結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
諸事情で生活の環境が変わってくる為、投稿頻度にも多少なりとも変化はありますが、どうにかして時間を見つけて投稿していきたいと思いますので、末永くお待ちください。
では、今回はあの人物から、諸々の事情が明らかとなります。
ふと目を開けると、そこは学校の屋上に設置されていた祠……ではなく、勇者部の部室。ほんの数分前と寸分変わらぬ光景が飛び込んできた。
「戻ってこれたみたい、だけど……」
「祠じゃなくて、教室に直接戻されるのか……。あの謎の敵といい、やっぱりいつもの樹海化とは違ってるのか?」
各々が、今までと違う点に疑問を抱く中、教室に残っていた人物達に声をかけられる。
「おぉ、戻ってこれたか!お役目ご苦労!」
「!先生!」
「みんな、無事のようね」
子供達の無事を知り、ホッと一息つく源道と安芸。
「あの、師匠。今回の事なんですけど……」
「うむ。それについては、彼女の口から説明してもらった方が早いだろう」
源道がそう言うと、そこで初めて、見知らぬ少女が2人のそばにいる事に気づく部員達。
「?どなた、ですか……?」
「その正装……。大赦の関係者のようだけど、その割には同い年に見えるわ」
「貴方は、一体……」
全員の注目が集まったのを確認した、園子に似て、おっとりしつつもどことなく神秘的なものを漂わせる少女は、自己紹介から始めた。
「皆さん、改めまして、お役目お疲れ様でした。私は、『
これを聞いた途端、メンバーの中から血相を変えるほど驚いた表情を見せる者達が現れる。
「⁉︎上里って、まさか……⁉︎」
「大赦の巫女の中でも、最高の発言力を持つって言う、あの上里家の⁉︎」
「ほぉほぉ〜。一目見た時からビビビーンとくるものがあったけど、そんなに凄い子だったとはね〜」
「いやいや園子!あんたはもっと驚くべきでしょ⁉︎」
「上里家は、乃木家と並んで事実上、大赦のツートップですからね……」
「(それに確か、『上里ひなた』って、あの時見つけた冊子にも記載されていた名前だったはず……)」
「アッ!そういえばこの声、さっき樹海で聴いたのと同じ声ッスよ!」
「じゃあ貴方が声を飛ばしてくれたんですね。ありがとうございます」
不意に冬弥と樹が、戦闘時に心の中に声が響いてきたのを思い出し、謎の少女……ひなたに礼を告げる。
「戦ったけど、言われた通り力を使ったリスクはなかったわね」
「あぁ、出来ればその辺りに関しても、色々と説明してもらえるだろうか」
「あ、はい……。そのつもりなんですけど……」
「?どうかしたのか?」
「あ、いえ……。皆さんを見てると、私の知ってる方々と性格が似通ってたり、声や容姿そのものが似てる者もいたりして、少し驚いてるんです」
「だ、大丈夫ですか?気分でも悪いんですか?何か持ってきましょうか?」
ひなたの様子がおかしい事に気づいた友奈が声をかけるが、大丈夫だと言わんばかりに微笑む。
「気にかけていただき、ありがとうございます。……念の為お聞きしますが、貴方のお名前は?」
「はい。讃州中学勇者部、結城友奈です」
「友奈……とても素敵な名前ですね。友情の『友』、友達の『友』……」
「?」
ひなたの聞き方に、疑問を浮かべる兎角。彼女が驚いている要因の大元は、友奈にあるように見受けられたのだが、何故友奈を見てそこまで驚くのか、掴み取れない。
「……ごほん。落ち着きました所で、皆さんの疑問に答えさせていただきます。何分衝撃的な事ばかりですので、楽な格好で聞いてくださいね」
と、ここでひなたの表情が一変。険しい顔つきになった所で、彼女の口から、今起きている異変について語られる。
「実は、私達が今いるここは、神樹様の中なのです。正確には、神樹様が造った、特別な世界」
「特別な、世界……」
「そんなバカな……って言いたい所だけど、いきなり端末が現れた事を考えると、有り得なくもないわね」
夏凜が当時の事を振り返り、納得の表情を浮かべる。他の面々も、ひなたが嘘を言っている事はないと断言できたようだ。
「神樹様は、土地神様の集合体なんです。その辺りは大丈夫ですか?」
