結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜   作:スターダストライダー

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大変長らくお待たせしました。

そろそろ新章に向けて設定を詰めていかないとな、と構想に悩んでいる作者であります……。

さて、今回は遂に……!


41:ずっと一緒に、これからも……

「……というわけで、園子ちゃんが今回の為に、新たに台本を書き直したんですよ」

「結構スムーズに、決まりましたからね」

「えへへ〜。みんな事実に基づいた事だからね〜。そんなに苦労しなかったから、手直しもスラスラだったよ〜」

「で、昨日からようやく演劇の稽古に入れたんスよ」

「ま、セリフに関しては、風は全然覚えてないけどな」

「ちょ、藤四郎。それは言わない約束でしょ……!」

「サプリはたっぷり用意してるわよ」

「とりあえず、無理はするなよ」

「そう、巧君の言う通り。無理しなくて大丈夫だからね」

「あたしらは、待ってるからさ!」

「信じてますよ。僕も、夏凜ちゃん達も」

「だから、一緒に練習、頑張ろうね!」

 

その後も、勇者部一同は、時間が空いた時には、兎角と遊月がいる病室に足を運んでいた。園子が提案した、台本の大幅な変更も滞りなく済み、本格的に動きを加えた練習が始まろうとしていた。当然ながら、2人の役はそのままに。

この頃になると、散華によって失われていた体の機能もほぼ全快し、先代勇者は古傷がまだ癒えない所もあるが、それ以外の、比較的最近に供物として捧げられた部分は元に戻りつつあった。

また、先代勇者の監督役でもあった、源道や安芸、そして晴人の親達は、子供達ほどの頻度ではないにしろ、病室に顔を出す事もあった。

……が、依然として彼らが目覚める兆候は確認されなかった。気がつけば、最後の戦いから早1ヶ月が経とうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、ある日の午後。

 

「『勇者は、何度傷ついても、決して諦めようとはしませんでした』」

 

病院の広場のベンチにて、友奈、東郷、銀、園子、巧、昴の6人が台本を片手に、読み合わせの練習をしていた。その傍らには兎角と遊月が車椅子に乗って並んでいるのは言わずもがな。

2人と密接な関係にあった友奈と東郷は、彼らが病院に入ってから毎日見舞いに通っていたわけだが、ここ最近は他の4人、即ち遊月や東郷と共に、かつて人類の敵を退けるべく戦い続けてきた勇者達も付き添い、毎日の見舞いを欠かさず行ってきた。

 

「『全ての人が諦めてしまったら、それこそこの世が、闇に閉ざされてしまうからです』」

 

現在は、友奈と東郷を中心に、ナレーションの部分を朗読しており、他の4人は台本に目を通している。

 

「『勇者は、自分が挫けない事がみんなを励ますのだと信じていました。どんな逆境に身を置いても、勇者は明るく笑っていました』」

「『意味がない事だと言う者もいましたが、それでも勇者はへこたれませんでした』」

 

病院にいない他の面々は、小道具の準備や効果音の調整などで勤しんでいる。そして友奈達は忙しい合間を縫って、この場に来ているのだ。

ずっと一緒にいると、約束した、あの日から……。

 

「『みんなが次々と真実に屈する中、その勇者だけは、戦う事を、諦めませんでした……』」

「『例え孤独になろうとも、諦めない限り……、希望が、終わる事はないから……です……』」

 

不意に、2人の声が震え始めている事に気付いた銀、園子、巧、昴。

 

「『何を失っても……』」

 

次第に、嗚咽が4人の耳に響いてくる。

 

「『それでも……』」

 

遂には、東郷が持っていた台本がグシャリと握り潰され、シワが目立ってしまうほど、震える手に力が込められてきた。

 

「それ、でも……!」

 

そうして顔を上げた東郷を見て、息を呑む4人。その両眼から溢れ出てきたもの。それは……。

 

「それでも、私は……!1番大切な……!世界中の誰よりも、大好きな人を、失いたくない……!」

 

よく見ると、その隣にいる友奈もまた、顔こそ俯いているが、ポタポタと滴が、制服のスカートに染み込んでいるのが確認できる。肩も、震えている。

 

「嫌だ……!嫌だよ……!寂しくても……!辛くても……!ずっと……!ずっと、一緒にいてくれるって、言ったじゃない……!」

 

遂には台本を投げ捨て、立ち上がって遊月の正面に向かい合うようにして意識のない彼の目線に合わせるように膝を曲げ、彼の膝下に顔を埋める。

 

「晴人、君……!私、少しだけど……、思い出したのよ!初めて見たあなたは、転入初日に、学校に遅刻しそうだと勘違いして、慌てて走ってきて、ぶつかって、私の手を掴んで、謝って、安堵して、眩しいくらいの笑顔で、頑なだった私に、優しく接してくれた……!初めてのお役目の時も、あなたは臆する事なく、バーテックスに立ち向かっていった……!怯えてばかりで、足手まといになってた私を、あなたは怒る事なく、手を引いてくれた……!仲間と過ごす時間が増えて、お役目にも遊びにも全力投球だったあなたを、不安に思いながらも、守ろうって決めた……!お役目で大怪我した時も、自分の事以上に、私達の事を気遣ってくれてた……!巧君が目覚めて戻ってくる事を、誰よりも信じてた……!本当に強い男の子だって、優しくて頼りがいのある人だって、思わせてくれた……!そんなあなたを見ていくうちに……!私は、恋を、覚えていった……!あの時は全部伝えきれなかったけど、私は……!鷲尾須美は……!市川晴人君が、あなたが、大好きなの……!やっと、戦いが終わって、記憶も戻って、やっとあなたの事を、思い出す事が出来た……!やっと、あなたに本心を伝えられると思っていたのに……!それなのに……、それなのにぃ……!こんなのって……!こんなのってぇ……!」

