結城友奈は勇者である 〜勇者と武神の記録〜 作:スターダストライダー
もうすぐ始まるアサルトリリィのショートアニメ、楽しみですね!
さて、今回はいよいよ、西暦組の勇者達とのご対面となります!
「皆さんの活躍の〜♪おかげで〜♪新しい援軍の勇者達を呼べるんです〜♪」
「な、何だか園子ちゃんに似て、もの凄く上機嫌ですね、ひなたさん」
昴(小)がそう語るように、勇者部員に招集をかけたひなたのテンションは、普段のダブル園子を見ているかのように、高くなっている。
しかし勇者部員達には、ひなたがそうなる要因に一つだけ心当たりがあった。
「!もしかして、新しい援軍って、ひなた先輩が言ってたやつッスか⁉︎」
「そう!さすが冬弥君、鋭いですね!今回は遂に、西暦時代の勇者達を召還できるんですよ!」
「ひなたさんの仲間達、なんですね」
「実際、どれだけの人が来るんだ?」
「10人ですよ、兎角君」
「10人も来るのか……!」
「へへっ。こいつは賑やかになるな!」
先日6人の小学生達が訪れたばかりにも関わらず、今回は更なる増員。これには部員達もどよめきを隠せない。
「因みにその中には、園子さんや銀さん、それに昴君や巧君のご先祖様もいますよ」
「わ〜やったぁ。未来の自分だけじゃなくて、ご先祖様にまで会えちゃうよ〜!」
「是非とも会ってみたいですね」
「ご先祖様かぁ。どんな人なんだろな、巧!」
「……俺の場合は特別だから、血の繋がりがあるわけじゃない。まぁ気になるのは事実だが」
中学生組は、『勇者御記』に目を通している為か、先祖が勇者であった事に至って冷静だったが、それを知らない小学生組からしてみれば、興奮冷めやまない様子だ。
「それにしても、一気に10人。これは戦力も大幅に上昇するわね。作戦の幅が広がると思う」
「更に大所帯になるわけだが……」
「これ根本的に、部室足りるのか……?」
「師匠、どうしますか?」
「ううむ……。そこは、諸先生方と相談して、空き教室を借りられるように手配を進める他ないだろうな」
遊月達の懸念に対し、源道は空き教室が借りられないか、今後は先生達と交渉する手筈を整えるようだ。これから先、援軍が増える事も考えると、早急に対応した方が良いだろう。
「それにしても、風先輩、藤四郎先輩。勇者部、大きくなりましたね」
「全くねぇ……。あたしゃそろそろ引退かしら?後は若い者に任せてねぇ……、縁側ライフを……」
「ハイ!三ノ輪銀、頑張らせてもらいます。風さんは、煎餅でも食べていてください」
「いや違うでしょ小学生の銀!そこは、風さんはまだまだナウなヤングだから頑張ってでしょ!」
「自分から振っておいてその塩対応はどうかと思うが……」
銀(小)に対して噛み付く風を見て、軽く項垂れる藤四郎。
そんなこんなで、話題は園子の先祖の事へと流れていく。
「つまるところひなタン、私のご先祖様はどんな人なのかな〜?」
「まぁ一言で言えば、西暦の風雲児ですね。初代勇者なんですが、その肩書きに相応しいです。因みに昴君のご先祖様も、それに劣らず、火を吹くような豪快ぶりで、もしかしたら大人しめな昴さんとは少し真逆かもしれませんね」
「風雲児……」
「カッコいい響きだね!さすが初代様だ!」
昴が思わずゴクリを息を呑み、友奈は二つ名の響きの良さに酔いしれている様子だ。それを見て気分を良くしたのか、ひなたは更にこう語る。
「カッコいいとか、そんな次元じゃありませんよ。今想像したカッコ良さを、百倍にしてみてください」
「ひゃ、100倍とはまた凄いですね⁉︎」
「それでもまだ、彼女……乃木若葉の素敵さには、到底及びません」
真琴が思わず目を見開く中、園子(小)も驚きに満ちた表情でこう呟く。
「ご先祖様、普通じゃないんだね〜」
「「「「お前が言うなよ……」」」」
「安心なさい、園子ちゃん。あんたも普通じゃないから……」