「えぇ。その辺りはみんな、授業等を通じて知っています。俺達の場合は、少し前に色々あって、より深い部分まで知っていますが。西暦の時代、バーテックスによって土地のほとんどが壊滅した際、人類に味方した神々の加護を受けて、四国だけで生きていけるように恵みをくださっている存在だと言う事は周知しています」
「!思っていたより詳しいようですね。……実は、今回の異変は、その集合した神の中の一体が今、神樹内部で嵐のように暴れ回っているのが原因なんです。元々は、天の神に属していた強力な神様です。天を追放されて、結果として私達人類の味方になってくれたのですが……、今回神樹となっている他の神様と、簡単に言えば、喧嘩したらしく、神樹様から離れると主張されて……」
「喧嘩って……。神様同士でもそんな事あるんだな」
銀が唸るように呟く。
「じゃあ、その喧嘩が原因で、またバーテックスが復活したって事か?」
「少し違いますね。先程皆さんが戦ったバーテックスは、その造反神が造った、偽物のバーテックスなんです」
「偽物?それに造ったって……」
「元々、天の神側なのでこれ位の模倣は出来るとか……」
「本当に位の高い神様なんだね〜」
「えぇ、その通りです。その神のお陰で勇者システムに一部、天の神の技術が流用されてるぐらいですので……。また、造反神は独自の兵隊を造り出して、神樹様の内部を荒らしているのです」
「あ!もしかしてさっき戦った、魚みたいな敵って……」
「なるほどね〜。見たことないバーテックスだから変だな〜って思ってたけど、あれも造反神が生み出した兵器の一部だったんだ〜」
先の戦いで遭遇した、未知のバーテックスの正体は、造反神が独自に開発した戦力の一端だったと、一同は理解する。
「ここで土地神がバラバラになれば、神樹様はその力を大きく失ってしまう。貴方達は勇者として、武神として、造反神を鎮める為に、神樹様の世界の中に特殊召喚されたんです」
「神樹様の中で対立が起きた結果、今度の敵は神樹様の中の一体……。土地神と土地神の戦い……か」
「つまり俺達は、神様同士の喧嘩を武力行使で仲裁する為に、半ば強引に呼ばれたってわけか。……俺達人間からすれば迷惑な話だよな」
兎角が愚痴るように呟く。他の面々も似たような心情だからか、口を挟む者はいなかった。
もう少し長くなるだろうと見た源道が、一旦休憩を提案し、早速東郷と昴の手で、温かいお茶と牡丹餅が皆に行き届いた。そうしてしばらく疲れを癒した所で、話の続きが始まった。
「……しかし、ここが未だに神樹様の内部という感覚が掴めないな。見たところ、この室内や、外の風景も、俺達が元いた世界と寸分変わらない光景だ」
巧の言う通り、目の前に映る景色は、自分達がよく知る幻想的な世界とは大きく異なり、言うなれば『日常』そのもの。その疑問にも、ひなたは端的に答えてくれた。
「はい。貴方達が過ごしやすいように、神樹様が実際の四国に見立ててくださっているようです」
「もしかして私達は、異変が解決するまでは、しばらくここにいる流れ……なんですか?」
「はい、その流れです。ですが、現実とは時の進みが違いますから、戻っても時間は経過してませんよ」
「なるほど。結界が張られてバーテックスと戦っていた時と違って、今回は神樹様の内部での出来事となるから、時間経過は関係なくなるのか」
「な、何だか私、このまま話についていけるか、少し不安になってきたような……」
話が進むにつれて、やや不安を覚える友奈。彼女以外の何人かも、常識が及ばぬ事実を前に、理解が追いつくか不安になっている様子だ。
「もう少し丁寧に説明します。これを見てください」
そう言って彼女は、自身が所持していた端末を取り出すと、その画面を皆に見えるようにテーブルに置いた。
画面に表示されていたのは、四国の全体図。が、異様だったのはその表示のされ方だった。一点を除けば、後は全て赤色に染まっていたのだ。
「これが、この世界の四国の現状です」
「わぁ〜。何だか真っ赤っかだね〜」
「青い部分はちょっとしか無いッスね」
「この赤色は、何を示しているんですか?」
「はい。それは造反神に占領された土地を示しています。つまり、相当に反乱は進んでいるのです」
「この青い部分って、もしかして俺達が今いる讃州市か?」
「かもな」
「これが全て造反神とやらに占領されると手遅れってわけね」
「思った以上に深刻化してるんだな」
