結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今更ながら、『シンフォギアXD』と『リリカルなのは』とのコラボ、最高でした。あんなサプライズ演出までしてくれるとは夢にも思わなかったので、リリース3周年を祝福すると共に、これからもより良いサービスの提供を期待する所存でございます。……願わくば『ゆゆゆい』とのコラボを夢見て。

『ゆゆゆい』でも、大満開友奈がURで実装されましたね。さすが主人公と言わんばかりの性能でしたね。

さて、今回で遂に決着が……! そしてラストの方では……。



39:咲き誇れ

「っと、そうだった。こいつは返しとかないとな」

 

ようやく落ち着きを取り戻した東郷に、遊月改め晴人は、懐からある物を取り出し、彼女に見せた。

 

「! それって……」

「思い出したんだ。あの時、12体のバーテックスと戦う時に、こいつをお守り代わりにして、お前から預かったのを」

 

遊月の手に握られていたのは、日の丸が中心にデザインされていた、ハチマキ。合宿先の旅館で、朝方に向き合って話し合っていた際、彼が見せてくれたものだ。通りかかった漁船に引き上げられた際に握られていたとされるそれは、遊月にとって、過去の記憶に繋がるアイテムだと思い、肌身離さず持ち歩いていた。

全ての記憶が戻った事で、このハチマキの本当の持ち主が目の前にいる事も理解したのだ。

 

「やっぱりこのハチマキは、須美に持ってもらった方が似合うからな。……ありがとな」

 

そう言って遊月は、東郷の額にハチマキを巻きつける。護国思想の強い大和撫子よろしく、日本国旗を額につけた東郷のその姿には、しっくり来るものがあると、周りの面々は納得した。

ようやく取り戻した『友情』。しかし、まだ『全て』が終わっていないと気づいたのは、彼らの後方が異様に明るくなり、熱気を帯びた風が肌に触れた時だった。

 

「な、何だ⁉︎」

「太陽……?」

「! いや、これは……!」

 

小型の太陽にも似たそれは、友奈達の頭上を越えて、神樹へと一直線に向かっていった。

再生した獅子型が、全力で神樹を破壊するべく、自ら突撃を試みたようだ。

 

「マズい! あのまま神樹様にたどり着いたら……!」

「世界が終わってしまいます!」

「ヤバい……!」

「早く止めないと……!」

「私、大変な事を……!」

 

改めて、自分が引き起こしてしまった事に罪悪感を感じる東郷。しかし、悔やんでいる場合ではない。

 

「東郷さんのせいじゃない! あいつを止めるよ!」

「行けるか須美? 俺達の力を合わせて、この世界を守るぞ!」

「はい!」

 

遊月の言葉にしっかりと返事をする東郷。

そうして一同は、満開を維持したまま、獅子型を追い越して、正面から迎え撃つ事に。

 

「「「止まれぇぇぇぇぇぇぇ!」」」

「勇者は根性ぉ! 押し返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

8人全員で、手をかざしながら力を込めて侵攻を止めようとする。が、全くもって勢いが衰える様子が見受けられない。

 

「っ! 何て、パワーだ……!」

「くっ……!」

「そん、な……! 止まら、ない……!」

 

あまりにも力の差がありすぎるのか、弱音を吐いてしまう東郷。しかし、全員諦める事なく歯を食いしばっている。

 

「まだ、だぁ……!」

「絶対に……! 諦めな、い……⁉︎」

 

不意に全身から力が抜けていくのを感じた友奈。全身から花びらが散り、元の勇者服に戻ってしまい、そのまま地上に落下していく。

 

「友、奈……!」

 

時を同じくして、隣にいた兎角も効力が切れて、友奈と同様に満開が解けてしまう。そして東郷の隣で懸命に力を込めていた遊月にも、限界が訪れた。

 

「くっ……! これ以上は、維持出来ない……!」

 

そう呟く遊月の体から花びらが散っていくのが、東郷の目に映った。

 

「遊月君! 嫌、そんな……! 私1人じゃ、これは……!」

「っ! 諦めるな、須美……! お前は、1人なんかじゃない。必ずそばにいるって、約束したからな……! だから……!」

 