ダブル巧、兎角、晴人、そして夏凜から盛大かつ静かなツッコミが入ったのは言わずもがな。
「それにしても……。西暦の風雲児……もとい、そのっちや昴君のご先祖様以外は、どんな人がいるのかしら、ひなたさん」
「シャイな人から、賑やかな人まで色々ですよ。皆さん、素敵な勇者達です。それに……ウフフ。西暦ですからね。実は外国人の方も……、アメリカから来た勇者とかいたりして」
「米兵⁉︎」
これを聞いて即座に反応したのは、かの愛国心に満ちた2人だったのは言うまでもないだろう。顔色だけでなく、声色まで緊迫感を漂わせ始める。
「これはいけないわ……!須美ちゃん、一大事よ!」
「はい、裏庭の倉庫から竹槍を持ってきます!皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ……!」
「あんたらホントに落ち着いてお願いだから。こら東郷もハチマキをしめないの」
「と、とりあえず深呼吸しような、なっ?」
「やれやれ……。性格は死ぬまで変わらないとは言われているけど、それも難儀なものだと痛感するわ……」
そのまま部室を出ようとするところを、寸での所で風や遊月らに取り押さえられ、それを見ていた安芸は、教員として見てきた当時の事を思い返して、軽くため息をつく。
これにはさすがにやりすぎたと、ひなたも慌てて謝罪する事に。
「す、すみません。外国人は冗談ですよ。お2人が、異文化が苦手なのは知っていましたが、まさかここまで反応するとは……」
「いや、別にひなたは悪くないと思うけど……」
「まぁ、東郷のトリッキーさには、そのうち慣れるわよ。私も初めはメッセージのやりとりで、何度驚かされた事やら……」
「そういえばそうだったね」
「あぁそれ分かるなぁ。須美の取り扱い説明書は分厚いからな。あたしらは一緒にいたからよく知ってるけど」
「さぁ、では気を取り直して……、いよいよ勇者が来ますよ!
「お、遂に本題だな」
「皆さん、注目してくださいね〜」
興奮気味にそう告げるひなた。一同が、ひなたの祈りを捧げるようなポーズに注目が集まる。現段階で最強とも謳われる勇者達とは、どのような者達なのか……。期待と緊張が渦巻く中、沈黙だけが、部室内を侵食していく。
「……あら?」
不意に声をあげたのは、祈りのポーズをやめたひなただった。どうやら西暦組を召還する手順は滞りなく終えたようだ。が、先ほどとは打って変わって、怪訝な表情で辺りを見渡す。
「どったの、ひなた?」
「失敗した……わけじゃ無さそうだしな」
「……うーん。どうしたんでしょうか。中々来ないですね。若葉ちゃん、みんな……」
不安げな表情をするひなたを見て、友奈はすかさずフォローに入る。
「大丈夫だよ、ヒナちゃん!風雲児なんだもん。ちょっと遅れる事がサプライズ!」
「し、しかし、いったいどれほど凄い人なんでしょうか……」
「風雲児、だもんな……」
「なんか、意味もなく緊張してきたぞ……!」
「そうですねぇ。では、折角ですからどれぐらい凄いかを、具体的に語っちゃいましょうか!」
そうしてひなたが、西暦の風雲児改め、乃木若葉の魅力を語り始めたその時、各々の端末から、樹海化警報のアラームが鳴り始めた。一同がハッとなる中、ひなたは意気揚々と語り続ける。
「容姿端麗、文武両道、弱気を助ける大英雄!街を歩けば皆が振り向く、輝くオーラ!」
「あ、あの……、ひなた、さん?」
「もしもし、ひなタン?ひなタ〜ン?」
「女性ですけど、皆さん魅力に撃ち抜かれると思います!何せ私が丹精真心込めた若葉ちゃんをお楽しみに!」
「いやもう分かったから!警報鳴ってるから!」
「出撃しましょう!」
「あらあら、若葉ちゃんの紹介は、一旦お預けですか」
割と本気で残念そうな様子のひなた。
すると、先んじて端末から敵影を確認しようとしていた遊月が、驚いた声を張り上げる。
「!おいみんな!端末を見てみろ……!」