地図を見て唸る藤四郎。
「はい。そうなると、神樹様の分裂が確定。その力を大きく失います。そうなってしまっては、皆さんの元いた世界への影響は計り知れません」
「マズいわね、大ピンチじゃないの……」
「造反神を鎮める為には、どうすれば良いんですか?」
「土地を防衛、奪還しつつ相手の勢いを削ぐ。先ずはそこからですね」
「確かに長丁場になりそうだわ。補給は大丈夫なのかしら?」
不透明な先行きに不安を覚える東郷達だが、そんな時頼りになるのが、彼女の前向きな一言だ。
「でも、神樹様の中で喧嘩が起こってるなら、止めないといけないね!」
「えぇ。造反神が鎮まれば、また神樹様は従来通りに活動できるそうです」
「よぉし、ちゃんとここまではついてこれてる」
友奈は、自分が話についていけてる事に安心した様子だ。それを見て、ひなたも話を続ける。
「では、ギアを一つ上げていきますね。先程、話題に出てた補給に関する部分です」
「うぅ、勇者部五箇条一つ、なるべく諦めない……」
「どんだけ自信ないのよ⁉︎それくらいシャキッとなさいよ……」
夏凜からのツッコミも決まった所で、早速ひなたから、新たな情報が提供された。
「この世界には、実在と同じ町が広がり、実在と同じ人達が生活してます。皆さんはここで暮らしながら、お役目を果たしていってほしいのです」
「?町の人達がいるって?神樹様の内部なのに?」
「言われてみれば変だな。どうして神樹様はそんな事を?」
「この世界には、皆さんと同様に魂を召喚させています。皆さんと違うのは、町の人達は実際の世界だと思って、普通に生活していますよ」
「なるほど。それで神樹様の造り上げた世界に、勇者や武神じゃない先生達もこうして同じ空間に存在できるわけか」
「勇者システムも武神システムも、精神の安定が大事です。皆さんのメンタルは常に健全でなければなりません。だからこそ、普段の暮らしも出来るようにしているのです」
精神の安定の為。その言葉の意味を誰よりも理解しているのは、他ならぬ遊月と友奈だ。事実、世界の真実を知った後に暴走した東郷を止められるか、不安になった際に変身できず、窮地に追い込まれた事があるからだ。
「じゃあ、私の家とかも普通にあるのね。行きつけのお店ではサプリや煮干しも売ってる……と」
「はい。……ただ、私は中学近くの空き物件を使わせていただきますね。何せ、この時代の出身ではないので、家がないんです」
「今サラッとスゲェ事言わなかったか⁉︎」
一瞬スルーしかけたが、ハッとなって驚く兎角。
この時代の出身ではない。となると、彼女はどこからやってきたのか。皆の視線からその疑問を読み取ったひなたが、あっさりと答えた。
「私は、約300年昔から、やってきたんですよ」
唐突なカミングアウトに、言葉を失う一同。
「そうなんです私は300年前から来たんです。神世紀ではなく、西暦の時代から」
「重要な事だから繰り返したわね」(by風)
「繰り返したな」(by巧)
「繰り返したッスね」(by冬弥)
「繰り返しましたね」(by真琴)
「もう何が起きても、そうそう驚かなくなったわよ……」(by夏凜)
皆が口々に呟く中、安芸は納得した表情を浮かべた。
「成程、それなら『ひなた』の名が冠された人物がこうして目の前にいるのも理解できるわ」
「?それってどう言う事ですか?」
「大赦の中では、『ひなた』という名前はより特別な意味を持つとされているの。だから神世紀においては、ひなたという名前は誰1人として付けられていないわ。格式の高い上里家や乃木家においても、よほどの事情がなければ、先ずその名が付けられる事はない。にも関わらず、こうして目の前に『ひなた』と名乗る人物が現れた。最初は驚いたけど、貴方が過去から来た存在であれば、納得がいくの」
「そ、そんなに凄い人に、僕達普通に話しかけてるんですね……」
安芸の話を聞いて、アワアワし始める真琴。それを見て、ひなたは慌てて手を横に振る。
「でも、皆さんと私は何も変わりませんよ。私は普段からこんな言葉遣いですが……。皆さんさえ良ければ、私には敬語抜きでお願いします。フレンドリーな関係で」
「うん、分かったよ!よろしくね、ヒナちゃん!」
「へへっ、シクヨロだな!」
早速手を差し伸べる友奈と、それに続く銀。ひなたも手を伸ばし握手をする。