そこまで言い切った後、光が解けて落下していく遊月。ここまでで満開の力をフルに使っていた3人が戦線から離れてしまうのは、残された面々にとってもかなりの痛手だろう。

 

「友奈!」

「ゆーゆ!」

「兎角!」

「遊月君が……!」

 

そして3人は、地面に落下。衝撃は精霊バリアによって軽減されたが、彼らは勇者の力を維持出来ず、私服姿に戻ってしまう。

そして、満開を行使した後に待ち受けているのは……。

 

「ハァッ、ハァッ……! こんな、ところで……!」

「っ! 右目を、もっていかれたか……!」

「(! 左手に、力が……!)」

 

兎角は右半分が黒く塗りつぶされている事に気づき、遊月も左手が指一本動かせない事を自覚する。だがそれ以上に症状が重かったのは、友奈だった。

 

「! 足が……」

「友奈……!」

 

それは、東郷と同じ症状。このタイミングで散華として両足が供物として捧げられたのは、かなりの痛手だ。他の2人も、足に異常こそないが、スタミナが切れかかっている事もあって、立ち上がる事さえままならない。

 

「急がないと……!」

 

気持ちだけ焦る遊月の目線の先には、小型の太陽が少し先にそびえ立つ神樹に向かって急速接近していく光景が。

抑え込む人数が3人も減ってしまった事で、獅子型の侵攻速度が早まったように感じられた。流石の銀も、根性だけで乗り切ろうとしている事に限界を感じつつあるらしく、苦悶の表情に満ちている。それに彼らもいつ何時、友奈達のように満開が解けてもおかしくない状態だ。これ以上人数が減ってしまうと、いよいよ絶望的だ。

 

「うぅっ……! 遊月、君……、もう、ダメ……」

 

最早ここまでか。東郷は全身から力が抜け始めている事に気づく。

 

「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」」」

 

そんな彼女達を奮い立たせたのは、後方から轟く叫び声だった。彼らの両隣りに、計4人の人影が。

 

「! 先輩!」

「冬弥に、樹も……!」

 

それは、一旦戦線を離脱していた、1年生と3年生の勇者部員達。兎角達が東郷と交戦している間に、スタミナもある程度回復し、こうして目の前の危機を打開するべく、再び戻ってきたようだ。それが証拠に、彼らはすでに満開を行使した状態で、獅子型の侵攻を食い止めようとしている。

 

「お待たせッス!」

「ごめん大事な時に!」

「遅れた分はきっちり戦うからな!」

 

声の出ない樹を除く面々は、気迫に満ちた声を発する。それを見て、東郷は涙ぐむ。

 

「樹ちゃん、冬弥君……! 風先輩、藤四郎先輩……! わ、私……!」

「お帰り、東郷」

「信じてたぞ。お前なら、きっと思いとどまってくれるってな」

 

2人の先輩は、責める事なく、労いの言葉をかける。それで再び目尻から水滴がこぼれ落ちそうになる東郷。だが、まだその先の言葉を投げかけるよりも、やるべき事がある。

 

「さぁ行くぞ! 気合い入れろぉ!」

「オッシャア!」

「押し返せぇ!」

 

頼もしい援軍の登場に奮起した2年生組は、途切れかけていた気力を振り絞る。獅子型の速度が低下しつつあるように感じられるが、依然として止まる気配がない。

 

「マズいな……!」

「ぐっ……! この9人でも……!」

「そこかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

次第に焦り始める風だったが、その不安を払拭するかのように、新たに2つの人影が、彼らの頭上を飛び越えて、獅子型とぶつかった。

 

「! 夏凜!」

「真琴先輩!」

 

銀と冬弥が、待ちわびていたであろう援軍に歓喜する。

 

「完成型勇者ってのはねぇ! 例え片目潰されたって、気配でわかんのよ!」

「……!」

 

声帯を失った真琴も、その通りだと言わんばかりに、腕に力を込める。

 