「どうした遊月……、ってこれ、俺達以外に勇者の反応が⁉︎」
「しかも敵と接触しかけています!」
「!ひょっとして、西暦の勇者達は樹海の中に召還されたのか⁉︎」
「すぐに合流しなきゃ!」
「ちょっと遠いからな……。急いだ方がいい」
「!それが若葉ちゃん達ですね。皆さん強いですから、余程のことがない限り大丈夫だとは思いますが、宜しくお願いしますね」
ひなたは、西暦組のメンバーの強さを直に知っているので、さほど心配している様子は無さそうだ。が、用心に越したことはない為、すぐに現場へ急行する事に。
「いよいよ、西暦の勇者達との会合ですね」
「フン!今更何があっても完成型勇者は臆さないわ!さぁ行くわよ、殲滅開始!」
『諸行無常!』
「了解、国防開始!」
「先ずは、西暦の風雲児様とご対面だぁ!」
真っ先に晴人や夏凜が飛び出し、その後を友奈達が追うように、樹海化する世界へと飛び込んでいく。
「頼んだぞ……!」
特別な世界故、樹海化されても動ける源道は、皆の無事を力強く願いつつ、自分に出来る事を模索し始める。
「……あ、そういえば」
「上里さん、どうかしたの?」
「いえ、大した事ではないのですが……。今回召還された中に、結城さんに似ている人がいる事を、お伝えしていなかったのを思い出しまして……」
「いやここどこォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ⁉︎」
「ちょ、声がデケェんだよ紅希……」
巨大な根に覆われた、広大な空間に、少年の声が一際大きく轟く。紫色のチソウドリを基調とした、陽気そうな少年勇者が叫ぶのを、間近にいた、白色のホオヅキを基調とした、クールビューティーな少年勇者が耳を塞ぎながら、鬱陶しそうに嗜める。
「しかし、紅希の言う事も尤もだ。一体何なんだここは……。樹海のようではあるが、なぜいきなり私達がこんな所に……」
少年勇者の叫びに同調するかのように、桔梗の勇者が辺りを見渡し、疑問を口にする。その振る舞いからは、容姿端麗や文武両道などが当てはまりそうだ。
彼女こそが、ひなたが手塩をかけて育てたと豪語する、初代勇者『
「そーだよな、突然移動してきたよな?タマが寝ぼけてるんじゃないわけだ」
「……タマの、言う通り。これ、夢じゃ、ない」
同じく腕を組んで疑問を口にするのは、オレンジ色の小柄な勇者『
「ま、丸亀城の付近じゃないみたいですね。それに、樹海も何だか変です」
「確かに、いつもよりかは緑が多すぎじゃね?」
困惑気味にそう呟く、白に近い薄紫色を基調とした勇者『
「つーかマジでどうなってんだよこれ⁉︎あいつらに餌をやりにいこうとしたら、何の連絡もなく樹海化するし、いつの間にか変身してるし⁉︎」
「お、落ち着いて三ノ輪君……。でも土居さんの言う通り、夢だったらまだ楽なんだけど、やれやれね」
突然の事で軽くパニックになっているのは、先ほど樹海内で大声を出していたチソウドリの勇者『
「それに何だか、敵の気配もするような……」
そう呟いたのは、桜色の勇者『
「!ひなたがいない⁉︎……いや、樹海だから当然か。スイッチを切り替えろ乃木若葉。先ずは呼吸を整えて……よし!」
「私も……!」
若葉は、先ほどまでそばにいたはずの幼馴染みの姿がない事に、一瞬慌てたが、現状を理解し、乱れた集中力を正すべく、空手でも用いられる呼吸法『息吹』を繰り返す。高嶋らもそれに続く。
「ふぅ、落ち着いたよ!」
「……ん?そういや、ひなただけじゃなくて、あいつの姿もないような……」
不意に辺りを見渡した、ホオヅキの勇者『
が、その直後にこちらへ近づいてくる気配を感じ、皆がその方向に目をつける。程なくして、いくつもの太い根を、豪快に飛び跳ねるように移動しながら、若葉達がいる地点に向かってダイナミックに着地した。地面が揺れるのではと思わせるような登場に、杏や調は慣れてはいながらも、思わず後ずさってしまう。