「ありがとうございます。……おっと、話が逸れてしまいましたが、神樹様の内部だけあって、この世界ならではの利点もお話しさせていただきますね」
「利点?」
「はい。一つ目は、力をいくら使っても、リスクがないという事です」
これには、人類の存亡をかけた戦いで、最前線で戦ってきた面々も歓声が上がる。
「そいつはいいな!思う存分戦えるってわけだし!」
「遠慮なく戦えるのは、本当に大きいわね」
「2つ目は、時代を飛び越えて、勇者や武神、そして巫女、更には勇者や武神に近しい戦力となる面々を、この世界に呼び寄せる事が出来るという事です。これに関しては、私が良い例ですね。先程から申している通り、造反神は強力ですから歴代勇者の力を結集して、コトに当たるように、と」
「歴代の勇者が集結……。そんな凄い事が出来るなんて、神樹様はやっぱり凄いですね」
「ここが神樹様の中の世界だからこそ可能な事ってわけだな。それだけ敵は強大だが、こっちとしては有り難い話だな」
「もちろん!私がいた時代の勇者達も参戦する事間違いなしです。中には、ここにいる皆さんのご先祖様も含まれていますから、まさにオールスターバトルです」
「!先輩、もしかして、あの『勇者御記』の写真にあった名前の人達が、ひなたの言ってる勇者の事じゃ」
「成程。それが本当なら、そいつは頼もしいな。で、その歴代の勇者達は今どこに?」
「まだ呼べていません。土地を奪還していけば、神樹様に力が戻って、呼ぶ事が可能になるかと」
「そこは俺達の努力次第って事か」
と、ここで東郷が興奮気味を口調を早めて、ひなたに問いかけた。
「で、ではいざとなれば、昭和の日本軍の戦艦などを呼ぶ事も出来るのね⁉︎そうなれば、向かう所敵なし!バーテックスなにするものぞ!これほど頼れる味方はいないわ!雄々しい砲撃の数々で蜂の巣に……!」
「まぁた暴走してるわよこの戦艦オタク!」
「うわぁ、いつも以上に荒ぶってるわね……」
「と、東郷さん落ち着いて!」
「おーい須美。そもそもバーテックスに通常兵器は通じないって、忘れてないか?」
「……あ」
遊月の一言を聞いて、それまで輝いていた瞳から、光が半分ほど消え失せる。心なしか、恥ずかしさのあまり縮こまっているようにも見受けられる。
「戦力として呼ばれるのは、あくまで勇者や武神、巫女といった面々です。ですから……」
不意にひなたの言葉を遮るように鳴り響くアラーム。どうやら敵が再び侵攻してきたようだ。
「!来やがったか!」
「ったく、来るなら一度に来なさいよ。……ま、頭がパンクしそうだったから、丁度良いかもだけど」
「遠慮なく戦えるなら、女子力の見せ所ね。ちぎっては投げ、ちぎっては投げるわ」
「(戦闘と女子力を結びつけるのは、どう考えても無理があるような……。ま、今更言及しても無駄か)」
「皆さん、頑張ってくださいね。私も早く、若葉ちゃん達をここに呼びたいので。出来ればこう……ちゃっちゃとお願いします。まだ先は長いですからね」
「……何か怖い一面が見えた気がするが、とにかくやりましょう!」
「よし、お前達!聞いての通り、この世界での役目は、土地の防衛並びに奪還だ。長丁場にはなるが、ここでの活躍が、現実世界の現状打破に繋がる!力のリスクこそないとはいえ、気を緩めず、しっかり事に当たるように!俺達も大赦と連携して、今度こそ適切なサポートを勧めていく!くれぐれも無理はするなよ!」
『はい!』
「よぉし!勇者部出動よ!」
風の掛け声と共に、勇者部の面々は端末を片手に、樹海化していく世界に向かって駆け抜けていく。
今度の相手は、神樹の一部。そしてそこから生み出される、未知のバーテックス。
それでも彼らは恐れ慄く事なく、元の世界に戻る為に、神樹から与えられた力を武器に、今日も戦場に馳せ参じていくのであった。
このゆゆゆい編に関しては、諸々の都合上、戦闘シーンを割愛させていただく場合があります。もちろん重要な場面の描写はさせていただきますが。
次回は新たな戦力……の前に、ちょっとした日常回をやろうかと。
〜次回予告〜
「ヒナちゃんの歓迎会をしませんか?」
「俺達も色々あってさ……」
「出たな、樹名物」
「落ち着きなんてないだろ」
「またかじってるッス⁉︎」
「はい、チーズ」
〜上里ひなたの歓迎会〜