 

泣きじゃくる東郷を見て、胸の奥がズキリと痛くなる4人の先代勇者。園子は昴の胸に顔を埋め、昴は黙ってその体を抱きしめる。銀と巧は一度顔を見合わせた後、東郷達から目を逸らし、沈黙を貫く。

そして友奈は……。

 

「聞きたい、よ……!」

 

未だに力のこもっていない幼馴染みの手にそっと触れて、心情を吐露する。常に強気な姿勢で皆を励まし、2人の目覚めを信じていた彼女の精神も、限界に近づきつつあるようだ。

 

「お願いよ晴人君!お願いだから、目を開けてぇ!あなたの凛々しくて優しい声を、また聞かせてぇ!あの時の約束を果たしたいって言ったのは、あなたでしょう⁉︎だからお願い……!目覚めて……!私を、また1人にしないで……!また私を、抱きしめて……!また……、また……!……だから、目を開けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」

 

その大声は、遠くにいた看護師や患者も何事かと注目を集める。だが近寄ろうとはしなかった。

返事は返ってこない。再び東郷は嗚咽と共に彼の手に触れようと、自身の手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞こえてたぜ、みんなの声」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしさを漂わせるその声が耳に入ってきたと同時に、伸ばした手を掴まれる感触が伝わる東郷。

ハッと目を開き、そしてゆっくりと目線を上に上げる。涙でボヤけていた視界も、段々とハッキリ見えてくる。

 

「約束、したからな。約束は、いっぺん決めたら、最後まで守るもんだからな」

 

ちょっと寄り道しちまったけど。

そう呟く少年の目からは、細くはあるが、頬を伝うものが見えていた。しかし東郷はそんな事を気にする間も無く、震える声で、その相手の名を呟く。

 

「は……ると……、君……?」

「……あぁ」

 

そしてその隣では……。

 

「……よぉ、友奈」

「……あ」

「ちゃんと、聞こえてたぞ。お前の、幼馴染みの、結城友奈の、声が」

「兎角……!兎角ぅ!」

 

感極まって抱きしめる友奈と兎角。彼もまた、遊月と同時に目を開け、その再会を噛み締めた。

 

「お帰り、兎角……!良かった!良かったよぉ!」

「く、苦しいぜ……。でも、心配かけたな。ただいま」

「うん……!うん!」

 

そして唐突な2人の目覚めに唖然としていた銀達も、不意に我に返って、2人を囲むように立ち上がった。

 

「良かったです……!本当に……!」

「イッチー!とっくん!」

「へへっ!散々心配させちゃってさ。けど良かったな!ホントに奇跡って感じだな、巧!」

「奇跡……か。それにしちゃ、随分と遅咲きの奇跡だったな。ま、どうであれまた元に戻れたのは、確かだし、今はそれで良しとするか」

「早く真琴君達にも連絡しましょう!」

「うんうん〜!」

「あたしも夏凜に連絡だ!」

「……相変わらず、忙しないというか。……とりあえず、お帰り、だな」

 

喜び勇んで、仲間達に連絡を入れつつ、兎角達に話しかける4人。

そんな中、遊月と東郷は自然と笑みを浮かべ、互いの腕を相手の背中に回し、そして密着する。

 

「……今なら、ちゃんと見える。須美の顔が、ハッキリと」

「私もよ、晴人君」

「やっと、会えたな」

「うん……!やっと……!」

「……今なら分かるんだ」

「?」

「俺が何故、神樹様に武神として選ばれたのか。どうして、この時代に生まれたのか。……それはきっと、こうやって須美を抱きしめる為に、巡り合う為に、生まれてきた。そんな気がするんだ……」

「……私も、そう思うわ。私達の出会いは、偶然なんかじゃない。あなたに会う為に、勇者になった」

「須美」

「晴人君」

 

互いの名を呼び合い、再会した今だからこそ、伝えたい想いを迷わず打ち明ける2人。

 

「俺は、ずっと一緒に、これからも……。須美と、生きていきたい」

「私もよ、晴人君。あなたを立派に育てて、最後まで守る。2年前から、そう約束したから」

 

そう呟いた東郷の頬は紅い。そして目と目を合わせ、再び口を開く。

 

「晴人君。あの……、私ね、あなたに伝えたい事があるの。それは」

「……俺も、同じ事考えてた。口に出さなくても、お前の気持ちは、伝わってくるぜ」

「……フフ。私もよ、晴人君」

 

互いに微笑み、それ以上言葉を交わす事なく、顔を近づけ、周りの視線を物ともせず、そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと音を立てずに、互いの唇が重なる。

 

 

 

 

その姿は、約2年前に神様から力を授かり、様々な困難に翻弄されながらも、互いを想いやる信念が身を結び、そして永遠の愛を誓う、確かな姿勢であった。

秋風にも負けない、熱い感情が、いつまでも2人を優しく包み込んでいく……。

 

 

 

 




ようやく再会した2人。
少しでもこの話を読んで感動してくれた方がいれば、私としても感無量です。


〜次回予告〜


「改めて、自己紹介からだな」

「まさかのサプライズでしたね」

「篭城戦の辛い所ね……」

「自分から挨拶に行った⁉︎」

「早すぎるわよ⁉︎」

「全然思い出せないな……」

「これからもよろしくな」


〜新たな仲間〜

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