「流星!今までどこに行っていたんだ⁉︎心配したぞ!」
「いやぁ失敬しっけい!中々に珍しいものを体感したからな!つい見入ってしまった!見て回って分かったが、どうやらここは、我々が知り得る世界とは違うようだ!一言で言うなら……、ここは別世界だ!」
「あの、樹海も十分別世界だと思いますけど、具体的にどう違うのかが……」
若葉に詰め寄られながらも、悪びれた様子もなくこれまた豪快に笑いながら、観察してきた結果を報告しているのは、赤色のジャーマンアイリスを基調とした、勇者装束の上から赤い着物を羽織った、若葉とはまた違った独特のオーラを醸し出している少年勇者『
「先ず、この樹海は一部ではなく、ほぼ全域に渡って展開されている。それはどこを見渡しても地平線の先まで樹海に覆われていたのだから、間違いない。それに、我々を囲むように遠くに見えた敵の中には、我々が知らない、奇妙な姿をしたものも含まれていた」
「成る程……って、敵もいたのですか⁉︎」
「それを先に言えっつうの!」
「ハッハッハ!そう臆するな!例えどのような敵が来ようと、我々は正々堂々、正面から立ち向かう!それが我々勇者として、向かってくる者達への礼儀であり、姿勢だ!」
「相変わらずノリだけは熱い奴だ」
「とにかく、我々はここで迎え撃とう!杏、こういう場合は、固まっていた方がいいな」
「はい。全員円陣で、互いの背を守りながら周囲を確認してください。もちろん、未知の敵である以上、十分注意を」
流星から、敵の侵攻があったとの報告を受け、若葉は、チームの司令塔でもある杏から指示を受ける。そうして全員が円陣を作った所で、敵の姿が目視できる所まで迫ってきているのが見えた。流星の言った通り、敵は自分達を取り囲むように進軍してきている。
「!流星の言ってた通り、見たことないやつらがいるぜ!」
「敵が何だろうと、勇者として、滅ぼしてしまいましょう、三ノ輪君」
「千景の言う通りだ。こちらに来る。迎撃するぞ!」
「オーケイ!バーテックス退治は、タマに任せタマえよ!」
「タマ、危なくなったら、助ける……!」
「援護は任せてください、司君!」
「おうよ、頼りにしてるぜ杏!」
「よぉし、いっくよぉ!」
「一番槍は、この三ノ輪紅希様に、任せときな!」
各々が武器をその手に出現させ、腰に力を入れた所で、流星が大きな刀『童子切』を鞘から引き抜き、その刃先をバーテックスに向ける。その雰囲気は、まるで全身から炎を吹き出しているかのようだ。
「さぁ、覚悟しろ!我が刃『童子切』に宿した煉獄の炎が、お前達を、心髄まで焼き尽くす!」
その気迫に満ちた大声が狼煙となったのか、バーテックスが一気に攻め上がる。
「はっ!はぁっ!」
若葉は、勇者となってから慣れ親しんだ刀『生大刀』を片手に、迫り来るバーテックスを華麗に斬り捌いている。
「ウォォォォォォォォォ!」
そして流星は、若葉の生大刀よりも刀身が長い童子切を携え、先程の宣言を彷彿とさせるかのように、烈火の如く、バーテックスを薙ぎ倒していた。
「えい!ヤァ!ハァッ!」
「……フッ!」
高嶋は拳のみでバーテックスを殴り倒し、それによって怯んだ敵に対して、照彦は身軽な動作に加えて、両手に携えた『手甲鉤』と呼ばれる、鋭い鉤爪で引き裂いて倒していく。
「そらそらそらぁ!」
「散りなさい……!」
紅希は両手に『風火輪』と呼ばれる、二刀流のチャクラムを使い、自分を回転させながらバーテックスを倒している。更にはチャクラムの性能を活かし、遠投して遠くの敵を倒したり、同時に盾として敵の噛み付きを防ぐなど、オールラウンダーな戦い方が出来るようだ。それに続く形で、千景は鋭い鎌を持って、臆する事なく薙ぎ払っている。
「そぉれ!」
「逃がさ、ない……!」
