわけじゃないんですね」

 

勇者と武神では、目的は同じでも基礎が違ってくる。それを考慮してより厳しい特訓プログラムを武神側に用意してあるのだろう。武神に選ばれた3人は緊張感を高めつつ、源道の後に続いた。残された須美ら3人も、言われた通りに海岸へと走って行った。

海岸には、これまた先に現地入りしていた安芸が待っており、連携を深める為の訓練の内容が告げられた。訓練の内容は割とシンプルだった。近接型に特化した銀を、丘の麓にある廃バスまで辿り着かせるのが最終目的だが、道中でバレーボールマシーンから放たれるボールに当たらないようにしなければならない。そこで園子が槍を盾にして護衛しながら銀をなるべく目的地まで近寄らせる。それだけでは園子に負担がかかるので、須美が後方から援護射撃をする。ただし、須美だけは一定の場所から動いてはいけないというハンデをつけて。お互いの役割を忘れない為の措置だと、安芸は語る。

当初は楽勝だと思っていた銀だったが、やってみると難しいものであった。中盤までは園子の防衛や須美の射撃でどうにかなるが、ボールの数が増えていくにつれて、対処が難しくなり、結果的に銀の顔面にボールがぶつかってしまう。かといって銀が待ちきれなくて、一気に攻め込もうとすれば、たちまち豪速球の餌食にされる。

お互いの連携が取れていない証拠だ。安芸は3人にそう語った。このままでは5人どころか1人もまとめられないと焦る須美は、どうにかして2人が動きやすくしていけるようにと、必死に矢を放ち続けたが、やる気だけが空回りしてしまい、討ち洩らした球が銀に直撃し、目標を達成できない。

 

「ご、ごめんなさい三ノ輪さん!」

「ドンマイだよわっしー」

「……ていうか、呼び方堅すぎだぞ。『銀』で良いっていつも言ってるだろ?」

「私の事は、『そのっち』で! はいわっしー、呼んでみて!」

 

そう言われるものの、須美の中でどうしても割り切れず、なかなか呼び捨てにする事は叶わない。

結果、初日の勇者組は、到達ラインのハードルを下げる事でクリアし、訓練を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、武神組が源道に連れられてやってきたのは、源道が寝泊まりしているであろう、旅館の個室だった。てっきり訓練場に案内されるものだと思っていた3人は、首を傾げていた。

 

「あの……。ここで、どんな鍛錬を行うのですか? さすがに体を動かすには、ここは狭いような……」

「確かに。もっと広いとこでやるのかと思ったら……」

「それはこれから説明する」

 

3人を畳式の床に座らせ、自身も座り込むと、普段見せないような真剣な表情となり、3人は思わず息を呑む。

 

「武神システムは、勇者システムから派生して作り出されたものであり、系統こそ同じだが、神の力をより多く取り込んだもの。だからこそ、武神は『上位勇者』とも呼ばれている。これは君達も事前に聞かされているはずだ」

「はい。前線での戦いに特化し、『神の力で戦う武士』の象徴。それが武神」

「大いに勤勉で結構な事だぞ、昴君。神の力をより多く引き出す以上、体への負荷も大きい。大きな力を振るうには、それに見合った器がいる。それが君達だ。今回は、その器をより頑丈に、より大きくする為の特訓を俺が直々に伝授するぞ!」

「おぉ! なんかハードル上がる予感!」

 

晴人が興奮する中、巧だけは先ほどから源道の後方に見える、ダンベルや重石といった、筋力アップの為の道具だったり、何故か設置されているDVDプレーヤーに訝しんでいた。

すると、源道は立ち上がってDVDプレーヤーの隣に置かれていたカバンの中を漁り始める。

 

「それじゃあ、早速始めるとするか! 題材はたっぷりと用意してあるからな!」

「題材……?」

 

昴が首を傾げていると、源道はカバンから取り出したものを3人に見せた。文字が掠れているDVDであったが、目を凝らしてみると、うっすらと見えるタイトルには、こう記されている。

 

「○ッキー……? これは、一体……」

「こいつは西暦以前に製作された、アクション映画の元祖とも謳われるものでな!大赦に厳重保管されていたものを、このDVDに焼いて持ってきたものだ! かなりのレアものであり、この時代を生きる君達がこれを観れるのは幸運な事だと思った方が良いぞ!」

「アクション映画……?」

「……え、ちょっと待ってください⁉︎ もしかして、これからその映画を観るって事ですか⁉︎ これって、連携を深める為の合宿ですよね?」

「当然だ。だが連携を深めるのと共に基礎体力を向上させるのも、武神達における合宿の目的だ」

「その映画を観る意味は……」

「勿論、この映画に出てくる特訓をベースにして、君達をより強化する! これはその為の参考資料だと思ってくれれば良い。他にも、色んなタイプのアクション映画を持ってきたからな! どれも、俺のとっておきだぞ!」

 

その独特な特訓方法に、3人は異なる反応を見せる。つまり、源道がやろうとしている特訓は、簡単に言えば様々なアクション映画を鑑賞し、そこに出てくる人達の動作を真似したり、劇中の特訓を実際に外に出て行い、最終的には自分の力に変えていく。それが源道流の特訓であった。

巧は内心呆れ、昴は本当にこれで鍛えられるのだろうかと疑い、晴人はそのやり方を気に入り、俄然やる気になった。巧と昴も、隊長に背中を押される形でアクション映画に魅入る事となり、映画を観終える毎に、外に出てこれまたハードな特訓という、ある意味で須美達以上に過酷な特訓が行われた。

 

「あの体つきからして、ある程度予測はしていたが、アクション映画の鑑賞が趣味だったか……」

「僕達が観てる間も、先生1人で興奮してましたからね……」

「でも、やりがいはありそうじゃん! 実際、なんか体力もついてきたって感じするしさ!」

「それは……そう、かもな」

「ほらお前達! まだまだ特訓は始まったばかりだ! 気合い入れていくぞ!」

「「「はい!」」」

 

胴着に身を包んだ、選ばれし武神達は、自転車に乗って迫り来る源道に追い立てられるように、旅館の近くにある坂道を、横並びに汗を流しながら駆け上がっていった。

合宿は、まだ始まったばかりなのである。

 

 




薄々勘付いている方もおられるかもしれませんが、源道のイメージキャラは、『戦姫絶唱シンフォギア』で『OTONA』こと『風鳴 源十郎(CV:石川 英郎)』です。ああいう人が『ゆゆゆ』(『わすゆ』や『のわゆ』)にいたら、もっと明るい結末があったのかもしれないですね……。



〜次回予告〜

「例えるなら、戦艦長門……」

「……俺はまだ死にたくない」

「その桃くれ!」

「私、焼き鳥好きなんよ〜!」

「師匠と呼ばせてください!」

「好きな人の言い合いっこしようよ!」


〜至福のひと時〜

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