「勇者部を、ナメるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして2人はそのまま満開を行使。更に2人分の兄弟な宝が加わった事で、獅子型の動きが僅かに衰えているように感じられる。

 

「よぉし! 全部乗せだよ〜!」

「これなら……!」

「行くわよ! 勇者部ファイトォ!」

 

部長の掛け声に合わせて、11人の勇者は咆哮を荒げて、ありったけの力を腕に込める。そうして一丸となって獅子型を止める彼らの姿は、一輪の巨大な花が咲き誇ったようにも見受けられる。無限の星さえ霞んで見えるほどに、体の中に勇気が湧いてくるのを、東郷は感じ取る。

 

「(そうだ……! 誰かが困った時は、周りのみんなが、力を、勇気を与えてくれる……! それこそが、『勇者』のあるべき姿だったんだ……!)」

 

ようやく、遊月達が必死になって間違いを犯そうとしている自分を止めようとした理由を悟る東郷。そして、緩みかけたハチマキの両端を握り、ギュッと固く結び直す。

 

「もう、私は……! 1人なんかじゃ、ない!」

 

そして遂に、獅子型の動きが、大きな音を立てて止まった。しかし油断は出来ない。気を抜けばまた押し切られてしまうほどに均衡しているからだ。

しかし、だからこそ彼らは期待したのだ。この状況を打破できる者達は、他にもまだいる事を、彼らは知っているからだ。

 

「みん、な……! そう、だ……! 俺達は、諦めない! 勇者部五箇条一つ、なるべく諦めない、だったなぁ!」

「ぐっ、うぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」

「行く、ぞ……! 友奈……! 俺達の手で、世界を……! みんなを……!」

「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」」」

 

両手をついて立ち上がった遊月、友奈の右肩を担いで共に起き上がろうとする兎角、そして兎角に支えられながら立ち上がろうとする友奈。3人の咆哮が、樹海内を支配する。

その様子を後方からジッと見つめていた牛鬼は、友奈の頭上で霧散して、満開時と同様に巨大な腕を出現させた。

そして因幡と伊奘波は、各々のパートナーの体の中に溶け込むかのように消えていき、2人の体を光らせる。

3人が同時に飛び上がると、友奈の姿は、満開ゲージが溜まっていなかったにもかかわらず、神々しい姿へと神格する。そして兎角は、空中を蹴るように飛び上がりながら、上空から降って来たアーマーを両腕や両足、そして最後に上半身に装着され、背中から長いウサギの耳のような装飾が施される。遊月は、髪の毛が異様なほどに長く伸び、その先端が鋭く尖っていた。2人の武神が、最後の力を振り絞って精霊降ろしを行使したようだ。

 

「私はぁ! 讃州中学勇者部!」

 

勢いよく飛び出した3人の姿を見て、その前方で獅子型を押さえつけていた面々が、声を張り上げて叫んだ。

 

「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!」」」」」

「頑張れぇぇぇぇぇぇ!」

「そのまま……!」

「いっくよ〜!」

「「……!」」

「遊月君!」

「勇者、結城友奈だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「「ハァァァァァァァァァァァァァ!」」

 

正面を友奈の拳が、その両サイドから、兎角と遊月の突進にも程近い突撃が、獅子型に直撃する。そのまま球体の内部にのめり込む3人。そうしているうちに、友奈の外装にヒビが入り、徐々に削られていくのが兎角の視界に捉えた。が、彼女は諦める姿勢を見せない。その姿こそ、幼い頃からずっと見てきた背中。ずっと憧れてきた、幼馴染みの勇姿。尚も抗うかのように友奈にダメージを与えていく獅子型に対し、兎角はありったけの感情を込めて叫ぶ。

 

「人間をナメるなぁ、バーテックス! 俺達は、絶対に屈しない! 例え相手が神様だろうと、俺達の絆は、誰にも、引き裂かれない! 俺達勇者は、絶対に、負けねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

激しい炎の激流に呑まれる事なく前進する3人。そして遂に、その核と思しき、逆四角錐の巨大な物体が見えてきた。既に3人は心身共にボロボロだったが、仲間から受け取ったバトンを胸に刻み、その腕を伸ばす。