球子は右手に備えられてある旋刃盤を投げつけて操作して、カッターの部分でバーテックスを引き裂いている。その近くでは、調が周りに刃が付いているヨーヨー型の武器『紅刃』を動かしながら、バーテックスを一網打尽にする。似たような攻撃パターンでも球子と違うのは、その手先が恐ろしく器用で、細かな動作でバーテックスを囲みながらトドメを刺している。
「オラァ!」
「そこっ!」
司が携えているのは、自身の腕と同じ長さを誇る、『二尾』と呼ばれる鉄扇。巨大な鉄の扇を振り回す事で、バーテックスを斬り裂いたり、突風を巻き起こして侵攻を妨害する。討ち洩らした敵は、杏がクロスボウ型の武器を用いて、的確に射抜いている。
さすがは初代勇者と呼ばれるだけあり、ものの数分もしないうちに、勇者側の圧勝という形で、決着がついた。
「おっしゃあ!こいつで第一波は全部退けた感じか!」
「……にしても、何がどうなって」
「!おい、あそこから銃声っぽいのが聞こえてこないか?」
「杏じゃないとしたら、一体誰が……?」
不意に紅希達が、遠くの方で戦闘音が鳴り響いている事に気づく。そこに目を凝らしてみると、何人もの人影が、遠くにいたバーテックスを倒しながら、こちらに向かってきているのが分かった。
「あ、いたわ!西暦の勇者達よ」
「敵は既に殲滅していたみたいだね」
先陣を切っていた夏凜と真琴が、見知らぬ勇者達の存在に気づく。先程の銃声は、真琴の散弾銃の発砲音だったようだ。
「いい、みんな。挨拶はきちんとね」
「安芸先生かお前は⁉︎」
「分かってるって!」
小学生組も、彼らに続いて合流を果たそうとしている。
自分達と同い年ぐらいで、且つ似たような装束を纏っている人影を見て、球子達は驚きを隠せない。
「人間だ!それにあの服……同じ勇者か!」
「マジで⁉︎諏訪に勇者がいたのは知ってたけど、俺達以外にも結構勇者がいたのか!そいつは心強ぇな!おい、俺達も急いで合流を」
「待って三ノ輪君。ヒトの形をしているからって、あまり気を緩めない方が良いわ」
「け、けどよ……」
紅希が駆け寄ろうとするが、人一倍警戒心の強い千景が、そんな彼を引き止める。紅希が困惑する中、若葉が一歩前に出る。
「とにかく、私が話してみよう」
「俺も向かおう。敵かどうか決めるのは、それからでも遅くはない」
流星も彼女に続いて、代表として立ち会う事に。勇者部からは、部長と副部長が前に出た。
「こんにちは。あなた達が、西暦の勇者さんね」
「話はひなた……失礼、上里さんから全て聞いている」
「!ひなたを知っているのか」
「ほう!なら勇者であるのは間違いなさそうだな!」
「あたしは犬吠埼風で、隣にいるのが浜田藤四郎。後ろにいるみんなを含めて、みんなこの時代の勇者や武神よ。お仲間だから、先ず安心してね」
「そちらが名乗ったのならば、こちらも名乗り返すのが礼儀だ。俺は神奈月流星!助太刀感謝する!」
「乃木若葉と言う。よろしく頼む。……それにしても、この時代、か。それに武神とは聞いた事のない名前だな。何やら色々と複雑そうだ」
「(武神を知らない……?西暦では、武神と言う名は使われなかったのか?)」
若葉の呟きに内心首を傾げる藤四郎。
その一方で、小学生組は自分達の先祖の事で夢中になっていた。
「の、乃木……!すばるん、私のご先祖様発見だよ〜!」
「え、えぇ。それに隣にいたのが神奈月と名乗っていたという事は、あの人が僕の……」
「え、えらく雰囲気違うな。特に昴とあの人じゃ」
「でも髪の色とか面影を感じるな。……つまり、風雲児様だ」
「あれが……」
その立ち振る舞いに、ゴクリと息を呑む晴人と銀。
そんな中、驚きに満ちた叫び声が、樹海内に響き渡った。
「!あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎ゆ、友奈!あ、あれ見て!」
「?どうしたの夏凜ちゃん、そんなに驚いて……って、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「ッ⁉︎ちょ、高嶋さん!あそこ見て!」
「へっ?どうしたの郡ちゃん……って、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「「そ、そんなバカな⁉︎」」
夏凜と千景に指摘され、互いの容姿を見て驚く友奈と高嶋。その理由は、その姿が寸分違わぬほど、瓜二つだったからに他ならない。そればかりか、見た目の戦闘スタイルに加え、声そのものまでそっくりだったが故に、2人の事をよく知る、兎角と照彦も、思わずハモってしまう。ここにいる何人かは、高嶋友奈の容姿はそれとなく分かっていたが、まさか全てにおいて同一だとは、誰が予想できようか。他の面々もそれに気づき、目の前の光景を疑ってしまう。
「!驚いてばかりもいられないぞ!敵が来てる!」
しかしそれを遮るように、離れた位置で偵察していた遊月が、敵の第二波襲来を告げる。
「疑問は残るが、とにかく今は、目の前の敵を倒すのが最優先だ」
「そうね。先ずは協力して敵を倒しましょ。その後で、ひなたのいる拠点で話しましょ」
「聞いていただろう。みんな、行こう。連戦だが、一気に味方が増えたぞ」
「おう!いっちょやるか!」
「待ってみんな。無条件に信じ過ぎだと思うわ。ここは樹海なのよ。警戒心を捨てないで」
「千景の、言ってる事、分かる。みんなの事、知らない。近づいて戦うの、危険」
若葉達の決定に待ったをかけたのは、またしても千景だった。加えて今度は、調も見知らぬ者達の登場に怯えて、球子の背中に隠れながら、声を震わせてそう呟く。
「あらら……、もしかしてあまりに女子力が高すぎるが故に……、美し過ぎて、怪しいのかしら、あたし」
「しょうがないよお姉ちゃん。今こっちの世界に来たばかりなんだから」
「(?誰も女子力の有無には、口を挟まないのか?)」
偶然近くにいた巧(中)が、風の発言に疑問を浮かべるが、場の雰囲気的に、敢えて黙っておく事に。
「この人達は大丈夫。そう思います。でも、千景さんや調君の言う事も確かです」
「杏もそう言うのなら、分かった。間を取ろう。団結ではなく、連携で事に当たる。これでどうだろうか?」
「まぁ、こっちのほんわかした空気は戸惑うわよね」
「分かりました。一塊に動くのではなく、先ずは連携して対処しましょう」
「でも、すぐに分かってくれそうだけどな!そんな気がするぜ!」
「敵は目前、行きましょう」
「オッケイ!銀さん暴れるぞ!なんたって、風雲児様やご先祖様が見てるんだし!」
「おっ?中々ノリが良いじゃねぇか。ひょっとしてお前……」
「あ、はい!三ノ輪銀って言います!じゃああなたが」
「おうよ!俺様が三ノ輪紅希だ!へへっ、時空を越えての共闘、中々に面白そうじゃねぇか!しっかりついてこいよ!」
早速意気投合した先祖と子孫を皮切りに、30人の勇者、武神は、バーテックスの残党を討つべく、その場から駆け出した。距離を取りながらの連携ではあったが、日々の戦闘で慣れていた体が、自然と互いの攻撃を阻害する事なく、順調に敵の数を減らしている。
程なくして、紅希と2人の銀が、最後の敵を倒した所で戦闘は終了。樹海化も解除され、友奈達には通い慣れた室内へ。若葉達にとっては未知となる、300年後の未来の土地へと足を運んだ。
西暦組の設定等につきましては、時間に余裕があれば投稿しようかと思っておりますので、しばらくはキャラに関しては、地の文で想像していただけたらと思います。
また、西暦組の設定を考えるにあたり、人物名や大まかなキャラ設定を一緒に考えてくださった、私の知人のフォロワーさんには、大変感謝しております!
次回は、西暦組メインの事情説明会となります。
〜次回予告〜
「サインください!」
「本当に便利な言葉ですね」
「ゆ、結城友奈です」
「た、高嶋友奈です」
「……まぁまぁだな」
「んまいっ!」
「賑やかになってきたな」
〜交流〜