 

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

そう叫んだ友奈の全身は遂に、勇者姿から元に戻ってしまう。だが、そんな事は関係ないと言わんばかりに、我先にと手を伸ばし……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那、彼女の両脇を、2つの人影が追い越したのを視界に捉える。

何故急に飛び出たのか。驚く友奈を尻目に、兎角は無我夢中で拳を握った。何故だか分からないが、このままでは、先に手を伸ばした友奈が危ない。そう直感した兎角が、精霊降ろしを行使したまま、前に出たのだ。

そして遊月もまた、嫌な予感がしたのか、我先にと友奈を追い越すように駆け抜ける。さすがに兎角が並んでいる所までは気が回っていなかったが、もう止まれない位置に付いている。

2人の雄叫びが轟き、その拳が、御霊に打ち込まれた。

その瞬間、御霊を中心に光が溢れ出て、兎角や遊月を初め、友奈や、その外にいた東郷達を呑み込んだ。爆発音が鳴り響き、薄れる意識の中、友奈が最後に見たのは、幼馴染みと、その隣にいた先代の武神の体から、人型と思しき光が分離していくという、不思議な光景だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ふと目を開けると、青坊主がこちらを見下ろしているのが確認できた。段々と意識がはっきりしてきた東郷は、周囲に目を配る。側から見ても分かるほどにボロボロになって倒れている、13人の勇者部員の姿があった。その全員の頭上に、パートナーであった精霊達の姿が。やがてその精霊達も輪郭が薄れていき、遂には、まるで役目を終えたと言わんばかりに霧散した。後には、彼女達がモチーフとしていた花の花弁が降り注ぐばかり。

しばらくして、他の面々も意識を取り戻したらしく、呻き声と共に目を覚まし始める。

 

「……?」

「あ……」

「終わった、の……?」

「……みたい、だな」

「うぅっ……」

「友奈、ちゃん!」

 

苦しそうに声を上げた友奈にすがりつく東郷。東郷に手を握られて安心したのか、弱々しくも笑みを浮かべていた。

 

「……やったね、東郷、さん。私達……」

「……うん!」

 

ホッと一息つく東郷。涙がまたこぼれそうになっている。それから2人は、幼馴染みに、そして2年前から共に戦ってきた戦友兼想い人に声をかけようと、顔を動かす。

 

「兎角。私達の、勝利だね、ブイ……!」

「遊月君。私、ね……」

 

友奈はVサインを送り、東郷はずっと胸の内に秘めていた事を、言葉に表そうとする。

……が、いつまで経っても返事がこない事に、ようやく友奈も東郷も、異変を感じ取った。

 

「……えっ?」

「遊月、君……」

 

2人は、確かに地面に横たわっていた。が、単に気絶しているだけとは思えないように、2人は直感する。

 

「兎角……! ねぇ、兎角!」

「遊月君! どうしたの……⁉︎」

 

2人が必死にその名を呼びかけるが、声は聞こえてこない。他の面々も、体に力が入らず、起き上がれないままではあったが、この異常事態に息を呑む。

 

「兎角!」

「遊月君!」

 

2人は何度もその名を叫ぶが、反応はなく、次第に世界は光に包まれる。お役目が終わり、樹海化が解けようとしている。

ようやく全てが終わり、世界の平和は守られたのも事実。しかし全てが元通りとはならなかったのもまた事実。

掴み取った『希望』と、訪れた『絶望』が、交差しようとしていた……。

 

 

 

 




……はい。というわけで今作では、友奈ではなく、兎角と遊月が代償を払う形となりました。ここから上手い形に『勇者の章』まで繋げられるか、少し自信はありませんが、頑張っていきたいと思います。


〜次回予告〜


「治癒が、始まってる……?」

「治るんだ、私達……!」

「戦いは、これからも続く……」

「練習、頑張りましょう!」

「何で、あの2人だけ……」

「提案があるんよ〜」

「きっと、大丈夫……!」


〜激闘の果ての物語〜

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